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俺たちの星間大戦  作者: 鳥海秋生
10/16

第10話/いざいざ! 決戦の火ぶたは今、上がる……のか?

チャペック一号は戦闘用ロボットではない。

そもそもは全国ロボコン選手権東北地区予選に出場するために作られている。

しかも、完成していたわけではない。

八割方出来上がっていただけで、試験運用もされていない。

いわば、予想外の敵襲による、緊急発動の実戦運用である。

よくあるアニメの第一話みたいだ。


もはや今のチャペック一号は、本来のチャペック一号ではない。

剣道の防具やら、アメフトのプロテクターやら、野球部のキャッチャーのフルセットやらでにぎにぎしく「武装」されている。

これでは「フルアーマータイプのチャペック一号」と呼んだ方が正解かもしれない。

あるいは「チャペック一号改」と呼ぶべきか。


設計図とは全然違うデザインになってしまった。

結構、自信があったデザインだったんだけどなあ。

今や別物。違わないものは、そう高さかな?

別物になってしまった「チャペック一号改」の高さは、約二メートルくらい。

そりゃそうだ。

学校の部室の中で作ってるんだ。

巨大なサイズで作れる分けない。

変形もしないし、合体もしない。

激しく変わったのは、名前と外観か。


「ふんふんふん、我ながらかっこ良くビルドアップ、できたかな?」


ハンカチを制服のポケットにしまいながら、不良番長が一人納得している。

その横で、俺好みの青い目の妖精さんが、ヒタヒタとホバリングしている。


「そうですね、長一郎様。どうもご苦労様。」


え?

何だって?

ちょ、長一郎、様?

様?


不良番長はさわやかそうに答える。

「そんな事ないよ、ミミィ。君たちのためさ。」


え?

何だって?

今、何て、

今何て言った?


俺の不愉快な突っ込みまるで無視するかのように、二人は仲良く微笑んでいる。


ねえ、ちょっと!

たしか俺たち、テレパシーかなんかでコミュニケーションしてませんでした?

俺の、僕の、私の、この気持ち、伝わってませんかっ?


必死に俺の思いの電波を、青い目の妖精さんに送ってみたものの、彼女からまったくと言っていい程、返事がなかった。


しくしくしく。

何か、俺バカみたい。


そう思い、一人で打ちひしがれていると、俺の背後で異様な空気を感じた。

不思議に思い、俺はふと自分の背中を振り向いた。

すると。

すると!


なんとアメーバー状のスライムお化けのハナコが、

なぜだか全身をピンク色に変色させて、俺の顔を見つめてモジモジしていた。


え?

待って。

ちょっと待って!

お願いだから、ちょっと待って!

おかしい。

何かがおかしい。


「ハナコはあなた様が好きなようですよ。」


俺好みの、カールした金髪がかわいい、青い目の妖精さんのミミィことミハレルフが、強烈な一言を俺の脳裏にテレパシーでぶち込んできた。


俺は!

俺のハートと心と脳の中は、オーバーヒート!

なんで、よりによって、青い目の妖精さんがそんな事、俺に言うの?

なんで、よりによって、スライムお化けのハナコが俺にコクるわけ?


これでは異性間交際ではなく異星間交際、いや、異生間交際になってしまう。

冗談じゃない!

もう最低!


そう思った、次の瞬間、異変が起きた。


他の妖精さんたちの集団が急にわらわらとそわそわし始めた。

なんだろう? そう思った瞬間、青白い閃光が走った。

すぐさま気がついて、その方向を見る。

自分たちのいるロボコン部の外、校舎の廊下で閃光が走った。

部室のドアの窓の外を、キラキラと光る青白い粒子が残光のように宙を舞っていた。

おそらく、彼女たちを追いかけている、極悪凶悪宇宙忍者モンハンの

レーザー光線による宣戦布告であろう。


「来たわ!」

「!」


俺好みの青い目の妖精さんが緊迫した空気で不良番長をじっと見つめる。

不良番長も、みけんにしわをよせながら、彼女に視線を送る。


そこは!

