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異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第一章 学園生活編
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39話 覗き見




グロリアは俺らの方を見ると一瞬ビクッとしてすぐ顔をそらして席に着いた。


その様子を見ていたアクリーナは俺の方に振り向いて言ってきた。



「ねえ、昨日何があったの……?」


「んー、別にただ戦っただけだぞ?複数人でかかってこられたけど勝ったぞ」



実際その通りだ。俺はアイツらと『普通に』戦って勝利しただけだ。


俺はそんなことよりも気になることがあった。



「それよりもさ……皆一体どうしたんだ?やけに俺らの方見ているんだが」



グロリアが教室に入って来てから、クラスメイトの視線がこちらに多く向いており、ヒソヒソと話をしていたのが気になる。



「あ、そっか……そうだよね……」




アクリーナが小さく呟き、改めてクーラスの方を見て言った。



「………実はね、噂になってたの……」


「噂?」


「うん、あのバイルシュミット家の娘に愚かにも挑んだ人間が返り討ちにされて殺されたって……」


「殺されたって、なんで俺が?」



実際あの現場を見れば殺されたと思われても仕方はないが、それならば噂になるのはグロリア達の方だろうに、なぜ俺が殺されたとなっているのだ。



「昨日、先生達が大騒ぎしてたんだよ……?知らないの?」


「いや、全く」



昨日はあの後すぐ部屋に戻ったしあそこで騒いでいても寮まで声が届きはしない。



「血まみれの生徒が倒れてるって聞いた時、真っ先にクーラスだと思って……私、怖くなって……それで……」



シャロンが涙目になりながら震えた声でそう言った。なるほどな、昨日の慌てぶりはそういうことだったのか。


それに1人が死んでるなればそりゃクラスメイトも驚くか、死んだはずの人間が目の前に現れたのだから。万一にも俺が勝つだなんて思ってもいなかったのだろう。


そんなことを考えているうちにゴットハルトの話が終わった。



「少し長くなったがこれでこの話は以上だ。アルデバラン、少し来い。話がある」



ゴットハルトはそう言って教室を出て行った。



「話って……なんだろう……?」


「とりあえず行った方がいいんじゃないか?」


「そ、そうだね」



俺がそう言うとアクリーナは席を立ち教室を出て行った。



「だ、大丈夫かな……?アクリーナが心配……」


「大丈夫だろ」


「で、でも何かあったら……」



シャロンは心配性だな、けどまあ相手が相手(ゴットハルト)だしな、心配するのも当然か、俺らにとってはトラウマみたいなものだし。



「そんな心配なら様子でも見るか?」


「う、うん」



そう言うとシャロンが教室を出ようとした。それを俺は引き止める。



「おいおい、どこ行くつもりだ?」


「え、だって様子を見るって……」


「わざわざ行かなくてもここで見れる」


「え?どうやって……」


「こうやって」



俺はシャロンの額に手をやり《感覚共有》を発動させる。五感を共有する光属性の魔法、向こうの視覚や聴覚といった五感をこちらでも認識できるようにする。ただしこちらから向こうへ感覚は届かない。



「!!」


「どうだ?」


「ひっ……」



シャロンが見ている景色はアクリーナの今現在見ているもの、つまりはゴットハルトだ。奴にトラウマを持っている彼女にとって恐怖でしかなかった。



「シャロン」


「っ!」


「大丈夫だ。俺はここにいる」



俺はシャロンの手を握り、恐怖を和らげようと言葉をかける。



「ク、クーラスぅ……」


「とりあえず席に着いとけ、この状態で動くのは危ない」



俺はシャロンの手を握ったまま座らせ、そのまま自分も席に着いた。


さて俺も様子を見てみるか、《感覚共有》


その瞬間、視界に入ってきたのは空き教室と思われる場所でゴットハルトが紙を持って何かを喋っている映像だ。


おっとこれじゃあ話の内容がわからないな、《感覚共有 聴覚》



『———なるほど、そんなことが……』


『……はい』


『すまない、嫌なことを思い出させてしまって』


『……大丈夫です』


『それで次はこの遺書のことだが……』



会話から察するに、昨日の5人のことについての話といったところか、流れ的にテミスの遺書を聞くかどうかって感じか。



『読みたくなければ、このまま戻ってもらって構わ……』



ゴットハルトがそう言いかけた時にアクリーナが挟むように口を開く。



『いえ、読みます』



そう言ってアクリーナは遺書を受け取った。《感覚共有》によって内容は俺らにも見えている。


テミスの遺書はまずアクリーナに対して、今までしてきた仕打ちの謝罪が長々と綴られ、次に家族などへ先に逝くことがどうたらというやつで、そして最後に彼女の親友サラへ、手をかけてしまった後悔と謝罪が綴られていた。


手をかけるもなにも俺が魔法で操ったんだがな。



一通り読み終わりアクリーナは遺書をゴットハルトに返す。



『これを読んだからといって私の心が晴れるわけでもないし、それに彼女は主犯でもないので』


『……そうだな、こんなこと言うのは教師としてはアレだが……死んで許されようなんて甘い、こんな生きて償おうともしない腰抜けなんぞ、許す必要なんてない』



ほう、教師のくせにそんなことを言うとは、だがそれが人間として正しい意見だな。



『話は終わりですか?』


『ああ、もう戻っていいぞ』



ゴットハルトがそう言うと同時に俺は《感覚共有》を切った。



「心配する必要なかったろ?」


「う、うん……」



そう答えるもシャロンはまだ不安そうな表情をしていた。



「……昨日は心配かけて、すまなかったな」



俺はポンとシャロンの頭を撫でた。



「っ!あっ、うん……!」



シャロンの顔が赤くなり俯いてしまった。何か対応を間違えたか?



それから少ししてアクリーナが教室へ戻ってきた。



「ねえクーラス、先生が『放課後俺のところへ来い』って言ってたんだけど……」


「ゴットハルトが?」


「うん」



おおよそ要件の予想はつく、昨日のグロリア達とのことで話だろう。

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