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ブナケデス  作者: あるばいと
クロネコ師匠編
56/57

2-24 クロネコの正体

 ◇


 畏怖という感覚を王は初めて知った。


 ◇


 クロネコは魔力を吸収する。

 そう、彼女は魔力を吸収することで現状の『猫』という形を維持している。魔力の張りつめた部屋は彼女にとってもってこいの餌場と言える。


 部屋に魔力を張り詰める……といっても当然だが簡単なことではない。

 部屋から魔力が出なくする仕掛けもさることながら、漏れた場合に補充する魔力も必要なのだ。それはこの部屋以上の魔力が必要ということになる。

 そして、その魔力の大半をクロネコは食い尽くしていた。


「さて、これだけの魔力がどこにあったか気になるところだけど……今はアナタたちを片付ける方が先かしら」


 黒猫がいた場所に青髪の少女がいた。

 身長はさほど高くない。髪を髪留めでツインテールにしている。そして先程の黒猫を思い出させる真っ黒いローブを身にまとい腕を組んで現れた。

 そう、彼女こそクロネコだ。


 猫から少女へと変わったことで、謁見の間の雰囲気は一変した。

 人も獣人も動きを止めていた。驚いたからではない。見た目 麗しい少女だが、彼女から溢れ出る禍々しい魔力がこの場にいるすべてのモノを恐怖へと導いている。


 王は先ほどのカンザキという圧倒的に強い子供にも恐怖はなかった。どこかで彼になら『勝てる』という意識があったのかもしれない。

 だが、今はまるで違う。まだ、何もしていない欠伸をしている少女から、『勝つ』どころか『逃げる』ことすら不可能だと感じる。

 全身が震え、腰が抜けている。どんな戦場でも、色々な死に直面する場面でも、剣で切り付けられ頭が割れたこともあった。

 それなのに、まだ、何もしていない少女に畏怖の念を抱かずにはいられないのだ。


「少し元の姿に近づいたかしら……もう少しこう……」


 黒猫だったと思われる少女は魔力をこねくり回すような動作をすると姿が徐々に変わっていく。獣に近くなっていく……『獣人』と思われたが、周りにいる獣人たちですらガチガチと歯を鳴らし震えあがっている。


 黄金色の目が光る黒猫の獣人……尻尾の数が多い。蠢く尻尾が無数にある。ただの獣人とは違う。いや全く異質なものとしか言いようがない。

 見た目とは違い恐怖の権化のようなモノ。


「なんなんだ……お前……は……」


 王は震える声で相手の正体を聞く。

 少女はその声を聴き、王の方を振り向き目が合う。それだけで王は背中に戦慄が走り、声をかけたことへの激しい後悔が襲ってくる。全身に大量の汗が流れ意識を失いそうになる。


「あら、まだ意識があるなんて意外だわ。同族でも私の姿を見ただけで倒れる者がいるというのに……」


 その言葉に王はハッとして周りを見渡す。

 宰相や大臣はもちろん、兵士や将軍ですら泡を吹いて気を失っている。意識のある将軍もいるが、それでも正常なのかは怪しい。

 獣人の中にも倒れている者がいる。この姿を見るだけで敵味方関係ないく精神的攻撃を受けるのだと今さらながら悟った。


「『私は誰か?』なんてどうでもいいことでしょ? それよりもここで死ぬか、隷属するか……お好きな方を選んでちょうだい? あぁ、何人かはすでに死んでるわよ、恐怖に耐えられなかったみたいでね。味方にも死人がでちゃったみたいだけど、まぁ他に方法が無かったし仕方ないわよね~。

…… ……。

あぁ、私? 私は只の獣人……今現在は。でも、昔は悪かったのよ~。超悪! なにせ魔王だからね。魔王が一角。本来なら、魔王が地上に出ることは叶わないんだけど、今は獣人だから大丈夫なわけよ。ってーか、今回の問題は私が獣人を魔族じゃなく人間にしたことが発端なんだけど……」