そこは、本来俺のシチュエーションだろ?

本当だったら、俺が彼女と目と目をみつめあわせる場面だったはずだ。


俺の背後でハナコがモジモジしていたが、俺は振り返らない事にした。


「来たぞ! ロリコン!」


不良番長がまるでヒーローのような面持ちで俺に話しかけた。


「わかってる! フルアーマーチャペック一号改を機動させる!」


俺はすかさずチャペック一号改の操縦機をセットアップした。


「え?」


不良番長が、その小さい目をまんまるにして俺に視線を投げ掛けてきた。


「何?」


俺は「今忙しいんだ」と言う表情で不良番長に視線を返した。


「ねえねえねえ、ひとつ聞いていい?」

「なんだよ? 今俺は忙しいんだよ。」


俺がセットアップしている箱形の操縦機から伸びている、だらだらと長いコード線を、不良番長が指さしてげげんそうに質問してきた。


「そのさ、お前が今いじってる操縦機の箱からさ、チャペック一号へと伸びている、ぶっとい線、何?」

「え? 言わなかったっけ? チャペック一号は有線操縦なんだよ。」

「うそっ、有線! 無線じゃないの?」

「しょうがないじゃん。予算なかったんだから。」

「き、き、切れたらどうするの?」

「知らないよ! その時は番長、お前が結びにいけよ。」

「うっそーっ!」


頭の横で驚きの声を上げる不良番長を無視して、俺はチャペック一号の操縦に専念した。


----------------------------------------


「でたぞ!」


イケメンロン毛の宇宙刑事の声が私の頭の中に響く。

私の目の中のスクリーンモニターに標的が映る。

マルチアングルで、標的の画像データがぐるぐると表示される。

あまりのデータ量で、私の頭がついていかない。

3D画像で表現された「それ」は、たしかに廊下で遭遇したアメーバー状のスライムお化け、そのものであった。

不良番長とマザコンの二人、どうしてるのかな?

イケメンロン毛の宇宙刑事が言っていたように、どこか遠くの安全な場所に転送してもらったのかな?

私のしおらしく友人思いの考えを、ヘイハチがすぐにかき消した。


「あれは、あれは何だ?」


ヘイハチのテクノ系サウンドボイスが、私の心を引き締めた。


私の目の中のモニターに写し出される、もうひとつの「物体」。

それは、とても長ったらしい名前の宇宙軍のデータにもない、新しい「物体」であった。


学校の廊下に広く展開されるスライムお化けの後方から、未知の人型兵器が出現した。

その未知の人型兵器は、スライムお化けの無数の触手によってキャリアのように運ばれていた。

ズドーン!

