2-22 2人 相まみえる
王様が玉座から立ち上がる。すると2人の付き人が左右から傅いて現れ、王様に武器を差し出している。
二刀流か!?
二刀流だが……。
「鉈かよ!!」
おもわず、ツッコミを入れてしまう。
いや、だって薪を割ったり魚を捌いたりするあの鉈だよ? 武器じゃないだろ。別にいいけどさぁ。
「不服か?」
「まぁ、なんでもいいですけど~」
どちらにしろ只の鉈ってこともないだろう。どす黒い魔力が刀身を包んでいる。魔力は暗黒系か、呪い系か、そんなところだろう。
当たるとヤバいんだろうけど、『気』を使っていれば刀身が俺を傷つける可能性は低い。
念のため『朱雀装』で籠手の装甲を強化しておく。
そのほかにも簡単な鎧も着込んでいる……鎧も魔力ありそうだなぁ。
今現在、この部屋は宮廷魔術師により呪文を唱えることが出来ない部屋になっている。
しかし、魔法の物品の仕様は可能。
王様は一騎打ちと言っているが、当然そんなことはありえない。国の命運がこの一戦にかかっているのだ。王様がたとえ死んだとしても、最後の1人まで諦めることはないだろう。諦めた時点で処刑される可能性があるわけだからな……仮にも戦争と銘打ってここにきているわけだし……。
ゆっくりと、王様が歩み寄ってくる。
迫力も自信も溢れている。武力でのし上がってきたんだろうなぁ。口が裂けそうなほどの満面の笑みだ。
『龍撃掌・一式』を放つため、前に手をかざすとすでにその場から飛び退いている。だが、俺の『龍撃掌』は手の平から出すわけではない。体のどの部分からでも出せるのだ。
その見えない『気』の攻撃をさらに王様は躱してみせる。
「!?」
なるほど、ぬかった!
1発目……手をかざしたときわざと、俺から見える位置に体を躱し、2発目が飛んでくる位置を特定できるようにして、本当に飛んできたと確信したとき、俺の死角になる場所へと飛び退いた。
そこから、すばやく鉈を振り下ろしてくる。
俺の見えない位置……すなわち後ろ。
2度も跳ねれば俺のやや後ろくらいには回り込める。自然に……『龍撃掌』を躱すのと同時に、見えない位置取りをしていたわけだ。
他の兵士が割って入ってこないのも頷ける。ハッキリ言って、この王様の一騎打ちの際には足手まとい、邪魔にしかならない。
それでも『気』を追える俺からすれば、簡単に防げる攻撃ではある。
振り向きざまに強化された籠手で鉈を受け止める。
「ほぅ、いい反応をするな小僧。思った通りだ!」
「なに!?」
驚いた!
鉈が粉々に砕け散った。
確かに『朱雀装』の装甲は鋼よりも硬いだろうが、『折れ』はすれども『砕ける』まではしないハズ…だとすると……。
「なにかしやがったな……王様……」
俺は苦笑いをしながら額から汗が流れていくのを感じる。
わからないということは意外と怖い。意外じゃないな……。
しかも、黒い魔力……呪いとかだろう……1時間以内に死ぬとかだったらどうしよう。
「なに、すぐにわかる」
すぐにわかる!? 即効性の呪いかよ! すげー怖いんですけど!
次の瞬間……籠手が粉々に砕け散った……。
「え?」
「理解しただろう、小僧。『双壊鉈』。この鉈が壊れたとき、触れた物品を一つ破壊することができる。魔法の物品であろうと、神器であろうと関係なく砕かれる」
呆然とする。
凄まじい魔法の物品だ……それをただの籠手に使ってしまうなんて、なんて勿体ない!
アホなのか、この王様は!
いや、違う。この籠手が魔法の物品と勘違いされるようにしているのは俺だ!
あと、この籠手。この世界の初任給で買ったある意味思い出の品なのになぁ。
「くっそぉ!」
「悔しがるのもわからなくもない。優秀な籠手だからな。もう片方も壊させてもらうぞ」
悔しいけど意味合いが違うよ、王様!
また、一気に駆け寄ってくる王様。
どうやら筋力だけじゃなく、履いてるブーツも軽装の鎧も魔法の品だろう。動きも早く不思議な感覚を味わう。
蹴り飛ばそうとすると、王様の身体がブレて一歩 右にズレている。
認識誤認の魔法の鎧か? だが、関係ない!
