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騎士道プライド  作者: 椎名咲水
4章【留学編】
49/50

46.新しい時代

 ふと、気付いたように俺がシャロル・アストリッヒとなる前の事を思い出す。

 俺はあの頃の記憶はあれど、自分の名前を思い出せなくなっていた。

 レグナクロックスから投げられた「お前は何者だ」という問いに対し、「シャロル・アストリッヒだ」と答えたあの時から、俺は俺では無くなったのだろう。

 新しい自分として、今も尚生きている。


 だからと言って、俺が前世で得た知恵を全て失ったかといえばそうではない。

 俺が培ったゴミのような記憶はこの頭の中にある。

 そして、そのゴミの中にも輝く物がある。

 パチンコスロット…ギャンブルにのめって楽しんでいた俺でも、だ。


 頭の中には沢山の知識がある。

 それらの中には、戦いに役立つ助言だって存在する。

 ……敵の詳細を確認する。

 レベッカとの戦いは、スタジアムに立つ前から始まっているのだ。



「レベッカ、今日は良い戦いにしようか」

「……握手は必要ない。今は慣れ合う時じゃない」


 レベッカは俺達よりも多くの“状況作り”に特化した技を持っている。

 場を荒らすのが主体の俺と正反対で、レベッカは地盤を固めるのが得意だ。


「…トウヤとは会った?」

「会ったよ。まあ、面白い事を呟いて去って行っただけだけど…」

「……」



 冷静であれば、俺だってレベッカと同じ技量くらい引き出せるさ。

 王波を対処する方法、薙刀の中距離攻撃を上手く回避する方法、降魔術に対抗する方法、どれもこれも事前に考え、それを使えない時はどうするかも考えてある。


 まずは盾、この武闘大会では初めて装備する物だ。

 左手に盾を持ち右手に剣を持つ。剣は弾かれても新しい剣が引き抜けるように盾に一本短い剣が収納されている。

 草薙機関製のオリジナルだ。

 対してレベッカは薙刀一つと腰に付けた剣が一つである。

 準決勝から何も変わっていない…と思いきや、その鎧には薄らと遠目で見てようやく分かるロゴが印字されていた。

 草薙機関と対立しているクマイグループのマークである。



「シャロルが手を抜いたとしても…容赦はしないよ」

「レベッカ。―――言葉では謙り、備えが増しているのは進撃の兆しである、だよ」

「……誰の言葉?どういう意味?」

「そしてまた、ポーカーにおいて、手札が弱い時に強く振る舞うという誘惑は抗し難いものだ。その逆も然り。

 私の好きな偉人や、ゲームプレイヤーの言葉だよ。

 常に勝ちに拘るように気取る必要はないんだ。案外私は冷静で、弱さを見せてレベッカに油断させたいだけかもしれない。

 気遣いは無用だよ」

「…そう。でも、シャロルは元々、冷静じゃない」


 そう言って彼女は構える。

 だが左手は腰の剣に添えられていて、王波を使おうとしている事が一目瞭然だ。

 シャンドルに教えてもらった内容によれば王波の発動条件は剣に触れている事である、出せば優位になれる技だけあってレベッカ本人も自信があるようだった。

 だから俺も、その王波に対抗する構えを作る。



「…冷静じゃないって言う理由を教えてもらえる?」

「冷静っていうのは起こり得る可能性を見る能力。

 そういう能力は、シャロルの中にはない」

「じゃあ私は何が強いと思う?」

「……自由なところ、かな」

「なるほど」



 ――偉大なるペテン師と呼ばれたチェスプレイヤーがいる。

 防御を捨てて乱戦に持ち込み、天才的な手を繰り出して勝利を掴んだ人間だ。

 自由奔放で、自信家で、リスクのある手を好み、優れた反射神経を持っていた。

 真面目に忠実に頭の中の未来予想図の通りにプレイするのも悪くはない、だけど俺がそれで勝てるかと言ったら否だ。

 俺は大局を見通せても、正確な物は一手先、二手先程度しか読めない。

 頭脳派プレイヤーではなく、感覚派である事は間違いなかった。


 だがチェスプレイヤーの中には、「いつも一手先しか読まないが、いつもそれが正しい」なんて言えるくらい上手いプレイヤーもいる。

 しかもそれが過去の世界チャンピオンで、しかもチェスの研究をしないっていうんだから驚きだ。



「……ッ!」


 レベッカの前で俺はあの構えを取った。

 トウヤの得意とする魔王波の構え。

 ガヤガヤと鳴り止まない会場にクスクスと笑いながら、今の状況を楽しんでいる俺がいた。

 後先考えず、ぶつかるだけぶつかってみる。

 それで負けてなきゃその時もう一度戦い方を考え直せばいい。

 そんな考えが実行に移せるほど自分の実力に自信があるようだ。



“それでは、武闘大会決勝戦を始めます。―――始めッ!”


