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ブナケデス  作者: あるばいと
クロネコ師匠編
45/57

2-13 地上部隊、夜襲を受ける

 カンザキとクロネコが、ハイドロビューム洞窟に入ってから、すでに夜中になっており作業を中断し一時的な宿泊場所で身を休めることにした。

 この場所も先程、建て終わったばかりだ。ただ広い部屋があるだけの簡単なモノだが雨風が防げるし、地面に直接寝なくてもよい。

 残念なことはベットなどは用意するほど余裕が無いので、寝るためには、寝袋か草や葉を敷くくらいのものだ。


 寝る前に見張りを交代で出すことにする。エルフ4人に対し、バセリオン達の大人メンバー1人を出す。レグイアは働いたことが無かったのか、筋肉痛でもう動くことができない。

 バセリオン、ロッサ、セバスチャンが出ることになる。

 この頃には、エルフ達とそこそこ談笑するくらいにはなっていた。


 初めはロッサ、およそ2時間半後に交代でバセリオン……セバスチャンと続くはずであったが、ロッサとバセリオンが交代して1時間ほどすると。


「敵襲!」


 バセリオンはハッとして声のする方を向く。

 今『敵襲』と言い切れるということは襲われたということだ。ただ、人影を見かけただけで『敵襲』ということはない。


 エルフの1人が全員をたたき起こす。

 その間にバセリオンは剣を抜き敵を確認しようとしたとき、すでにそれ(・ ・)は目の前にいた。


 盾も剣も構える暇さえない。

 即座に身をかがめ、鎧で『何か』から放たれる攻撃の衝撃を受け止める。重たい一撃だ。体が簡単に宙を舞い、半回転して地面に叩きつけられる。

 バセリオンは、すぐに立ち上がり2撃目は盾で『何か』の攻撃を弾いた。


「やはり、獣人か!」


 あらかじめ、このあたりに獣人がいることは聞いていたが、こうも早く襲ってくるとは予想外だった。

 周りのエルフ達を確認すると、ほとんどが1対1での戦闘になっている……いや、獣人がそうしている。少なくとももっと多い人数の獣人が取り囲んでいる。


 バセリオンは自分の目の前のトラの獣人に問いかける。


「どういうつもりだ? それだけの人数がいて全員で襲い掛からない?」

「『全員で』? お前たちみたいな脆弱な人間相手に……か? 逆だろ? 1対1でも多いくらいだ。俺1人でお前みたいな奴なら5~6人相手に出来るんだ」

「そいつはオモシれぇぇっ!!」


 トラの獣人が即座に後に飛び退いた。

 あと1秒遅ければ真っ二つになっていただろう。地面に剣を突き刺し赤髪をなびかせロッサがその場にいた。


「じゃぁ、俺とバセリオンの2人と闘ってもらおうか! クソトラ!」

「ロッサ! 無駄に挑発するな。相手の目的もわからないし、2対1は騎士道精神にも反する。ここは俺一人で十分だ。子供の護衛を!」

「そんなもんクソエルフ共に任せてる! アイツラも十分強ぇから大丈夫だ。そんなことより頭を潰すのが手っ取り早ぇーよ!」


 ロッサが素早い剣戟一線を放つ。その剣をトラ獣人が爪で抑える。が、ロッサの後ろからバセリオンが入れ替わるように前に出ると神聖魔法をトラ獣人の腹に叩き込む。


「フォース!」


 光がトラ獣人から膨れ上がり大きく吹き飛ばし口から血反吐を吐く。

バセリオンは2対1になったことを不本意に思いはするが、それどころではないこと理解する。


「大口叩いたわりには大したことないんじゃないか、クソトラ?」

「いや、そーでもないぞ」


 バセリオンの腹から血が噴き出る。トラ獣人が吹き飛ぶ前に先程 攻撃したところにもう一撃を加えて鎧を破壊していた。


「多少は出来るようだな。だが、急がないと子供たちが皆殺しだぞ?」


 1対1になっていない獣人たちは子供を狙っている。どうやら、バセリオンなどは足止めの為にいるらしい。エルフたちが善戦しているが、1対1にされてしまってはどうすることも出来ない。


「テメー! 子供を人質にするつもりか!」

「返してもらうのさ、お前たちに奴隷にされた獣人の子を……」

「アトリーヌの事か? 彼女は彼女の意志で我々についてきている。お前にとやかく言われる筋合いはない」

「自分の意志? 笑わせる。命を握る首輪を付けて『自分の意志』もなにもないだろ!」

「クックック、バカじゃねーの、このクソトラ! よく見ろ、あのクソガキ獣娘は首輪なんぞしてねーよ! 攻撃しねーから見てみろよ」

「なに!?」


 暗闇の中、トラ獣人は目を細める。

 そして、すぐにロッサに向き直る。


「あぁ、驚きだ。確かに首輪をしていない。人は新しい拘束方法を見つけ出したらしいな」

「あくまで曲解するつもりか?」

「人と獣人は相容れない。そんなことは我々 獣人だけでなくお前ら人もわかっているだろ! それともなにか! 仲良く手でも繋いで新しい国でも作れると頭の悪いことを考えているのか!」

