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騎士道プライド  作者: 椎名咲水
2章【新入生編】
24/50

23.二人の剣士

 全校生徒がざわついている中、二人の剣士はメイドに手を借りながら鎧を取り付けた。

 トウヤはファンタジーによくある赤い大鎧を身に付け腰に三つ刀を持ち和風っぽくなり、俺は右手に剣左手に盾を持って西洋甲冑を身に纏い洋風っぽくなる。

 俺はここまで対照的な相手にまるで運命のような物を感じていた。


 トウヤが自分のメイドから離れて校庭の中央に向かったのを見てから、俺はフィオナにキスをせがんで頬にしてもらった。

 前にトウヤにした時もこんな感じだったからな。

 験担ぎだ。



「シャロル。強くなる為に必要な気持ちって、分かるか?」

「勝ちたいって思う心だ」

「違う。負けたくないって思う心だ」

「……へえ、そこまで対照的なのな…全く面白いよ。

 本当に…本当に…」


 シャロル・アストリッヒは自分の父親に勝ちたい一心で自身を鍛え上げてきた、ユーリック相手にも、レベッカ相手にもずっとそう思っている。

 勝ちたいと思う心は人を強くする。ユーリックも彼女と同じ気持ちを抱いていた。


 対してトウヤ・マキバは『剣聖』を名乗り始めてから一度も敗北を経験した事のない父親の存在があった。

 自分の父親が絶対である以上、勝てない相手は存在していると思っており、勝とうと思う心よりも負けないと思う心が大切だと認識している。

 勝てない相手がいるのなら引き分けにすれば良いのだ。


 人に負けたくない心を持つ人はトウヤだけではなく、レベッカもそうだった。

 どちらも間違いではなく、どちらも正しい気持ちだ。

 それはトウヤもシャロルも分かっていた。


 教員や学校内の役員が集まって防御障壁を展開し観客の全生徒に怪我が無いように配慮する。

 障壁内は思ったよりも広く動きやすそうだった。

 障壁は強力であればあるだけ魔法の壁が青色に見える、今ある障壁はわりかし農度の濃い障壁だ。

 中級魔法でも問題無し、といった感じか。

 都合が良いな。



「おい猿、構えろ」


 あの時を思い出して俺は言葉を発した。

 トウヤはイラつきながらも初めて戦った時の台詞だと分かったらしく、頭を掻きながら帯刀された武器に手を当てる。


「俺は剣を差した状態がニュートラルなんだ…と言いたいところだが」


 トウヤは刀を抜いた。

 そして、刀を寝かせ、左の掌を俺に向けて突き出し、刀の剣先を左手の親指と人差し指の間に乗っけた。

 ああ、その技は知っているよ。

 お前はあの時と同じ事をしようとしているんだな。


『では、これよりトウヤ・マキバ対シャロル・アストリッヒの試合を始める。

 両者、構え』


 俺はトウヤに応えるべきか少し悩んだ。

 俺にはこの半年で身に付けてきた技術がある。

 ……そう、俺はトウヤの期待に応じれば良いのだ、俺はトウヤから過去の再現を期待されている訳ではない。

 そう分かれば話は早かった。

 お互いに剣を抜いて構え、勝つ事以外は考えない。

 要らぬ事など考えるな。


『―――始め!』

心月(しんげつ)(りゅう)『魔王波』ッ!」

