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異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第二章 スピカ王国編
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112話 日本語



「サクラが見えるのですか?」



そう言って現れた巫女が俺たちの方へ近寄ってくる。

 

 

「えっと……は、はい」



俺はそう返事をせざるを得なかった。だってどう見ても桜は咲いているようにしか見えないのだから。



「チヨか、ちょうど良かった。あたし達は今から神社に行くところだったんだが」


「ええ、話は聞こえておりました。神社は私がご案内致します」



チヨと呼ばれた巫女さんはそう言って神社の境内の方へ歩いて行った。



「えっと……」


「い、行こうか……」



ププがそれについて行き、俺達もそれに続く。


鳥居を潜って境内に入ると、雰囲気がガラリと変わった感じがした。


なんていうか、ここだけ空気がヒンヤリとしているような、まるで心霊スポットでよく聞く……



「っ!」


「どうしたの?」


「す、少し寒気が……」



怖い事を考えたせいか背筋がゾクリとした。



「こちらでございます」



チヨに案内されたのは神社の裏手で、そこには石碑のようなものが立っていた。



「これは?」


「こちらはこの千本神社の設立と同時に立てられたとされ、サウザン=リキューが残したものと言われています」



ここでもリキューの名前が出る。


神社を作るのに力を入れたとか言ってたし、そりゃそうか。


石碑にはこの神社を設立した年、何故建てたのか、神聖なものとして扱うものとするなど彫られていた。



「そしてこの神社には一つの言い伝えがあるのです」


「言い伝え?」


「はい。こちらのサクラが開花の時期に関係なく、見える者が現れた時、この世界はかつてない災厄に見舞われるであろうといったものです」



桜が見える者が現れた時に災厄が?



「サクラは昔から春にしか咲かねえ、だからそんな話はあり得ないと笑い飛ばしていたんだが……まさか本当の話だって事なのか?」



そう言ってププは俺を見る。



「おいクーラス。お前、本当にサクラが咲いているように見えるんだな?」


「は、はい」


「嘘じゃねえんだな?」


「はい……」


ププの顔が険しい。元ヤン怖え……


しばらく睨まれていたが、すぐに視線をチヨへと戻した。


もう一度、境内や周辺にある桜を見てみる。


……どう見ても、俺の目には満開の桜が綺麗に咲いているようにしか見えない。


皆の目にアレが見えないということが信じられないな。



「そしてもう一つ、こちらを見てもらえますか?」



チヨはそう言って懐から一つの紙を取り出した。



「それって、何ですか?」



シャロンが質問する。



「こちらは神社の中に掛けられている掛け軸の写しになります」



掛け軸の写し?それが一体何……



「……っ!」



チヨがそれを広げて見せてきた時、俺は思わず言葉を失ってしまった。


何故なら、そこにはこう書かれていた。



『この文字が読めるということは私と同じく日本……いや同じ世界から転移したか、転生したのだろう。おそらく、私が植えた桜も年中満開で見えていることだろう。そのように魔法をかけているからな。ともかくこの文字が読めるのならどうか聞いてほしい。私と同じようにこの世界に来たということはこの世界に危機が迫っているということだ。理由は不明だが、天使曰く他世界から異質なモノや魂が迷い込んでしまったことにより、世界の境界に穴が空いてしまったらしい。その穴から他世界の……』



と最後は気になるところで終わっていたが、ともかくそれらの文字は『日本語』で書かれていたのだ。



「……ラス、クーラス!」


「! あ、すまん。ボーッとしていた」


「クーラスさんと仰いましたね」



チヨが真剣な顔をして俺を見てそう言った。



「貴方は、この文字が読めるのですか?」


「う……」



これは、どう答えればいい?


読めると答えれば、理由も聞かれるだろう。


何故ならばそれは前世の世界でしか使われていない文字なのだから。


そうなれば転生者であることも明かす必要が出てくるだろう。



「読め……ます」



悩んだ挙句、俺はそう答えた。


その写しを見せられたときに明らかに動揺してしまったし、今もなお答えるのに戸惑ってしまったからだ。



「やはり……そうなのですね」


「言い伝えは、本当だったということか!?」



これはつまり、俺という存在のせいで世界が、滅びてしまうということなのか?



「クーラス!」


「シャ、シャロン……」



シャロンが後ろから抱きついてくる。



「クーラスのせいじゃないよ!クーラスがどうだったとしても、クーラスはクーラスだもん!」


「……そうね、クーラスのせいで世界が滅びるとか、そんな話は私信じないわ。だって、クーラスには助けられてばかりだから」


「そうだな。僕……俺もお前のおかげで救われたようなもんだしな」



皆が口々にそう言ってくれた。


その言葉でいくらか心が楽になった気がした。



「ああ違う違う。決してお前のせいというわけじゃない」


「言い伝えにはまだ続きがありまして、サクラが見える者は世界に訪れる災厄に対抗できる唯一の手段を持っているという記述があるのです」



つまり……言ってしまえば俺が世界を救う手段、ということなのか?



「俺が……?」


「言い伝えが本当であれば、ですが……」


「ここまで条件が揃っていて、あり得ないということはないと思うが……」



問題は俺がサクラが見えるのが本当なのか、それを信じるかどうかって話になる、のか?



「くっくっく、キサマが世界を救う英雄とな?とんだお笑い草なのじゃ」


「今のは、どなたの声ですか?」



チヨが首を傾げる。


くそ、こんなところで出てくるなよ……



「何の用だ?フィリア」



そう言うとフィリアが俺の影から現れる。



「さっきから聞いておったが、なるほどな。それでキサマはそんな強さを持っておったのか」


「おい……」


「禁属性なんぞ、そう簡単に使えるものではないのに」

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