1-21 質問タ~イム!
朝6時、元の世界で目が覚める。困ったことにスッキリとしている。これでは神様(仮)に文句のつけようもない。
そして、異世界で起こった出来事は記憶の片隅の追いやられている。ハッキリと覚えているのだが、それよりも元の世界の昨日の出来事の方が鮮明である。どうやら、存在する世界の記憶の方が前に来るらしい。
今日の日付を確認する。異世界で2日 過ごしたがこちらでは1日で間違いないようだ。
困ったことは、昨日 買った弁当が3つあることだ。から揚げ弁当とハンバーグ弁当とカレー弁当……朝食はから揚げ弁当にするが、あと2つは会社で食うか?賞味期限がギリギリだ。
だけど、異世界に行ってる時は便利なんだよなぁ~。さすがにカップラーメンだけだと飽きるしなぁ。
今日も今日とて会社に行く。
社長に「お前は設計と会計と営業と企画だけをやって一生を終えろ!」と言われる。王子よりやることが多いんだが……。さすがに鞭打ちは無い。営業先もかなり無茶言う人が多くて泣きそうだ。
そうは言っても休暇はあるから問題はない。休日はスポーツジムと道場通いがほとんどだ。あとは溜まった録画番組を見てゲームをやって本を読んで一日を過ごしていたが……異世界対策を考える時間も必要だ。
そんなこんなで今日一日を過ごす。
どうやら、向こうで何日過ごしても、こちらでの日の進みは1日ということは本当のようだ。少なくとも神様(仮)は、ある程度 本当のことを言っているようだ。
そうなると『不老不死』の話はどうなるんだろう。これはかなり重要なのだが……痛いのは理解したが首を切られて生きているとか嫌過ぎだろう。ちょっと聞いておきたい。
帰り際にコンビニによって買い物をし、デッカイ公園を横切って家へと向かう。ここに神様(仮)がいてくれれば助かる。『W B』での質問は時間制限があるらしいからな~。
そういえば、こっちの世界で『WB』は出せるのだろうか? そう思って試してみたが出せない。異世界は何でもアリの夢の世界……みたいな感じだなぁ。
「夢の世界じゃないよ」
「うぉ?! 自称、神様!?」
初めからいたのか 突然現れたのかわからないが、暗闇のベンチに座ってアイスを食べている神様(仮)がいた。
少しその様子を見た後、目を合わさず その隣に座る。
「俺の聞きたいことはわかってるんだろ?」
「神様っていっても万能じゃないんだなぁ、これが。もう知ってると思うけど万能なのは……」
「1級神のみ……。その他は烏合の衆ってわけだ」
「神様相手に烏合って……」
「日本人はあんまり神様 信用しないからな」
「日本人くらいだよ。こんなに信仰心薄い種族は」
「信仰心もなにも、お前が神様かどうかもわからないし、信仰したい神かもわかんねーしな。贅沢言うな」
「まぁ、協力してもらっているので仕方ないが、全然 経験値入ってこないんだが?」
「ゴブリンしか倒してないしな」
コンビニで買ったばかりのポッキーを開けて、リスのようにカッカッカと食べ始める俺。
そんなことより、出来る限り質問しておこう。
「まずは『WB』の時間制限。なんであるんだ? こっちの世界でなら直に話すことが出来るのに……。」
「コストが高い。簡単に言えば電話代が高い。只じゃないんだよ」
「神様なのに?」
「神の世界にもルールが色々あるの!」
「あるんだろうな……聞く順番を間違えたが、お前は誰?」
「神様だが?」
「何級神の名前はなんだ? 1級神じゃないのは確定した。2級神でも3級神でもないだろ?」
「5級神ウエルディーだ」
「5級神かぁ」
「あっ、なんだ その眼は! 5級神だからって弱いわけじゃないんだぞ! 立場は弱いが!」
「それは神様としてかなり制限されるってことじゃね?」
「うるさいなぁー。信者が多ければ問題ないんだよ」
「信者1人だっけ? 最下層の神様っぽいな。人間から神様になった感じ?」
「どーでもいいだろ? お前が聞きたいところはそこじゃないだろ?」
「こっちの世界なら時間あるんだろ?」
「残念だが、仕事もあるんでノンビリもしてられない」
「お前、仕事してんだ!」
「驚くところかよ! してるよ、仕事くらい!」
「お前の仕事も気になるが、時間があんまりないんじゃ必要なことだけ聞くか。不老不死についてだが……」
「あぁ、不老不死だが一部の奴には殺されるから気を付けろ。当然だが、神様が相手とか魔王レベルでも難しいぞ。あとは痛覚が無くなってないから首とか刎ねられたら痛いぞ。ちなみに心臓に近い方から回復していくから、刎ねられた首が蒸発して、その後 首のあたりから頭が再生していく。化け物じみてる回復の仕方だから他人に見せるのはお勧めしない」
