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ブナケデス  作者: あるばいと
カンザキ師匠編
28/57

1-26 俺のせいじゃないのに怒られることがある

 前から言ってますが、偉い人と会話するのは胃が痛くなるわけですわ~。たぶん、穴開いてるね。俗にいう胃潰瘍?

 第一位高司祭、王様、王子様、このメンバーに俺の意志じゃないことを報告するとか、胃が痛すぎる。俺の責任じゃないのに……だよ。絶対、怒鳴られるのわかってるのに報告せざる(・ ・ ・)を得ないんだよ? 大いなるマンションはセザール。沈黙の映画はセガール。


「ブナケデス……? 何のことだ?」

「王様にこれから報告することがあります。王子が所有していた本を解読したのです」

「誠か! それと我が息子が獣人の奴隷になることと関係があるということだな?」

「順を追ってご説明いたします」


 ルードビッヒ国王達の前に王子が所有していた本を出す。

 ちなみに、この本の内容は教会側幹部(不在の最高司祭を除く)には話してある。


「まずはご確認を……先に宣言させていただきます」


 そう言って俺は両手を広げ自分を見せる。

 まだ虚偽判別魔法(センス ・ ライ)の効果があるうちに宣言しておきたい。いつまで効果があるかわからないし……。この為に、第一位司祭・ビギヌスさんに魔法をかけてもらっていると言っても過言ではない。


「この本の内容を完全に翻訳しました。おそらく完璧な翻訳でしょう。が、私は預言者でもなく、この本の内容は半信半疑です。この本の内容をありのまま話すだけで、私の意志は含まれないことをご了承ください。そして、原文のままではなく、わかりやすく噛み砕いて説明させていただきます。よろしいですか?」


 その間、体は一切 赤く染まることはなかった。要するに嘘は無しってことだ。そして、俺自身に何の責任もないことを確証してもらう。じゃないと、とてもじゃないが話せない。処刑されるんじゃないかと思うくらいの内容だ。


「わかった。『お前の意見ではない』ということだな? さっさと話せ。なぜ、息子が獣人の奴隷にならなければならないか……」


 それでも話したくない。絶対 怒鳴られるわ~。王様に怒鳴られるって最悪だろ……。重たい口を開く。


「今日から3日後、始祖のドラゴンが世界を破滅させるためにやってきます」

「なんだと! ふざけるな!!」

「ですから……私が予言したわけじゃなくって、本に書いてあるんです! 解読し間違いじゃなくね!」


 その間も当然、身体は青く光っている。

 俺が言ったわけじゃないのに、怒られる理不尽さ。小学校の先生にもこーいう感じで怒られたことあったなー。すげー後味悪いんだけど……。


「くっ! そうだったな。話を続けてくれ……それだけで終わりじゃないだろう?」

「では話を続けます。3日後、始祖のドラゴンがこの神聖王国に宣戦布告代りに、この国を滅ぼそうとします。何もしなければ滅ぼされるそうです。しかし、一定以上の手傷を負わせれば一時的に撤退するだろうとのこと。倒すには満たされたブナケデスを作り出さなければならないらしいです」

「ブナケデス……それは?」

「失った者……って訳が一番しっくりきますかね。または魔力無き者とか……力が無いってことです」

「力が無いのにどうやって倒すというのだ!!」


 また怒鳴るよ~。おっかねーんだよ。勘弁してください、俺のせいじゃないので……。


「失った力の代わりに、違う力を注ぎ込む……ってことです。ただし、このブナケデスを見つけるのは俺の役目らしいので……」

「貴様なんぞに出来るか!! この国の運命がかかっているんだぞ!!」

「……」


 そんなことはわかってますよ。俺だってそんなことしたくないよ。これ言えば怒られるから言いたくなかったんだけど本にそう書いてあるんだもん。

 別段、この世界に未練はないから放っておくという手もあるけど、不老不死なのに、ここまでわかっていて見捨てるとか後味悪いし、やるべきこともわかっている。それで放っておくとか普通の人はできないだろ?

 できれば力になってやりたいんだけど、こう何度も怒鳴られると凹むよ~。


「……くっ、貴様が全権を握りたいだけ……ではないんだな?」

「できれば、他の人に任せて逃げ出したいんですけどね」


 青白く光る俺の身体を睨みながら王様が唸る。今にも噛みつかんばかりだが、小僧のせいじゃないと心の中で言い聞かせているんだろう。


「先程も言いましたが、この本を俺は半信半疑なんで、少なくともそれまでは俺が全権を握ることはしたくないんです。ですが……」

「なんの準備もしないわけにはいかない……ということか?」

「そーいうことです。そして、俺がブナケデスを探すわけですが、心当たりがアトリーヌという獣人、それとカエナという第一位司祭の娘、そして王子というわけです。あとは、この黒猫も試してみます」

「ふむ、その獣人は全て奪われた、というのは納得がいく。だがカエナという娘は?」

「ブナケデス……失った者の範疇がわからないのですよ。完全にゼロといえるアトリーヌ。金銭的、地位的には問題のないが本人に力の無いカエナ、そして王位もお金も奪い取ったレグイア王子。この辺がブナケデスとしてドラゴンと闘えるのではないかと思うのです」


 王が苦々しげに俺を睨み付ける。たしかに、自分の息子の命を首輪一つで握られているのだ、そんな顔にもなるわな。


「だが、もし3日後何も起こらなかったら、貴様はどう責任を取る」

「私が責任を取らなければなりませんか?」

「当然だろ! これだけのことをしているのだぞ!」

「初めに申した通り、私は予言をしてないし、この本の言うことも半信半疑なんですよ! なら、この本に書いてあったことを黙っていた方がよかったですか?」


 できるだけ、冷静に王に話しかける。これでギロチンにかけるとか言われたら堪ったもんではない。そーいえばギロチンって人の名前なんだよね。ギロチンの開発者の名前らしいよ。