スライムお化けから離された、未知の人型兵器は、あたりに重低音を響かせて、その場に着地した。


私の目の中のモニターには「解析不能」を意味する文字が無数に点滅している。

私にはその宇宙言語を読む事はできなかったが、その点滅の早さがそれを意味している事がわかった。


「援軍か? あいつら、どこであの未知の新型戦闘兵器の補給を受けたんだ? 情報の網は展開していたはずなのに!」


ヘイハチの緊迫した空気が私の心に入ってくる。

私はそれがうっとおしいとは、もう思わなくなった。

私も、彼らと同じように作戦行動する一員となり、緊張した意識で新たな標的に目を奪われていた。


それはー。


二メートルぐらいの「人型」で、なにやらいろんな武装をしているようであった。

とても長ったらしい名前の宇宙軍のデータには、その兵器の情報はなかったようで、「解析不能」の文字を点滅させながら、3Dシミュレーション画像が武装を分析していた。


新たな未知の人型兵器の分析画像を目で追ってみる。

どこか見た事があるような物も一部確認できたが、3Dによる解析画像なので、正確でないし、また鮮明ではない。

ヘイハチの声が、私の分析を強制終了させた。


「トカマレグ! 新手だぞ? カバーした方がいいか?」


ヘイハチの緊迫した問いかけに、イケメンロン毛の宇宙刑事は淡々と答えた。


「大丈夫だ。標的はこちらでも充分把握している。」

「いけるのか、トカマレグ?」

「まかせろ、ヘイハチ。俺たちは幾千の戦いを乗り越えてきたではないか。」


そう、渋くセリフを決めたイケメンロン毛の宇宙刑事は、ゆっくりと戦闘態勢を整えた。


廊下の奥の片隅で、スライムお化けが拡大していく。

スライムお化けの身体の一部が、未知の人型兵器を守るように覆い尽くす。

同時にスライムお化けの身体の先端が、あたりの壁や床に溶け込み、廊下と一体化していく。


「くるぞ!」


ヘイハチの緊張した声が私の頭の中に響く。


「彼、大丈夫なのかな? 助けにいかなくていい?」


少しだけ不安になった私の気持ちを軽くいなすように、金属ボールのヘイハチが私に自慢げに諭した。


「トカマレグが装備している装甲武装は最新鋭の物だ。それにやつらの行動パターンや攻撃パターンは分析済みだ。」


そんな高ピーな金属ボールの態度に、私はちょっと不満に思えた。


「でもさ、あの変な人型の兵器って、あんたたちのデータにはないんでしょう? 分析しようにも、データバンク、ないんじゃない?」


テレパシーを通じて、ヘイハチがいらついているのを感じた。


「......わかってるよ、うるさいなあ! 今だから、ボクがこうして分析してるんじゃん!」


ヘイハチのその答え方は、とても人間的であった。

ヘイハチは金属ボールの形をしているので「機械」かと思っていたが、そうでもなかった。

普通なら、そんな態度を不愉快に思うのだが、今の私はそうは思わなかった。


「トカマレグ! ディフェンス・フィールドは最大か?」


あせりを感じるヘイハチの問いかけに、イケメンロン毛の宇宙刑事はクールで落ち着いた雰囲気で答えを返してきた。


「電磁防御システムは最大だ。磁気コーティングもマックスにしている。だから、」

「だから、大丈夫、だね。通常攻撃のビーム砲や光粒子熱源攻撃も無効化できるね。」


ヘイハチのあせった気持ちが落ち着いて、だんだんと安心していくのが伝わってくる。

意外とヘイハチは、単純でカワイイキャラじゃないか、そう思えてきた。

私は結構、そう言う熱血単純なやつ、好きだな。


だが、その後の事態は、私のとぼけた考えをすぐさま消し去る展開となった。


閃光が走る。

一瞬、自分の目の前が真っ白になった。

そりゃそうだ。モニタースクリーンは、私の目の中にある。網膜に表示された複数のマルチモニターが真っ白に輝いて、目が痛い。


痛い目を我慢してあわてて様子を見る。

未知の人型兵器から強力な発光弾が連続発射され、イケメンロン毛の宇宙刑事に直撃している。


「うわっ!」


連続発射の発光弾が直撃して、イケメンロン毛の宇宙刑事はダメージを受けたようだ。

あわてたのは、それまで余裕をかましていた金属ボールのヘイハチであった。


「トカマレグ! どうした、大丈夫か?」


私の目の中のモニターに、直撃をくらって煙をあげるイケメンロン毛の宇宙刑事が写し出される。


「だ、大丈夫?」


心配した私の問いかけを無視する形で、二人は驚きを隠せない様子で状況を分析していた。


「...こ、これは。」

「トカマレグ、大丈夫か? 装甲が燃えているぞ。」

「ああ、大丈夫だ。装甲が少しこげただけだ。」

「驚いた! 火薬だ! 火薬兵器だぞ、これは!」

「ああ、ヘイハチ。俺も少し驚いた。まさか今どき、原始的な火薬兵器を使用するとはな。」

「データバンクの解析によると、原始的な火薬兵器の使用は、ここ五百年、確認されていない。驚いた。こんな風なダメージを受けるのか。」

「勉強になったな、ヘイハチ。リストに入れとけよ。.....来るぞ! 第二波だ!」

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