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ブナケデス  作者: あるばいと
カンザキ師匠編
20/57

1-18 今後の予定

 聖騎士 二人を撃退した。


 ゴブリンとホブゴブリンで手加減を練習しておいた甲斐があった。

 初めのゴブリンに『龍撃掌・一式』を撃ったときはちょっと威力が強すぎた。魔物だということで黒騎士よりも強めにしたが、加減を間違えた。

 そこから徐々に威力を下げていって、ゴブリンを一撃で倒せるギリギリのラインを見極めていた。おかげでデコピンからミサイルの威力まで自在に使いこなせるハズだ。不測の事態が起こらない限り……。


 燃費は関係ないが、そんなに強く打つ必要性が無い。

 ギリギリ1発で倒せればいい。足りなきゃもう一発撃てばいいだけだから。ただ強すぎると、魔物から取れる素材とかを壊しかねない。今後のことを考えればギリギリが良い訳だ。


 あと異世界の人間の強度をよく知らなかったので組手を試みる必要があった。

 強い分には威力を上げるだけだから構わないが、パンチ一発で粉々に砕け散ってしまう程度だったら、軽く攻撃しても殺人犯になりかねない。

 『遠距離攻撃を悟らせない』ということと同時に『異世界人の強さ』を確認していた。


 結論からいえば普通。

 俺の住んでる世界と何ら変わりはない。

 ただ、魔法が発達しているために『無手』での戦闘概念が無くなっているようだ。おかげで易々、懐に潜り込めた。ただ、知られてしまえば異世界人もすぐに対処してくる。馬鹿ではないこともわかった。

 もっとも『無手』戦い方は数多い。そのうちの一手の対処でしかないけどな。



 聖騎士 二人を倒してから しばらくたち、酒場の中は客が増えてきている。仕事が終わる時間帯に差し掛かっているため、酒場の方は稼ぎ時となっている。

 そんな酒場の端の席の丸テーブルに俺たちは陣取っている。


 俺たち……すなわち、俺、カエナ、セバスチャン、バセリオン、ロッサの5人だ。

 とはいってもカエナお嬢はウツラウツラして半分は寝ている。まだ午後6時くらいだが、初めてのゴブリン退治と聖騎士戦で疲れてしまったらしい。それでも頑張って酒場にしがみついている。だが、カエナお嬢は見てただけじゃなかったっけ?


「カエナお嬢様。そろそろお屋敷の方に参りましょう?」

「……。 んぁ? セバスチャン? コーラ?」


 ダメだ。完全に寝ぼけている。

 バセリオンとロッサが「こーら?」と疑問を投げかけてきたが とりあえず放っておく。

 カエナはとうとう堪えきれず椅子に座ったまま大口を開けて寝てしまった。

 仕方ないので4人で今後のことについて話合うことにする。


「で、俺はどうすればいい?」


 要するに この国での俺の処遇だ。

 別に好き勝手やればいいのだろうが、監視役のカエナ組と聖騎士組はやりづらいだろう。それに指名手配とかされるのは嫌だし、闇討ちとかも護衛がついていれば面倒にならずに済む。


「カエナお嬢様の許嫁になれば……」

「それは却下」


 それの方が面倒に巻き込まれるし、第一位高司祭ビギヌス・サトリアス、ことデブ人間(仮)が義父になるのだ。絶対に断る。何か悪いことやってそうな顔してるしな~。


「では、我々の教会の方に住んでいただくというのはどうでしょう?」


 バセリオンは丁寧な言葉遣いで提案してくる。

 先ほどまで脳震盪で朦朧(もうろう )としていたが、今はもう意識もハッキリしているようだ。

 言葉遣いが丁寧になっている。……あれ? 丁寧じゃないのはロッサの方だっけ? まぁいいや。二人とも俺に負けたために、完全に頭が上がらない、といった態度をとっている。それでも納得いった、という態度ではないが……。俺も5歳児にボッコボコにされたら納得いかないが下手に出るだろうから、わからんでもない。少し悪いことをしたが、自由が欲しかったので勘弁してください。


「うーん。冒険者として生活したいんだが、何とかならんもんかね?」

「おっさん臭いしゃべりかたするなぁ」


 ロッサは下手には出るが、喋り方はそのまんまでいく方針のようだ。


「ハッキリ言ってさー。お前に読んでもらいたい書物が山積みなわけよ。レイ様の持つ書物をまっさきにやらせるために俺たちが来たわけだ」

「山積み?」


 何か引っかかる。けど、どーでもいいや。


「やりたくない!」

「子供のうちに勉強しなさい。大人になったら、あの時やっておけばよかったって後悔するぞ?」


 お前は俺の両親か!?

