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異常性癖が異世界転生した結果  作者: 冷精 紅鴉
第二章 スピカ王国編
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107話 狐の商人


様々な人からお礼を言われ、俺たちは甲板から去り一度客室へと戻った。


そういえばアレスのやつ大丈夫かな?

めっちゃ船が傾いたり揺れたりしてたけど……



コンコン


「アレスー、生きてるかー?」



しかしアレスから何も返事は返ってこなかった。



「おい、アレス?」



俺はドアを開けて中に入った。



「うわぁ……」


「ありゃあ……」



船室は先ほどの戦闘でグッチャグチャになっており、洗濯機でかき回されたのかと思えるくらいに散乱していた。



「ま、まあ掃除したり修復魔法をかければ片付くだろ」


「そ、そうね」



それよりもアレスの姿が見当たらなかった。船室に閉じこもってるわけじゃなかったのか?



『……クーラス、聞こえるか?』


『! アレス!お前、一体どこにいったんだよ』



その時アレスから《思念会話(テレパシー)》が飛んできた。



『……すまん、あまりにも船が揺れて……その、怖くて……今、アルカイド王国にいる』


『はぁ!?』


『本当にすまない。到着したら……いや、到着前に迎えにきてくれると助かる』



アレスのやつ、転移魔法で逃げやがった。


というか、よく考えたら俺たちもそうすれば無傷で済んだだろう。まあ、そうしてたら船の人たちは助かってなかっただろうし結果的に生きてるから良かったと思えばいいか……



『……旅行に行くのに迎えにきてとはこれいかに』


『本当にすまないと思ってる。けどこれ以上、船での移動は無理だ。さっきまでも、かなり無理をしていたからな……』



船が苦手で船の移動に同意したのはどうなんだ。まあでも、仲良い友達の前でそういうことは言いづらいだろう。


それにアレスだって旅行を楽しみたかったから無理をしていたのかもしれないし。



『……はぁ、わかったよ。着く前に迎えに行きゃいいんだな?』


『ああ、本当にすまない。船の旅は三人で楽しんでくれ』



そう言って俺は《思念会話(テレパシー)》を切った。



「……はぁ」



再びため息をして頭を抱える。



「どうしたの?」


「今のアレス?」



二人が不思議そうな表情でこちらを見る。



「ああ。アイツはアルカイドに転移で戻った」


「「ええっ!?」」



二人はさっきの俺と全く同じリアクションを取る。



「な、なんで!?」


「それはなーー」



俺はアレスは海が苦手ということ、さっきの戦いでもそれで出てこなかったこと、それでアルカイドに転移したこと、着く前に迎えに行くことを伝えた。



「そ、そうなんだ……」


「アレスって、そんな一面があったのね……。なんか意外だわ」


「そうか?」


「ええ、彼って普段から落ち着いてるでしょう?だから苦手ものなんてないように見えたわ」



アクリーナの言葉にシャロンも頷く。

ああ、二人は荒ぶれた方のアレスを見たことないのか。最初の依頼を受けたときに戦闘したが、それほど荒ぶってなかったしな。



「ま、まあ例のエルフの子に対しては結構、感情の起伏が激しいとは思ったけど……」


「普段の印象が、ね」



それには激しく同意する。

というか、それに関しては結局どうなったのかも気になるが、落ち込んだ様子ではない限り大丈夫なのだろう。



「どのみち船室から出てこなかったろうし、寝泊りする以外でアイツと会うことはなかっただろう」


「それはそれで、どうなのかしら?」


「船旅はまだ始まったばかりだ。アイツがいないのは少し寂しいが、楽しもうじゃないか」


「そういえば、そろそろお昼じゃない?」


「確かに、腹も減ってきたし、片付けたら食堂にでも行くか?」



そう言って船室を片付けると俺たちは再び船室から出て食堂へと向かった。




「……ねえ、なんだか注目されてない?」



食堂にいた冒険者や船員の視線が俺たちの方へと集まっており、そんな中でサエモンも交えて俺たちは食事をとっていた。 



「君たちは命の恩人だからね」


「俺らというより、ステラが活躍したんですけどね」


「クーラス君だっけ、君も中々活躍していたと思うよ」


「そうですかね?」


「あんな魔法を使える人はベテランの冒険者にも中々いないさ。あのままクラーケンに邪魔されなければリヴァイアサンを苦なく倒していたと俺は思うよ」



自分の力を過信してるわけじゃないが、確かにそうだったかもしれない。あの時は邪魔が入ったが少なくともどちらか一体だけなら倒せていただろう。


そんな感じで周囲から注目を受けながら食事をとっていると、一人の男が近づいてきた。


見た目は痩せ型、糸目でニコニコとしており胡散臭い雰囲気をしていた。パッと見、なんだかキツネそっくりだ。……人族だよな?



