六日目 ~夜~ その参
「ご来場の皆様~!」
気合が入り過ぎているのか、所々で声が裏返っている。チラホラと笑い声が上がるけど当の本人はそれを気に留める様子はないしそんな雰囲気でもない。ご愛敬と言う事なのだろう、みんなそれも含めて楽しんでいた。
「本日はお忙しい中お集まり頂きまして、誠に有り難うございま~す!」
小さな街の大きな広場を喚声が埋め尽くした。拍手喝采が上がったかと思えばそこら中で甲高い指笛が鳴り響く。頭が割れそうなくらいに騒がしいけど全然気にならない。むしろ楽しくて仕方がなかった。
人でひしめき合っている広場は活気と熱気で満ち溢れていた。そして居合わせている人達の殆どが足元も覚束ないくらいに興奮し切っている。勿論カティもその内の一人だった。
「僭越ながら、司会進行は不肖私ヨハン・アイゼルハイドが務めさせて頂きます。皆様宜しくお願いしま~す!」
喚声の中に笑いや一部に野次が混じる。当然、歓迎する上でのものだ。
「何偉そうに仕切ってんだあいつ」
壇上で大声で喚いて場を盛り上げる弟を殊更冷めた目で見ながらリーゼルは言った。
「取り敢えず、戻ったら逆海老固めだな」
冗談ならばこれ以上ないくらいに馬鹿みたいだけど多分この人は普通に実行する。しかも相当強く。
「馬鹿が調子づきやがって」
真顔で言うから余計に怖い。隣にいるレンも流石に顔色をなくしている。ミリアムに至っては目元が明らかに引き攣っていた。
「私は三角絞めしておきます」
イリナがかなり余計な合いの手を入れた。流石にここではやらないだろうけど道場で居合わせたら別にこれと言って躊躇いなく実行しそうだった。
「ありがとう、助かるよ」
リーゼルは穏やかに笑った。
一体何が助かると言うのか。教育的指導の名を借りたイジメとしか思えない。
「君はどうする?」
そこでリーゼルは唐突にミリアムに振った。
突かれたのが虚か不意かは判らない。でも動揺を誘うには充分だった。油を染み込ませた紙に火を点けるようにしてミリアムの顔が赤くなった。別に意地悪するつもりは全くないだろうけど、この反応は見ているだけで楽しい。
「わ、私ですか?」
「うん」
うんではない。子供みたいに頷かないで欲しい。でも、今の反応で本気ではない事がハッキリした。当然だけど明らかにふざけている。レンもホッとしたように胸を撫で下ろしている。
「わ、私は……」
半分俯かせていた顔を上げると、ハッキリとした声でミリアムは言った。
「優しく、抱き締めて差し上げます」
差し上げますとか何とか言ってるけど本人が抱き締めたくて仕方ないのは明白だった。ただそれを相手の身内の前で言える神経は只事ではない。
本当に、心の底からヨハンの事が好きなのだろう。それが改めてよく判る、いや伝わる態度だった。真っ直ぐで潔くて、凛としていた。
何かに吸い取られるようにしてリーゼルの表情から毒気が抜かれていく。やがて底が突くように空っぽになると屈託なく笑った。
「あいつには勿体ないな」
「そんな、勿体ないだなんて……!」
ミリアムが慌てて頭を振ると笑い声が上がった。
「安心して任せられるよ」
裏を返せばそういう事になるのかも知れない。少なくともヨハンに対する想いは間違いなく本物だ。嘘や偽りは一切ない。安心するには充分だろう。
「もしあなたを泣かせるような事があったら私がタダじゃおかないから」
レンは握り拳を作るとミリアムに笑いかける。
「安心して。その時は私が既にボコボコにしてるだろうから」
イリナがレンに倣うようにして拳を握る。凍りつきそうな笑顔だった。
「それにしても、何であいつが仕切るのか判らねえな」
「友達特権とか何とか言ってたような気がするけど」