「――降魔、手を貸せ。『光神』レグナクロックス…っ!」


 トウヤの魔王波から繰り出される見えぬ攻撃が正面からやって来た。

 それを防ぐのは俺の後ろに登場する巨鎧のレグナクロックスの盾と、俺の無詠唱で構成した大風玉。

 降魔術がもしも使えなかった時の為に大風玉を用意したが心配はいらなかったようだ。


 あの頼り甲斐のある光神は俺の元に降りて来てくれた。

 その加護によって俺の剣と盾と鎧は光を纏う。

 勝てる自信がどこからか湧いてくるこの気持ちは確かにあの試合と同じだ、根拠の無い自信を身に纏っている。


『半年振りか』

「人に頼って勝ちたくは無いんだけどさ。

 でも私は…トウヤに手を抜いちゃいけないと思ってる。

 ああでも、今まで手を抜いてたって訳じゃない。

 トウヤとやる時は底を見せつけてやらなきゃなってさ」

『随分買っているんだな。なら、我も容赦せぬ』

「おう!派手に楽しくやってやろうか、レグナクロックス!」


 薄らと浮かび上がっていたレグナクロックスは俺の体と重なってオーラとして吸収され、俺に無限の力を与える。

 楽しそうに戦う俺、前に立つトウヤの姿も同じ様な表情を浮かべていた。

 右脚を一歩踏み出し魔力と風の魔法を使って超速でトウヤの目の前まで移動し、剣を振り上げ、振り下ろし、振り払う。


 まるで瞬間移動のような移動だったにも関わらず移動に反応したトウヤは咄嗟に刀を出して俺の攻撃を防ぎ、躱し、後ろに下がった。

 しかし一度俺の攻撃を防いだだけでトウヤの剣は折れた。

 刀の脆さがトウヤの弱点である。

 ……ゴムだというのにポッキリと折れてしまうのはトウヤが刀を使っているからだけではなく、俺のゴム剣が光神レグナクロックスの加護を受けて強化されてしまっているからだろう。


 今の俺の剣は並の剣と変わらないはずだ。

 神だと思われている存在の加護を受けているのだから威力は相当上がっているだろう、素人の俺が父上と善戦ができるくらいの爆発力がレグナクロックスにはあるのだ。

 ……まあ、正直あれは多分父上が手加減していたのだろうと思う。

 自分の実力が付いてくるとそういう事が分かってくるものだから少し恥ずかしくなる。



「―――まだだ、心月流。『(しん)』!」


 トウヤは実刃のある小刀を胸ポケットから取り出して自分の腕に切り傷を付けた。

 トクトクと流れ出る血は急に水蒸気となって辺り一面を霧にしてしまった。

 これもまたマキバハヤテの血筋特有の力なのだろうか。


 俺は一度トウヤの姿を見失いお互いに何もできない状況になる。

 普通の霧なので向こうがこちらの場所を特定しているという事もないだろう。

 でも一応、光風(ライトニングウェイブ)で見えない壁を俺の周囲に展開させておく。

 ……と思ったら普通に半透明の可視できる壁が現れた。

 光の加護を受けている分だけ光属性の度合いが上がっているらしい。

 不可視にするのは風属性の度合いを高めないといけないので降魔術を発動している状態では難しいかもしれない。


 細かい事を考えるのは止そう。

 降魔術を使っているこの状態はパワータイプなので細かい事は出来なさそうだ。



「あの時は魔王波だけでどうにかなると思ってた!

