第15話/俺の部室で終戦会議
「なんでこんな事になるんですかぁー?」
俺好みの金髪の青い目をした妖精さんのミミィが、首を傾げ、キラキラした瞳で訴えている。
そんなことぁ、こっちが聞きたい。
戦いは終わった。
未曾有の一大星間大戦は、終結した。
そう。
戦争が終われば、その戦後処理をする終結会議が必要だろう。
光栄な事なのか、その戦後処理終結会議は、我らが「ロボコン部」の部室で行われた。
ふだん、俺一人で使っている、使われなくなった教室の半分をその他モロモロの機材の群れが占めているロボコン部の部室は、関係者一同が集結してエライ狭い事になっている。
中央に、金髪の青い目をした妖精さんたちの集団。
それを円卓の会議よろしく、俺、不良番長、スケバン、宇宙刑事トカマレグ、ヘイハチが円状に囲む。ハナコさんはおっきいので、天井に張り付いてもらった。
「私たち、何か悪い事でもしたんですかー?」
青い目をうるうるさせて、ミミィが全員に問いかける。
「と言う事は。」
俺が口を開いた。
まるで俺が戦後処理集結会議の議長のような役割で問いただした。
だって、そうじゃん。
俺は、ロボコン部の部長だし。
ここ、ロボコン部の部室だし。
まあ、ロボコン部、部員一人だけど。
「だってー、私たち、かよわい乙女でしょー。自分たちでは到底生きて行けないんですー。ですからー、いろいろな惑星にいって、その星に住んでいらっしゃる原住民の方々に奴隷になっていただいて、私たちに奉仕するって事、いけないんですかー?」
いけない。
それは、いけない。
ちょっとだけ、美女の奴隷になってみたいと思う事はあるが、
それは、いけない。
「つーか、それ侵略だろ? ありえねーよ、普通。」
そう突っ込みを入れたのはスケバンのマリコだ。
スケバンさんは、なぜか女子テニスの衣装を着ている。
それ自体がありえないのだが、謎の空中オートバイ兵器から出てきた時は、すっぽんぽんだったので、いたし方ない。
なぜ、女子テニスの衣装か、だって?
それは聞かない約束だ。
まあ、コスプレしたスケバンのマリコ先輩は少し色っぽい。
それ以前に、すっぽんぽんの姿で、俺たちの目の前に出現したスケバンのマリコ先輩は、エロっぽかったが。
「おんどろいたぜー! ミミィ、そう言う事だったのかーっ!」
これ以上ない、と言う程に目をまんまるに、口をとがらせて不良番長は驚きの声を上げた。
そりゃ、そうだ。
不良番長が好きになった金髪青い目の妖精さんのミミィは、実は侵略者だったわけだ。
て言うか、軍曹か、お前は。
「とにかく、これにて一件落着だ。」
宇宙刑事トカマレグが口を開いた。
「この僻地で辺境な惑星の原住民の諸君のご協力に感謝する。」
そう言って、宇宙刑事トカマレグとヘイハチは、俺たちに向かって敬礼した。
変態天使の羽根金属ボールのヘイハチなんか、ふわふわと空中に浮きながら、右手の小さな羽根をくの字に曲げて敬礼してる。
僻地で辺境な惑星?
まあそりゃ、そうだ。俺たちが住む地域は田舎。
東北湘南長崎高等学校って言う名前自体がまぎわらしい。
湘南で長崎って名前だから、よく人にまちがわられる。
俺の住むこの地域に、海もなければ、出島もない。
「全ユニバーサル・コンセンサス・フィールド標準時二丸三七号九分、逃亡宇宙極悪犯罪人二一MM三九二号、他星系侵略容疑の現行犯で、逮捕する。」
しゅわしゅわしゅわー。
天井の壁に張り付いていたハナコさんが、まるで夏祭りの定番である綿菓子のようにちっちゃくなっていく。
ほろほろほろー。
俺好みのキレイな金髪と青い目をした妖精のミミィとそのお仲間さんが、背中の羽根をパタパタさせるのをやめて、教室の床に落ちて行く。
ヘイハチが、パカッと「口を開け」中から巨大な電磁オリをスチャッと取り出している。
変態天使の羽根金属ボールは、まさに名前の通り変態だ。
お前のその身体、「口を開けて」まっぷたつになったんだ。
それよりも、お前自身の身体よりデカイ電磁オリ、どうやって出したんだ?
これまで、どうやってしまってたんだ? 四次元ポケットか、お前の口は。
大人しく電磁オリの中に収容される、俺好みの青い妖精さんたちご一行と、綿あめのように小さくなってしまった、スライムお化けのハナコさん。
なんだか、かわいそうになっちゃった。
「....いっちゃうのか?」
俺たちの気持ちをすかさず代弁したのは、テニス部のコスチュームがまぶしいスケバンのマリコ先輩であった。
ちょっと、色っぽいなあ。スカートのすきまから、みえてるぞ。
スケバンのマリコ先輩にしては、めずらしく、しおらしく、うるうるした瞳で、ワイルドでゴージャスでキラキラの宇宙刑事トカマレグに訴えかける。
「......仕方ない。これが俺たちの任務だ。」
見つめあう瞳と瞳。
何かドラマチックだなあ。
ドラマのラストシーンのようだ。
何万光年も離れた出会いの別れの時の、瞳と瞳が見つめあう時間はとても長い。
そうこうしてたら、不良番長と俺好みの金髪青い目妖精のミミィも、じーっと見つめあっている。それ、本当は俺の担当だったんだけどなあ。
俺は、ふと視線を感じた。
その視線は、どこから来ているのかは知っていた。
だが、俺はその熱烈愛情視線光線を無視して、口を開いた。
「で、彼女たち、この後どうなっちゃうわけ?」
一応、議長だから。
まだ俺は、戦後処理終結会議の議長のはずだから、みんなの空気を察して聞いてみた。
「裁判だな。裁判。」
ま、そりゃ、そうだろう。
宇宙刑事トカマレグが所属する、長ったらしい名前の銀河連邦は、民主主義だろう、きっと。
絶叫極悪極ワル宇宙帝王の独裁なんかじゃないはずだから、まずは裁判だろう。少なくとも俺は、社会科の授業でそう学んできた。
「裁判員はいないのか?」
へっ? 番長、今何て言った?
「その、これから君たちの本部に戻って行われるはずの、彼女たちの裁判に裁判員制度はないのか?」
番長の口から、驚くべき単語が出てきて、俺は驚いた。
ちゃんと勉強、してたんだー。
「ある。一応民主主義だから、裁判は公平に行われるために善意による、有志による裁判員制度がちゃんとある。」
宇宙刑事トカマレグの言葉に、不良番長はすかさず口を開いた。
「俺、その裁判の裁判員になる!」
「へっ?」
「えっ?」
「えっ?」
「はっ?」
「!」
みんな驚いた。
そこにいた関係者一同は驚きの声を上げた。