「友達特権ねえ」
イリナが言葉を添えるとセージは首を傾げた。
「どういう特権何だか」
同年代の、そして同性でウォッカと一番関わりが深いのはヨハンだった。誰かのために精一杯動いていたのはウォッカだけではない。その傍らにはヨハンがいた。剣を研ぎ、みんなを助けるために一生懸命走ってくれた。数日間の出来事の中で苦楽を共にした仲と言っても過言ではない。最早ただの友達ではない。親友か、或いはそれ以上の関係だ。
確かに特権と言えるかも知れない。
「私、興奮が収まりそうもありません! 皆様はいかがでしょうか?」
爆竹が爆ぜるように喚声が上がる。楽しくて嬉しくて、今にも胸が爆発しそうだった。幼い子供なら兎も角、十六にもなってこんな気持ちを経験するなんて夢にも思わなかった。
「今朝起こった出来事がどんなものなのか、それをここで改めて説明する必要はありません。皆様も、既に充分ご存知の通りです」
よく通っていたヨハンの声が僅かに湿り気を帯びた。それに呼応するように群衆から小さな溜め息が漏れ聞こえた。それにしてもよく舌が回るものだ。少なくとも上がっている様子は全くない。暗い印象はなかったけどここまで明るく話せる一面を初めて目の当たりにして少し驚いてしまった。一番驚いているのはすぐ隣にいるミリアムだろうけど。
「この街の人達の当たり前の毎日を取り戻してくれたこの男に、この場をお借りして感謝御礼申し上げます」
台の下にいるウォッカに深々と頭を垂れると一斉に拍手が沸き起こった。ウォッカは照れ臭いのか居心地が悪いのかよく判らない顔をするとヨハンに倣うように頭を下げた。彼を包む拍手の音がより一層大きくなる。
「この少し照れ屋で不器用な男にまず一言ご挨拶を頂きたいと思いますが、」
何故逆接の接続詞が末尾に来るのか、疑問に感じるより先にヨハンは一つ咳払いをすると背筋を正した。
「その前に、この方が皆様にどうしてもお伝えしたい事があるそうで、今しばらくお時間を頂けると幸いです」
ヨハンが半歩身を引くと件の人物は彼に頭を下げた。ヨハンも軽く手を上げて応える。
台に上がった人物の顔を見た途端、意図せず声が漏れていた。
「失礼致します」
神妙な顔をした父が深々と頭を下げていた。
波が立つようにして群衆から小さくざわめきが起こった。何を伝えようとしているのか、まるで見当もつかないのだろう。しかも街の人達が一堂に会すような場で何を話そうと言うのか。動揺と言う程大袈裟ではないにしてもある種の混乱を招くには充分だった。少なくともお祭り気分に浸ろうとしている今にこんな雰囲気は似合わない。
イリナが視線を向けると察しの速い妹はすぐさま首を横に振った。思い当たる節があるか、それを確認したに違いない。でも即座に否定された。
苦悩するように眉間にシワを寄せるとイリナは少しだけおっかない顔をして壇上にいる父を睨んだ。さっきからずっとトージと手を繋いでいたアリスも心配そうに父を見詰めている。
何だろう。胸の奥から寒気を伴う何かが溢れるように沸き上がって来る。それが気持ち悪くて堪らなかった。震え始めた体を無意識に抱き締めていた。
「楽しい雰囲気に水を差すような真似をしてしまって大変申し訳ありません。長口上は欠伸の種とも申しますので手短に済ませます、今しばらくお時間を頂戴出来ますと幸いです」
両手を体の横に添えたまま綺麗な角度で頭を下げる。もう少し砕けた雰囲気で話してもいいような気がするけど、性格がそれを許さないのか仕事の延長上なのか馬鹿みたいに穏やかで丁寧だった。ひょっとしたらそれも父なりの気遣いなのかも知れない。
不意に疑問が脳裡を掠めた。
誰に対する、どんな気遣いなのだろう。何故、気遣わなくてはならないのだろう。