 いや、それ以前にお前らが勉強して読めるようになれ。


「カンザキ様の行動を規制することはできません。が、どこの国に行っても……」

「『本を読め~』か? だけど俺が読めることは他の国は知らないわけだ」

「今のうちは……という前提ですがな」


 バセリオンとセバスチャンが挟むように俺を追い詰めていく。


「読んだ俺にメリットは?」

「褒美が出ます」

「その褒美が魅力的じゃないんだよな~。とくに欲しいものが無い。喰うものの困ってないし、お金も冒険者で稼ぐのが楽しそうだし……」

「お前ホントに子供か? 遊べ!」

「ロッサ、さっきは勉強しろって言ったじゃん!」

「俺は過去は振り返らない男さ!」

「頭悪そうだな」

「えぇ、彼は頭は悪いです」

「バセリオォォン!!」

「ハッキリ言って今は欲しいものが無い。なぜなら知らないからだ。要するに冒険して初めて必要なモノ、欲しい物がでてくるわけだ。と、言うわけで可愛い子には旅をさせろ……と」

「ふむ……一理、ありますなぁ」


 とは言っても、国家的にはすぐにでも、書物を何とかしてもらいたいだろう。悪い国なら軍を動かして俺を部屋に監禁して二度と出さない、ということも考えられる。

 面倒臭い能力貰ったな~。一般語だけでよかった……。

 俺としては この世界には遊びに来ているだけだ。手助けや発展など考えていない。魔王が出ても俺には関係ない。危なくなったら、向こうの世界でのんびり暮らす。遊べないならこっちに来た意味がないわけだ。


「どーしたもんかなぁ」


 無理矢理、冒険してもいいがスッキリしないしなぁ。

 うん? 両立させればいいんじゃないか! あれグッとアイディアだぞ。俺、この世界で寝なくていいわけだし!


「わかった!」

「『わかった』と言ってる時は、だいたいわかってないときだぞ」

「うるさいなー。ホントにわかったっつーの! 昼は冒険、夜に翻訳。これでどうだ!」

「駄目だろ」

「なんで?」

「子供は夜になると眠くなりますからね」


 そう言ってカエナを指さすバセリオン。

 大口を開けヨダレを垂らし、イビキを掻いて寝ている。ちょっとやそっとじゃ起きなそうだ。しかも見た目的には俺より年上なわけだ。ダメだと言われるわけだ。


「が! 俺はこの通りちゃんと起きてるぜ!(キリッ)」

「難しい問題ですなぁ。バセリオン、ロッサ」

「なんですか? セバスチャンさん」

「『上』へ報告を上げてください」

「それは……」


 うん? 何か不穏な雰囲気だぞ。


「なんだ。『上』って?」

「王様、宰相、最高司祭様などの会議の場です。当然ですが私が進言できる立場にはありません。執事ですし……。もっとも、バセリオンとロッサも無理です」


 『上』に上がらないんじゃないか、それ?


「第二位司祭レイ様がおりますし、私には」

「第一位司祭……に連絡するわけか」

「二人で連絡に行く必要はありません。その間は私がカンザキ様の護衛をしておきましょう」

「な! 汚いぞ、バセリオン! 俺がクソガキを護衛してるからお前が」

「バセリオンに護衛してもらう」

「なぜだ!」

「クゾガキ呼ばわりしてるからですよ」

「!?」


 口が災いしていることを少し自覚した方がいい。

 ロッサは嫌々、酒場から出ていった。そんなに報告に行くのが嫌なのか?

 セバスチャンはカエナを背負って酒場から出ていく。


「さて、カンザキ様。教会の方に帰りますか」


 残ったのは俺とバセリオン。


 宿屋に泊るという手もあるが、連絡を取るのに決まった場所にいる方がいいだろうし、お金も無駄に消費する必要もない。現在は拘束されているわけでもないので教会に行くことに今のところ異論はない。


「っと、その前に武器屋と道具やとかに寄りたいんだけど、構わない?」

「何か入用ですか? あぁ冒険に行ったときに必要なモノがわかったわけですね。今の恰好からすると手ぶらで行って痛い目……というか冒険らしい冒険が出来なかったのでは? 最低限、ランタンやバックパック、ロープや保存食、水袋などが必要ですからね。いい経験になったのでは? セバスチャンさんが用意してましたか? あの方の教え方は『教えないで経験させる』ですからね」