 鐘の音が鳴り響くと共にレベッカの体から見えない力が飛んでくるのを感じた。

 俺は魔王波のポーズを維持したまま全身に魔力を込める。

 ……出来ないはずがないんだ、俺はそう呟きながら父上と戦った時を思い出す。



 ブレイクストールは魔王波を放った。

 マキバに伝わる波動が使えると考えればおかしいと思うが、そもそも魔王波はどういう経緯で生まれたかを思い出せば使える理由は何となく分かるはずなのだ。


 王波とはイズミとマキバハヤテ…魔王と戦った勇者のみが使えた波動の技だが、魔王波はその仲間達が作った偽物の王波だ。

 正確には、イズミの仲間である剣士ホミカが作ったそうだ。

 そのネーミングは対立を意味するのか、それとも真似た王波に敬意を払ったのかは分かっていないようだが……問題はそこではない。

 勇者ではないただの剣士ホミカが、魔王波を編み出したというのがヒントである。



 この技は、勇者という特別な人間が使える技ではないのだ。

 コツがいるだけで誰しも扱う事ができる魔法だとしたら……。


「…魔王波ッ!」



 薄く光を帯びた魔力の層がレベッカの放った王波に衝突した。

 魔力と波動は掻き混ぜられて消滅し、勝負は振り出しへと戻る。

 驚くレベッカと薄らと笑う自分。

 そんな俺の表情に優越感があると感じたのか、レベッカの表情が険しいものに切り替わり、グッと脚を踏み込んだ。


 レベッカは腰の剣から手を放し、両手で薙刀を構えて接近してきた。

 気迫だけが先行し相手の影がぶれるように動く、この感覚を相手に与えるのにどれだけの力量が必要か分からない自分ではない。

 乱光包も俺を試す時に使った“静と動”。

 自身は動かさず、相手に殺気を感じさせる技術だ。

 それを応用することで、右に気を寄せて右からの攻撃だと相手に思わせつつ、左から攻撃を仕掛けたりすることもできる。


 今のレベッカはその技術を利用して体の気をずらしている。

 あと少しで攻撃が来そうだと俺の体は察しているが、視界の情報はそのタイミングよりも遅い攻撃を示唆している。

 視界を信じるか、感覚を信じるか。

 普通ならその二択を迫られる。



「顕現せよ、――『光神』。レグナクロックス!」


 だけど俺は普通か? 違うだろう。

 背後に現れたレグナクロックスがレベッカの飛ばした気を最初から無かったかの如く斬り飛ばし、俺はレベッカの薙刀の攻撃を盾でガードする。

 レベッカの体は突撃のスピードを維持して俺の右横を通り抜けようとした。

 左手に持つ盾と薙刀を合わせながら半回転すると、レベッカは突如薙刀で俺の盾を大きく持ち上げて弾き、隙のある腹に一発攻撃を仕掛けてきた。


 大丈夫だ、剣はある。

 その薙刀を剣で大きく振り払う。



「――王波」

「…ッ!?」

『引け!』


 レベッカの突然の攻撃に一瞬の焦りを覚えたが、王波は全てレグナクロックスが受け止めてくれた。

 しかも遠退こうとするレベッカの薙刀に一発払いを加え、レベッカの体を大きく吹き飛ばす。

 彼女は地面に薙刀を突き刺し、吹き飛ばされている状態から一秒も掛からずに復帰した。

 この身のこなしは流石と言わざるを得ない。

 その点はニューギストグリム・アカデミーの中でもトップと言ってもいいだろう。



「よう、レグナ」

『……嫌な火の気を感じるが、これは何だ』

「借り物だ!」


 左手を握り、左手に付けた赤い指輪を輝かせる。

 まるで焔を握ったかのように燃えだし、俺はそれをレベッカの方角に数発に分けて放ち始めた。

 レベッカはその場を動かずに薙刀でその炎弾を払い周囲に叩き落とす。

 レグナクロックスはその炎と指輪を見て嫌な気分になっている事だろう。



『…我の苦手な者を仲間とするか』

「どんな手を使ってでも、勝たなきゃいけない時がある」

『……そうか。ならば私も、遅れを取る訳にはいくまい』


 そう言ってレグナクロックスは俺の遠距離攻撃に加勢し始めた。

 剣を振り払い光の斬撃を射出する、レベッカのいる場所は既に火と土の煙でどうなっているのか全く見えないが、脱出した形跡が見えないので未だにその場に留まっている事は間違いない。