肌が粟立つように胸の中で不安が膨らんでいく。
「今日、このような機会を設ける事が出来た事を大変嬉しく思います。発起人のガイデルさん、並びに協力して下さった大勢の方々、そしてお集まり頂いた皆様に改めて御礼申し上げます」
力が抜けたのか、アリスが軽く肩を上下させて溜め息を吐いた。
ここまでは取り敢えず無難に運んでいる。でもまだ油断は出来ない。これから父が何をしようとしているのか、その意図が全く見えないからだ。
「イリナ」
誰かが人垣の間から顔を覗かせた。
明らかに不安そうに眉を潜めた母が壇上にいる父と娘を交互に見る。
駆け寄った母はイリナの肩に手を置いて少し苦しそうに胸を押さえた。
「母さんは、何か知ってる?」
項垂れたまま母は首を横に振る。
溜め息が漏れた。同じ家族なのに、これから父がやろうとしている事を誰一人として把握していない。家族だからと言ってみんなの事を全て知っている訳ではない。でも、さっきから胸騒ぎが収まらない。何を思って父はそこに立っているのか、それが一向に見えなかった。それが不安をより一層掻き立てていた。
「先程ヨハンさんもおっしゃっていたように、人質を解放しこの街を元に戻して下さったウォッカさんに、心からお礼を申し上げます」
再び広場が割れんばかりの拍手喝采で埋め尽くされた。その僅かな間隙を縫うようにして歓声や口笛が響く。至極全うな内容だった。でもそれ故に大勢の人を前にして、わざわざ時間を割いてまで伝えたい事とはとても思えなかった。それに内容があまりに一般的過ぎる。
不意に脳裡に閃く、いや引っ掛かるものを感じた。
一般的な事に違和感を覚えるならどんな事に妥当性を見出だそうとしていたのだろう。深く考えようとすると、その奥に踏み込もうとするとそれだけで頭が痛んだ。考える事を無意識に避けようとしているのか、ただの錯覚に過ぎないのか。
満足に自分の耳を塞ぐ事もせず、父が淡々と言葉を紡ぐ様を黙って見詰める事しか出来なかった。
「非常に残念な事ですが、今日ここに来られなかった方も何名かいらっしゃいます」
父の声が微かに翳りを帯びた。
確かに大多数の人がここに足を運んでいるかも知れないけど、街の住人全てがここに来ているとは思わない。そこまで考えて、父が口にした言葉の意味合いが初めて判った。違う、そうじゃない。
「奴らに命を奪われた方々もいらっしゃいます」
決して多くはない。かと言って少なくもない。確かなのは奴らに殺された人達がこの街にいる、それだけは間違いなかった。そして、奴らに家族を奪われた人達も同時に。
息があったら、死にさえしなければ、ひょっとしたらまた会う事も話す事も出来たかも知れない。でも一度尽きた命は再び火を灯す事はない。人に摂理は覆せない。絶対に有り得ないし、あってはならない事だった。でも身近にいる誰かを失ったら、誰しもそれを心の底から望む。絶対に起こらない、そうと言う事は理性で理解していても感情が受け容れない。
それが人間だ。
「心より、ご冥福をお祈り致します」
父は目を閉じた。釣られるようにして黙祷していた。失われた命は絶対に戻らない。間違いなくこの世で、人が生きる中で一番哀しい出来事だった。そしてそれを否応なく突きつけられている人達がこの街にはいる。
「ずっと気になっていた事がありました」
目は半分伏せているけど父の声はよく通った。今度は真っ直ぐ前を見る。
「何故、奴らはこの街に目をつけたのか」
ドミノでも倒すようにざわめきが群衆に拡がっていく。
既に充分判り切っている事を改めて口にした父に呆れているのか、過ぎた出来事を蒸し返す無神経さに閉口しているのか、少なくとも好意的に受け止められていない事は火を見るより明らかだった。カティに限らず、誰もそんな事は聞きたくもないに決まっている。