 だから他の技使わなかったけど、今の俺はそんな事絶対にない!」

「へえ。私も武闘大会までは降魔術だけでどうにかなると思って他の技は使わなかったよ。

 でも今なら……こうだっ!」


 無詠唱で大風玉を展開し、俺に当たらないように配慮しながら暴風を解き放った。

 暴風はトウヤが一瞬にして展開した霧を吹き飛ばしてクリアな視界を取り戻してくれた。

 一瞬で状況確認をして、目の前から突撃して来ていたトウヤに対して剣を構える。


「心月流、『一刀(いっとう)三閃(さんせん)』!」

「う、うおおっ!」


 トウヤの一太刀が三つに分かれた。

 一つは剣で、もう一つは盾で、そして最後の一つは俺に纏わりついているレグナクロックスが剣を出して防いでくれた。

 今の一撃、普通の人の初見だったら絶対やられていただろう。

 やはりレグナクロックスを呼んでおいて良かった。

 トウヤも少し悔し顔だ。自信があったのだろう。


 俺は大きく振り払ってから距離を取り、距離を詰めようとするトウヤの処理をレグナクロックスに任せて新しく大風玉を構成する。

 大風玉の連発は疲労が蓄積するのだが今はそれほど疲れが無い。

 レグナクロックスの加護のお陰ならばもう化物クラスの強さだと思う。

 サポートキャラがお前で良かったよ、こんな強い相手と戦えるんだから――。



「一刀三閃…今のを防ぐか!」

「悪いね。そう甘くないぞ!」


 大風玉、三度目の魔法攻撃はトウヤと自分の間、足元で暴風を放出させその風に乗って俺は大空へと高く舞い上がった。

 トウヤは飛ばされる方向に魔王波を打ち込んで軽く飛んだ程度に留めている。地に脚を付けて俺が降りてくるのを待っていた。

 だが俺には光風の魔法がある。

 空中に風の足場を作る事が出来るこの魔法ならわざわざ地上に降りる必要はない。


 両手を利用して片手に一つずつ早いペースで風槍(ウィンドスピナ)を作り出してトウヤのいる地面へと手榴弾のように放り始めた。

 校庭に暴風が吹き始めトウヤも身を投げ飛ばされそうになるが、それでも刀を俺の方角に向けて魔王波を撃ち込んでくる。

 すると魔王波に乗って俺の投げていた風槍がこちらに向かって来て空中で破裂した。


 途端に自分のいる空中に暴風が巻き起こり光風の魔法の主成分である風もその暴風に呑まれて消滅し俺はもう一度空中に放り出された。

 急に足場となるくらい密度の高い風を集める光風を発動するのは難しく、地面に落ちる前に何度か発動の失敗を繰り返して地面に叩き落された。

 失敗し続けても何度も発動していた光風のお陰で地面へは低速で落下した。

 体の節々は痛いもののまだ戦える。


「まだ終わってないぞトウヤ!」

「終わってくれればいいものを!」


 攻撃、躱し、左側面への攻撃、右足を下げ、薙ぎ払い、ステップ、絶え間ない攻防の中でトウヤは魔王波のタイミングを狙い、俺は大風玉の準備をする。

 俺の剣戟にはレグナクロックスの残像が現れ分裂し始めた、俺の右腕は半透明な腕と俺の本来の腕と二つに分かれて別の挙動で剣を振り始める。

 流石に二対一の剣戟では不利だと察したのか、トウヤは足を下げて防御に入り始めた。


 圧せる―――分かりやすいチャンスだ。

 俺は剣の攻撃に強弱を付けて速度と剣の重さを一撃一撃分け始めた。

 トウヤは更に対処が困難となって大きく後ろに跳ぶ。

 空中で構えが変わり、その構えは魔王波を撃つ時と同じものになろうとしている。

 もう隙はこの時しか無い。


 大風玉に凝縮していた風を後ろで放出させてその暴風に乗り、跳んで後ろに下がっていた空中のトウヤの懐を目掛けて飛び込んだ。

 地に脚は付いておらず、しかも魔王波を撃つ構えは剣戟をする構えなんかではない、つまり今トウヤには魔王波を撃つ事しか出来ないのだ。

 トウヤの顔が一瞬曇る。

 俺は相変わらずの笑顔だ。


 魔王波しか来ないと分かっている、その対処をすれば決着は付けられる。

 この瞬間を待っていた。

 未知の技ばかりを使うトウヤから技の選択肢を奪えるタイミングを、そしてケリを付けて勝利を捥ぎ取れるこの時を。

 もう決着は付いた。



「レグナクロックス!俺を守れぇぇええええ!!」

「『魔王波』ァァァァァアアアア!!」


 目の前で繰り出されるその波動の攻撃は巨体のレグナクロックスが大きな盾を構えて防御する。

 レグナクロックスの大盾を持つ腕がグラリグラリと揺れるほどの強さではあったものの上位精霊を看破できるほどの威力ではなかったようだ。

 ……トウヤの反撃は終わった。


 波動を撃ち終わり、防御の為に俺の前に身を乗り出していたレグナクロックスは消えてそこには地面へと落ちていく二人の剣士だけが残った。

 剣を振り上げている剣士(おれ)と、構えを解く剣士(トウヤ)

