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ブナケデス  作者: あるばいと
カンザキ師匠編
18/57

1-16 二人の若い聖騎士

 2時間15分以上かかって町に帰ってきました。行きよりも帰りの方が疲れている分、時間がかかる。

 腕時計を見てグッタリしているカエナお嬢。


「疲れたぁ~。セバスチャン、今日はもう屋敷に帰りましょう~」

「まだ駄目ですぞ、カエナお嬢様。冒険者ギルドに連絡するまでが依頼です」


 『家に帰るまでが遠足です』みたいなノリだな。

 俺は疲れていないので依頼が終了したことを連絡入れてお金が欲しいし、ゴブリンの巣から持ってきた物品も売却したいし、クランについても……。


「じゃぁ、依頼終了の連絡を入れたら別行動にするか。俺はまだやりたいことがあるし……」

「はぁ? カンザキ、何言ってんの?」

「なにが『はぁ?』だ。お前が帰りたいから別行動にしようと言ってるんだろ」

「カンザキ様、自分が置かれている状況をお忘れですか?」

「許嫁云々(うんぬん)という話か? それだったら断っただろ? 俺自身、ある程度の力があるから冒険者としてやっていけそうだし……」

「全然わかってないみたいね。セバスチャン、説明してあげて」

「はい、お嬢様。よろしいですか、カンザキ様。貴方様の特異な能力『特別な文字を読める』ことは、この国にとって、いえ、世界にとって貴重な能力なのです。過去300年前に失われた文明を戻すことが出来る可能性があります」

「まぁ、そうだろうけど、俺には関係ない」

「カンザキ様には関係なくとも……」

「なるほど、わかってきた。少なくともこの国は黙っていない。それに他の国にも『特別な文字が読める』能力を欲している場所はいくらでもあるってことか?」

「そーゆーこと。そうなれば当然、狙われるわ」

「今現在はカンザキ様の存在は隠匿されていますが、すぐに他国にも嗅ぎつけられるでしょう。そうなれば良くても囲い込み、悪ければ暗殺対象」

「どちらにしても、自由に動き回れないってわけか」


 自分の能力をハッキリ把握していない時点での、対応しようのない大ごとに巻き込まれてしまっているわけだ。


「許嫁となればこの国 所属になり、護衛付で上級の立場を簡単に得られるわけだ。場合によっては貴族に昇格することもありえる……と」

「そうなるでしょうな。許嫁にならないのであれば……」


 セバスチャンがそこまでいうと、通りを遠目で見つめる。その先には走ってくる人影が二つ。この国の騎士だろう。はじめは暗殺者かと思ったが、さすがにそんなに大っぴらに襲ってこないか。


