俺の正体は
冬童話2017に出すのはこれで三作目です。精神年齢大人向け童話になりました。
主人公の名前は全て同じなので
作品提出ID 327、347
も興味があれば見てやってください。
俺は冬で冷えている季節の塔の中で、金になりそうな物を片っ端から袋に入れた。
ここには季節を司るという女王…今は冬だから冬の女王…が一人しか居ない。つまり、その女王にさえ会わなければ物を盗み放題というわけだ。
だが、一つの部屋だけで袋はいっぱいになってしまった。
もう十分だな。
俺はそう思って袋を担ぎ、部屋の外に出た。
きっと一つの部屋の装飾品が盗まれたって、すぐに気づく者など居ないだろう。女王もいつも部屋の中に目を配るわけはないだろうし、季節の女王以外はこの塔には入らない。
そう、気づいた時には手遅れ…。いや、上手くいけば何度も使える手だ。
俺は頭の中でこの袋の中の物がどれほどの値段になるかと計算しながら歩いた。
すると、風が通り抜けた。チラチラと雪も通り抜ける。
最初は何とも思わなかったが、おかしいことに気づいた。
風ならまだしも、なぜ窓もない廊下に雪が…。
俺が振り向くと、そこには無表情の女が立っていた。年は二十代半ばだろうか、その後ろからは雪が舞い散り俺の方向へとゆっくり雪が流れてくる。
無表情ながらに怒っているようなものは気配で分かる。それにここの塔にいる人間は一人しか居ない。
「冬の…女王」
プラチナブロンドの髪にアーモンド型の目の形、薄い水色の目に寒々しい色合いの淡い青のドレスを着た冬の女王。
俺の顔を見た冬の女王は目を見開いて驚いたような気がしたが、すぐに無表情になって口を開いた。
「何をしているの」
真冬の寒さ並みの冷たい声だ。
「お、俺は…」
言い逃れしようにも、ここに入るのは季節の女王だけ。つまりどう言い訳をしようが俺は勝手に入った侵入者。
それが分かっている表情で、冬の女王は俺を見つめてくる。
どこかで見たような目だ。
何か思い出しそうな目だが、俺はひとまず言い逃れを諦めて女王に向き直った。
「そうさ、俺は泥棒だよ」
と言いながら、冬の女王との距離をはかる。顔を見られたんだ、どうにかしなければならない。押さえつけて…いや、この腰に下げてあるナイフで一思いに…
俺がナイフに手を伸ばすと、何かが飛んできて俺の手が弾かれた。
「いってぇ…」
俺が膝をついて手を押さえると、続けて何かが飛んできてナイフが腰から弾き飛ばされ、更に何かが飛んできてナイフを叩き割った。信じられないという顔でその飛んできた物の正体を見ると、氷だ。
顔を上げると、冬の女王の周りには何個もの氷の塊が回転し、どんどんと大きくなりながら浮いている。
鉄のナイフを叩き割る強さだ。あれだけの氷の塊が頭に当たったら…。俺はゾッとして手を押さえながら後ずさりをした。
「わ、悪かった…、物は返す、何も盗らないで返す、もう二度と来ない、だから命だけは…」
俺はみっともなく命乞いをした。冬の女王は黙って俺を見ていたが、女王の周りに浮いていた氷はその場にガラガラと落ちた。
「命は奪いません」
その一言の後に女王は黙り込んだ。そのまま何も言わないのでこれは見逃すという事か、と思って俺は立ち上がって逃げようとすると、俺の行く手に氷が飛んできて石畳に深々と突き刺さった。
俺は身を固めてゆっくりと冬の女王を見ると、女王は表情も変えずにこちらを見ている。
「ですが泥棒に入った者を黙って見送るのは女王として許されません」
頭からサッと血の気が引いた。
「俺を牢屋に送るつもりか」
「それがいいかもしれません。しかし…」
冬の女王は少し考えこんだ。
「しかし?」
「少しの間私の話し相手になるのなら、考えてもよろしい」
こいつは、何を考えている?国の女王が話し相手になるのなら泥棒である俺を見逃すと?金持ちの道楽か?俺への同情か?
