第13話/俺のマシンにナニをする~!
「俺の、俺の女になにをするーっ!」
マリコが乗る、とっても長ったらしい名前の宇宙軍の戦闘ポッドが攻撃を受けている。
俺が(ちょっとだけ)好きになった、俺が(ほんの少し)感情移入が出来はじめたマリコが合体装着している戦闘ポッドが、へんぴで辺境の僻地のこの惑星の、野蛮で素朴でファッションがダサイ原住民のこん棒兵器でボコボコに攻撃を受けている。
俺は、許さない!
とっても長ったらしい名前の宇宙軍のエリート・アナライザーたるヘイハチ・六二三八・伊伍号の俺が許さない!
俺の仲間のトカマレグの容態も心配にはなるが、今はそれどころじゃない!
俺はやっぱり、男より女の方が気にかかる。
でしょ?
俺、間違ってないでしょ?
俺は、猛アタックをかけた。
野蛮で未熟でダサくて身長の低い、変なヘルメットをかぶった原住民の身体めがけ、猛アタックをかけた。
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痛い!
痛いよ!
痛いじゃないか!
何だよ、このボール?
野球のボールとサッカーボールのちょうど間の、中間のサイズの大きさのボールが、俺に体当たりして来る。まるで天使のようなカワイイ羽根を左右につけた、金属ボールが猛スピードで俺に体当たりする。
左右につけられた小さな羽根を高速回転でバタバタさせて、ビジュアル的にはとってもかわいいんだが、体当たりされている俺にとっては、カワイイとか、キッチュとか言ってられない。
何度も何度も行ったり来たりして、スピードをつけて体当たりされたら痛いんだよね。
デッドボールを受けたバッターの気持ちが、今、とてもよくわかった。
でも、そんなのんきな事は言ってられない。
痛いよ!
デッドボールじゃん!
それ、レッドカードだぞ!
あっ、違う。
違うか。
レッドカードは、サッカーか。
俺は頭にきたので、謎の空中オートバイ兵器をボコボコにするのをやめて、俺に向かって来る天使の羽根をつけた、ちょっことだけカワイイ金属デッドボールが向かって来るのを待った。
金属バッドをかまえて、俺は待った。
甲子園球場で金属バットを構える気分って、こんな物なのかな?
もっとも、うちの東北湘南長崎高等学校の野球部は八人。
うちの学校は、いつも予選第一試合で敗退していたけれど。
ボールが飛んで来る。
変態金属ボールが飛んで来る。
俺は金属バットを構えた。
変態金属ボールをぶっ放すために、金属バットを構えた!
スカッ!
たしかにその音がした。
たしかにその音が俺の耳元を通過した。
豪快に、その音があたりに響き渡った。
俺は見事に空振りした。
物の見事に、金属バットを空振りした。
満身の力をこめ、全身の神経を集中して金属バットをスイングしたが、見事に俺の燃える気持ちもスイングしてしまった。
やっぱ、だめだったか。
俺、運動オンチだからなあ。
でも、試す事は重要だ。
トライする事は、重要だ、絶対に。
だが、そんな俺の気持ちを悟ってか、
悔しがる俺の気持ちをわかっててか、
変態天使の羽根金属ボールは、羽根を高速回転させ、
ケタケタ笑って、体勢を立て直した。
ケタケタ笑うなんて、失礼な奴だ。
だが、そんな事を言っている場合ではない。
変態天使の羽根金属ボールは、今、俺の身体を目がげ、燃えるような豪速球で、俺の身体目指してすっ飛んできた。
その玉は燃えてはいなかった。
本当に燃えていたら、俺の身体が火事になっちゃうじゃん。
絶体絶命のピンチ!
逃げ場がない、運動神経の鈍い、俺の最大級のピンチを、今、迎えていた。
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カコーン。
さわやかなスマッシュ音があたりに響く。
「俺のマブダチに何をするーっ!」
そう言って番長が助けに入ってきた。
そう叫びながら、テニスラケットを背中から取り出した不良番長が助けに入ってきてくれた。
テニスラケットを猛スイングした不良番長は、俺にせまりくる変態天使の羽根金属ボールを見事にスマッシュした。
ナイショ!
お前はリョーマか小次郎か?
その腕とそのタイミングだったら、ウインブルドンとかで、グランドスラムが達成できるぜ!
「あの変な火の玉ボーイは、この俺様にまかせろ!」
そう言って、俺の前で見事に番長が見栄を切った。
火の玉ボーイ。
なつかしい響き。
すでにもう、懐かしい単語。
そう言いながら、変態天使の羽根金属ボールが向かってくるだろう、廊下の先を見て、テニスラケットを構えた。
カッコイイ。
結構、カッコイイ。
お前、せっかくだったら、テニス部に入ったら?
テニス部、ギャル多いでしょ?
テニス部の部長のかおりさんなんて、素敵じゃない?
そうして、俺が愛する、青い目の金髪妖精のミミィを俺にわけてくれ。
何だったら、今ここでチャペック一号を身を呈して守ってくれているスライムお化けのハナコさんもついでにつけちゃうぞ!
まあいい。
とにかく仕事にもどろう。
俺は気を取り直して、俺自身の本来の仕事に戻る事にした。
それは結構こっけいな様子。
これは結構笑えるシークエンス。
俺は俺で、目の前でホバリングしながらチャペック一号に体当たりしている謎の空中オートバイ兵器を金属バットでボコボコにしている。
かたや、番長は番長で、まるで壁打ちテニスのように、振り子のように、すっ飛んで来る変態天使の羽根金属ボールをスマッシュしている。
見事な二人のコラボレーション。
俺と番長の共同作業。
とってもすてきな共同作業。
皆様、新郎新婦の初めての共同作業。
ケーキの入刀です!
結婚式の定番の余興、じゃないんだから。
もっとも、結婚式なんて俺の周りでやった奴は、ほとんどいない。
当たり前か。
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「あはんあはん、あはん。」
マリコの喘ぎ声が聞こえる。
「あへっあへっ、あへっ。」
ヘイハチの悶える声が聞こえる。
俺たちは機械的電磁的テレパシー通信装置で交信している。
口を開かなくても、頭で考えるだけで意思疎通ができる。
えっ、何だって?
イヤな事、変な事を考えたらどうするんだって?
知られたくない、自分の秘密が、テレパシーを通じてばれちゃうんじゃないかって?
大丈夫。
それは大丈夫。
パーソナル秘密私信カットフィルターがあるので、事前にその設定をしておけば、自分の良からぬ事、知られちゃったら恥ずかしい思考は、テレパシー伝送をカットできる。
すごいなあ。
なんて感心している場合じゃない。
俺のパートナーがボコボコになっている。
俺の個人的趣味で捕獲してパートナーになった女がずっこんばっこんの攻撃を受けている。
前後運動のスイングで、やられてる。
長い棒を前後に使って、犯されている。
許せん!
絶対に許せない!
あれは、俺のパートナーだ。
あれは、俺のモノだ!
この俺の、
全銀河、全宇宙にさんぜんと輝く(はずの)宇宙刑事トカマレグ様の物だ!
俺は戦闘装甲をマックス・フル稼働にした。
俺は武装兵器をマックス・フル解除にした。
俺は移動装置をマックス・フル設定にした。
俺は猛ダッシュした。
俺のパートナーと俺の女を助けるために。
俺は叫んだ。
遠く銀河の果てまで届くような、
「黒い星」ブラックホールまで届いた後に吸い込まれるような、俺の心の叫びを。
俺は叫んだ。
「俺の仲間に何をするーっ!」と。