 二人はどちらも15~16歳前後の青年っぽい。

 青髪の少年と赤髪の少年。どちらも白い鉄鎧を付けている。

 青髪の少年が口を開く。


「こちらにいらっしゃいましたか。カエナお嬢様とセバスチャン殿。勝手にカンザキ様を連れまわさないでいただきたい」

「あら、私の許嫁になるんだからいいじゃない、バセリオン」


 バセリオンは青髪の青年の名だろう。


「そういうわけにはいきませんよ、カエナお嬢様。我々はカンザキ様の護衛を頼まれております」


 赤髪の青年が言う。

 セバスチャンの話が納得いった。要するにどこに行っても、誰かの『護衛という名の監視』が着くわけだ。監視をカエナ嬢ご一行にするか、衛兵にするか、ってことか。

 面倒くさいなー。どう考えても国内にいる間は一人にしてもらえない。どこかしらの派閥の監視が着くわけだ。

 カエナお嬢は第一司祭の あのデブ、ビギヌス・サトリアスの一派。


「二人は何者だ?」

「子供が使うにはいささか行儀がよい言葉づかいではありませんよ、カンザキ様」


 青髪バセリオンに注意をされる。今、俺、子供だった。忘れてた。

 子供に対等な口のきき方をされて少しムッとしているが、赤髪の青年がバセリオンの肩を叩き諭す。


「子供相手にムキになるな」

「そうは言うが、こういうガキは下手に出てると図に乗るぞ?」

「そんときゃー、力ずくでわからせてやればいい」


 丸聞こえなんですが……子供の頃って、大人の話に関心なかったから、こういう会話 聞き逃してたのかな~。などと考えながら呆気にとられている。


「そういうわけで、セバスチャン殿。ここからは我々が護衛をいたしますので二人はお屋敷に帰りノンビリしてもらって構いませんよ。カエナお嬢様もお疲れのようですし……」

「しかし……」


 セバスチャンが食い下がろうとした時、カエナがセバスチャンの袖を引きそれを止める。


「いいわ、今日は第二位司祭レイ・マクリルド様の聖騎士バセリオンに任せましょう」


 教えてくれてありがとう、カエナ嬢。

 第二位司祭レイの一派の人か。


「いえ、お嬢様。まだゴブリン退治の依頼を終了していませんのでそれを終わらせないとなりません」

「そうだったわね、じゃぁ冒険者の酒場に行きましょうか。その後でよろしいかしらバセリオン?」

「ゴブリン退治に行ったのですか!? カンザキ様を連れて!?」

「あら、私も行ってるのに私の心配はしないの?」

「え、いや、しかし……」


 たしかに9歳の第一司祭の娘がゴブリン退治に行ってるんだ。普通なら心配するところだが、俺の方が国内に影響があるから仕方ないだろう。ちょっとしたイヤミ程度だろう。


 5人パーティーで冒険者の酒場に入っていくと注目の的だ……というか、聖騎士のウケ(・ ・)が悪い。

 「聖騎士様ののお通りだぜ」だとか「聖騎士様が小汚い酒場にご用ですか~」とか。ちなみに『小汚い酒場』と言った冒険者は酒場のウエイトレスに怒られている。


 セバスチャンは受付に行きゴブリンの部位の入った小袋を渡し、依頼が終了したことを説明すると同時に、俺のことを話す。


「Eランク冒険者のカンザキですが、彼がほとんどのゴブリンとホブゴブリンを倒しましたので、できればCランクの討伐依頼も受けれるようにして頂け無いでしょうか?」

「は? あの子がゴブリンとホブゴブリンを? あ、いえ、どちらにしても依頼数をこなしてもらわないとランクアップは出来ませんよ、セバスチャンさん」


 そんなことはセバスチャンは知っているだろうに、なんで俺のランクを無理に上げようとしたんだ? 俺としては討伐依頼をしたいから助かるけど……そう思ったが、どうやらセバスチャンの思惑は別の所にあったらしい。


 セバスチャンの「子供がホブゴブリンを倒したぜ」発言により、酒場内が一瞬ざわついた。もちろん、聖騎士バセリオンと赤髪の聖騎士も俺を凝視する。


「カンザキがホブゴブリンを倒した……だと?」


 呼び捨てかよ。さっきまで『様』が付いていたのに~。


「どうやって、倒した」


 もう敬語やめたのね~。しかも詰問形式かよ。


 セバスチャンが戻ってくると、俺にゴブリン退治の依頼の取り分3千Gを小袋に入れて手渡す。小銀貨(しょうぎんか)で30枚。多少 重みも感じる。

 カエナお嬢にも同じように渡しながら、青髪・赤髪にセバスチャンが答える。


「倒し方など関係ありますまい。どうしても知りたければ一緒に冒険してみてはいかがですかな? もっともカンザキ様に戦わせることが出来るのなら……ですがな」


 彼らは俺の護衛で来ている。俺が危険なことに首を突っ込まないようにすることが目的の一つだ。それなのにゴブリンと闘わせては本末転倒。どれくらいの強さがあるかわからないと騎士としては歯痒いだろうなぁ。

 それに酒場の客も俺に話しかけたそうな雰囲気を醸し出している。ただ、聖騎士がいるので下手なちょっかいは出せない。


「カンザキがどれくらい強いか知りたいの? じゃぁ戦って見たらいいんじゃない? バセリオン」


 カエナが挑発する。

 セバスチャンの発言はこの為の伏線か……普通なら子供相手に聖騎士が腕試しをすることはないだろう。だが、酒場の雰囲気は違う。カエナの発言でざわめきが起こり、酒の入っている冒険者が挑発していく。


「おう、聖騎士様が子供が怖くって戦えないのか?」

「ホブゴブリンなら俺でも勝てるぞ!」

「聖騎士様が怖いなら俺が代わってやろうか!」

「こりゃぁ、期待の新人ルーキーだ。聖騎士様が手も足も出せないぞぉ」


 子供に手を出さないだろうと思い冒険者たちはゲラゲラと笑う。

 聖騎士ってプライドが高そうだけど、そんなに挑発して大丈夫なのだろうか……あっ、バセリオンが剣の柄に手をかけて震えているぞ……。誰か切られるんじゃないか? 俺か?


 しかし、それより早く赤髪の聖騎士が発言する。


「カンザキ様。少し稽古をつけて差し上げましょう。大丈夫です。手加減いたしますから」


 冒険者の一人が声を上げる。


「おいおい、子供一人にムキになるなんて大人げないぜ」

「いいえ、彼はこの国に必要になる可能性があります。あまり冒険などで身に危険を晒されてはこまるのです。ここで教えておいた方がいいでしょう」


 静かな物言いの赤髪の聖騎士の言葉に冒険者たちが静まり返る。

 「国に必要」という言葉に酒場の雰囲気が押し沈められてしまっている。


「そりゃぁ、少々、口がお漏らしし過ぎじゃないかなぁ。赤髪の聖騎士さん……名前、聞いてないよね?」

「あぁ、カンザキ。テメーにまだ教えてなかったな。ロッサ。ロッサ・デヒューム。聖騎士相手にあんまり舐めた口きいてんじゃねーぞ? テメーは部屋で大人しく本でも読んでりゃ良いんだよ」


 二重人格か? 口調が荒いぞ。

 何かイライラが溜まっているようだけど、俺のせい? 半分は俺のせいか。いらん仕事押しつけられているんだからな。

 

 聖騎士かぁ。

 どれくらい強いんだろ。俺の力を計るのに参考にしたいところだ。


 酒場の外に赤髪のロッサが先に出る。その後を俺、青髪のバセリオン、カエナ・セバスチャンの二人組、冒険者たち+酔っ払いの野次馬。酒場のマスターやら受付の人やら、全員出てくる。

 酒場の外は喧嘩が多いためか、暴れるのに十分な広さの場所があった。

 俺の強さに興味があるらしい。俺も自分の強さに興味はある。聞いておこう。


「で、ロッサはどれくらい強いんだ? Cランク冒険者より上?」

「あぁ? クソガキ、何 挑発してんだ。骨の2~3本は覚悟しろ」


 え? いや、挑発じゃなくって、純粋にどれくらいの強さか知りたかったんだけど……怒っていらっしゃる?

 鞘のまま剣を構える。さすがに抜き身でやり合うことはしないらしい。『骨を折る』って言ってたから当然か。


「サッサと構えろ、小僧!」

「え? あー俺は無手だから」


 そこで笑いが起きる。

 なんで?

 あー、無手で闘う手段が異世界にはないから挑発に聞こえるのかぁ。

 赤髪がさらに赤くなっているように見えるのは気のせいか? うん、気のせいですよね~。


 赤髪ロッサが襲ってきた!

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