 レグナクロックスに攻撃を任せて俺は射撃を一時中断した。

 何か黒い物が宙を舞っている事に気が付いたからだ。

 こちらが展開したんだ、もうそろそろだろうとは思っていた。

 黒い物はレベッカのいる方へと集約されていき、周囲の煙すらも巻き込んで不自然な渦を構成し始める。

 魔力と空気の渦からソレはやってくる。



「降魔――『剣神』。“ハウプトシュタット”!」


 集約された闇は破裂してスタジアムの中に拡散された。

 薄暗闇に包まれたスタジアムの中、闇に馴染むように佇むレベッカと、闇を晴らすように輝きを放つレグナクロックス。

 ……ふう。

 ここからが、本当の試合の始まりか。



「精霊名、誰かの家名でそんな名前を聞いた事がある気がするよ」

「…………」


 レベッカの家名はエーデルハウプトシュタット。

 そんな長い家名には何かしらの意味があるとは思っていたが、恐らくこの精霊の名から取った物なのだろう。

 ……聖人の名前を付けるようなものだ、そう珍しい事じゃない。


「私は何も知らない。これはただの仕切り直し」

「……そうだね」



 知らないというよりは、興味がないといった感じだ。

 レベッカは今あるこの戦い以外の情報を頭の中に入れようとはしていない。

 迷いが無いのは素晴らしいな。

 見習わなければ。


 息を吐いて、さっきの感覚を思い出す。

 剣を突き出して右腕に魔力を込め、その魔力を剣に通して射出する。

 魔王波は魔力か波動を剣に通して射出する技なのだろう、構えは不必要で左手を添える必要も全くなかった。

 左手を添える理由は魔力の流動効率の向上が目的のようだ。

 元々魔力量だけが抜群にある俺なら…体から魔力が漏れ出してでも強引に剣へと魔力を流し込む事ができる。

 不必要なら削って、行動を速める。



 魔王波は魔法に近い技術を要したが魔法とは壁を置いた技術である。

 魔法は魔力を物質や現象に変え、可変させた何かで相手に攻撃をするが、魔王波は魔力そのものに攻撃力を持たせて射出する技術であるようだ。

 魔法の基本……魔力を物質や現象に変える理由は魔力効率と攻撃力増大であるため、魔王波の技術自体はあまりにシンプルだ。


 単に、魔力を物質に変換するというプロセスを外した魔法だ。

 詠唱魔法と無詠唱魔法は頭の中と口上によって術式計算をするのに対し、魔王波は術式計算という面倒な過程をすっ飛ばして口上のみで射出する。

 ……いや実際は口上すら必要ない。

 魔法を使用する時は魔法の計算と今後の戦術を同時に考えるのが難しかったのに対し、魔王波は戦術のみを考えて戦う事ができるのだ。

 魔力を扱うだけなら計算は必要とせず感覚だけで使える。

 魔力を物質に変えるというプロセスを介すると計算が必要になるようだ。



「…負けない!」


 剣神と呼ばれた闇の精霊は盾で魔王波を受け止め、レベッカはこちらに進んできた。

 俺は後ろにいるレグナの鎧を肘で叩いて合図し先行させる。


「負けんなよ」

『任せろ』



 向こうも闇の精霊が先行し始めた。

 レグナクロックスと衝突し、お互い盾を構えながら剣を振りかざす。

 激闘を繰り広げる精霊からレベッカも俺も少し離れながらお互いの距離を詰め、どちらが先手を突けるか、或いは後手でいなせるかを探り合っていた。

 十歩、九歩、八歩、徐々に相手と戦える適正位置までの距離が縮まっていく。

 こういう時、俺から攻めるのがいつものパターンではあるが……。


 確実にレベッカは待っている。

 そこに突っ込むのは、正しいのか?

 薙刀と剣の適正位置は若干違うし、近付けるかどうかすらまだ分からないのに。


「……一手先すら読めないけど…!」

「読めない事しかしないシャロルの台詞とは思えない!」

「かもなッ!」


 読ませなきゃいい。

 予想外の技、一発逆転の武器ならある。

 腰に付けている赤弓に手を添えて指輪を燈す。

 レベッカは何らかの違和感に気付いたようだがもう遅い。

 俺は馬鹿だから止まり方なんて知らないんだ。



「ちょっと火を貸せ!『神炎』イフリートッ!」

『呼ぶのが遅えぞ光神のガキ!』


 レベッカに近寄る俺との間に炎に包まれたイフリートが突如として現れた。

 いつものイフリートは人間体に近かったイメージだが、今日のイフリートは全身全てが炎で構成されているようだった。

 水の魔法一つで消されてしまいそうな炎なのではないかと一瞬思ったが、身体の底から湧いてくる力を感じてイフリートの意図を理解する。


 たじろぐレベッカは状況を打開するために薙刀を一振りしてイフリートの炎体を振り払った。

 だがイフリートは攻撃のメインではない。

 振り払った薙刀をもう一度動かして俺の剣を受け止めるのは不可能ではないが、何度もレベッカの棒術を見ている俺ならどうやって防いでくるかは何となく分かる。

 その防御を回避する事は不可能だが、……それでいい。


 イフリートの託してくれた物は暴れる為の力だ。

 防いでくるなら防がせてやればいい。

 だがその防御は最強か?

