表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第一章 学園生活編
29/119

27話 傲慢な貴族たち




ゴットハルトに教室へと案内され、俺らは席に着いた。一卓2人の長机で俺は窓際の席へ、シャロンとアクリーナは俺の前の席に座った。各クラス20名、つまりAクラスの半数は特待生だ。



全員が席に着くとゴットハルトが教壇に立ちその隣に剣術試験の時に奴と一緒にいたエマが立っていた。



「入学式でも言ったように俺がこのクラスの担任のゴットハルトだ。主に実戦訓練でお前らの相手をさせてもらう。1年間よろしく頼む」



試験や式の時と違ってゴットハルトは落ち着いてそう言った。だがそれでも奴のガタイといい容姿といい、そして試験の時のことといい、奴が担当だった者は誰もが目を合わせようとしなかった。特にシャロンは下を向いて震えているように見えた。



「副担任のエマといいます。主に座学を担当します。よろしくお願いします」



エマも挨拶をして頭を下げ、再びゴットハルトが口を開く。



「さて、本来ならば自己紹介と言いたいところだが俺はそんなことはしない。己の肉体でぶつかり合ってこそ、相手をより知ることができると俺は思っている!だから明日、お前らには実戦訓練で今隣に座っている者同士で戦ってもらう」



脳筋らしい考え方だ。しかし隣同士か、俺の隣には誰も座っていないがどうするのだろうか。


まさかゴットハルトと戦うのか?


辺りを見回すと他にも1人で座っているのが前の方に何人か見えた。おそらくそいつらと組まされるだろうと思い内心ホッとした。



「1人で席に座っている者は明日までに相手を見つけておけ、そうでなければ俺が相手をしてやる」



そう言うと1人で座っていた者たちは互いに声をかけペアを組んでいた。俺は出遅れてしまい1人だけ余ってしまった。これで明日奴と戦うことが決まってしまった……あれ?そういやおかしいぞ


一つ気がついた。各クラス20名で振り分けられている、ならペアを組もうと思うなら余りなど絶対に出ないはずだ。


俺はクラスの人数を数えると19人しかいなかった。あと1人はどこに行ったんだ?


