2-15 町くらいに・・・村くらいにはなりました
獣人たちの襲撃があってから2ヶ月が過ぎ去っていた。
何がどーなって、こーなったのかわからないが一部、獣人がこの国……というか、この村で別荘のように暮らしている。基本的な家は森の中だが、たまに遊びに来る感じ? クロネコ曰く、アトリーヌの説得によるものらしい。
それにドワーフも住みついた。
これは神聖王国からの援軍……軍? 住人? 教会をこの国に建てるためらしい。前に晩餐会で見た第3位司祭だか第4位司祭だかのドワーフのおっさんが先頭にやってきたのだった。
人もいるが大半はドワーフの信者……しかも、職人が多い。ここに移住することを望んだらしい。俺が神の使者という触れ込みで……。俺自身はそんなこと言った覚えはないのだが、罪悪感が残るなぁ。
「お久しぶりですな。カンザキ殿……いや、今はカンザキ王ですかな?」
「晩餐会以来ですね。王ではなく責任者っといったところでしょうか」
「国が出来て、その国の責任者は王ではないのですかな?」
「一時的な責任者……ですかねぇ。仮ですよ」
王も決まっていないまま、近隣の大国にバセリオンとクロネコが『新しく国を建てました。よろしくね』と連絡しに出歩いている。
クロネコ自体は数百匹いるが、転移魔法が使えるのは一匹だけ。別にそいつが本体というわけでない。
『呪壁の指輪』……この指輪を持っている奴だけが転移魔法を使えるらしい。
他国がウチの建国を信用しているか していないかは わからないが、元々エルフの土地を国として起ち上げたことを驚いているとのことだ。
お祝いの言葉を述べに大臣クラスの人間が集まって来るとのことだが、さらに1ヶ月ほど先になるだろうから、それまでにちょっとした場所をドワーフのおっさんたちに作ってもらおうと考えている。
土地を平らにするのはすでに『龍撃掌・一式』を使いまくって1日がかりで整地してあるので、いつでも家を建てられる。
もちろんエルフたちが作った家もある。
木造住宅が基本だが、石造のモノも建てたい。
「もっとも、教会を先に作らせていただきますがな!」
釘を刺された。
今現在、住民の割合はエルフ4、ドワーフ3、獣人2……あと俺たち人族 は1。
どの住民も仲は悪い。とくにエルフとドワーフは口喧嘩が絶えない。建物に関しても木だの石だので揉めたり大忙しだ。仲介役にロッサ、レグイア、セバスチャンが駆り出される。殴り合いの喧嘩もしばしば起こる。
最近、レグイアはここの生活に慣れてきた……というか、王族でないことを自覚し始めたといったほうがいいだろう。自分の身を守ることを考えるようになってきた。
エルフもドワーフも獣人も半端なく強い。下手に怒らせると鉄拳制裁が飛んでくる。そのため、相手の意見を尊重するようになってきた。仲裁に入るのはかなりの難易度を要求されるせいもあるだろう。どちらか一方の肩を持つと、問題が拗れて痛い目を見ることを学んでいた。
ただ、悪を天秤にかけても後でしっぺ返しを食らうということも身体に叩き込まれている。ドワーフなどは曲がったことが大嫌いで自分に非がある場合は、ちゃんと話せば丸く収まることもレグイアは覚えてきていた。
家造りの他に、農業も始めた。エルフもドワーフも獣人も知識が豊富だ。むしろ人族の俺たちが何も知らない。ほとんど役立たず。
話を聞いて、お手伝いをするくらい。
商業関係は、まだ成り立っていないが、ドワーフがすでに工房を立てることを前提に話しはじめている。
俺が仮の代表者だが、基本的にはクロネコと03とあと1名を引き連れて、神聖王国の冒険者ギルドに向かい依頼をこなし、資金調達と物資調達を行う。週に一度くらいしかココに戻ってこれないことが多かった。
Bランクの依頼を複数こなす。Aランクの依頼は無いので仕方ない。それでも資金はほとんどない。特産物も産業もないからな~。
しかし、朗報!
エルフの妙薬が高値で売れることが判明。
ドワーフの銀細工などが高値で売れることが判明。
ハイドロビューム洞窟から銀が出ることが判明。
獣人の狩りで食料の調達と販売が可能に……しかも、販売はクロネコがいれば獣が取れづらい地域に販売も可能になる。
そして、クロネコの転移魔法があれば転売が可能に……シルクロードみたいな道が無くとも大陸の端から端へ荷物を持っていくだけで、安いモノが高いモノに大変身!
