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ブナケデス  作者: あるばいと
カンザキ師匠編
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1-1 異世界に本当に行くのか?

 こんにちは、または、こんばんは、昔話をすることになった神崎です。

 異世界に行くことになったのは24歳のとき、切っ掛けは自分を神だと名乗る不審人物に会ってから……。



 その日はいつもどおりの仕事の帰り、コンビニに寄ってコーラとチョコレート、それにから揚げ弁当を買って、大きい公園を抜けて家へと向かっていた。


 だいたい仕事が終わるのが遅い。朝8時から出勤して現在23時。終電でやっと帰宅を許される我が会社。残業代が辛うじて出してもらえてはいるが、深夜手当などは付かない。しかも、関係ない業務も多い。


 この日は雲が出ていて公園内は街灯が灯っていても薄暗い。本来ならそれ(・ ・)を見逃していてもおかしくなかった。


 公園の中央近く……。

 異世界への扉?

 空間が歪んで見える場所がある。

 さすがにこんな時間に誰もいない。


 触れてみたい衝動に駆られる。

 それは見ただけでもわかるほどの異質な空間で現代科学で作れないだろうことは容易にわかる。これに触れれば異世界に行って冒険者として活躍できるのでは?……当然そんなことを考える。


 が、触れるのをやめて家へと帰宅することにする。


「うおぉおい!! ちょっと待て!!」


 素っ頓狂な声で俺を止める男がいた。……そう彼が自称『神様』


 風貌はヨレヨレの背広にボサボサの頭、火のついていない煙草を咥え少し眠そうな目をしている。その割には小奇麗で違和感を感じる怪しい男だ。

 すぐに異次元の扉と関係のある人物だと思った。


 上から下まで何度か見返す。


「失礼な奴だな」

「あぁ、申し訳ありません。こんな薄暗いところにいたので不審人物かと思ったので……」

「確かにそう言われても仕方ないか。だが、安心しろ、俺は神様だ」


 とりあえず、早足で家へと帰ることにした。……のだが、自称神様が足にしがみついてきた。とても神様とは思えない行動。


「落ち着け! いや、疑うのはわかるが、異世界に行けると思えば ちょっとは俺が神だとか突拍子もない話も聞こうと思うだろ、普通?」


 必死だな、この人……。

 確かにあの異次元の扉(仮)は普通の力で発生していないだろうとは思うが、神様とかは怪しすぎるだろう。

 だいたい自分を神様と名乗る奴に碌な考えの奴がいない。


「と、俺は思うんだが?」


 結局、神様(仮)の話を聞くことになった。ベンチに座り、コーラを飲みながら……。


「普通の男の子は異世界ファンタジーでチート能力付けるといえばホイホイついてくると本に書いてあったんだが……」


 チート能力を付与してくれるのかぁ、それはワクワクするなぁ。


「どんな、チート能力だ?」

「を? 行く気になったか?」

「正直、普通に働いて、普通に生活できている人間が突然 異世界に行こうとは思わないだろうな。当然俺も思わない。

 たとえば、こっちに人間関係が無くって両親がいなくても、少なくとも生きていけてる。それなのにわざわざ一か八か……で、訳の分からないところに行く必要性は無いだろ?」

「そこでチート能力の確認をするわけか。良かったら行こうと……」

「良くても行かない。どんなギャンブラーだよ。突然現れて自分のことを神様だという怪しい男の口車に乗るほどボケてもいない。ただ、興味があるだけだ」

「ちっ、ケチ! バーカ、バーカ!」


 面倒になったのでベンチから立ち上がると、しがみ付いてきた神様。


「冗談です! 教えるから落ち着いて! 汚いところですが、よろしければベンチにでもお座りください」


 ずいぶん卑屈な神さまだ。


 不承不承で異世界に行く気のない俺に与えるチート能力を話すことにしたらしい。ひょっとしたら、能力を聞いて心変わりするかもしれないという打算的なところもあるのだろう。

 しかし、自称神様が悪魔の可能性もあれば、チート能力を本当にくれるかもわからない。そんな状況で絶対に行くわけがない。


「俺が与えられるチート能力は異世界の全ての言語が会話と読み書きが可能という能力だ!」

「うん……うん? それは凄いのか?」


 というか、異世界に行くなら通常持っている能力、または、魔法で何とかなる能力じゃないのか?


