表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブナケデス  作者: あるばいと
クロネコ師匠編
52/57

2-20 謁見

 ファランディュア王国、謁見の間にて王様が将軍や大臣から定時連絡を受けていた。

 いつも通りの風景で特に変わったところは、今のところ(・ ・ ・ ・ ・)なかった。


 将軍が他国での出来事を報告している。


「……と、なっております。軍事力的には我が国の方が上ですが、戦争となれば敵国は同盟を組む可能性が高いかと思われます」

「ふむ、まぁそうであろうな」

「獣人の扱いを決めかねている様子です。排除か……共存か……」

「その動向次第で判断しろ。次!」


 将軍の一人が下がり、大臣らしき男が前へ出たところで、礼もわきまえず一人の兵士が飛び込んできた。


「大変です、王様! お逃げください」


 謁見の間にいる者 全ての目が今 入ってきたばかりの兵士に注目が集まる。

 大臣は改めて聞き直す。ただ事ではない雰囲気ではあるが、何を言っているかわからないからだ。


「無礼であろう、王の御前であるぞ? まぁよい。順を追って説明せよ」


 咎めなければならない行為が この兵士にはいくつもあったが、急を要しているのだろうとそのことは後回しにして説明を求めることにした。

 だが、兵士は深呼吸する間も惜しいようで、なかなか冷静になれない。


「敵です! 敵が場内に進入! こちらに向かっています!」

「何故、城内の侵入を許した? 見張りは? 敵兵の数は?」

「あ……その……」


 ここで初めて兵士が言い淀んだ。

 そのことに、大臣が首を傾げる。先程まで大慌てだった兵士が大げさに叫ぶかと思っていたのだが、逆に答えを言いあぐねはじめた。


「て……敵数は……」

「何人だ、ハッキリしろ! まさか100人以下なんてことはないだろうな! そんな人数で礼を欠き、王に向かい『逃げろ』などという失態を許すと思っているのか!?」


 ここで大臣は兵士が何に慌てているか考えがまとまった。

 おそらく暗殺者が城内に紛れ込んでいたのだろう。1人ではない、複数……20人前後か……城内兵に追わせているが、まだ捕まっていないので王の安全を考えここにきた……と、いったところだろう。


