14話 弟と一戦交える
「ここまで実力があるなんてな、現役の俺よりすごいんじゃないか?」
「そんなことないよ、父さんも十分強かったよ」
父ラルスの実力は、かなりのもので流石上位ランクだったといえるレベルだった。ラルスも身体強化を使っていれば負けていたかもしれなかった。
「父さんって魔法使えたっけ?」
スヴェンが今更すぎる質問をした。そういえばラルスが魔法を使ってるところを見たことがないな、この世界の人間なら誰でも魔法を使えるはずだろうにラルスは過去、自分は使えないといえるような発言をしていた。
「いや〜俺は…使えなくはないんだが……ちょっと
な…」
「どんな感じなの?」
「……」
父ラルスは黙り込んで顔を逸らした。あ、これ以上聞くのはやめた方がいいやつだ。
「それで、王都ってどんなところなの?」
俺は話題を変え、質問をした。ラルスが使える使えないとかはっきり言ってどうでもよく、これからのことが楽しみだった。
「ああその話をしなければな」
王都にある学園では魔法使いや剣士を育成し、卒業後は冒険者になる者が多い、その中でも優秀な者は魔法師団や騎士団から声がかかることもあるらしい。
「王都まではどのくらいかかるの?」
「馬車でだいたい1週間といったところか、もう明日出発するのを取っておいてあるから安心しろ」
もう取ってあるのかよ。試験の合否に関係なく俺を送り出すつもりだったのか、それはそれでありがたいが。
そんなことより明日で皆とはもうお別れ、か
前世じゃ家族でさえ気味悪がって誰も干渉しようとしてこなかったし、転生して良かった。本当みんなには感謝してもしきれない。
「ありがとう、俺を育ててくれて」
気づいたら無意識のうちに言葉が出ていた。
「な、なんだ急に。親として、子供を育てるのは——」
「ううん、これは俺の本心だよ。ありがとう」
そう言うと父ラルスはとっとと家の中へと入っていった。父親としての威厳を守るためか、または照れ隠しか。
「兄さん」
「ん、なんだ?」
「僕にも剣の稽古をつけてよ」
「ああいいぞ」
続けてスヴェンとも剣を交わした。剣の筋も悪くはない、流石は両親の鍛錬についてきてることはある。
「やぁ!」
「む!」
急に動きが速くなった。どうやら身体強化を使ってきたようだな、魔法の技術もかなり上達してる、これなら当主としてもやっていけるだろう。
「そら!」
「あっ!」
同様に俺も身体強化を使い、剣を弾いた。スヴェンの剣は手から離れ地面へと刺さった。
「やっぱり兄さんは強いね、全然敵わないや」
「そんなことはないぞ、お前もなかなか強かったし魔法の使い方も上手かったぞ」
「そ、そうかな?」
「よし、もう一度だ」
もちろん、一回だけでは稽古とは言わない。徹底的に、倒れるまでやってやる。
「に、兄さん…?」
「さあこい!」
昼過ぎまでスヴェンと剣を交わした後、いつものように魔法の鍛錬に変え、自分の魔法の再確認も兼ねてスヴェンと模擬戦形式で行った。
「『魔力よ、我が手に』!」
スヴェンの手から一筋の炎が現れ、一直線に向かってくる。魔力を上手くコントロールできているようだ、それにこないだよりも威力は上がっている。俺は素早くそれを回避する。
「やるな、たった数日でここまで上達するとはな」
「へへ、兄さん達みたいに僕も毎日寝る間も惜しんで練習してたんだ。『魔力よ』!」
今度はさっきよりも短い詠唱でウインドカッターを放ってくる。炎よりも速度がある分、避ける暇はないが。
「詠唱省略にも、随分慣れてきたみたいだな」
俺はそう喋りながら受け止める。風の刃は服に当たった瞬間、魔力を霧散して消えた。
「っ!魔法が…」
魔法が消されたのに驚いている様子だった。どうやらスヴェンはまだ付与魔法のことを知らないようだな。
「これには魔力霧散ていう魔法を付与してあるんだ。ま、近いうちに母さんから教わると思うぞ」
「す、すごい…」
「そんじゃ、次は俺から行くぞ!」
そう言い終わると同時に俺は指を鉄砲の形にし、スヴェンに向かって風の弾丸を撃ち出した。空気を固めて弾を発射する、某ネコ型ロボットの道具みたいに。
「うわっ!」
目に見えない弾を避けられるはずもなくスヴェンにはほとんど命中した。威力を大幅に下げてあまり硬く固めてないから怪我すらしないだろう。
「ビックリした、何も見えなかったよ…」
「空気の弾だからな、お前も練習すりゃできるようになるさ」
それにしてもシャロンは何をしてるんだ?いつもなら一緒に魔法の練習をしてるはずだがどうしたんだろう。