Eメール
まったく。人間なんざの相手なんかしてらんねーな。
生物のこいつらには、俺の話が通じない。
会話をするにも、わざわざ端末に送ってやらなきゃならねー。
喋れないわけじゃない。俺に足りないのは色覚だけで、他は何不自由のない身体。
背が低いのは不便だがね。
まぁニッポン人くらいの背丈だ。そこまで小さすぎるわけでもねー。
目の前のポリスメンは何かゴチャゴチャと言葉を並べているようだが、俺はそんなの聞いてねー。
頭には入ってる。俺の脳は優秀だからな。
おいおい、敬礼されたとこで俺は反応しねーぜ。
それに、俺は忙しいんだ。
17秒前に聞こえた声は、火薬とタイマー、その他諸々達の声だ。ここからは少し遠い。
コイツの車をいただく。
ボンネットに触れてやれば、すぐに直結で意思疎通だ。
ーー少しばかり走ってくれ。
コイツはエンジンを唸らせて返事をした。
ポリスメンがまた何かゴチャゴチャと喚いてる。
奴の端末に一件送ってやった。
俺が自分の口から送る言葉はいつも一つだけ。
「メールを見ろ」
パトカーは猛スピードで走り出す。ボンネットに腰掛けた俺を乗せたまま。
ポリスメンはもう遥か彼方。
今頃俺からのメールを見てるとこだろうな。
『ごくろうさん。パトカー借りるぜ』
ってな。