 トウヤの腹へと剣が届く前に彼は口を開いた。

 面白い言葉を俺に投げ掛け、彼の体は勢いよく俺の剣に押されて地面へと叩きつけられた。



「……かっ、ふ、………―――」


 落下の衝撃でどこかやられたのかトウヤは息が出来なくなったように小さく声を上げると意識を失ってしまった。

 ……全校生徒の前でトウヤは負けたのだ。

 レグナクロックスの降魔状態が完全に解かれてからドッと疲れが身体に流れてくるのを感じて俺はトウヤの隣に尻もちを付く。

 やってやったよとばかりにオズマン先生の方を見ると笑顔で頷いているのが見えた。

 これがオズマン先生の筋書き通りなら恐ろしい話だ。


 魔法障壁が解かれて俺とトウヤの元へ走ってやってくるレベッカやフィオナ。

 救護班の姿を見てようやく一息つけた。

 新品の鎧を適当に外して倒れたトウヤの隣に置いて返品し、俺はフィオナとレベッカの元へ歩こうとする。


 だが言い忘れた事があったので一度止まった。

 アイツは言ったのだ。

 俺の一撃を喰らう前に『楽しかった』と。



「ああ。私も…楽しかったよ」



 武闘大会で俺がトウヤの前に立てなかった不戦敗の事を考えると今の戦績は二勝一敗といった所だろうか。

 でも実際はレグナクロックスのお陰ばかりで俺が勝ったって気分じゃないが……そんな手を使ってでも勝ちたくなってしまう相手なのだから仕方がない。


 間違いなくコイツはライバルで、宿敵で、最高の相手だ。


 トウヤの父親はもっと強いみたいだしトウヤも絶対にもっと強くなる、そうなっても勝てるように来年度も頑張っていこう。まだまだお互いに成長の余地がある。

 ……こうして、俺達の一年は終わりを迎えた。



 ――――――――――



「お、お前……どうやったら内側から鎧が弾け飛ぶかなぁ!」


 一週間後の昼下がり。

 ロイセンさんは俺の壊れた鎧を見てそう言った。

 二年生になる前に修理や手入れをしなくてはならない物もあるので全部担いでロイセンさんの店に持って行ったのだ。

 あとクローゼットの中に入れていた鎧もついでに持ってきている。


「中級魔法使ったらそうなったんだ。

 あとこれも、もっと格好良くて強そうな奴にして」

「ってオイ!それ俺がサービスで渡した物だろうが!」

「このままじゃクローゼットの中に封印されちゃうよ。

 私の友達が今年やってくるからその子にあげたいんだ。

 身長は私より小さめの女の子」

「無茶言うよな…シスイほどじゃないけどよ。

 サイズは可変式にするか」

「ああ胸は無いからね」

「聞いてねえよ、俺はフィオナさんくらいにしか興味が無い」

「え?あ……ごめんなさい」

「……まあ、フィオナ。

 そうきっぱり言われると悲しくなる人もいるんだよ」

「小学生に気を遣われる方が傷付くっての」


 元々自分用にしていた鎧は成長した体に合わせるように若干サイズを調整して新しく銀の西洋甲冑を作ってもらい、サービスで頂いたはずの鎧も別の物に変えてもらった。

 若干赤色っぽく見える焦げ茶色でどことなくトウヤの鎧に似ている。

 トウヤの真似をしていた低学年の生徒達に見せつければ売れそうだ。


 あの生徒達は今頃「蜃!」とか「一刀三閃!」とかやっているんだろうか。

 うわ、見たくないな。

 視線を逸らしたくなる、家に帰りたくなるレベルで見たくない。



「剣の方はどうするよ、ゴム剣は何本か作ったけど実剣の方は?」

「少し軽くしてほしい、軽くした分だけ長さを増して。

 私が敵を倒さなくても弱らせればフィオナが弓で何とかしてくれるから機動性とリーチを重視する」

「ああ、フィオナさん矢とかいる?サービスするけど」

「い、いえ……結構です…」

「それ以上私のフィオナに声掛けたらセクハラだよロイセンさん」