「あなたに興味があるのです」
女王は俺の妙な表情を見て心の中を察知したのか、そういうと後ろを向いて歩き出した。
「ついて来なさい、お茶を用意してあげましょう」
***
「あなたはどうやってこの塔に入って来たのですか?」
毒が入っているんじゃないかと警戒しながら俺はお茶の匂いを嗅いでいたら、女王にそう聞かれた。
俺は口をつぐんだが、女王の周りに拳と同じ大きさの氷が出来上がりつつあるのを見て慌てて答えた。
「雪が高く積もっていたから、この高さなら二階の窓から侵入できそうだと思って…」
「そう」
まるで取り調べだ。
俺はお茶を飲まずに置いて、これからどうなるのかと顔を手で覆った。今は女王の気まぐれでこうやって部屋に招かれた客人のような扱いを受けているが、きっと飽きたら警察…いや、兵士に引き渡されて牢屋に入れられるんだ。
「どうして泥棒に入ろうと思ったのです?」
「だから、雪が積もってて…」
「雪が積もっていたから入ろうとしたのですか?最初から物を盗もうとしたんじゃなくて?」
女王の周りに浮かんでいる氷を見て、俺は顔を歪めながら答えた。
「…金に困ってた。きっと季節の塔には値段の高い物があると思った、そうしたらちょうどよく雪が高く積もっていたから中に侵入して物を盗もうとした。…これで満足かい、女王様」
「どうしてお金に困っていたの」
俺は更に顔を歪めた。
「どうしてもこうしても、そういう人間だっているんだよ。女王様にはお分かりにならないかもしれませんけどね」
俺はわざとらしく丁寧に言うと顔を背けた。
「質問に答えてないわ」
「金が無い奴にどうして金が無いのなんて質問がおかしいんだ、あんた一度だって金に困ったことがあるか?無いだろ、そんな奴にそんな質問される筋合いはない」
俺も頭に血が上って身を乗り出した。女王は少し驚いたように目を見開きして、
「そうですね、ごめんなさい」
と謝った。女王という立場の者が俺みたいな泥棒に謝ったことに面食らって、俺は黙って椅子に座り直した。
「その貧しい原因がこの国のせいだというのならある程度直せると思うのですが…」
多少なりとも悪いことを聞いたと思っているらしい。俺はテーブルに肘をついて頬杖をついた。
「心遣いはありがたいが…それは俺のせいだからどうしようもない」
「どのような所があなたのせいだというのです?」
俺はため息をついた。
「やり方がな、俺の生まれた所とこの国とのやり方が合わないんだ。ここは全部が手作業だろ?料理するにも火から起こさないといけないし、水を飲むにも井戸や川から汲まなけりゃいけない」
女王はどこかキョトンとした顔つきで俺を見た。
「それは普通の事ではありませんか」
「俺にしてみたら普通じゃないんだ、数百年も昔のやり方だ。この国は魔法なんてものはあるが機械なんてものは一つもない、俺が元々やってた自動車整備の仕事だってここじゃなんの役にも立たない、なんせここは自動車じゃなくて最新式の馬車が走ってるんだもんな」
俺は手を振りながら椅子にもたれかかる。
女王はいよいよ変な人物を見る目で俺を見つめて来た。
「あんた、おとぎ話でこことは違う国の話を聞いたことはないかい」
椅子にもたれかかったまま俺は女王に聞いた。女王は頷きながら口を開く。
「こことは違う国の話ですね。おとぎ話では若者が迷い込んだら見たことも無い物がたくさんあり、そして楽しい時間を過ごしてある日突然戻って来ましたが、両親は若いころの姿のままで、自分は両親より年を取っていたという…」
「俺はその国の者だ」
女王は顔を上げた。俺は薄ら笑いを浮かべながら身を乗り出した。
「まあ、俺からしてみたらここの国がおとぎ話の世界だけどな」
