34話 前菜を楽しむ
「絶対に後悔させてやる……!」
「やああああ!!」
信者の1人が俺に向かって切りかかってくる。だが怒りで剣筋が雑になっており、隙だらけだった。
信者が剣を振り下ろす瞬間、俺は剣を振り上げた。するといとも簡単に左手首が切断され信者の左手が宙を舞った。
「ぎ、ぎゃあああああ!!手がぁぁぁぁ!!!」
「くっ、ははははは!!隙だらけなんだよ、そんなんじゃ切ってくださいと言ってるようなものだぞ」
「いぎ……よ、よぐも……」
残った右手で左手を抑え、激痛で涙を流しながらも俺を睨むその目には決して折れることない貴族としてのプライドが感じられた。
ああっ、いい、すっごくいいぞ。それでいい、それでこそ壊し甲斐がある。そのプライドが粉々になったら、どんな表情をしてくれるのだろう。
俺はニヤニヤ笑いが止まらなかった。
「そら」
「うぐっ、な、何を——ぎぃ!?」
「この程度で済むと思ったか?」
「があっ!や、やめでぇぇぇぇ!!」
俺はそいつを仰向けになるように突き飛ばした。そして右腕に剣を突き刺し、グリグリと抉った。
「ほらほら、俺を後悔させるんじゃなかったのか?少しは抵抗してみろよ」
「お、おねがっ……も、やめでぇぇ」
「ククク、やだね」
先程までの殺気立った表情から一変し、泣きながら懇願する彼女をクーラスは楽しそうに笑いながら一蹴した。
俺は思い切り剣を突き刺した。ザクリという音と共に信者の右腕が切り落とされる。
「ぎゃああああああああ!!!」
「ハハハハハ!」
心地よい悲鳴だ。グロリアといいコイツらもなかなかいい声で鳴きやがる。思わず笑ってしまうじゃないか。
「さてと」
俺は奥の2人の方へ目を向けた。すると2人は同時にビクッと震え、表情が恐怖で染まっていた。
「ひっ……」
「ま、待って……!」
俺と目が合った瞬間、片方が逃げ出しもう1人も続いて逃げ出す。
まったく、無駄なことだというのに
俺はゆっくりと2人の後を追った。
「嫌だ嫌だ嫌だ死にたくないっ!」
「こ、殺されるっ!」
2人は無我夢中で逃げていた。目の前で人が切り刻まれ、それを楽しそうに笑う男、こちらを見たとき次は自分の番だと本能が訴えた。気づいたら勝手に足が動いていた。
一刻も早くこの場から離れて誰かに助けを求めようとひたすら2人は走った。
「あがっ!」
「痛っ!?」
2人がちょうど枠の外に出ようとした時、見えない壁に頭をぶつけ、その勢いで尻餅をついた。何が起こったのかわからないという顔をしながらもう一度出ようとしてみる。
やはりそこには見えない壁があるようで出ようとした途端、ちょうどコートの境目の線引きの上でゴンと頭が当たった。
「ファ、ファイアーボール!」
見えない壁に手をやり、なんとか外に出ようと魔法を放ったり剣で切りつけて試みる。
だが、それらでも一切ビクともしなかった。まるで1人も逃すまいとそこにあるようだった。
「嘘……」
「クックック、無駄だ。《進入不可》の結界を書き換えて《逃走不可》にしてある。術者である俺が解除しない限り、どんなことをしようと外に出ることはできない」
もっとも、禁属性魔法でなら強引に打ち破ることは可能だが、コイツらが使えるわけないからな。
「い、いやあああああああああ!!!」
「出して出してよぉぉぉぉぉ!!!」
クーラスの姿を見た瞬間、2人は結界を狂ったように叩き出した。その姿はまるで何もない空間に向けて拳を振っているようで滑稽だった。
「お前らのような屑を、やすやすと逃すわけねーだろ」
俺はそいつらのうちの片方の頭を鷲掴みにしながらそう言った。
「ひ、ひぃっ!」
「因果応報って言葉、知ってるか?」
「い、いやあああ!!」
「聞いてないか、まあいい」
そう言って俺はそのまま頭を地面へ叩きつけた。
「がっ……!」