 ……もしも戦場であったなら、最強であったかもしれないな。

 だけどここは戦場ではない。相手が持っている武器も、俺が持っている武器も、最強にはなれない理由がある。



「とっとと溶けろぉぉ!!」


 俺達の武器はゴムで出来ている。鉱石ではないソレは本物よりも熱に弱い。

 レベッカの武器は中央から二つに切り裂かれ、ガードが無くなったその腹に蹴りを叩きつけて体を吹き飛ばす。

 それでもまだ優位は取れていない。

 レベッカの武器を斬り裂くのに使用したイフリートの炎を纏うゴム剣は溶け始め、既に使い物にならなくなっていた。


 レベッカはただの棒になってしまった薙刀を捨て俺も剣を捨てる。

 ……レベッカには腰に付けた短剣があるが、俺には赤弓しかない。

 あるだけマシだが、弓の技量はないので使いものにはならない。



「…いつもそう、シャロルは体術を織り込んでくる」

「魔法によって反応も行動も速くなってるからな、剣で叩くよりも体術の方が優位を取れやすい事もある」

「なるほど……今回はどう?私にはまだ、武器がある。シャロルにはもう…」

「なら、掛かってこい」


 俺はイフリートから預かった力を振り払い、レグナから与えられている加護も消し去った。

 一対一、確かに手に何も握っていない俺の方が不利だろう。

 しかしレベッカも分かっている筈だ。

 俺には魔法がある。

 それなのに攻めてくるレベッカには……魔法に太刀打ちできる自信があるってことなのだろう。



「孫子兵法。遠くからの挑発は相手を進ませようとしている。

 容易に近づける陣地を置いていれば囮である…だ」


 光ではなく風を纏う。

 体術は光包によって、魔法は独学とシャンドルの教えによって磨かれている。

 成長したのは剣術だけじゃない。



「―――風王の歩み(ウィンドロード)!」


 一年前に武闘大会で見た長兄セイスの“土属性魔法”。

 地面を滑って高速移動しレベッカの懐へと近寄り、相手の攻撃を予測してからその短剣に自身の蹴りを当てられるよう調整する。


断罪の歯車(ロックギア)!」


 足に魔力の歯車が巻き付いて短剣を弾く。だが弾き飛ばせてはいない。

 しかしレベッカの体は蹴り飛ばされて遠のき、その距離を見て俺は右腕に風の球体を作り始める。

 威力は最大。

 中級魔法、大風玉。説明はもう、不要だ。



「終わりだ!」

「させない!」


 大風玉の投擲を王波で相殺し、レベッカとの戦況はまた元に戻る。

 “レベッカと俺の戦況”は何も変わってない、だが……。



『終わりだ』


