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異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第二章 スピカ王国編
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108話 チャラ男


スピカ王国に無事入国できた俺たちは、フォックス商会の商会長、キターヌに連れられ船で知り合った冒険者のサエモンと共に、とある場所へと向かっていた。


勘合は特に不審なところは見当たらず、入国する際にもう一つの勘合と照合したが無事に一致した。


見た目はかなり胡散臭い雰囲気をしているが、少なくともこのキターヌという商人は信用できる人物だろう。



「どうだい、この国は?」


「わぁ……」


「なんていうか……話に聞いてた通りの印象って感じよね」


「本当に別世界に来たような感じだよ」



俺以外の三人がサエモンの問いかけに各々の感想を述べる。



「クーラスはどう思う?」



シャロンが目をキラキラとさせて俺に聞いてくる。



「俺は……なんかタイムスリップしたというか……」


「え?」


「なんでもない」



俺はこのスピカ王国の街並みに対して、彼らとは全く別の印象を受けていた。


一言で言い表すならば『和風』、それも歴史の教科書で見たことのある江戸の城下町と言った街並みが続いており、行く人来る人、種族に関係なくそのほとんどが和服を着ていたり、腰に刀を差しているのだ。


流石にちょんまげの人はまだ見ていない。そもそもいないのではないだろうか。


それでも、俺には衝撃的な光景だった。何せ前世に所縁のある文化がこの国には根付いているのだから。


アルカイドでもハンバーガーとかジャンクフード系にも驚きはしたが、それとは比べものにならないくらいの衝撃だった。



「……ところで、どこに向かってるんだっけ?」


「キターヌさんの家、フォックス商会の本部だよ」


「ああ、そうだったな」


「あちらが私どもの本部、フォックス商会になります」



キターヌが指差した先には周囲より一際大きな建物が建っており、入り口には桜を彷彿させるような模様が描かれた垂れ幕が掛かっていた。


建物もやはり江戸の商家といったような印象だった。



「ギルドより大きそうだな」


「ささ、こちらへどうぞ」



俺たち一行は垂れ幕を潜り、中へと入った。



「キターヌ会長!ご無事で!」


「心配かけたんだなも」



やっぱキターヌの喋り方が気になる。せめてでっせと言って欲しいな。


そんなことは置いといて、建物の中に入ると中にいた人間が一斉にこちらを向き、そのうちの一人がキターヌに駆け寄る。


ベリーショートの金髪になんか虫っぽい変なピアス、身長も高く手の指全てに銀色のリングをしており、服装も第二ボタンまで開けたシャツにズボンにはチェーンみたいなのをつけている。いかにもチャラ男って外見だった。


チャラ男って概念あんのかね、この世界。



「いやー、船がミスターリヴァイアに襲われたと聞いた時は、マジ肝を冷やしましたよ」


「ワタシも死ぬかと思ったんだがね、彼がワタシ含め船の乗客を救ってくれた命の恩人たちなんだなも」


「これは九死に一生をゲットしましたねぇ!」



そう言ってキターヌは俺らの方を向いてチャラ男に説明する。


正確にはアレス以外だけどな。



「マジ助かりましたよ、会長がお陀仏してたら皆テンションだだ下がりでしたよ〜」


「はっはっは、そう簡単にくたばってたまるかい」



さっきから思ってたが、言葉遣いまでチャラいな。そんな軽くトップに対してお陀仏とか言うなんて、それなりに信用されてる人なのかな。



「ワタシは仕事が残っているのでね、彼らのことを奥へ案内して差し上げるんだなも」


「了解でーす」



閉じたピースを頭につけチャラ男はそう返事をする。なんていうか、こういうの前世でも見たことがあるな。



「どうも〜、俺はベルゼ=ブブ!この商会の副会長をしているぜ!シクヨロでーす」


「あ、ど、どうも……」



代表して俺が答えるが、このテンションについていけそうになかった。


って、待て。コイツ今、なんて名乗った?



ベルゼブブ。



確か前世じゃハエの王とされる悪魔だったはず。ゲームじゃ魔王だったりする存在だ。そんな奴が、どうしてこんなところに?


そもそも見た目は完全に人族って感じで、ハエ要素がどこにも見当たらない。よく見たらあの虫っぽい変なピアス、ハエなのか?



「お、後ろの可愛い子猫ちゃんたち、このあとお茶しない?」


「い、いえ結構です……」



シャロンもアクリーナもチャラ男もといハエ男から距離を取る。



「ははは、冗談冗談。婚約者がいるのに他の女の子に手を出したりなんかしないって」



そう言ってハエ男は左手のリングを俺たちに見せる。全部の指にリングが嵌ってるから判断つかねえよ。


こんなチャラ男に婚約者いるとか、相手はどんな物好きなんだろうか。



「まあでも、お茶くらいならセーフじゃ……ごぶぅぅ!!?」


「アウトに決まってんでしょうが!!」



ハエ男がそう続けたとき何者かの拳がハエ男の顎に炸裂して吹っ飛んでいく。


ドドォン!


男はそのまま壁に激突してめり込み、下半身だけがこちら側に出ている状態でピクピクしていた。


死んでないよな?



「ったく、隙あらば見境なく手を出すんだから……」



俺たちの目の前にはハエ男を殴り飛ばしたと思われる女性が立っていた。


見た目はハエ男と同じ金髪で、後ろでポニーテールにしてまとめており、身長も女性にしては高くハエ男と同じか上くらいだ。瞳の色も彼と同じく緋色をしていた。


似ているところはそれくらいで、雰囲気は随分とまともそうな感じがする。服装もキチンとしているし、左の薬指にはリングが嵌っていてこの人が婚約者なのかな。



「えっと……」



反応に困っていると女性はこちらへと見向き、頭を下げてきた。



「ウチの婚約者(バカ)が失礼したな。あたしはベルゼ=ププ、ここの代表取締役をしている者だ」



女性は丁寧にそう名乗った。



「は、はぁ」


「痛てて。全くもー、冗談のつもりなのに」


「アンタはそう言って何人の子に手を出した!!あたしは忘れてないからな!!」



ベルゼププと名乗った女性はハエ男に対してすごい剣幕で捲し立てた。



「この子らはあたしが案内するよ!あんたは会長と仕事してな!!」


「は、はぁいプーちゃん」


「その名で呼ぶな!!!」


「ヒィィ!」



ハエ男はそう一喝されると逃げるように奥へと引っ込んで行った。なんだったんだ一体。



「さて、騒がしくして申し訳ない。よく会長の命を救ってくれた、代表して礼を言う」


「あ、いえ当然のことをしたまでですから……」


「ここではなんだ。奥の部屋に案内しよう」



そう言ってププは頭を上げ先ほどハエ男もといブブが行った方とは別の通路へと俺たちを案内した。

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