表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/28

暴挙

兄は兄で何かを知った。

私と兄とは知っている事が違う。個人によって得意能力が違うからだ。

聖女な私は、ラウル様が実はアリリエルをとても大切に思っていてくれると分かる。大切に思っているからこそ、自分に縛る事が出来ない、と、思っている。

うーん、どうしてだろう。


とても聖女らしくない強引さで、私はラウル様の腕を掴んだまま、秘密の話ができるよう、兄に許可を貰って隣の部屋に移動した。

ラウル様は抵抗して私の手を振り払おうとしたが、「キャ」と酷く怯えたふりをするとハッとしてそれ以上ラウル様は身動きできなくなった。はいはい、ごめんなさいねー。


なんだか今は良いけど、これ、きちんと両想いになれた時に、前世の記憶あるままで大丈夫かなぁ、私。

前世、おばちゃんを経てお婆ちゃんの年齢まで生きたし、もう乙女って風じゃないんだよなぁ。

なんか今世に対して申し訳なくなるわ。


そんな事を思いながら、隣の部屋にラウル様を引っ張り込んで、間近で顔を見上げて訴えてみる。

「ラウル様。兄から聞くよりも、あなたから聞きたいのです。私に全て、お話いただけませんでしょうか」

ラウル様の表情は動かない。

ならこういう言い方で。

「私はあなたに拒否をされました。・・・それでもお慕いしております。けれど、私があなたを諦めることができるようにとお考えならば・・・なおさら、お話ください。お話の結果、私が傷ついてあなたから離れたとしても・・・すでにあなたは私を拒否なさっているではありませんか。同じです、どうか温情をくださいませ」

ラウル様の目が少しだけ伏せられた。少し、揺れる。よし、押せ聖女様!

「わ、私・・・私・・・せめて理由をお話くださいませ・・・」

両手を顔につけて、泣いてみる。

簡単だ。前世の意識が強かったら難しいけど、今世の意識を押し出せば、本気で泣ける。ボロボロ泣ける。どんだけラウル様の事が好きなのか。


まぁ、振り返って、そりゃ好きにもなるよね、なんて思う。

聖女様に近づく人は制限されている。

ただし、父や兄の友人や護衛といった人たちなら、父や兄を通して知り合う事になる。

ラウル様は初めから異色だった。最も、実際会ったのは、父が亡くなってからの事だから1年ほど前のことになるけれど。

初めから、強い何かを感じた。それは兄も同じだったようで、だから兄はすぐラウル様と仲良くなった。

ラウル様はどこか遠慮しながらも、しかし積極的に私たちに接触してきた。


・・・なぜだろう。

前世の記憶を持った私は、思い返した記憶に疑問を持った。

妙に強い何かを感じる人物。

妙に強い何かとは・・・血縁的な何か。宿命的な。出会った時、「これだ!」とハッとしたのを覚えている。それは、兄にとってもそうだった。


冷静になって振り返ると・・・ラウル様は、私たち兄妹に、何かの意図をもって近づいている。

だから、私を拒否しながらも、まだ兄のところにいる・・・のでは?

なにを狙っているのだろう。

兄は、さっき、それを魔力を使って全部読み取る事が出来たのだろうか。


それでも、私に対する愛情と拒否の姿勢もまた本物だと私には分かる。

・・・利用しようとして近づいた?

なのに、本当に好きになったから、不幸にするまいと、撥ね退けた・・・?


なんで?

理由を知らなくちゃ。

なんだかとても大切な理由が眠っているような気が、してしまうから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