季節の力を司る女王が季節の塔に入ると季節が動く…それこそ俺が小さいころから聞いていたおとぎ話。もちろん、ただの話で本当の話だと信じる子供なんて居ない。
俺はここにきてしまった日、仕事が立て込んでいて仕事が終わったのは日も暮れた後だった。そして家に帰る途中、急に雪の原っぱに出た。
先ほどまで町中だった、しかも季節は春だったのにと俺は混乱しながらも遠くに見える明かりを目指して雪の原っぱを必死に抜け出し、その明かりの飲み屋があったので中に入ったが、どうにも周りの様子がおかしい。
どこを見ても中世時代のような服を着た人間ばかりで、ガラスではなく陶器や木のコップを持っている。それにカウンターで働いているのは絵本で見るような背の低い髭の生えた妖精で、注文を受ければ光に包まれた酒が注文した者へととどけられる。
外を見れば馬車が走っていくし、槍を持ち鎧を着た兵士が集団で町中を見回りしていた。
そうしているうちに
「冬の女王を季節の塔から出した者には国王から褒美が出るらしいぞ」
と口々に語るやつらの話を聞いて、俺はただの昔話と思っていた世界は本当にあって、そして自分はその世界に迷い込んだのだと理解した。
しかし不思議だがありがたいことにこちらの言葉が俺には理解できるし、文字も読める。
俺の聞いていたおとぎ話によれば、いつ戻れるのかも分からずにとにかく必死に働いていたら元に戻れたという話だ。(まあ若者が三年して偶然元の世界に戻ると自分の妻だと思った女が孫娘で、そこで百年もの月日が経ってると知った、という悲しい結末だったが)
だから俺は店主である背の低い髭面の妖精に相談して何とか一晩の宿と、そのお代がわりに働く事にした。
だが俺は機械を使わないやり方には慣れていないし、力仕事もからっきしだ。俺はまともに水汲みすらできないとのレッテルを張られ次の日には追い出された。
そうして至る所を回ったが、俺はすぐに役立たずと言われ放り出された。
住むところは無く、体は冷えるし腹も減る。それなら冬の女王を外に連れ出して国王から褒美を貰おうと思ったが、人の話を聞く限り入口から入ることすらかなわないという。
春の服一着しか持っていない俺にしてみたら、冬の寒空の下で入れるかも分からない所にじっと立つことは苦痛だ。
俺は外から悔しい思いで季節の塔を眺めていると、雪が高く積もり中に入れそうな窓を見つけた。それに凍った窓の隙間から見る限り豪華な物が見える。
もうこれ以上どうしようもないほど俺は生活に困っていたし、もう季節の塔から物を盗んで金に換えるしかない。
俺はそう思い立って窓から侵入したのだ。
「本当に別の国からやって来たのですか」
冬の女王はどこか戸惑いながら俺に聞き返す。そりゃそうだ。この世界でも俺が元々いた世界の事はおとぎ話の扱いで、本気で信じている奴なんて居ないだろう。
「頭がおかしいと思うか?」
「…いいえ、こちらの世界の者が別の世界に行ったという話は聞いたことはありますし…それに…」
その後は続けず、女王は戸惑った表情のまま俺の顔をジロジロと見てくる。
信じられない、と驚いている表情にも見えるが、不審者を見るような目つきでもある。
「そちらの世界では我々のような存在の者が居なくても季節が巡ると聞きますが…」
「ああ、そうだよ。勝手に時期になりゃ季節は巡る」
「もし季節が巡って来なかったらどうなるのですか?」
「そんな事にはならない。地球が太陽の周りを回る限り勝手に春、夏、秋、冬でまた春だ。少し季節が遅れたって、今年の天気はおかしかったね、で終わりさ」
「まあ」
間の抜けた女王の言葉に、思わず俺から笑いがもれた。
泥棒と女王であるが、どことなくお互いにそんな身分差など関係なく普通に会話している。
そしてふと気づいた。