「いやはや、この度は我々の命を助けてくださりありがとうございました」


「はぁ」


「是非、乗客の皆様に代わってお礼をさせていただきたいのですが……」



ごまをするように手を合わせニコニコと近づいてきた男に、なんだか不信感を覚えたので俺は適当に流すことにした。



「いえ、別に大したことはしてないですよ」


「ところで、貴方は一体……」


「これは失礼いたしました。私、フォックス商会の商会長をしております、キターヌ=フォックスと申します」


「フォックス商会だって!?」



俺は思わず吹き出しそうになったが、その前にサエモンがその名前を聞いて驚いた。



「フォックス商会?」


「あ、ああ。スピカ王国で一番デカく、周辺国にもいくつもの支店を持つ商会だ」



まさかそんな大物から声をかけられるとは。つかフォックス商会って、見た目通りキツネのやってる商会か……なんだか余計に不信感しか覚えないぞ。



「ええ、そうなんだなも」



も?



「おっと、そうです。先ほども申し上げましたが、私共はあなた方に命を救われました。是非、そのお礼をさせてください」


「えっと……」



さっきは胡散臭くて不信感しかなかったから流そうとしたが、こんな大物の申し出を断るのもどうだろうか。


……でもキツネ商人ってロクなイメージがないんだよなぁ。


語尾に『でっせ』とかつけてニセモノを……



「いいじゃないか、素直に受けてやろうよ」


「そうですね。はい、お願いします」



サエモンの言葉にアクリーナが同意する。それに俺たちもうなずいた。



「では到着次第、皆様をフォックス商会の特別ゲストとしてご待遇させていただきます」


「ああその前に、アンタが本物のフォックス商会の長だという証拠はあるか?」



サエモンが立ち去ろうとするキツネ商人を呼び止める。


ああ、たまにこういうので詐欺に引っかかって酷い目に合うとかテンプレあるもんな。危ない危ない。



「おおっと、度々失礼いたしました。こちらが我々の商会に渡されている勘合になります」



そう言ってキツネ商人は文字が縦半分に分かれた札を取り出し、俺たちに手渡す。


勘合ね、確か歴史で習ったな。



「こちらをあなた方に預けます。到着して照合してもらえば信用できるかと思います」



そう言ってキツネ商人は立ち去って行った。雰囲気はとても胡散臭いが、商会長なんて大物と知り合えたのは幸運だったな。



「だそうだが、これは君たちが預かってもらえないだろうか」


「いいんですか?」


「ああ、俺はスピカに着いてもまたすぐ別の国に出立するし、君たちが持っているべきだよ」


「わかりました。それなら……」



俺はサエモンから勘合を受け取って空間収納へと仕舞い込んだ。





「見えてきたね」


「アレが、スピカ王国……」



それから三日後、出発して早々トラブルに見舞われたがその後は何事もなく平和な船旅が続き、無事に目的地へ向かって行った。



「んじゃ、俺は一度アレスを迎えに行ってくる」


「荷物はまとめておくわ」


「ああ、助かるよ」



そう言って俺はアルカイド王国へ転移して、アレスを連れて船室へ戻った。



「う、ううまだ船に乗っているのか……」


「大丈夫か?」


「なんとかな……」


「……というか今更だけどさ」


「な、なんだ?」


「お前のその体、仮のものなんだからその体に支障あっても本体は死なないんじゃないのか?」


「いや、それでこの体が完全に再生不能になったら再び起きて作り直さないといけないんだ。それで魔力病が進行したらマズい」


「そうなのか。それはすまん」


「いや……こちらこそ、すまない」



ボォォォ!


その時、船の汽笛が鳴り響いた。ついに到着か。スピカ王国、一体どんな国なのだろうか。

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