20話 入学試験 座学
帰り際に鍛冶屋に寄って注文した剣を受け取り、宿へと戻った。俺らはさっそく空間収納から魔術の書を取り出した。
「さっきのお爺さんが言うにはそれを使った方がいいって言ってたけど大丈夫かな」
「これには基本魔法が全部載ってるみたいだし、魔法に関する問題が出るならこれで大丈夫じゃない?」
そう言って魔術の書を開いた。この本を手にして9年、読み込んで載っている魔法は全て使えるようにはなった。今更読み返さなくても大丈夫だとは思うが…
しばらくページをめくっているとシャロンが口を開いた。
「そういえばクーラス」
「なんだ」
「私達って普段無詠唱で魔法使ってるから詠唱の呪文、知らないよね」
たしかにそうだ、魔法を教わり始めた時から無詠唱で魔法を使い、魔力をコントロールしていた。そのため母シーナも特に詠唱を教えることもなかった。
「ああそうだ……!」
そこで俺は気がついた。魔法に関する問題が出るというなら詠唱も出るのではないのか、俺らは何の不思議もなく無詠唱で魔法を使っているが無詠唱で使えるのは一部の人だったはず、だとするなら一般的には詠唱が使われているだろう。
それならば試験には詠唱に関することも出ると考えるのが自然だ。この量の詠唱を今から暗記するのか……
考えるだけで気が重い、そう思いながら最初のページに戻る。
「ん?」
「どうしたの?」
詠唱に関する項目を見ると、詠唱が書かれているのは初級魔法の最初の項目のみで他の魔法や中級以上には載っていなかった。
そこで最初のページに目を通していると1番下にこう書かれていた。
『詠唱は魔法を発動させるための準備段階のようなもので、その後に使用者のイメージと術名を唱えれば発動する』
「これってどういうこと?」
「つまりはこれらの詠唱を言った後にファイアーボールやウィンドカッターと言えば発動するっめこと、要は詠唱に関してはこれだけだから他に覚えることはない」
「そっか、それなら余裕で間に合うね!」
あれから1週間後、俺らは入学試験を受けに学園に足を運んだ。正式名は『王立ルードルフ学園』、前世でいうところの高校みたいなところだ。周りを見ると俺らと大体同じくらいの年齢の人が多くいた。
受け付けに受験票を見せ、まずは座学の試験を受けるために教室へ向かう。
「えーっと、教室はこっちか」
「え、クーラスそっちなの…?」
俺が受ける教室は201、つまりは2階の教室なので階段で上へ行こうとした時シャロンから声をかけられた。
「ああそうだけど、もしかしてシャロンの教室って」
「うん、私、103だから…」
受験番号を見てみると、俺が121でシャロンは120、ちょうど教室が別れる番号だったらしい。
「そっか、じゃあまた午後の実技で」
「うん、お互い頑張ろ」
そう言って俺らはそれぞれの教室へと向かった。
自分の受ける教室に着き扉を開ける、黒板に書かれた番号に該当する、窓際の1番前の席へ向かい腰をかけた。
教室内には俺以外にすでに10人ほど来ており友人同士仲良く談笑している者もいれば真面目に本を読んでいる者もいた。
俺はこの1週間でシャロンと魔術の書を隅々まで読んだり互いに問題を出し合って、それが完璧になるまで行った。
適当に魔術の書を開いて時間を潰していると続々と受験者が集まってきた。そして座学試験が開始された。
試験時間は1時間、問題内容は主に選択問題で、詠唱とは何か、この魔法の属性は何かなど問われた。特に難しい問題もなく順調に解いていき、最後の問題に取り掛かろうと解答用紙を裏にし、問題に目をやるとそこにはこう書かれていた。
問. もし禁属性魔法が実在した場合、あなたはどんなことがしたいですか?自由に記述せよ。※なおこの問題は合否に関係ありません、なので空欄でも加点とします。
なんだこの問題は?空欄でも加点するのなら最初から出さなくていいのではないか、けどわざわざ出すってことは何か意味でもあるのだろうか。
チラリと辺りの様子を伺うとすでに解き終えている者もいたが、解答用紙は表になっている者が多い。やはり最後の問題は答えなくても加点になるから答える必要がないだろう。禁属性など実在しないと思っている者もいるのだろう。
けど俺は違う、禁属性を使える者がここにいる。残り時間もまだまだあるし、合否に関係ないというのなら文字通り自由に書かせてもらおう。
残り時間いっぱいまで俺はその問題に費やした。そして試験終了と同時にペンを置いた。解答用紙を試験官が回収し終えると教室にいた者は全員教室を出て、実技試験の行われる会場へと向かう。
ストックが切れてしまったので更新頻度が下がります。ご了承ください。