「そういや、国の王が民に冬の女王を外に連れ出してくれとお触れを出すという事はよっぽど困ってるんじゃないか?あんたもどうしてまた塔の外に出ないんだ?」
女王は黙り込んで冷めつつあるお茶に目を落とす。
初対面の俺に聞かれて簡単に答えるわけないかと思って、椅子の背もたれに寄りかかった。
「夢を見るんです」
「夢?」
急に話しかけられて俺は元の位置へと体を起こした。
「まだ外に出るなという…夢。私のお婆様は元冬の女王であり、高名な占い師でした。そのお婆様が夢に出てきて、まだ塔の外に出るなと毎日…。私も外へでなければならない時期だと分かっています、ですが夢の事が気になって外に出られないんです」
オカルトか。心霊現象か。スピリチュアルか。
俺は少し呆れたが、しかしここはおとぎ話のような国なのだと思い返すとそういう事も普通にあるのかと思い直した。
「で、その死んだ婆さんはどうして外に出るなって言うんだ?」
口調であまり真剣に受け取っていない事が分かったのか、自分の祖母を婆さんと言われたせいなのか女王はこちらを少し睨んだが続けた。
「分からないのです。ただ外に出るなだけで…」
「じゃあ、夢の中で婆さんが外に出てもいいというサインを出さないとあんたは外に出ないって事か?」
「そういう、事になりますね」
と、俺はなんとなくある考えにたどり着いた。
「もしかしてそんな時に俺が来たから、こうやってもてなしてくれるのかい?」
「…そういう事に、なりますね」
「なるほど、女王自身も外に出なければと思っている。だが夢の事が気になって外に出られない。そんな時に俺がやって来たから何かしら婆さんが言っていた事と関係があるのではないかと思っている…」
女王は返事こそしないものの、俺が言った通りの考えらしいのは顔を見ればわかる。
「だが、見当違いだね。俺は別の国からやってきたってだけのただの男さ」
「その別の国からやってきたというのが関係しているのでは」
俺が顔を上げると、女王は次の言葉をどうつなげばいいのかという表情でこちらを見ている。
「女王様のお婆様が、見ず知らずの俺を待ってたとでも?」
俺がそういうと、女王は口を閉じて悩むように眉間にしわをよせた。
「あなたは、本当に別の国からやって来たのですよね?」
「ああそうさ。どこに住んでたか、通りからアパートメント名まで言ってやろうか?」
「いいえ、聞いても分からないと思うのでそれは結構です。ちなみに、あなたのお父様とお母さまは…」
「俺はみなし児でね。気づいた時には孤児院で生活していた。本当の両親は知らない」
女王の表情がまた崩れ始め、どこか戸惑っているような、動揺しているように見える。
「孤児院に居たのはいつからですか」
俺は呆れて言い返した。
「気づいたころって言ってるだろ、赤ん坊の頃の記憶なんてあるか」
「名前は誰につけられましたか」
「名前…?」
俺は髪の毛を撫でながら上を眺め、孤児院の院長が言っていた事を思い返す。
「確か赤ん坊の俺が一人で歩いているのを見つけた婆さんが通報して、警察が俺を保護して両親を探したんだ。…まあ結局見つからなかったが…。俺はそりゃあ質の良い生地の産着を着ていて、その産着に刺繍がしてあったからその名前で呼ばれてたんだ…名前は」
「エリーザ…ではありませんか?」
俺はギョッと驚いて女王を見返した。
「どうして…」
俺は自分の名前を言っていないはずだ。俺が戸惑っていると、女王は立ち上がって
「ああ、お婆様このことだったのですね!」
と神に祈るようにして天を仰いだ。そして女王はテーブルをひっくり返すかの勢いで俺の元へ駆け寄り、あろうことか俺を思いっきり抱きしめた。
「何を…」
俺は思わず女王を押し返したが、女王は泣きそうな顔で俺をまた抱きしめてくる。
そして女王は驚きの一言を言った。