 短剣を構えているレベッカの首に光で出来た剣がかざされた。

 俺の精霊である光神レグナクロックスがレベッカの精霊である剣神ハウプトシュタットから勝利を捥ぎ取り、俺とレベッカの戦いに加勢し始めたのだ。

 不利な状況は一転し、一対二となって優勢へと切り替わった。

 ……決着と言った方がいい状況だろう。



「……私の精霊は、負けたのか」

『良い精霊であった。主の事を考え、自身の力を主であるお前に流していたようだからな。

 対して我はシャロルへの力の供給を最小限に留めた。

 そちらの力量差は知らぬが、こちらの試合の力量差は大きかった』


 俺は光魔法の発動を抑え、イフリートの力や土属性魔法を用いた。

 レグナクロックスの手をあまり借りずに戦った結果、主に力を供給しながら戦っていたレベッカの精霊を倒すのは時間の問題になっていたようだった。

 気付けばレベッカの眼は赤い瞳から元の色に戻っていた。

 力の供給が無くなってしまったのだろう。



『其方は充分な技量を持っている。…力の供給もそこまで必要なかっただろう。

 敗因はお前の降魔術の経験不足だ』

「……そう、か。くっ…ふふふっ」


 突然レベッカは笑い始めた。

 観客が沸き立ち、勝敗を告げる鐘が響き渡る中、俺の耳に聞こえるくらい大きく笑っていた。


「やっぱり、まだまだ私は勝てないな!……何だか、スッキリした」

「……試合前の私も不安ばっかりで、レベッカに殺されちゃうんじゃないかと思ってたよ?」

「私も同じ。でも、ポワル達に励まされたから戦えた」

「……え?何で私はトウヤからなの?私もポワルが良かったなあ」

「……寂しかったんだ。皆、コリュードに行って悲しんでた。

 コリュードより公国の方が実力が付くって証明したかったんだ。

 引き戻したかった……」


 レベッカの手を取って立ち上がらせ握手を交わす。

 悔しさは残っているが自身の立ち回りに後悔は無いようだ、レベッカの中にまた新しい課題が作られているのだろう。

 ギリギリの接戦の果ての勝利。

 俺にもまた新しい課題が作られた。



「……来年はまた公国に戻るつもりだよ」

「本当?約束する?」

「うん」



 短くも長い戦いは終わった。


 何の陰謀も無いまま終わった親友同士の熱い戦いは連日記事に取り上げられた。

 勇者の血統だけが持つ天賦の才能である王波と魔王波を努力で扱えるようになった少女がいると、レベッカと共に新しい時代を切り開く剣士として名が知れ渡ったのだった。


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