15話 出発の朝
「受験票と、剣に金貨、後は魔術の書…持っていくか……うん、忘れ物はなさそうだな」
荷物をまとめ、俺は玄関へと向かう。
この家とはしばらくお別れか、家族にもしばらくは会えなくなるな、そう思うと寂しくなるな。前世じゃ家族の誰からも相手にされなかったからな、家族に愛されるってこんな感じなんだな。
玄関を開けると、そこで両親やスヴェン、シャロンのお父さんが出迎えてくれた。少し先には馬車が待機していた。
「兄さん、頑張ってね!」
「ああ、お前も頑張れよ」
「クーラス、お前なら絶対に合格、いや首席で合格できるだろう。自信もって行ってこい!」
試験は2週間後に行われるらしい、王都までは1週間かかるからしばらく観光できそうだな。一体どんなところなのか楽しみだ。
「クーラス、これを持って行きなさい」
「これは?」
母シーナから小さな赤い宝石が埋め込まれた銀色の指輪を手渡された。宝石の名前はわからんが指輪の素材、もしかしてプラチナか?
「特に魔法は付与されてはないけどお守りとしてつけておきなさい」
「ありがとう、母さん」
指輪か、そういえば前世じゃつける位置によって意味が変わるんだったな、確かお守りの意味合いは……
俺は右手の小指にその指輪をつけた。埋め込まれた赤い宝石が輝いて綺麗だな。そんなことを考えていると俺はあることに気がついた。
「シャロンは?」
辺りを見渡してもシャロンの姿が見えなかった。
「クーラス君」
「はい」
「シャロンのこと、よろしく頼むぞ」
「え?」
どういうことだ?シャロンの姿が見えないのに彼女ことをよろしくって……まさか……
そう思ってると馬車のドアが開き、そこからシャロンが降りてきた。
「クーラス」
「シャロン!?お前も、王都に行くのか?」
「うん、私も試験、受けるんだ」
シャロンも王都の学園に行くのか、よく父親が許してくれたな、いやこの人の場合また娘の我儘がどーたらとかでOKしたんだろう。
「え、卒業試験とかは…」
「クーラスのお母さんに、魔法見てもらった」
「シャロンちゃんの実力だったら間違いなく合格できると思うわ、それにクーラスも心配する必要はないわ」
確かに難しいとされる無詠唱をここまで簡単に扱っている以上、魔法の試験で落ちることはないはずだ。だが試験内容は魔法だけではないだろう。とりあえずその辺は後で確認するか。
「そろそろ時間だな」
「2人とも、気をつけて行ってらっしゃい」
「「行ってきます」」
俺らはそう言って先にシャロンが馬車に乗り込む、俺も続いて乗り込もうとした時
「あ、クーラスちょっと」
「何?母さん」
「これ、シャロンちゃんにも渡してくれるかしら」
母シーナはそう言って、先程と同じ指輪を渡してきた。
「わかった、それじゃあ行ってきます!」
改めてそう言って俺は馬車へと乗り込んだ。これからの生活にとてもワクワクする。一体どんなところなのか、どんな奴がいるのかとても楽しみだ。