「やはりあなたは私の息子だったのですね!エリーザ!」
***
「五年前の春の事です。私と主人、そして歩けるようになったばかりのあなたは城下町よりずっと向こうの野原を歩いていました。今はまだ雪だらけの原っぱでしょうが…」
俺は最初にここに来たのが雪原だったことを思い出す。
「すると、私と主人が強風で目を閉じたすきに…エリーザ、あなたの姿が消えていたのです。いくら探しても見つかりません。一瞬目をつぶっただけなので遠くに行っているわけもありません。家の者全員を使っても見つからず、私たちは占い師を頼りましたが、この国でエリーザの存在が確認できないと言われました」
女王は祈るように手を組んだ。
「あり得るとすれば、別の国に迷い込んでしまったのではないか、という事でした。しかし最後にこの国から別の国に紛れ込んでしまった話は五百年も昔の事で、現代でそのようなおとぎ話のような事があるかと思っていました」
この魔法もある中世のような時代で現代とは、と笑いがこぼれそうになるが、黙って俺は話を聞いた。
女王は顔を上げた。
「しかしあなたは別の世界から来たと言います。それに別の世界は時間の流れが速く、こちらで数年の間行方不明だった若者でも親より年を取って戻って来たと聞きます。やはりあなたは…」
俺は苦笑して頭を振りながら女王に言った。
「そりゃ、子供が居なくなって偶然に俺が別の国から来て同じ名前だからそう思うかもしれないが…」
「偶然ではありません」
女王はそういうと立ち上がって、棚の上に置いてある小さい絵を俺の前に置いた。俺はその絵を見て思わず目を見開き、その絵を持ち上げて見た。
「俺…?」
絵に描かれて微笑んでる男は俺だ。茶色く短い髪に長い眉…鼻の形も顎のラインも同じ。ただ、目は柔和な垂れ目で俺とは違う。
「私の主人…、あなたの父親です」
俺が顔を上げると女王と目が合った。ああ、最初に女王の目はどこかで見たことがあると思ったが、アーモンド型の目の形といい瞳の薄い水色といい、俺と同じだったんだ。
「最初にあなたの顔を見た時に主人かと驚きましたが、様子が違うのでもしかして、と思っていました。…どうですか、まだ信じてくれませんか」
俺は口を引き結んで黙り込んだ。信じたい気持ちはもちろんある。だが、時間の流れのせいとはいえ目の前の母親だと言う女王は俺より年下にしか見えず、素直に母親だとも思えない。
だが、この年齢になっても、俺は両親に会いたかった。
「…か、母さん」
俺が遠慮がちにそういうと、年下の母親はとたんに泣きだして俺を抱きしめた。
***
後日、俺は三つ年下の母親と一つ年上の父親と共に暮らし始めた。
数年前までヨチヨチ歩きだった赤ん坊が自分たちと同じ年齢になって戻って来るというのはそら恐ろしい物ではないかと俺は思ったのだが、この国の住人にとっては成長していようがどうしようが無事に戻ってきたらハッピーエンド、ということらしい。
父親も俺の成長ぶりには驚いていたが、十年も待たずに息子と酒が飲めるなんて、とすぐさま質のいい酒を持ってきて、そして次の月にはパーティーを開くほどの喜びようだった。
そのパーティーにはこの国の国王も招かれていて、国王はぜひ自分の相談役になって欲しいと俺に言ってきた。
そんなの無理だと俺は断ったが、俺が元々過ごした国は時間が進むのも早いが文明の進みも早いという事で、ともかく話を聞いて参考にしたいとひたすらに頼まれ、俺も折れたのだ。
あと、俺の自動車整備士の腕がこの国の文明に少しの変化をもたらした。
暇な時間に馬車をいじって車体と車輪部分を大幅に改造してオープンカーのような馬車を作ったら、それが国内で流行してエリーザ式馬車と名付けられたのだ。
恐らく俺の名前は馬車と共にこの国の後世に伝えられることだろう。