「おかしいな…俺何にも悪い事してねえと思うんだがよ…」


 フィオナは矢が必要じゃない事をロイセンさんは知らない。

 俺は元々自分の体の小ささがネックだったのでショートソードを使っていたのだが、二年生からは普通の長さの物を使ってみる事にした。

 肉体強化の魔法は一応あるし、振れない事は無いだろう。

 今の俺には中級魔法という大きな力があるので剣だけが主力ではない、魔法を使いつつ剣を使うという過去に抱いていた夢がようやく実になってきた。


 冒険者ギルドでの自身のランクもE+になった。

 来年度に入ってすぐにDランクに昇格できる予定なので、二年になってからは小型の動物や獣だけではなくちゃんとした魔物を狩れる許可が下りるだろう。

 ようやく魔物との対決だ。

 まだ見た事は無いがとても楽しみである。


 ……というか、全体的にこの世界が平和過ぎるので未だに魔物とかそんな生物の存在を信じ切れていない自分がいる。

 竜とか本当にいるのだろうか。

 まあ竜や魔物にも知性があるので簡単に人前に出てくるとは思えない。

 街の外出て三歩で敵とエンカウントするゲームとは訳が違うのだ、弱い魔物は弱い魔物らしく森の奥でひっそりと暮らしているらしい。

 それを見に行ける許可というのは非常に大きいと思う。


 冒険者ギルドへの登録が遅かったレベッカは来年E+ランクなので同行はできない。

 ちょっと悲しいがレベッカとは二年になってからも試合や稽古で何度も顔を合わせるだろうからお互い寂しくも何ともない。

 ランクの昇格時期は半年に一回なので夏頃にはレベッカも一緒に冒険者として同行できるようになるだろう。

 ランクはEからE+、E+からDへと昇格するが、D-というのもしっかりと存在する。

 D-になる方法はDランクの人間がクエストで幾度か失敗し、冒険者ギルドが本当にDランクの実力を持っているかどうか怪しいと思われた時にD-に降格される。

 D-で昇格すればまたDランクに戻れる仕組みだ。

 逆にD-ランクで降格すればE+を通り越してEランクまで落とされる。


 ちなみにロイセンさんはC-ランクである。

 マイナスが付いているだけで何となく情けなさを感じてしまう。



「取り敢えず武器防具共に注文承った。お代は後日請求する」

「お願いします、それじゃフィオナ行こうか」

「はい。ありがとうございました、ロイセンさん」

「お、おう!帰り道気を付けてな」


 ……どうにもフィオナに対してだけロイセンさんは優しい気がする。

 惚れているのだろうか。

 フィオナには空回りで本人はちょっと嫌そうな顔をしている。

 長い間一緒にいるから分かるがどうやら男の人が苦手なようだ。

 そういえばフィオナの前に現れた男性は厳しそうな父上とか、思考の読めないオズマン先生とか、鍛冶親父のロイセンさんとかしかいない。

 こうなんか手っ取り早くイケメンだって分かる人は少ないな。

 一応オズマン先生辺りは教師好きにはグッとくるかもしれない。

 たまに眼鏡も掛けてる……けど銀髪か。ちょっとやんちゃかな。


「私少しあの人苦手です……」

「まあ我慢してあげて。何かあったら守るからさ」

「……シャロル様が王子様だったら良いのに……」

「ん、何か言った?」

「あぁ、いえ、何でもありません。妄言です…」

「そっか、じゃあ帰ろう。二年生になってもよろしくね、フィオナ」

「はい。改めてこちらこそよろしくお願いします」


 そうしてまた一年が始まる。

 一つ下の友人ポワル・メーレスザイレがやってくる新しい年の幕開けだ。


次話から3章【冒険者編】が始まります。

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