「本来の持ち主の手を離れた砦、当然中には牢屋もあるから人を監禁するには、連れ拐うには打ってつけ。だから奴らはそれを調べ上げた上でこの街を狙った、最初はそう考えていました」
背筋を冷や汗が伝った。イヤな予感がようやく明確な輪郭を形作ろうとしている。
「昔従軍していた時、私は上官の命令に背いて投獄されました」
誰かに話して聞かせるにはあまりに個人的過ぎる。何より、そんな話は誰も聞きたくない。他人の事なら尚更だ。
「勝てもしない戦に部下を駆り出されそうになったので派兵を拒否すると服務規程違反を理由に牢屋にぶちこまれました」
「あなたの部下は、どうなったんですか?」
「無理矢理連れて行かれました。殆ど戻りませんでしたが」
群衆の最前列から投げ掛けられた言葉に父は丁寧に受け答えた。間違いなく死んでいるのに、感情は一切滲んでいない。夕飯に使う玉葱を刻むように淡々としていた。
「投獄されてからは私が無理矢理派兵したと自供するよう連日に渡って脅迫されました」
その過程で指を二本切り落とされました、とは流石に言わなかった。だからどうしたと言われるのが関の山だ。
「無実を訴え続けて何ヵ月か経った頃、ようやく牢屋から放り出されました。出所祝いもかねて一発鼻っ柱に見舞ってやろうと件の上官を探したんですが、もう軍に彼の姿はありませんでした」
父にとっては葬り去りたい記憶に違いない。絶対に場所を借りて誰かに聞かせるような話ではない。それを進んで行動に移す必要が何処にあるのか。
「彼には、その上官には将来を約束した婚約者がいたそうです」
完全に息が止まった。
唇の端を釣り上げて冷酷に笑っていた誰かの顔が鮮明に脳裡に甦った。
「この街を根城にした首謀者の片割れはその婚約者です」
恨むならあなたの父親を恨みなさい。
実に楽しそうに笑いながら頬を殴り、脇腹を蹴り上げながらあの女は言った。
何故面識もない父を執拗に憎むのか。面識どころか店に足を踏み入れた事もないのに。
当たり前だった。完全に逆恨みだけど、あの女からしてみれば父は婚約者を失脚させた憎き部下なのだ。軍隊で何人もの部下を従えるほどの、本来は無実の人間を牢屋にぶち込めるくらいの権限を持っているならそれ相応の地位にあったのだろう。約束された将来を台無しにされた、その対象が父だった。
水を打ったように、或いは凍りつくように場が静まり返った。さっきまであった熱気と興奮が嘘のようだった。
ならず者達が身を隠すには持ってこい、最初はその程度にしか考えていなかった。人里離れた辺鄙な土地に使い古された砦が残されていたら、本来の所有者がその権利と義務を放棄していたら。陽の下を堂々と歩けないような連中にはさぞかし魅力的に映った事だろう。でもあの女の本当の目的はそれとはまた違う処にあった。
復讐だ。それ以外の何物でもない。だから父を、家族を執拗に苦しめ痛めつけ殺そうとした。それだけでは足りなかったかも知れない。そういう顔で笑っていた。
「奴らに家族を拐われた、そして殺された人もいらっしゃいます。過程はどうあれ、その原因を作ったのは他ならぬ私です。頭を下げる程度でお許し頂けるとは考えておりませんが、せめてお詫びだけは申し伝えさせて下さい」
体の両脇に手を添えると、父は深々と頭を垂れた。
「本当に、申し訳ありませんでした」
綺麗な角度で腰を折った。その姿勢で微動だにしない。
