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ブナケデス  作者: あるばいと
カンザキ師匠編
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1-2 異世界に行く前にキメラと遭遇

 キメラが出現した瞬間、躊躇なく山羊の首筋をハイキックで力の限り振りぬき、反撃前にすぐに下がる。

 その攻撃で山羊の頭は撃沈した。グッタリとし動く気配はない。

 おそらく山羊の頭が一番厄介だろう。呪文を使うと聞いたことがある。


 神様(仮)は一瞬 唖然としたがすぐに興味深そうに眺め出した。


「凄いなぁ。出てきた瞬間の油断しているところを狙って弧を描くように綺麗なハイキック。いきなり戦力ダウンだよ。俺からチート能力もらわなくても十分 強いだろ」


 だが、俺の方は神様の声に反応している余裕はない。

 異世界に連れて行く……という目的が神様にはあるから殺されることはないと考え、かなり深くまで踏み込んだ蹴りを放ったのだ。


「よし、キメラ! その人間を焼き払え!!」

「殺す気かよ!?」


 異世界に連れて行くという目的をすっかり忘れて殺す気満々でキメラに命令を下す。

 ドラゴンの頭が灼熱の炎を吐いてくる。距離を取っていたために全力で後退すれば、ギリギリで躱せるが、背広に炎が燃え移った。

 慌てて炎を払い落とす。……くっそー、安物の背広だって ばかにならない値段なんだぞ!


 炎の息を吐いたばかりだ。間合いを一気につめれば隙を衝けると思ったが、俺の首筋当たりを毒蛇の牙が襲い掛かっていた。

 ギリギリのところで、掴みとり蛇の頭を捻じり堕とす。


「ホント凄いな、お前。普通の人間が死角からの攻撃を受けるなんて考えられんぞ?」


 二体の頭を失ってもなお襲い掛かってくるキメラをなんとかかんとか躱しながら、神様の問いに答えてやる。


「伊達に武術を習ってなかったからな。俺はこう見えても師範代だぞ。『気』の運動を感知することならできなくもない」


 体内に流れる『気』の流れと、自然にある『気』を感知し闘いに生かす。そんな武術を会得している。


「いや、もう、お前の方がチート能力持ってるんだから、俺が与えなくてもいいんじゃないか?」

「そー言う問題じゃない! そんなことよりコイツを元の世界に返せ!」

「いやいや、お前はやればできる子だからキメラを倒すんだ!」

「お前が呼び出したのに何言ってんだテメーは!」


 ドラゴンの頭とライオンの頭は虚を衝く攻撃を行わない。フェイントもない。正統派な力押し。逆に言えば自信があるし、それだけの力がある。普通の人間が勝てる要素が見当たらない。

 『気』を使えるといっても、衝撃波みたいなのを出すことなどできない。体内にある『気』の量ではちょっとした瞬発力を生む程度だ。


 攻撃を回避するだけで手一杯だ。下手な攻撃をすればカウンターの一撃で死にかねない。だからといって逃げたところで追いつかれるのは自明の理。

 決着をつけるしかないわけだが、勝つ手段が思いつかない。


 仕方ない。死ぬよりはいいだろうと少し焦げてしまった背広を脱ぎ、ネクタイを緩める。

 クールビズとかある会社ならネクタイが無いのだろうが俺の通勤している会社はネクタイは必須だ。設計士なんだけど、営業もやるし仕方ない。


 キメラは俺の行動が奇妙なのか、じっくりと俺の動きに攻撃の機会を伺っている。ちょっとだけみせた俺の隙をキメラは見逃さなかった。

 だが、それは作られた隙だとはキメラは気付くことはなかった。


 ドラゴンが大きく息を吸い込む。わかっている、ブレスを吐く予備動作だ。その頭に背広を投げ込み視界を奪う。

 だが、容赦なく背広をブレスで燃やし尽くす……が、その炎は明るすぎた。近くで燃え上がれば大きな死角になる。

 次の瞬間には俺の蹴りがドラゴンのコメカミあたりにヒットし昏睡状態に落としていた。

 直線に来る炎の息は狙われなければ回避は難しくない!


 ライオンの頭も燃える炎で視界を数秒奪われていた。十分な時間とは言えず、ライオンの爪の一撃で胸を浅く切り付けられたが、背中に飛び乗ることが出来た。

 あとはネクタイをライオンの首に巻きつけ力の限り引き上げればお終いだ。一~二分程度でグッタリするので、それで開放する。

 死んではいないだろうが、殺すのが目的でもない。


 神様が両手を高く上げて拍手している。


「うわっぁあ!! すげー、素手でキメラ倒してやんのぉ!! ブラボーブラボー!!」

「お前、ホント ムカつくな?」


 疲れたのでベンチに座り直し、チョコレートを開ける。汗だくで食べるチョコレートはあまり美味しくない。しかし、そこそこ美味しい。さすが明治だ!


「よし、なかなかいい試合だった。褒美に傷を治してやろう」


 元々 お前のせいだという気持ちはあるが、へそを曲げられても困るので黙っている。深い傷ではないが治せるなら治して欲しい。


 手をかざすと、光が発生する。

 回復系の魔法だろう。さすがにそれくらいは予想がつく。詠唱無しに呪文を発動させる辺りは神様っぽいが……。


「キメラを呼ぶときは詠唱したのにな」

「神様にも得手不得手があるんだよ!」

「普通、神様って得手不得手は無いんじゃないか?」

「あんの! まったく、近頃の若いもんは……」

「若者かどうかは全く関係ないだろ」


 しばらく動きたくないのでベンチでぐったりしている。コーラもない。……コンビニに買いに行くか? いや、何考えてんだ俺!? 疲れたなら家に帰ればいいじゃない。マリーアントワネットだったらそういうに違いない!


「俺は帰るぞ、神様!」

「気を付けてな」


 あれ? 意外とあっさり帰してくれんな? まぁいい、絡まれるよりも速攻 帰ろう。


 そして、家に帰って気が付いた。賠償金とか取れたのではないかと……いや、その前に現実感がなさすぎるがそっちはいいのか? いや待て、背広とネクタイを一着ずつ駄目にした! 休日に買いに行かないとクリーニングにも出せなくなる。そんなにたくさん背広は持ってない。

 それより、よく俺 生きてたな……あれ? やっぱり夢か……。


 時計を見ると夜中の1時半を回ったとところ。だいぶ時間が経っている。コンビニからウチまで十五分。夢だとしたら夢遊病者じゃないか?


 疲れているせいかワイシャツのままなのに眠気が襲ってきた。

 せめて、服を脱ぐくらいは……と思ったが、脱ぎかけでソファーに横になってしまった。


 そして何時間か寝ただろう……いやに目覚めがいいが、目を開ける気になれない。


 寝るんじゃなかった……怪しいと思ったんだよ。あんなにすんなり神様が家に帰ることを拒まなかったことが……。


 ソファーだったはずが、硬い土の上であることがわかる。

 開けたくない瞼をちょっとだけ開ける。

 どう見ても草原。


 寝返りを打ち、反対側も見る。

 どう見ても林。


 もう面倒臭ぇ!!!


 ガバッと起きたら異世界だった。

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