多少の運転資金から、ある程度の資金調達のめどが立つ。
ただし、これも『呪壁の指輪』持ちの黒猫がいるときに限るのが欠点。
当然、考えるのは『呪壁の指輪』の複製ができないのかだが、無理らしい。かなり制作するのが難しい魔法の物品らしい。クロネコやエルフ、ドワーフたちが総出で研究しても全くわからない。魔法使いが魔法の物品作ってんじゃないのぉ~?
国という感じではないが、村くらいには出来上がっている。
他国から来るであろう大臣たちが、この状況をどう見るか……。そのことについて、第3位司祭ダラン・クネガやエルフ、獣人のフェガートなどと相談することになった。
ウチらのメンバーは俺、バセリオン、ロッサ。
「てっとり早く戦争になるだろうな。俺たち獣人を殺すことを目的としてる国があることは間違いない」
椅子に寄りかかり机の上に足を投げ出すフェガート。
「ならどうするんじゃ? 他国の大臣が来そうなときにおぬしら獣人たちは森の中に隠れておるか?」
「それだと、一生、森から出てこれないでしょうね。この村に定期的に間者くらい送って来るでしょうから。それくらいドワーフはわからないのかしら?」
この村でのエルフの代表をしているネイビーという名の女性。 肌は白く、銀髪をなびかせている精霊魔法使い。ご多分に漏れずドワーフ嫌い。かといって獣人も好ましく思っていないようだ。
彼女は初期からこの村にいるメンバーで愛着が出てきたのか、この村に居座っている。エルフの中には世界樹に戻ったり、また、この村に来たりするメンバーもいるが彼女は戻る気はないらしい。理由は知らない。
ネイビーの言葉を引き継ぐ俺。ドワーフ云々の部分は引き継がないよ? 俺はドワーフ好きだし、エルフも好きだよ。もちろん獣人も……。
「隠れてもしょうがないだろ? 堂々としてれば? 戦争になるなら、俺とクロネコと03で片づけるから」
「気楽に言ってくれるなぁ」
フェガートが呆れる。
「確かに、クロネコさんとゼロスリーさんの強さは知っているが、カンザキ少年が強いというのが未だに信じられん。あの時の攻撃 全てがクロネコさんだったと思っているからな」
忙しくてフェガートと手合せしている暇もなかったため、俺の実力が知られていない。バセリオンとロッサが力説するが、人間の範囲内ということにされてしまう。
別にいいけど、クロネコと03は『さん』付けなのに、俺は呼び捨てか。
「それでもクロネコさんとゼロスリーさんのどちらかが、この村に残っていればそれだけで安心感がまるで違うけどな」
「南の神聖王国が攻めてくることはないじゃろう。カンザキ殿とクロネコ殿に救われたと言っても過言ではない。それの神の使者という肩書もあるしのぉ」
「西も問題ないわ。エルフの住む世界樹があるから、エルフと戦わずにあそこを抜けることは出来ないわ」
「それに獣人もいる。要は北と東をクロネコさんとゼロスリーさんに見張ってもらえばいいわけだ」
ほとんど闘っていない03の評価がやたらに高い。この村での治療を一手に引き受けているからというのが大きい。なにせ、喧嘩の絶えない村だ。
それを、息も切らさず平然と回復魔法を唱え続けるのだから、信頼が高いのだろう。
それに比べて、俺の活躍の場が無いこと……。
「最悪、戦争になるにしても、3ヶ月は先になるわ。北か東の国の大臣が来て、早々に宣戦布告したとしてよ、いったん国に戻って兵を引き連れる。来るのに1ヶ月、さらに往復で2ヶ月」
「それなら、神聖王国だけじゃなく、エルフも獣人も援軍がよこせる」
「十分じゃな」
他国の大臣が来て戦争になることを視野に入れる。というか、戦争する気満々である。
こんな弱小国でこの平原を取り込めるなら、どこの国だって戦争するだろう。いままではエルフの領域だから遠慮していただけで、人や獣人の国ともなれば容赦するはずがない。気になるのはエルフの動向くらいだ。が、すでに人間に国を作らせているのだ。他国は持ち主が変わることくらいで問題が無いと考えているだろう。
◇
そして東の国の大臣がやってくる。
西の軍事国家……ファランディュア王国。
100名ほどの中隊を引き連れて……。
ちょっと更新 遅れ気味
ヤル気はあります!




