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異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第二章 スピカ王国編
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110話 過去の転生者


女将に一通り宿を案内してもらった俺たちは、外で待機していたププに声をかけ改めて王都を案内してもらうことになった。



「あそこに見えるのが王城だ。どうだ、アルカイドと比べて随分と変わったデザインをしてるだろう?」



ププが指差した先には大きな城が建っているのが見えた。ここからかなり距離があるようだが、そうとは思えない存在感があった。


それもそうだ、この国の特徴からして予想はしていたが純和風の城だった。


大阪城と姫路城を足して二で割ったような感じがするな、あと屋根の上に金色の……シャチホコか?アレは。


本当に日本の文化が浸透してるんだなこの国は。やはり過去に俺以外にも転生者とかがいたのだろうか?


そんなことを考えていたら唐突にグウウとお腹が鳴った。



「あうう……」



シャロンが恥ずかしそうに縮こまる。


ああ、今のはシャロンだったのか。



「ふむ、そろそろお昼か。それならちょうどいいところがある」




ププがそう言って俺たちを案内したのは大通りに面した『千本甘味処』という店だった。


どんな店名だと思ったが中から漂ってくる甘い香りに刺激され、俺も小腹が空く。



「ここのスイーツは絶品でな。まあ一度食べてみるといい」



そう言って俺たちは中に入る。



「いらっしゃいま……あら、ププさん」


「おうアンコ。五人、今入れるか?」


「大丈夫ですよ。こちらにどうぞ〜」



のれんを潜った先で出迎えてくれたのは、振袖のついた若い和風メイドさんだった。確か大正浪漫とかいう衣装じゃなかったか、アレ?


和風といえば和風だが、江戸文化に大正って何だか文化がゴチャゴチャしてないか?



「ここで履き物を脱いで座ってください」



アンコとかいう和風メイドに指示された場所は膝までの高さのある御座席で、畳が敷き詰められておりテーブルの周りに四人分の座布団が置かれていた。



「靴を脱ぐってこと?」


「靴を脱いで座るなんて、珍しいね」


「何かしら、この敷物?」



その指示に各々が似たような感想を言う。俺は元々知っていたので特に珍しいとは思わなかったが、この世界の人間にとって外で靴を脱ぐことは珍しいようだ。


というか、よく見たら草履を履いている人もいるな。まあ流石にププは普通の靴だが、大体半々といったところだろうか?



「それじゃ何食べようか……!」


「どうしたの?」



俺はメニュー見て驚愕する。


まさか……こんなところで見つけるとは!!



「い、いや何でもない……。俺は、この『ハクマイ』というものを食べてみたいなぁ」



名前の響きからして間違いない。


これは、俺の前世と縁のあるあの食べ物だ!



「……なんで目をキラキラさせてるのか気になるけど、私もどれにしようか迷うからとりあえずそれでいいわ」


「飲み物とかも適当におすすめのやつにしてもらう?」


「そうだね」


「デザートは……まああとで頼めばいいか」


「かしこまりました〜」



アンコに注文を伝えて、運ばれてくるまでの間はププにこの後の予定について聞いてみる。



「ご飯を食べ終えたらまずはこの近くにあるところをいくつか案内しようと考えてはいるが、比較的に近いのは『千本神社』かな」


「千本神社?」



神社?今、神社と言ったか?


この世界にも神社、あるの?


いや、文化的に考えて教会みたいなの別名と言ったところか?


どのみち俺の想像する神社である可能性は高いだろう。



「ああ、過去にこの国に今の文化を広めたとされる人物が特に力を入れて建設をしたとされるところだ」



特に力を入れた……?



「サウザン=リキュー、ですよね」


「おうそうだ。流石はアンコ」



いつのまにかアンコがおぼんに飲み物をのせて戻ってきており、ププの言葉に同意する。



「と言っても、この国の人たちには常識なんですよね」


「はは、そうだな」


「サウザン……リキュー?」


「そうだ。そいつが今のスピカ王国の文化を浸透させ、今言った千本神社の建設に特に力を入れた人物だ」



俺はその名を聞いて思わず吹き出しそうになった。


サウザン=リキューって!


名前のセンスよ!


ぜってえ日本人だろ!


神社の建設に力を入れたって、巫女さん萌えなのかよ!


やっぱいんのかよ!転生者!



「その人って、他にどんなことをしてたんですか?」



やめろ、シャロン。俺の腹筋を壊す気か。



「そうだな。例えば今アンコが持ってきたこの『ニホンチャ』というのもリキューが伝えたとされてるな」


「ぶふぅ!」



思わず俺は吹き出してしまった。


日本茶!リキュー!


その二つのワードでもう限界だった。


もう確信した。そいつは日本人、疑いの余地なし。


だから名前のセンス!



「ど、どうしたの?」


「な、なんでもねえ……」



俺は口を押さえて、肩をプルプルさせながらそう答える。



「と、とりあえず一度飲んでみよう」



アンコがそれぞれの前に『ニホンチャ』を置いていく。


見た目、匂い、そしてコップ……この場合は湯呑みか、完全に『日本茶』であった。


全員が湯呑みを手に取り、お茶を口にすると俺以外の三人が思わず吹き出しそうになり、顔をしかめた。



「んむ!」


「うっ!ちょ、これ苦くない?」


「う、少し苦手な味だ……」


「まあ初めて飲んだらそうなるだろうな。リキューが何を目的としていたのかは知らないが、初めはなかなか受け入れられなかったらしい」



ププがそう説明する中、俺はズズズと日本茶を飲み干した。



「え……クーラス、平気なの?」


「よく、飲めるわね……」


「お、おい無理に飲んでないか?」



信じられないものを見るかのようにシャロンたちは俺を見る。



「あー、美味い。わびさびだなぁ」



俺はどこ吹く風で感想を言って、ほっこりしていた。なんかププが説明してたが聞いてなかったな。



「お?よく知ってるな、わびさびなんて言葉、この国の人間でもわりと知ってる奴はいないぞ」


「あ、いやぁ、その……ちょっと」



思わずお茶を濁す。日本茶だけにね。



「にしても、よく飲めたな。あたしも初めて飲んだときは『こんなの飲めるか!』と突き返したのに」



突き返したって……


ヤンキーの若気の至りというやつか?



「俺、普通に飲めますよ」


「いや、こんなに苦いの普通飲めないよ?」


「うんうん」



俺が普通に飲めると言うと他の人たちはあり得ないと言ったかのような反応を返す。


そういえばなんか苦いとか飲めないとか、言ってたような……



「クーラスのだけ別のだったとか?」


「じゃあ、私の飲んでみて」



シャロンが自分の湯呑みを俺に差し出してくる。


中にはまだお茶が残っており湯気も立っていた。



「あ、ああ。ズズ……」



俺はもう一度その苦くて飲めないとかいうお茶を口にする。


うん、先ほどと全く変わらない。


いたって普通のお茶だな。


俺は再びニホンチャを飲み干した。



「ぷは。流石にお腹が溜まってきたな」



お茶を二杯も飲んでご飯も食べてないのにタプタプしてきた。



「何も変わらんぞ?」


「「「ええ……」」」



三人が信じられないような目つきで俺を見る。


あー、そういえば日本のお茶って種類によっては苦味が強いのもあるしな。初めて飲む人にはキツいんだろう。


けどこれってそこまで苦い種類だったのか?


緑茶とかほうじ茶とか、色々あるけどそもそもこれってどの種類のやつなんだろう。


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