「貴様には後で処分を言い渡す。下がれ!」

「し、しかし、敵はもうすぐこの場所に……」

「暗殺者など恐るるに足らん! ここには近衛兵に将軍が参列しているんだぞ! それとも1000人以上がこの謁見の間に攻め込んできているのか!」

「いえ、決してそのようなことは……」

「貴様は2階級降格だ! わかったら下がれ!」


 大臣の言葉に呆然とする兵士だったが、新たに連絡兵がやってきた。


「2個中隊壊滅状態です! 王の撤退は完了されていますか!?」

「何だと!?」


 大臣は新たな連絡に言葉を失った。

 それは王をはじめ、この場にいる全員が同じことを思っていた。大軍が攻めてきているのだと……。


 1個中隊およそ100人……2個中隊なら200人が城内にひしめき合っている状態だ。

 しかもそれを壊滅させる人数ともなれば、城の中はとてつもない戦場となっているだろうことが想像される。しかも、初めの連絡が来てから さほど時間もたっていない。


「何故、すぐに連絡に来なかった! ゲラ将軍は何をしている!?」


 この場にいる将軍たちが大声で怒鳴り始めた。


「1個中隊が半壊した時点ですぐさま連絡にきました! ゲラ将軍は陣頭指揮をとっております!」

「敵の人数は!」

「それが……」


 連絡に来た兵士たちは口籠る。

 先ほどから人数を言い淀む。


「正確な数がわからなくても構わん! それに一大事だ、そんな大人数を見逃した見張りの処分は後回しにする。大まかな数を早く言え!」


 将軍らの焦りの言葉に何とか口を開く連絡兵。


「ひ……1人です」

「なに?」

「たった1人です」

「「……」」


 将軍も大臣も、もちろん王様も、文字通り言葉を失った。


「何者だ……そいつは……そんな豪傑、見たことも聞いたことも……」


 そこにウロウロと裸の男が謁見の間に入っていくる。


「何者だ、貴様!? 今、大事な……? ガラストナ大……臣?」


 目は虚ろで真っ裸、奴隷のように首輪をされて歩いているのは、まさにガラストナ大臣その人だった。そして その首輪を引いているのは小さな子供。


「な……んだ?」


 子供は謁見の間が珍しいのかキョロキョロと見渡している。

 その子供を見たとき連絡兵の顔が一気に青ざめるどころか、真っ白になっている。


「コイツです! コイツが2個中隊を壊滅させました!」

「……。……は? 何を言っておる?」


 連絡兵が何を言っているのかわからない、といった感じで大臣が聞きなおす。が、それよりも早く子供が口を開いた。


「お初にお目にかかります、王様。私はグレン国の代表の者です」

「グレン国?」

「グレン平原に出来た新しい国ですよ。ご存じでしょう?」

「あ? あぁ……あったようだな」

「そこに戦争をふっかけましたよね? この大臣を使って……」


 と、言ってガラストナを床に蹴り転がす。ついでに彼が持っていた宝剣もこれ見よがしに見せてから投げ捨てる。彼が間違いなくガラストナだとわかる品である。

 それを見て王は深くため息を吐き、冷静さを取り戻していく。大隊を引き連れてこの男は負けてきたのかと……。ただし、帰りがバカに早いことが少々気になったくらいだ。


「あぁ、確かに。それで復讐に来たわけか。残念だがお前たちはこの城で全滅してもらおう」


 王は将軍に目を向ける。

 それだけで、一人の将軍が前に現れる。

 が、子供は意に反していない。


「『お前たち』? 何か勘違いなされているようですね」

「なんだ。今さら命乞いか?」

「私は1人でこの城に来たんですよ……あぁ、クロネコは途中まで一緒でしたが……。それと復讐に来たわけでもありません」

「国が酷い目にあったから、復讐に来たわけではないと?」

「我が国は無傷ですから、ただ、宣戦布告状を頂きましたので、この国を植民地にでもしようと思いましてやってきたしだいです。大人しく降伏していただけるのでしたら、命だけは助けて差し上げても構いませんが?」

「『命だけは助ける』? たった1人で何ができる!? 運よくここまで来れただけの小僧が!」


 将軍の動きは素早かった。一瞬にして剣を抜き子供の目の前まで来ていた。だが、子供は顔色一つ変えず、将軍の頭に手を当てた。

 次の瞬間、将軍は見えない力にはじき出されるかのように壁に思いっきり叩きつけられていた。


「私も殺すのは本意ではないのですが、やるのであれば死ぬ覚悟くらいはしてください。もちろん、王族、貴族は処刑する方向になると思いますので、文字通り死に物狂いでどうぞ?」


 指を鳴らすと、白い小さな箱が現れる。そこから籠手を取り出し装備する。


 ◇


 途中で別れたクロネコこと私。

 獣人を処刑している場面に遭遇してしまったからだ。


 場内に入り、敵をバシバシ倒しながら進んでいくと、窓から兵士の訓練所が見えた。

 そこには鎖で繋がれ動きが制限された獣人と、完全武装の兵士たちが戦っていた。おそらく新兵の訓練と獣人を殺す覚悟……あるいは『慣れ』を……植え付けるためだろう。ほぼ、一方的に(なぶ)り殺しにしていく。

 一刀両断ならまだしも、兵の訓練の為に殺されていく。


(カンザキ……)

「んぁ? なんだ? ガラストナの謁見の間の案内が間違えてるのか?」


 カンザキは獣人の処刑に興味を持っていないようだ。彼の考え方が いまいちわからない。命を大事にしたいのか、それとも軽いのか……。

 今はその話はいいとして、私はこの状況を放っておくほど心は広くない。


(私はアレを助けておくわ)

「あぁ、いいんじゃねーか? 使えそうだし、むやみに殺されてると胸糞も悪いしな」

(あとで、合流しましょう。王は簡単に殺さないように! それこそ使い道が多いし、頭のすげ替えすると色々と面倒だからね!)

「大丈夫。殺すのは趣味じゃないから、出来るだけ殺さないさ」


 私はカンザキから飛び降りると訓練所へと、獣人たちを助けるためゆっくりと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