確かに、名前も知らないあの女がこの街を根城にするに到った原因は父にあるのかも知れない。ならば、どうすれば良かったのだろう、どうすべきだったのだろう。勝てる見込みもない戦に出向く事を潔く受け容れれば良かったのか、脅迫に屈して嘘の自白をすべきだったのか。何れにしてもそれが現実になっていたら父はここに戻れなかった。イリナもミリアムもアリスも、そしてカティもここにはいなかった。いたのは母一人だけだ。父と家庭を築く事は出来なかったし、ひょっとしたら子を設ける事もしなかったかも知れない。
だから、責任を感じる気持ちは判るけどこんな風に謝って欲しくなかった。父にはどうしようもなかった。部下を死地に赴くよう背中を蹴飛ばす事も、自分を偽って嘘を認める事も出来なかった。それで良かった、心の底からそう思う。
でも。
奴らに誰かを、家族を殺された事実は絶対に覆らない。死人も生き返らない。父とあの女にどんな過去や事情があったとしても、巻き込まれた人達にはそんな事は一切関係ないのだ。それを判っているから頭を下げているに違いなかった。
「全部、全部あんたのせいだったのかよ!」
誰かが叫んだ。
物凄い速さで飛んでいった何かが父に当たると思った刹那、黒い影が飛び掛かるようにして父と何かの間に入り込んだ。
「今投げた奴、誰だ?」
父の盾になるように仁王立ちしたウォッカが射抜くような目で群衆を睨み付けていた。手に握っている酒瓶が炎の灯りを受けて鋭く光っている。
「一歩前へ出ろ」
取り囲んでいる群衆が一歩、いや三歩後ろへ下がった。
別にそこまで大きくはない。でもいつもと明らかに雰囲気が違う。硬く尖っているせいか痛いくらいに通る声だった。細く鋭い目で周囲を睨み付ける。怖い。
そんなウォッカの肩を父が引いた。目が合うと父は淡く笑った。実際どうかは判らない、でも遠目にはそう見えた。ウォッカはしばらく周囲を未練がましく睨んでいたけど、不承不承と言った態度で父の背後に身を引いた。さながら主人を守ろうとする番犬のようだった。
父はもう一度頭を下げた。
誰も、何も言わなかった。不気味なくらい静まり返った広場に焼かれた木が弾ける音だけが静かに響いていた。
ふと見ると、台の下で誰かが頻りに、でも縮こまるように遠慮がちに手を振っていた。舞台袖から主役の衣装が擦り切れている事を懸命に知らせようとしている共演者のように、ヨハンが聞こえない叫びを上げている。必死なのはよく判るんだけど、溺れまいと懸命にもがいている魚のようでハッキリ言うと見ていておかしかった。今にも笑い出しそうになるのを腹筋に思い切り力を込めて堪えるくらいに。
「あいつ、何してんのかしら?」
目尻を微かに滲ませながらイリナは言った。完全に意表を突かれたような顔をしている。
「一人芝居って訳ではなさそうだけど」
それは絶対にない。身振り手振りは一人芝居そのものだけど状況が、いや雰囲気がそれを許さない。本当にやっていたら本物の馬鹿だ。彼に限ってそんな事はないと思うけど。
「ミリー姉なら判るでしょ?」
「何で私だったら判るのよ!」
アリスが肘で脇腹を突っつくとミリアムは弱々しく悲鳴を上げた。多分、ヨハンよりも相当激しく動揺している。
「何でって、」
纏わりつくような視線を浴びせると、アリスは震える姉の肩に手を置いた。
「相思相愛の仲なんだから」
油が染み込んだ布切れに火が点くようにしてミリアムの顔が赤くなった。効果覿面だった。
深呼吸するとミリアムは音を立てて生唾を飲み込んだ。台の下で小刻みに右往左往するヨハンを真っ直ぐ見詰める。
「多分、何とかしようとしてくれてるんだと思う」
もう少し気の利いた言葉はないものかと言うのが本音だけど、実際そこにいるヨハンはこちらが感じている以上に動転していてもおかしくないのだ。そうでなければあんな風に独楽鼠みたいにセカセカ動いたりしない。
微かに息を飲む音が聞こえた。