「《アイスニードル》」
地面に叩きつけた信者に向けて俺はそう詠唱した。
すると尖った氷の塊がそいつめがけて無数に飛んだ。
「あぎゃああっ!!目、目がぁぁ……」
アイスニードルの一つが右眼に刺さっており、そいつは悶えていた。他にも全身に無数に突き刺さっていてそこからは血が流れていた。
「い、いだいよぉ……だ、だずげでぇ……」
「おやおや、そんなところに刺さってはもう使い物にはならないね。だったらそんな眼、いらないよな」
「ひぎぃっ!?や、やめ……」
俺はそいつの顔に手をやり、落ちているアイスニードルを使い眼を抉った。
「いっ、いぎゃあああ!!!あ、ああぁぁ……」
「ふむ、これだと左右のバランスが悪いなぁ」
「ひぃっ!?もうやめでぇ!!」
「断る」
「うぎゃああああああああああ!!!」
同様に俺はもう片方の眼も抉った。途中あまりにも暴れられて、逃げられそうになったので両足を切断したら大人しくなった。
「う………あぁ……」
信者は両膝上までがなくなり、眼のあったところから大量に血を流してただ唸っていた。
「うーん、スッキリした。けど貴族様の眼って汚ねえな、やることも性格も汚ければ表面も汚らしい」
俺は抉り出した両眼をつまみ上げて正直な感想を述べた。
「さーてと」
くるりともう1人の方へと向いて、どうしようかと思った時
「あ、あぁ……あはは……は……」
もう1人はすでに壊れ、目は虚ろで涙を流しており、下の方は粗相をしていた。
「チッ、つまんねえな。けど何もしないの癪だ。オイッ!」
俺は思い切り腹を蹴飛ばした。
「うげぇっ!?が、がはっ……」
身体強化も使っていたのでかなり強めに入っただろう。数メートル吹っ飛んだ後、そいつは嘔吐した。
「勝手に壊れてんじゃねえよ、つまんねえだろうが」
彼女は蹴飛ばされたショックで正気になり、目には生気が戻っていた。
「あ、あ、あ………」
ゆっくりと近づいていくとそいつは恐怖で満ちた表情で俺を見ていた。全身はガタガタと震え、腰も抜けているようで尻餅をついたまま動こうとしなかった。
「さて、お前はどうしてやろうか」
「お、お、おねがっ、や、やめてくださいぃ!!」
すごい勢いで俺に向かって土下座をしてきた。だがこんなことでやめるような俺ではない。
「お願いしますっ!!ど、どうか、た、助けてください!!」
「おい」
「いやぁぁ!や、やめてくださいぃ!!」
「聞け」
何か話そうとするたびにそれを遮るようにそう繰り返す、このままではラチがあかない。
「お願いしごはぁっ!?」
「少し黙れ」
俺はもう一度腹を強く蹴飛ばした。彼女は再び数メートル吹っ飛び腹を抑えてうずくまった。
「げぇ……が……は……や、やめ……で」
ゆっくりと涙と涎を垂れ流しながら見上げ、恐怖や苦痛の入り混じった表情で許しを請う言葉を口にした。
「ふむ、決めた」
俺はそう言って髪を鷲掴みにして頭を持ち上げた。
「え……ぐはぁ!!」
思いきり顔を殴った。うん、コイツも中々良い声で鳴いてくれる。さっきから切り刻んでばかりだったからな、これも気分が良い。
「ぎゃっ、がっ、やめっ、ごっ!」
右へ左へ、俺は交互に顔を殴り最後は顔面に渾身の力で右ストレートを叩き込んだ。
「あがっ……は……ゆ………許じ……」
「やだ」
そう言いながら俺は腹に剣を突き刺した。
「ごっ……が……ぐぷっ…」
「む、反応が鈍いな。そんじゃ、これならどうだ?」
「〜〜〜〜〜!?ごばゔぁがっ……!」
突き刺した剣をそのまま横に動かすと傷口が広がり出血と共に腸が姿を見せ、声にならない悲鳴を吐血混じりにあげた。
「少しは抵抗してみろよ、つまらねえぞ」
「が……ごぷっ……ご…ぱ……」
反応なしか、もうコイツはダメだな。残りを相手してさっさとグロリアをいただくとするか。