「あ、姐さん……」

「大丈夫よ。死んでないでしょ。豪傑な王様だから……」


 象の獣人の声に背中越しで答えため息を吐く。

 クロネコの話の途中から王は意識を失っていた。

 今、謁見の間で意識のあるのは獣人たちだけだ。その彼らですら立つことが出来ないほどの恐怖に押し潰されそうになっている。


 本来ならライカンスロープや獣人などは高い精神抵抗力を持っている。ましてや同族の精神攻撃に対してはほぼ無効化できるほどの力を有している。

 だが、魔王レベルになると話は違う。抵抗力の強い獣人ですらこれ(・ ・)なのだ。精神抵抗の低い人間では耐え切れず死人が出るのも致し方が無い事と言えよう。


「所詮この程度……かぁ。戦うまでには至らなかったわねぇ。コイツラに首輪着けてちょうだい……って、この姿のままだと味方も鈍重になるわねぇ。この姿になるにしても少し考えた方がいいわね~。カンザキあたりなら問題ないと思うんだけど……」


 少女の姿になる……が、まだ、ダメそうだ。

 猫の姿まで落す(・ ・)


「姐さん……じゃなかった、女王様、できればそのお姿で何とかなりませんか?」

「『姐さん』でいいわよ。『女王様』ってあらぬ誤解を招きそうだから……。しばらくはこの姿でいるわ。魔力が補充できたから、いつでもあの姿になれるしね」


 獣人たちがなんとか動けるようになって王をはじめとして全員に首輪をはめていく。

 その作業をしながら象の獣人が黒猫に尋ねる。


「あの少年はこのことをしっているんですか?」

「『このこと』? 私が元・魔王(・ ・)だったこと? いや、教えてないわよ。アイツだって何者か教えてもらってないしねぇ。魔界では見たことないから、こっちの人間だと思うんだけど、可能性としては竜族か天界の奴かもしれないわね」

「ヤバいんじゃないですか?」

「さー? 何がしたいのかさっぱりわからないから何とも言えないわね。一応 獣人の味方よ、現在はね。ただ、爆弾抱えて歩いてる気分は否めないわね。もっともその感覚はゼロスリーも一緒なんだけど……」

「ゼロスリーぃ?」

「まぁあっちに着いたら、嫌でも誰だかわかるわ。そんなことより、一通り首輪を巻きつけたら王様たちに色々言いつけないとね。用意してきた条件を……。って、そこ、勝手に殺しちゃだめよ、使い道あるんだから!」


 人間に恨みを持つ獣人が殺そうとしているのを咎める。それじゃなくともクロネコが予定以上の人間を殺してしまっていた。それは、この国を植民地にしていく上で少々面倒になることだが、状況が状況なので諦めている。ただ、これ以上、むやみに減らされては困るのだ。


 気絶から無理矢理 起こし意識がはっきりするまで待つ。

 それから首輪のある状況を確認させる。

 交渉……いや、ここから王たちに命令をする。この国の貴族の半数を潰すことになる。取って代わるのが獣人、ドワーフ、エルフなどが貴族の地位に着くこととなる。

 当然反対する貴族が反旗を翻すなり何なりするだろう。一致団結して、王を打倒しようとするかもしれない。炙り出さずとも、勝手に出てくる獣人反対派を駆逐しやすい。反対派じゃなくても邪魔ならば消せばいい。いや、王が倒れてもさほど困りもしない。こちらで新しい王も立てられる。


 この国を獣人派にさっさと塗り替えて外交に出なければならない。

 新しいドラゴンが来るまで10か月程度。

 カンザキの話が本当なら獣人と人とエルフとドワーフが手を組まなければ、次の試練は乗り越えられない……と本に書いてあったらしい。


 前回はクロネコやカンザキなどのごく一部の力のある人間さえいれば何とかなった。

 次に来る試練について情報を得ている。それまでに多くの国に獣人を取り入れてもらうことと、獣人を保護する国に情報を流さなければならない。


 世界が割れている状況では、全てが終わってしまう可能性もあるだから……。


 ◇


 それにしても、何もしなかったなぁ。

 元の姿に戻っただけだし……。元に戻ると大惨事だから何か方法を考えないといけないわねぇ。


 謁見の間……『魔法使用不可』を教えた奴に心当たりがある。

 私が魔界にいたときに配下にした男……地上に逃げ出したのよね~。アイツを捕まえるために私も地上に出てきたわけよ。


 アイツも元・魔王……名前は……。

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