そう思っていると教室のドアが開いた。



「もう始まっていたんですの?」



この声は…



「遅いぞ!何をしていたんだ!」


「あら先生、わたくしにそんな口を利いてよろしくて?父上に言って貴方をクビにしてもいいんですのよ」



遅れてきたグロリアをゴットハルトが咎めるも、貴族という立場を利用して脅迫するような発言をした。



「なんだと!たかだか貴族ごときに…」


「ゴットハルト先生!落ち着いてください」


「ですがエマ先生…」


「もういいですわ、こんなつまらないのを相手にしても時間の無駄ですわ」



そう言ってグロリアはゆっくりと空いている席に着いた。



「…この後お前らには実戦訓練で使う剣を配る。刃は潰してあるから殺傷力はない、あとは好きにしろ」


「詳しい内容はこちらの紙に書かれていますので各自目を通しておいてください」



ゴットハルトは不服そうに言って教室を出て行った。その後に続いてエマも教室を出る。



その途端グロリアの取り巻き、もとい信者がグロリアの元へと駆け寄って行った。


アイツらも全員Aクラスか、魔法試験でしか見てないがあれだけ魔法が優秀なら当然か。


さて、ペア相手か。消去法で必然的にグロリアとあたるのだろう。これは弱った、貴族が相手じゃ本気でやろうものなら後が怖い。


どうするつもりか考えているとシャロンが話しかけてきた。



「ねえクーラスて誰とやるの?」


「んー、多分アイツとやることになるだろうな」



俺はグロリアの方へと視線を向ける。



「そっか、でもクーラスだったら絶対勝てるよ。アクリーナもそう思うでしょ?」


「っ!そ、そう…かな…」



アクリーナは一瞬でも体がビクッとなると俯いたままそう答えた。やはりまだ周囲の目に怯えているのだろう。


教師がいなくなった途端、周囲の注目は俺らの方へと向いていた。朱眼の忌子がどうだの、一緒にいる奴らがどうこう言っていた。聞いていて余り気分のいいものじゃない。


その時グロリアがこっちへ近づいて来た。




「貴方、不正入学するなんていいと思って?」


「っ!ち、違…」


「そんなわけありませんわ!私が貴方のような人外に負けるなんておかしいですわ!」



グロリアはバンと机を叩きアクリーナを睨みながらそう言った。アクリーナが否定しようとしても真っ向から決めつけ聞く耳を持たない。


確か入試の順位はアクリーナが3位でグロリア(コイツ)が4位だったな。



自分が格下と見ている相手に負けるなんて屈辱的だろうな、取り巻きも面白くなさそうな顔をしている。



「今すぐ不正入学したことを認めれば、憲兵に突き出さないで差し上げないであげますわよ」



不正入学すると警察沙汰か、いやこの場合は憲兵沙汰というべきか。



「っわ、私は…不正なんか……してない、貴方の、実力がないだけ…」



アクリーナは勇気を振り絞って強気に反論するも、声は震えていた。それに対してグロリアはキレて彼女に掴みかかった。



「私にその口の利き方はなんですの!?人外のくせに偉そうに!」


「痛い!」



グロリアはアクリーナの髪を掴み捲し立てた。


いくらなんでもやりすぎだ!俺が止めようと立ち上がろうとしたその時



「ちょっと、やりすぎよ!アクリーナが可哀想でしょ!」



先にシャロンが立ち上がりグロリアの手を払って大きめの声でそう言った。



「あら、貴方はさっきも人外(コイツ)といた同類じゃありませんこと?2人揃って気持ちの悪い…」


「い、いいよシャロン……私は大丈夫だから…」


「髪を引っ張られて大丈夫なわけないでしょ?」



シャロンはそう言ってアクリーナを心配するように引っ張られたところをさする。


コイツと面識あったのか、それにしてもシャロンにしては中々勇気のあることをするな。俺がいない間に何があったのか。



「アクリーナに、謝ってよ」


「はあ?」



途端にグロリアの表情が歪む。



「シ、シャロン……!」


「何で私が謝らなくてはなりませんの?平民ごときが偉そうに指図しないでくれませんこと?」



グロリアの迫力に押されシャロンは少し怯える様子をみせた。



「わ、悪いことしたら謝る。そんなこと……常識でしょ」


「はあ?」



グロリアの表情がますます怒りに歪んだ。すると視線がシャロンの左手の方へ向く。



「あら、平民にしては中々高価なものをお持ちですこと、この私を侮辱した慰謝料に貰って差し上げますわ」



グロリアはシャロンの左手を掴みながらそう言った。彼女の言っているのは王都に来る時、御守り代りに持たされたプラチナの指輪のことである。



「ダ、ダメッ!これは…」


「いいから、寄越しなさいと言ってるんですの!」



シャロンの手を乱暴に引っ張りながら無理やり指輪を外そうと手をかける。



「いい加減にしろ!」



俺は2人の間に割って入り、グロリアの腕を掴んでシャロンの手から引き剥がした。



「……何ですの?」


「さっきから黙って聞いてりゃ何様のつもりだ?」


「貴方には関係ないでしょう。さっさと手を離してくださる?」


「関係あるから言ってんだ」



俺は掴む力を強めてそう言った。



「ちょっと!気安くグロリア様に触れるな!」


「そうよ!」



グロリアの取り巻きが次々と集結しクーラスとグロリアを引き離す。



「大丈夫ですか?」


「お怪我はありませんか?」


「大丈夫ですわ。少し強めに掴まれた程度で怪我などするはずありませんもの」



取り巻きの何人かはグロリアの身を心配し、残りは俺へ怒りの眼差しを向けてくる。



「もしグロリア様に怪我させたらどうするつもりなんですか!」


「知ったことか」


「なっ!」


「貴族だかなんだか知らんがやっていいことと悪いことの区別もつかねえのか?」



俺は淡々と言い返すと取り巻きの1人が殴りかかってきた。



「あ、貴方ねえ!ぐえっ!」



咄嗟に俺は首を掴み、力を込める。



「やるか?俺は別にお前が死んでも構わないんだぞ」


「やめ……ぐ、ぐるじ……」



首を掴んだ手を外そうと、両手を使ってもがくもビクともしなかった。それもそのはず、クーラスは身体強化を使って絶対に外せないようにしているからだ。



「ちょ、クーラス!いくらなんでもやりすぎだよ!」


「……」



シャロンがそう言って、俺は黙って手を離す。途端にそいつはその場に崩れ落ちて咳き込んだ。



「うっ、ゲホゲホッ!う、よ、よぐも……」



キッと涙目になりながら俺を睨みつけてきた。いい表情だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