「まぁ、そんな馬鹿がいるわけだ」

「そんなこと信じられると思うか!?」

「安心しろ、俺も信じられん!」


 再び剣と爪が弾きあう音が響く。

 この状況で、バセリオンは戦いを止める方法は思いつかなかった。


 カンザキ達が洞窟に潜ってからおよそ20時間くらいの出来事だった。


 ◇


 トラの獣人の男の名前はフェガートといった。身長2mちょうど。体重150kg。普通の黄色と黒のトラ柄模様だ。

 世界樹の森 東部の獣人の(おさ)的存在だ。


 バセリオン達がココに拠点を築こうとしたことはすぐにフェガートの耳に入る。その日の昼にも攻撃をしようかと考えていたが、エルフがいることが彼らにとって少々やりにくいところではあった。

 世界樹のエルフ達と事を構える気はない。

 幸いにして、世界樹からエルフが移動しグレン平原に来たという報告は受けていないので、他の森から来たのであれば、問題ないと判断する。

 あとは獣人の子が囚われているという情報も確認した。


 ハイドロヒューム洞窟に挑むような場所に陣取っているため、入れば命を落とすので『放っておいてはどうか?』という案が浮上したが、獣人の子を見殺しにするわけにはいかないということで、早めに決行することになった。


 夜、身を隠す。

 とくにエルフにはインフラビジョンという熱探知の暗視能力があるため隠れるのはむずかしい。それでもわずかな間なら、水をかぶり体温を下げわかりにくくすることができる。

 初めの一撃で声を上げる前に沈められれば、獣人の子の救出は楽になるハズだった。


 だが、エルフもそんなに甘くない。

 一撃を加える前に見つかってしまう。


「敵襲!」

「チッ!」


 一撃を(かす)めただけで回避される。そのエルフは部下の獣人に任せて次の手に出る。この部隊だか集落だかを制圧することにする。

 1対1の状況を作り上げ、人数を駆使して人質の救出を優先させることにする。



 グレン平原に家を建てる……こんなことを考えるのはエルフではない、人に決まっている。

 報告では大人の人間が三人いたはずだ。奴らを捕まえれば……あるいは殺せば解決する。


 人間には同胞が捕まり奴隷として捕まっている。殺すことに抵抗はない。捕まえて奴隷にするということは考えていない。人間を生かしておくというだけで腹立たしいし、獣人より力の無い人間など奴隷としても必要ないからだ。


 彼らとの戦いで思いのほか激しい抵抗を受けたが、制圧に成功した。

 人間もエルフも地面に血だまりに這いつくばっている。


「人間風情が……」

「フェガート、大丈夫か?」


 猿の獣人が心配そうに声をかける。

 フェガート右目が切られて血が流れている。


「んあ? あぁ、大丈夫だ。目ん玉まではイッてねーよ。瞼だけだ」

「内臓もやられてんだろ?」

「それも壊れちゃいねーよ。それより、獣人の子は? 首輪をしてないようだが、どーなってんだ?」

「それがわかんねーんだ。たぶん、洗脳の類なんだろーけどよぉ」


 両手を広げて頭を振る猿の獣人。


「状況がわからなんな」

「とりあえず、連れて帰って確認した方がいいだろう。うん? こいつら、まだ息あんのか?」

「放っておけ、みすみす楽にしてやる必要もねえ。苦しんで死んでいった方がいいだろ」

「なるほどな。そーすっと、こいつら運がいいんだか悪いんだか、死人は出ていねーよ。放ッときゃー死ぬだろうって感じだがな」


 バセリオンやエルフたちは、まだ息があった。猿の獣人が言ったように死人は出ていない。だが、気を失い神聖魔法も唱えることも出来ない。

 彼らが言うように、死へと近づいているのは間違いなかった。


 そんな彼らを放っておいてアトリーヌを連れてフェガート達は森に帰ろうとしていた。獣人たちもかなりの深手を負っている。

 フェガートと猿の獣人はそれ程でもないが、腕や足が折れているモノや、肩を弓で貫かれている者など多数いる。

 敵のトドメより味方の傷をなんとかしたかった。

 ここで、もし敵に援軍でもいれば目も当てられない。


 そう思っていると、獣人の一人が叫んだ。


「敵襲だ! 隠れていたか、援軍かわからないがっ!! ぐぁ!!」


 何かに殴られたように大きく飛ばされる。

 相手の姿を確認できない。


「魔法使いかエルフだ! 遠距離に気を付けろ!!」


 獣人たちが次々にやられていく。

 魔法攻撃だとしても目視できない。見たことのない魔法だ。


「建物や木陰に隠れろ。相手の場所を確認するんだ」


 飛ばされた方向をみる。

 夜行性の獣人の目をもってしても、かなりの距離に人影らしいものが見える程度だ。

 あの距離から魔法を撃ってきているのだろうか?

 残念なことにフェガートには魔法の知識は無い。


「フェガート!?」

「なんだ、エト! 敵の攻撃を受けて忙しい!」

「うんなの、見りゃーわかる! それよかエルフ共が光ってるぞ!? これは回復魔法じゃねーのか!?」

「!?」


 慌てて先程 倒した聖騎士バセリオンとロッサに目をやる。彼らも当然のように光っている。いや、光が降り注いできている。

 フェガートの仲間に回復魔法を使うモノはいないが、これが それであろうことは容易に想像がつく。


「倒れている者にトドメを刺せ! この状況で回復されたら厄介だ!」


 大慌てで指示を出す。

 多少、敵に姿を晒し味方が何人か倒されるだろうが数を減らすことを優先することにした。

 見えない敵に今までの敵の復活。挟み撃ちにされる。最悪全滅しかねない。

 だが、この指示は裏目に出ることとなる。


 獣人たちが、回復するバセリオンやエルフを狙えば、隠れてはいられない。

 それは、長ったらしい呪文詠唱が終わったクロネコの攻撃範囲内で姿を見せたことになる。

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