「龍撃掌・一式!」
「なに!? ぐはっ!!」
躱された足先からズレた方向に『龍撃掌』を放ち吹き飛ばす。
大理石の床に叩きつけられながら王様が転がっていくが、すぐさま兵士たちが駆け寄り体を支える。
その間に壊れていない方の籠手を外す。
「なんだよ、物品破壊って……もー! 今度はこっちから行くぞ! 『虎撃拳・零式』!」
転がった先の王様の目の前にすでに俺は到着している。
「な!?」
王様が言葉を一言 発したときには、鉈を叩き落し、鎧ごと腹に拳を叩き込み、ハイキックで離れた柱まで蹴り飛ばしていた。
そして、すでに柱で倒れている王様の目の前に立っている。
息も意識もあるようだが、ダメージは思いのほか大きいようだ。
立ち上がるどころか、喋るのもやっと、と言った感じだ。
「な……にをした? はぁはぁ……。籠手がお前に……力を……」
「この籠手は只の皮の籠手だ。まぁ、はじめての冒険依頼金で買った品で思い出のモノってだけだ」
そう言って王様の上に片方しかなくなった籠手を落す。
「そんな……バカ……な」
俺の魔法はどこから来ているか不審に思っているのだろう。使えないはずの部屋で魔法の物品以外で『龍撃掌』という魔法が使えるわけがない……と。
だからといって、種明かしをする必要もない。
「この部屋で魔法が使えない……残念だが俺は使える。使えなくなったのはお前たちだけだ。要するに自分たちの首を絞めただけだ。この部屋で魔法を使えなくしたのは失策だったな」
王様は万策尽きたと言った感じでうな垂れる。
「降伏か、死か」
俺は転がっている『双壊鉈』を拾い上げながら尋ねる。
場の空気が凍る。
しばらくの間がある。
王様は思案しているのか、息を整えているのかわからない。
「もし、降伏したらこの国をどうするつもりだ?」
「わかりやすくいえば植民地にする。と、言いたいところだが、王族、貴族がそのまま のさばられるのも邪魔だし、あと彼らがアンタラを許すかどうかわかんないしなぁ」
「彼ら?」
気配でわかる。
何十人かの人間が……いや、獣人がこの謁見の間に近づいてきている。
(どーぉ、終わったぁ?)
「大かたな」
何にもやっていないクロネコが今さらながらやってきた。
その後ろには、体格に合わない武器・防具をつけた獣人が殺気だっている。おそらく、訓練がてら処刑されそうになっていた獣人たちだろう。
それを見て、兵士たちも慌てて武器を構えようとするが、俺がそれを許さない。
「降伏するというなら、お前たちは獣人の奴隷になってもらうことにする」
「「なんだって!?」」
兵士たちはもちろん、獣人たちも驚く。
「なんで獣人たちが驚いてんだ?」
(説明してないから? 一応、女子供は攻撃しないように言ってあるからカンザキは狙われないわよ。)
「そりゃどーも」
(城内兵士たちのほとんどは殺してきたから、時間かかっちゃった。てへっ)
「『てへっ』じゃねーよ! むやみに殺すなよ。そして、そいつらの武器防具をコイツラに着せてるのか……」
(無いより有った方がいいかなぁーって思ってね。でも、やっぱり体に合わないと動き悪いわ~)
「とりあえず、後ろの皆さんが今にも襲い掛かりそうな雰囲気なんですが、抑えてくれませんかね~?」
かなりいきり立っている。
クロネコと話しているというだけで、俺を射殺さんばかりに睨み付ける奴も何人かいるし……。
「申し訳ないが王様、早々に決めてくれ。降伏するならするならこれから条件を色々言うし、しないなら、獣人たちの好きにさせなきゃならないから……俺まで巻き添え食らいそうだ……あと10秒で決めろ。じゃなきゃ、お前を殺して次に宰相に、大臣、将軍と順番に聞いていくだけだ。10……」
国を左右することを10秒で決断しなければならない。
だが、俺から言わせてもらえば宣戦布告した時点で国の方向性を決めているのだから、負けたときのことも考えておかねばならなかったのだ。
もちろん、俺たちが負けたときのことも考えていた。
「わかった。降伏する。」
まだ、2~3秒くらいしかたっていないが決断を下す。
おそらく、この場を適当に誤魔化し凌いで、あとで本格的に軍隊を動かすつもりだろう。
「そうか、そうあってくれると助かる。では、まずは降伏の証としてこの城にいる全員に『隷属の首輪』をつけてもらおう」
「「!?」」
彼らは『隷属の首輪』は獣人しかつけられないと思っていたのかね~?




