2話 異世界転生
次に気がついた時、俺は見知らぬ天井を見上げていた。
ああ、事故に遭って病院に運ばれたんだな、そう思っていると突然見知らぬ男が俺を覗き込んできた。その顔は何か可愛いものを見ているかのように表情が緩んでいた。
誰だ?そう思い俺は声を出そうとすると
「あーあう?」
その声はまるで赤ん坊のようで言葉になっていたなかった。
そして次の瞬間、俺を覗き込んでいた男は俺を抱き上げ、そして頬へと口づけした。やめろ、俺にそんな趣味はない!抵抗しようと手足を動かすもビクともしなかった。そんな様子を見て、男はさらに表情を緩ませ、また口付けをしようとした。
「あうあー!」
俺は必死になって抵抗し、声をあげた。同時に涙腺が緩んだのか、涙が出てきた。すると急に男は先ほどとは打って変わってオロオロしだした。
しばらく泣いているとドアが乱暴に開かれる音が聞こえた。どうやら誰かが俺の泣き声に気づいてくれたらしい。
「あなた!何をやってるの!」
「い、いや俺は…」
「せっかく寝付いたのに余計なことしないで!」
「ご、ごめんなさい…」
入ってきたのは黒い長髪の女性だった。会話から察するにどうやら俺は生まれ変わったらしい、となるとこの女性が母親で、茶髪の如何にも脳筋な体つきをしてる男が父親か
「ごめんねぇ〜パパが起こしちゃって大丈夫でちゅか〜?」
父から俺を取り上げ赤ちゃん言葉で話しかけてきた母は美しく、俺は思わず見とれてしまった。すると泣き止んだことに安心したのか母は子守唄を歌い、俺はその豊満な胸の上でゆっくりと眠りについた。
今の俺の名前はクーラス=ヴィルヘルム、しばらく生活しているうちにわかったことがある。
この世界には魔法が存在しているということだ。
「クーラス〜もうすぐご飯よ!」
「はーい」
母が俺を呼び、俺はそれに応えワクワクしながら走って向かった。なぜなら今日は俺の5歳の誕生日だからである。
「「「クーラス、誕生日おめでとう!」」」
「あ、ありがとう…」
こうやって誕生日を祝ってもらうなんて久しぶりだ。前世ではあの事件を起こして以来、俺は空気みたいな扱いだったからな。
「クーラス、今日でお前はいくつになったんだ?」
「えっと、5歳だよ」
父であるラルスの質問になるべく5歳児らしい口調で答えた。…5歳児らしくってどうするんだ?
「そうか、クーラスももう5歳になったのか。そういえばお隣のシャロンちゃんもこないだ5歳になったな」
シャロン=フレンツェン、隣に住んでいる俺の幼馴染だ。だが隣に住んでいるといってもそれなりに距離がある。彼女の父親と俺の父親はどうやら古くから仲の良い友人同士らしい。
「クーラス、明日からお前には剣を教えよう」
「剣?」
「ああお前は長男だからな、剣くらいできないとな」
剣か、悪くはないがせっかく魔法の世界に転生したのだし、魔法を使ってみたい。
「僕、魔法使ってみたい」
「魔法か、それなら母さんに教えてもらえ、俺は魔法なんてさっぱりだ」
「クーラス、あなた魔法を使ってみたいの?」
「うん、使いたい!」
「わかったわ、明日から早速始めましょう」
「わーい」
とりあえず子供っぽくはしゃいでみる。精神年齢が高校生のままだと少し恥ずかしい。