「凄いに決まってるだろ! お前、外国 行って言葉が通じなかったら困るだろ!? ドイツ語、フランス語、スペイン、スイス、アラブ、ポルトガル、ありとあらゆる言語が使えるんだぞ! 凄いだろ!」

「凄い。凄いけど地味だよね。ってーか、異世界に連れて行かれるならデフォでほしい能力だな、それは。他には?」

「え? 他? 他は特にないけど?」

「……」

「だって俺、四天王の中で最も最弱な神様だし……」

「それは倒された時に言う台詞だろ! そして、他の三人が言うの!」


 ダメだ。異世界に行きたい要素が見つからない。

 そもそも、こっちの世界より異世界の方がキツいのはわかっている。冒険者になんてなったら生死を賭ける職業なわけだ……おそらく……。


「悪いが他を当たってくれ」

「いや、俺が与えるチート能力は大したことないが……いや、凄い能力だけど……お前自身が凄いチート能力を持っているんだ。百人に一人くらいの……」

「微妙に多くないか? 日本人なら百万人くらいその能力を持ってそうだ」

「それでいて異世界に行きそうで、ある程度の若者となると、かなり絞られてくる」

「まぁ、そうだな。そもそも『異世界に行きたい』なんて奴は少なそうだ。俺は行きたいが、いざ行くとなったらこのありさまだからなぁ」

「それにお前、武術かなんかの経験者だろ?」

「おっ? さすが神様だ。良く気づいたな。異世界に行ける日が来るかもしれないと思って子供のころから武術を習い体力 戦闘力を養い、授業などで知識を溜め準備をしていたのだ! そんな機会もないと思いながらも……」


 子供のころは本気で異世界に召喚されると信じていた。そのためにいつ召喚されてもいいように努力を怠らなかった。ただ、中学校くらいからは習慣となっていただけだが……。


「いや! その機会が今、まさに今じゃないか! お前も俺もいいことづくめじゃないか!?」

「だから、お前が怪しすぎるんだってーの」

「さっきから聞いていればなんでそんなに疑うんだ?」

「そうだな……まずは目的が見えないことだろうな」

「あぁ、そう言われればそうだな。目的を説明してなかった。俺の目的はレベル上げ」

「レベル上げ?」

「さっきも話したけど、神様の中じゃぁあんまり強い方ではないんだ。そこで面倒くさがりな俺は他人に経験値を稼いでもらい俺様レベルアップをしようとしている。そうすることで、神様のランクが上がってさらに楽が出来る!」

「最低な考えだな。だいたい、そういうのは信者とかにやらせろよ!」

「信者は……一人しかいないし、言うことを聞かない」


 ガックリとうな垂れる神様。

 悪いことを聞いてしまった。


「まっ、まぁ、そういう神様も他にもいるよ。たぶん」

「いらん慰めをするな!」


 肩に手を置こうとすると弾かれる。神様 涙目。


「こうなったら、力づくで異世界に連れて行ってやる!」


 神様は呪文を唱えると、近くにある異世界の門(仮)からキメラと呼ばれる魔物を呼び出した。


「いや、普通 無理矢理 呼び出すときって召喚とかで異世界に連れて行くんじゃないの!? 本当に力づくで異世界に連れて行こうとするのって物凄いレアケースじゃね!?」

「そんなこと知らん! 俺は俺のやり方で連れて行く!」


 ダメだ、神様の目が座ってる。……いや、もとから座っているような目つきだ。


 キメラ

 体長三メートル前後の大きさ 合成獣といわれ色々な動物が合わさっていれば何でもキメラであるが、一般的なモノはライオンの頭、ドラゴンの頭、山羊の頭を持ち、尻尾が蛇であるモノを指す。

中央のライオンが統率をとり、ドラゴンが炎の息、山羊が呪文を唱え、蛇は毒持ちだというのが普通だ……が、俺のその知識であっているかわからない。


「まさか、異世界に行く前にモンスターと対峙することになろうとは考えたことも無かった」

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