 王は押し黙る。


「ついでに7匹いるらしいですが、今回 訪れるのは始祖のホワイトドラゴンらしいです」

「ホワイトドラゴンか……竜種では一番弱い色だな。なら、そのブナケデスとかいう奴を用意する前にこの国で打ち取ってしまえばいいわけだ」

「出来ると思いますか?」

「我が国を舐めているのか? なぁビギヌス?」

「もちろん、我ら教会も神聖王国の兵とともに戦います」

「地方から兵を集める時間はないが、城内兵と聖騎士、司祭を合わせれば、ホワイトドラゴンの1匹や2匹どうとでもなるだろう。本当に来れば……だがな!」

「来ないに越したことはないですよ。ブナケデスを育てるなんて、私もしたくないですから……ですが、念のため3日間は王子に、その首輪を付けておいてください。この本の通りになったなら……」

「獣人の奴隷……か。要は3日後に来たホワイトドラゴンさえ仕留めればこの首輪の鍵は渡してもらえるわけだな?」

「もちろんです。なにも王国と敵対しようというわけではありませんから……」

「逆に『3日後まで首輪は付けなくてもいい』という考えは出来ないか?」

「これだけ私や獣人が虐げられた話をした後に……ですか?」


 さすがに、そんな言葉を信じるわけにはいかない。国王はいいとしよう、だが王子は何をしでかすかわからない。首輪を付けないわけにはいかない。


「まぁそうだろうな。最後に確認だ。お前(・ ・)がブナケデスを選抜しなきゃならないと本に書いてあるんだな?」

「選抜ではなく、無い者に満たす役と書かれていましたけどね。選抜は他の人でもいいのかもしれませんが、誰がブナスケス(失った者)か分かりませんし、ブナスケス(失った者)を作り上げていいのかもわかりません。試し試し……といった感じですが、3日後何もなければこれも必要ないでしょう。もし4日後に攻め込んできたなら、この本は何の役にも立たなかったと思ってもらっても構いません」

「その程度は誤差だと思うがな……。ひとまずは3日後か」


 そういうと王は立ち上がった。

 こちらもそれ以上話すことはない。王子の首輪の鍵もこちらで預かっておくことに文句はあっても、手出しは出来ない。

 それより戻って軍備の手配を始めるだろう。当然、教会との会合がこの後行われる手はずになる。俺も出席して、また似たようなことを話して、国の重鎮や教会のお偉いさんに罵声や怒号を浴びせられる羽目になるんだろう。俺のせいじゃないのになー。誰だよ、この本書いたの?


 それまでにアトリーヌをカエナやセバスチャン、聖騎士などと会わせる。のだが、アトリーヌが怖がってしまって俺から離れない。

 しかもカエナ達も獣人には首輪が無いと暴れて危険だと主張する。ただアトリーヌを3日後、ドラゴンが現れたときに預かってほしいだけなのだが、今のままでは難しい。


 一室借りて、話し合いの場が持たれる。


「そういうわけで、このメンバーでクランを作る予定だから、獣人のアトリーヌの面倒を見るようにお願いしたい」

「だがな、クソガキ! お前は獣人の凶暴性をまるでしらん!」


 赤髪の聖騎士ロッサが怒鳴る。

 本日は怒鳴られてばっかりだ。怒鳴られるの嫌いなんだよなぁ。好きな奴もいないだろうけど。冷静に話し合おうぜ?


「獣人ってーのは、人を見つけては殺す生き物なんだ! もともとはライカンスロープと呼ばれる魔物だ! だが、神の名の下、人間として扱うことになったのが300年前の話。 獣人の中に魔王と闘った勇者がいたからだ。だが、その勇者以外は人に敵対している者がほとんど。だから首輪を付けないと危険なんだ!」


 何か知らない新事実がでてきたぞ。

 だが、3日しか有余が無い。首輪をつけるか、つけないかで揉めているほど時間が有り余っているわけではない。


「大丈夫だ。なーぁ、アトリーヌ、人間を襲わないだろ?」


 という、俺の言葉に頷くアトリーヌだが、当然、カエナや聖騎士たちが言葉だけで納得できるわけがない。寝首をかかれるかもしれないから当たり前だ。


「言っとくけど、そんなの信用できるわけないでしょ! 獣人よ、獣人! 私の兄も獣人との戦争で死んだのよ!」


 知らない新事実がわんさか出てくるなぁ。俺にどないせいちゅーねん!


「アトリーヌが殺したわけじゃないだろ」

「その娘が殺したんだったら、なおのこと許さないわよ!」

「ごもっともだ」


 ソファーに深く腰を下ろす。

 このあと、ホワイトドラゴンの為の作戦会議も開かれるだろう。それまでにアトリーヌを彼らに預けて仲良くなっておいてもらいたい。できればパーティーとして組み込みたいのだ。

 現状だと、首輪一つで大騒ぎだ。

 さて、山積みの現状、どーしようか?


「とりあえず、飯にするか……」

「あら、カンザキ、ご飯まだ食べてなかったの?」

「暇が無くってな……アトリーヌも食べさせないと……おかゆは食べたから、消化の良さそうなのはオジヤかなぁ~」


 なぜかカエナが喉を鳴らす。お前の分じゃねーよ。

 指を鳴らし『W B(ホワイトボックス)』を出現させる。

 時間が無いから、飯を作りつつ この話を纏めていくことにするか……。

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