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「ほう、もう異能が発現しましたか。」
「はい」
学校が終わった後、特に部活にも入っていない俺は真っ先に以前の病院へ立ち寄った。
そして受付後三〇分程待ち、ようやく俺の診察が始まった。そうやら、この前と同じ先生らしい。
「この前渡しておいた異能抑制剤はちゃんと飲みましたか?」
「はい。今日の朝と昼に二回」
「そう。では夜も忘れぬよう、飲んでくださいね。では、これを」
そういって渡されたのは一枚の紙と一本のペン。どうやら、発現届のようだ。
俺はその紙の各欄に、名前や年齢などを記入していく。すると、俺の目にある二つの欄が留まった。
「あの、先生・・・」
俺はそれを指さしながら尋ねた。それは「異能名」と「異能詳細」という欄だった。
「ああ、これね。こっちにはあなたがつけた異能の名前を、こっちにはその異能のチカラについて書いてください」
「あの、それが―――」
医師は「?」という顔をする。
「自分の異能のチカラがよく分からないんです」
自分の異能が黒い球体を出せる能力ということは分かっているが、恐らくそれだけではないだろう。
「なるほどね・・・」
医師は呟くと、下を向いて少し何かを考え出した。そして、やがて立ち上がると、
「わかりました。では、その異能について調べるので私について来てください」
と言って診察室を出ていった。そして、そのまま病院の奥へ進み、エレベーターに乗った。
しかし、そのエレベーターは上でも下でもなく、横へ動いていった。
「あ、あの、これ何処へ向かっているんですか?」
俺は医師に尋ねた。
「ああ。この近くの山の上にある、異能専門の施設へ向かっている」
するとエレベーターが速度を緩め、止まったかと思うと、同じ方向のやや斜め上に上昇を始めた。
「そこには様々な施設があるから、きっとあなたの異能についてもわかると思います」
やがて、今度こそエレベーターは止まり、さっき入ってきたのと反対の扉が開いた。
医師を先頭にエレベーターを降りると、すぐそこにある受付で調査を依頼し、さらに奥へ進んでいった。
そして、やがてT字路を左に曲がり、その正面にある扉を入っていった。そこには、教室と同じくらいの部屋があった。
「ここで待っていなさい」
そういうと、医師はその部屋を出ていった。
医師に言われた通りしばらく待っていると、突如壁の一つが突如消えた―――いや、ガラスのような透明に変わった。その奥にはこれより少し小さめの部屋が見え、大きな機械がいくつもあり、医師と見たことのない白衣にメガネの二〇代くらいの男性が立っていた。
やがて医師がマイクの前に立つと口を開き、スピーカー越しに声が聞こえた。
「聞こえますか?神谷さん」
「はい、聞こえます」
「では、調査を始めますね」
それからその部屋の中で様々な指示をこなしていき、約二十分の調査が終わった。
俺は激しい空腹に襲われ、途中でコンビニで軽く買い食いしてから家へ帰った。
調査結果は分析に少し時間がかかるため、明日また来てくれとのことだった。明日は土曜日なので、午前中にでも行けるだろう。発現届はその時に改めて書くらしい。
気が付くと、もう時間は一〇時を回っていた。まだ寝なくても大丈夫だが、今日は調査で慣れない異能を何度も使ったので疲れてしまった。
今日はもう寝よう。体育も無かったし、風呂はもう明日の朝入ればいいだろう。
俺は制服を脱いで部屋に投げると、下着のまま布団の中に入っていった。