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ブナケデス  作者: あるばいと
クロネコ師匠編
37/57

2-05 エルフの森は迷いの森

 私たちが森に入って3日目の夜。

 まだ、世界樹の(ふもと)につかない。山じゃないのに(ふもと)と言うのか は置いておいたとして……。

 未だに着かないのは距離が遠いからだけではない。同じような場所を行ったり来たり……ようするに迷子だ。

 カンザキがときたま近くの木や石を丹念に見ながら進んでいるが、カエナ達は真っ直ぐ進むのみ。そんな感じで3日も過ぎた。

 森の中に野営地を作り一息ついているところで、いい加減うんざりしてきた。


(カンザキ! いい加減、彼らに教えなさいよ。初めは北にあった世界樹が今は南に見えるんだから!)

「私も不思議に思った! ずーっと真っ直ぐ北に進んで世界樹 目指していたはずなのに、いつの間にか後ろに世界樹があるの!?」


 カエナは石の上に座り、フォークでスーパーカップとかいうカップ麺を食べながら興奮気味に唾を飛ばす。

 焚火をし みんなで夕食を始めている。

 買い込んできたはずの食料はカンザキが『W  B(ホワイトボックス)』という魔法の箱にしまってある。

 元王子・現奴隷のレグイアが自分の荷物もそ こ(ホワイトボックス)に入れろ、と騒いだがぶん殴られて押し黙った。おそらく、嫌がらせでレグイアに荷物を持たせているのだろうが、面倒だから()っちゃえばいいのにね~?

 今はテントの準備をさせている。そーいったことは奴隷の仕事だ。もちろん監視は必要なのでセバスチャンが付き添う、アンパンと牛乳を両手に持ちながら……。それ以外が食事 兼 休憩中。というか今日はここで野営。


「たしかに変なんですよ。世界樹を目指しているはずなのに……」

(だ・か・ら! なんでカンザキは教えないのかが、私にはわからないのよ! 黙ってるから考えがあるんだろうけど、私はいち早くちゃんとした場所で休みたいのよ!)

「そうカリカリするな。ほら、これでも食って落ち着け」

(こんなもんで、騙されないわよ! って、あら、やだ、美味しい!)

「食べてカルカン、猫、まっしぐらだ!」


 鉄で出来た円柱上のモノから魚のほぐしたようなモノが皿に盛りつけられ、私の前に出され食す。

 これは美味しい! ビックリだ!


(ナニコレ、アンタガ作ッタノ?)

「なんで片言なんだ?」

「前から思っていたが、この鉄の入れ物を作っている職人は何者なんだ? 相当高い技術だろ」

「職人じゃないけどな」

(魔法使いってことね。こんなオリジナル魔法が使えるなんて素晴らしいわ。密閉された鉄の中の空気を無くせば食料の保存がきくものね)

「なんか、色々ツッコミたいがとりあえず置いておくとして、空気について知ってるのか?」

(どーいう意味? あぁ、そこらのバカと私を一緒にしないでくれる? 空気に含まれる元素なんかのことでしょ? それくらい研究してるわよ。ようするに食べ物が腐る現象が空気に触れることに関係があるってことを知っているのかってわけよね)


 カンザキはかなりの知識を持っていることはここ3日でわかった。

 夜になると簡単な勉強会を開く。驚いたことにこのクラン(現在はパーティーと言って差し支えないが)は全員、語学が出来る。読み書きは完璧だ。一般語が使えない者はいない。

 それもそのはず、カンザキ、私は問題ない。カエナも司祭の家でセバスチャンから教育を受けている。聖騎士も必須科目なので大丈夫。アトリーヌは元々、翻訳の為に連れて来られているし、レグイアは元王子だ。教育を受けないはずはない。


 そんなわけで、冒険者グループとしては異例の高水準の教養がある。数学、語学、社会学、薬物学、魔法学。この辺が基礎になるがカンザキは数学と語学が極めて高い、しかし社会学、薬物学、魔法学については話にならない。


(いったい、どんな暮らしをしていたのかしらね~?)

「何か知らんが、俺の悪口だろ」

(アンタ、滅茶苦茶なのよね~。って思い出した! さっさと世界樹に行きたいのよ! カルカンで誤魔化されるところだったわ! アンタこの森にエルフが結界 張ってるの知ってるんでしょ!)