「なるほど、だいたいわかったが、いまいち『不老不死』って気がしなくって怖いんだがなんとかならんか?」
「死にそうになるのは回避すればいいだろ? そもそも痛いんだし……それに超回復……というかリ・キュアというダメージ後 回復する能力があるから通常のダメージならすぐ回復するぞ」
「『出来るだけ食らうな』って話か。だけど、奴隷の首輪? あれをはめられているんだが首が飛ぶよな?」
「うーん、そもそも首が飛んでも死なないし、お前の『気』? とかいうのを使えば防げると思う」
「一か八かみたいなのは嫌なんだけど」
「知らんよ。そんな状況になったお前が悪いだろ」
「そうなんだが、悪いことしてないのになぁ」
「悪いことしてないから、悪いことが起こらないわけじゃないからな」
「それこそ神様が何とかしてほしいところだ」
「まぁ死なないから大丈夫だ」
「『不老不死』はお前がくれた能力じゃなかったと思うけどな。じゃぁ次だが、異世界の全ての言語を修得は嫌がらせか?」
「神崎が『普通に欲しい能力だ』と言っていた覚えがあるが?」
「お前は俺を預言者にしたいのか? どーせ碌な本がないだろ? 翻訳すると世界の滅びとか書いてあって俺が断罪されるとかじゃね?」
「おう、その通りだ。全部じゃないけど世界の破壊者についての記載もどっかにあるぞ」
「嫌がらせかよ。誰がそんな預言書 書いてるんだ?」
「作者が誰でもいいだろ。預言書というよりは契約書に近いので予言ではないけどな」
「もっと性質が悪いじゃねーか!」
「神崎が読むとも限らないし、読んでも知らせなければいい……と、言うわけにもいかないだろうけど、今さら読めないってーのも嫌だろ?」
「お前の罠に嵌ったとしかいいようがないな」
コーラーの缶を開けながら、さらに尋ねる。
「向こうの時間を飛ばすことは出来るのか? ようするに100年後とか時間を進めてから異世界に行くとか?」
「出来るが、戻すことは出来ないぞ? しかも、その間は神崎は干渉できない」
「進めるだけ……か。失敗してもやり直しがきかないのか。当たり前か。あとは世界観がいまいちわからん。獣人って立場弱いの?」
「俺はあんまりかかわってないから詳しく知らんけど獣人ってライカンスロープと呼ばれる魔物だったと思うんだけどなぁ」
「ライカンスロープって人間から変身する狼男みたいな奴だよな? 魔物を奴隷にしている?」
「いや、待て? 昔、会合でライカンスロープを人間と認めるって話があったような気がしてきたぞ? 俺に関係ないから聞き流してたけど……」
「うわー、役に立たない神様だなぁ」
「人のこと言えるか! お前も全然 経験 稼いでないじゃないか! 俺の為に稼げ。ゴブリン十数匹分しかないぞ」
「それどころじゃないんだよ。お前が何でも読めるようにしたから閉じ込められてるの!」
「そんなこと知らん! そんなことより……っと、連絡だ。もしもーし」
なんか神様ことウエルディーは、立ち上がりポケットから携帯電話を取り出した。スマホだ! 神様がスマホ使ってる!
「聞きたいことは聞いた。じゃぁ俺は帰るわ。何かあったら またここに居てくれ」
ウエルディーは手で『邪魔だ』と俺を追い払う仕草をする。
何か電話越しに頭を下げている。相手には見えないから無意味だぞ? 怒られてるのか、いい気味だ。
5級神・ウエルディーと別れ帰宅する。
昨日、寝る前に整頓し、あとは会社に行っていただけなので散らかってはいない。
あの獣人の小娘……名前は……えーと? ア、ア……アトリーヌだ……の為におかゆも買っておいた。確か猫の獣人だったと思ったので、金の猫缶でも買おうか迷ったがやめておいた。
それにしても結局、奴隷の首輪対策は特にない。『気』を張って『不老不死』と『リキュア能力』にかけるしかない。その前に、首輪のカギを手に入れる方法があればなぁ。念のため小型の工具セットも買ってみたが鍵をこじ開けようとすると爆発しそうだしなぁ。
あとは助けを待つという方法もあるが、時間がかかりそうだ。安全さはこれが一番だが、確実性が低い。脱走するのが無難だよなぁ。俺一人なら楽なんだけどアトリーヌを置いていくと気分が悪い。日本人の性質かね~。それとも現代人ならみんなそう感じるのかね~。
アトリーヌも何とかしておきたい。
だいたいは用意したので異世界へ行ってみて考えますか。