「さっきから聞いてると、セバスチャンと知り合いっぽいな」

「知り合いというか、一緒に冒険者の依頼を受けたことが何度かあるんですよ。『いざ』という時以外は見ているだけで口出さず困っているのをニヤニヤ見ています」

「嫌な奴だな~」

「嫌な奴ですね。でも、自分で経験すれば忘れづらいですからね。それに意外と聖騎士の中では人気が高いんですよ」

「本当に意外だな。なんで執事が聖騎士に人気なんだ? 昔、聖騎士だったとか?」

「冒険者だったんですが聖騎士長と一緒に仕事をして、活躍していたとか。Aランクになる前に引退して執事になったらしいんですが……」

「なんで冒険者から執事に?」

「その辺は噂しかありませんが、第一位司祭様の黒い噂もありますね」


  ダラダラと話していたが、お金を払って酒場から出る……バセリオンが払ってくれる。

 俺も多少持っていたが4500G……俺の全財産が無くなりそうだ。払ってもらって助かった。


 酒場を出るとすぐに商店街の通りなので、道具屋を目指す。

 よくゲームで看板が酒のマークだったり、剣や盾のマークだったりするが、ここでも文字も書いてあるがメインはマークだ。

 見てすぐわかるし、文字が読めない人間もいるのだろう。合理的ともいえる。


「まずは、道具屋から行きますか」

「武器屋の方が近いのに?」

「ふっ」


 あっ、こいつ笑いあがった。

 両手を広げてヤレヤレという態度をとる。コンチクショー、なんか悔しいぞ。俺は何を見落としたんだ?


「まだまだですね。まずはモノを入れるための道具、すなわちバックパック、またはカバンが必要です。剣なら腰ですが短剣やダガーなどが……」


 あー、買うと思ってたのか。


「違う違う、売る方」

「売る? 何を?」


 手ぶらな俺を見て『何を言っているんだ』という顔をする。


「面倒なので説明はしない。まずは武器屋に行こう」


 武器屋の扉を開けるとガラガラと音がする。薄暗くなってきているため室内はランタンで照らされている。どうやら油のランタンだ。魔法のランタンは無いのかなぁ。

 ランタンで照らされた店内はイメージ的には宝物庫……剣や鎧が所狭しと置いてある。興味があるのでワクワクしてくるなぁ。


「これはこれは聖騎士様、いらっしゃいませ。このたびはどのようなご用件で?」


 俺は無視かい。俺が用事あるとは思わないか。


「買い取りはやってるか?」

「なんだ、このガキは?」


 今、気付いたのかよ。


「いや、ガキかどうかはどうでもいい。買取をやってるのかやってないのか聞いてるんだ」

「口のきき方に注意しろよ」

「すまん、店主。その子は私の連れだ。話を聞いてやってくれないか?」

「あぁ、聖騎士様の……そうですか。小奇麗なのでそうかとは思いましたが……」


 そう思っての対応か、今のが? 思ってなかっただろう。


「で、店主。買取はやってるのか?」

「ふー」


 ため息、吐きやがった。


「あぁ、やってるが売り物は何だ?」

「大したもんじゃないんだが」

「『大したもんじゃない』ならゴミ置き場があるぞ」


 いちいち突っかかって来るなぁ。こちらも価値があるかわからないから強気に出られない。


「ゴブリンの洞窟にあった武器・防具なんだが買い取れそうか?」

「……。本当ですか?」


 俺を見ずにバセリオンに尋ねる。

 そうしたくなるのはわかる、わかるがキツイなぁ。こんチクショウ!


「とりあえず、見てくれ」


 指を鳴らし『W B(ホワイトボックス)』を登場させる。一瞬、何事かと二人は目を丸くしたが、そこまで大きいモノじゃないので、子供がどこかに隠し持っていたのだろうと判断したようだ。

 そして、ため息を吐く二人。

 おそらく考えているのは『その箱に武器・防具は入らない』だろう。

 が、そうは問屋がおろさない、ねぇ問屋さん。


 手品の音楽を鼻歌で歌いながら『WB』の中から剣を取り出す。

 ズルズルと箱の中には入らないほどの長さの剣が出てくる。


「なっ!?」

「なんで!?」


 今度こそ隠しようがないほどビックリする二人。

 ビックリさせるのは気分がいい。


「是非とも売ってくれ! その白い箱を!」

「箱の方じゃねぇよ!!」

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