 カンザキ以外のみんなが驚く。エルフの結界に気づいているのは私とカンザキくらいだろう。ただし、私は魔力感知で気づいたのだが、カンザキは魔力感知なんて出来るとは思えない。


「まぁ、エルフが住む森だから、人間に方向を誤認させる魔法陣か結界があるのは当然じゃないか? ほら、俺は魔力ないんだろ? だから地道に探さないと見つからないかなーって思って……」

「え? なんでカンザキはみんなに教えなかったの?」


 カエナの疑問はもっともである。

 私もカンザキが結界を解除できるものを探していると思っていたが、みんなに黙っていることに疑問を持ちつつも理由があると思っていた。だから3日も我慢していた。ひょっとしたら、みんなを試しているのかもしれないと思って……。


「え? みんなは魔力感知で結界の解除できる場所を探っていたんじゃないの?」


 してない! 誰一人そんなことしてないし、そんな魔法もない! 、魔力感知は魔力が働いているのがわかるだけで、具体的な構造がわかるわけではない。これだから魔法学が無い奴は困る。


(そんな便利な魔法があるわけないでしょ! 魔法はイメージで何でもできると思ってんの! バカじゃないの!)

「え!? 違うの! 魔力をイメージで形にして、それを放つんじゃないの!?」

(バカじゃないの! そんなんだったら呪文詠唱なんかいらないでしょ! 魔力原子と魔粒子の結合の配置換えを行って出来るモノなのよ。呪文詠唱により配置を変えて、印を結ぶことで量を変える。杖などは作業の効率化や微調整に必要なモノよ。魔力原子にないものは、いくらイメージしたって魔力原子がなければ構築できない。魔法は万能じゃないのよ!? わかる!?)

「いや、何を言っているかがわからない。ようするに遺伝子組み換えみたいなものか?」

(あんた……どこで遺伝子なんて言葉を聞いたの?)


 そっちの方が驚きだ。遺伝子と言う言葉 自体、知られているハズのないものだ。なにせ私の師匠が発案したものだ。この言葉を知っているモノは師匠とその弟子くらいのハズ。


(アンタの魔法の師匠って誰?)

「そんなのいないけど? そんなことより、そうすると みんなはただダラダラと進軍していたわけかぁ」


 この歳であんだけの魔法が使えるのに師匠がいないわけがない。なにか隠している……が、何か隠しているのはカンザキだけじゃない。私もだ。お互い深く聞かないってことを、暗に示唆してきたわけか。


「あのー。どうすれば世界樹にいけんるんですか? 何か探せばいいんでしょうか?」


 アトリーヌが今まで『ダラダラ歩いていた』と言われてあせっているようだ。カエナなんかはどっしりと構えている。『だから何?』と言わんばかりに……いや、むしろ『お前が見つけられないのが悪い』といったようにも見える。


(もう面倒だから入り口を探すのを諦めて、ぶっ壊しましょう! カンザキの全力『龍撃掌』の0~2番でぶっ壊れるでしょ!)

「いやいやいや、駄目でしょ! なんでそんな敵対的に侵入しようとしてるんですか!」


 私の言葉に反対するバセリオン。

 男がそんな小さなこと気にしてたら大物になれないわよ。まぁいいわ、それじゃぁ他の手を考えましょう。


(じゃぁ、その辺にいるエルフを捕まえて拷問して無理矢理入り口を開けてもらいましょう。場合によってはそのエルフを人質にとって……)

「待てー! クソ猫! 敵地か!? ここは敵地なのか!? エルフに手伝ってもらうんだろ! アホか? アホななのかお前!」


 スーパーカップを食いながらもツッコミを忘れないロッサ。かなりまき散らしている。テンション高いなぁ。


(結構いい手だと思うんだけどなぁ~)

「たしかにあんまりずーっと監視されていてもいい気もしないしな」

(気付いているのは私とカンザキだけか……。折角、神聖王国のレグイアの監視を振り切ったと思ったら世界樹からの監視だもんね~。捕まえて自白させたくもなるわよ)


 森に入ってからずっと監視されていた。エルフが二人。それも半日置きに一人が交代。この森にいる間中ずーっと見張っているつもりだろう。


 恐る恐るアトリーヌが手を上げる。


「あの~。提案があるんですが、監視のエルフさんがいるんですよね?」

(いるわよ。こっちの会話までは聞き取っていないみたいだけど……)

「でしたら、その方たちに、カンザキ様が神聖王国で会ったエルフのエリス様の手紙を見せるというのはいかがでしょうか?」

(…… ……)

「…… ……」

3日間インスタント食品とペットボトル飲料

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