俺は悪人ではない!
そう、妖精だったのだ。カランカランとドアが開く音も俺にしか聞こえないのだ。
「お前が山下浩介か」
……は?なんだこいつは。顔は可愛いのに口は悪い奴だな。
「ふん、情けない。こんな不細工があたしの……」
「悪かったな!!」
俺がそう怒鳴るとお客様や先輩方がこちらを向く。
「どうしたの?大丈夫?具合でも悪いの?」
と、一番懐いてきてくれているアカチ先輩が近寄ってきて俺のおでこに触る。
「や、やっ、えと、大丈夫ですので心配なさらずっ」
慌てて先輩から離れようとする。しかし離れようとすると、先輩は悲しそうな顔をする。
「ご、ごめんなさい。ちょっと恥ずかしくて……」
「あぁ、そうだったんだ。いきなりびっくりするよね!ごめんね」
その後、名乗りもしない妖精が俺の肩に乗ってきた。
(いやいやいやっ、なんか名乗れよ!)
「あたし?名乗るもんでもないから気にしないでよ」
(意味わからん)
俺はこんな奴を放っておいて仕事に取りかかった。
「浩介くん、休憩入っていいよー」
ランチタイムも終わり、マスターの声がかかると俺は休憩に入る。
「お先に休憩いただきまーす」
マスターは、ここのメニューにはない物を賄いとして出してくれる。今日は、カレーだ。マスターのカレーは美味しいんだよな。お礼を言って休憩室に行き、食事をする。
しばらくすると店内から騒がしい声がしてきた。三人組の男が暴れているようだ。
「山下浩介はいるかっ」
「い、いいい、い、いませんよ、そんな人」
俺は皆を助けようと休憩室を出ようとしたが、エイヒに止められた。
「行かないでどこかに隠れて!こっちにも探しに来るから」
とりあえず俺はロッカーの中に隠れた。皆を助けたいのに隠れてしまう自分が切なく思えてしまう。
「なんのご用でしょうか?お客様」
「俺らは客じゃねぇっ!山下浩介に会わせろ!」
「だからそんな奴はいないと何度も言っているではありませんか」
男三人組は店内を荒らし始めた。
「や、やめてください…お店が壊れてしまいます」
アカチ先輩が泣きながら言うが三人組は聞いてはくれない。
(やっぱり俺、出て助けなきゃ…)
「お前は馬鹿か?マスターたちが必死に時間を稼いでくれているじゃないか。お前を逃がすためだよ」
奥の方にいたもう一人の先輩がロッカーまで駆けつけてくれて、休憩室の床下には隠れ家があると教えてくれた。
「しばらくそこに隠れてなよ。絶対見つからないから」
「ありがとうございます!先輩はどうするんですか?」
「とりあえず警察には連絡しておいたから。皆の安全を確保してくる」
男性アルバイトは俺とセイヤ先輩しかいなかったから心強い。
とりあえず俺は床下に隠れた。寒い場所だったが怖い人に連れて行かれるよりかはマシだと感じた。
あれから随分と時間が経つがどうなったのだろうか。怖かったから開ける勇気は俺にはなかった。