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ブナケデス  作者: あるばいと
カンザキ師匠編
17/57

1-15 ホブゴブリン・・・そんなモノもいました

 セバスチャンが言うには、ホブゴブリンはゴブリンの亜種。環境の厳しいところに育ったゴブリンらしい。そのため攻撃力、防御力ともに高く、体力も普通のゴブリンの2倍近くあるとか。


 まぁ、だからなんだという話だった。


「セバスチャンが説明している間に倒しちゃうんだもの」

「そうは言っても、説明している間にホブゴブリンが襲ってきたんだからしょうがないじゃないか!」

「しかし、接近戦になるまでかなりの距離がありましたのに『リューゲキショー・イチシキ』で倒してしまいましたからなぁ。もう少し待ってもよかったのではないですかな? 私の説明を……」


 ホブゴブリンの攻撃をやらせてやれ、ってことじゃなくって、説明させろってことか。さすがにそこまでは面倒見きれない!

 どちらにしろすでに倒してしまったホブゴブリンだ。どうすることも出来ない。


 改めてホブゴブリンの部屋を観察するがゴミのようなものが乱雑に並べられている。

 ゴブリン達にとっては宝物庫兼 王の間といったところか。


 多少の小銭、それに武器・防具もある。

 セバスチャンの話では、この辺の宝(?)は討伐した人のモノになるから俺が貰ってもいいらしい。小銭1500Gと剣と盾を回収。鎧は今の俺には大きすぎて着れない。持って帰って売れるかと思ったが、ボロいので売れないだろうとセバスチャンの意見。

 でも持って帰ってみる事にしよう。よく考えたら『W B』(ホワイトボックス)なら、いくらでも収納可能なのだ。これでお金に変わるなら儲けモノだ。

 とはいえ碌なモノは無い。お皿やコップは割れたものばかりだし、鎌や(くわ)なんか錆びついていて使い物にはならないだろう。


 その状況を見ていたカエナが感心したように口を開く。


「凄いわねぇ、その箱。そんな小さいのにドンドン モノが入っていくわ」

「魔法の物品なんでしょう」

「たぶん、そうなんじゃないかな。物理的には無理だろう。俺ももらい物なんで、この『WB』についてはさっぱり仕掛けはわからない」


 そんなに入るなら、と、カエナとセバスチャンも多少でもお金に変わりそうなものを選別の手伝いをしてくれる。実際はどこまで『WB』に入るか興味があったから、無理矢理詰め込んでみようと考えていた。


 結局、選別されたお金に変わるか変わらないかのギリギリの道具たちは『WB』の中に全て収納されてしまった。


「凄い魔法の物品ね。これならお屋敷とかでも持ち運びできるんじゃない?」

「確かに大きさもモノともせずに入るのですから可能かもしれませんなぁ」

「入れたり出したりするときに重たくって無理だけどな」

「出し入れするとき重さは感じるんだぁ」

「そーだな。おかげで俺の筋力を上回るものは無理だな」

「ふ~ん、でも、私には使えないしどーでもいいか」


 自分に使えないことを思いだしたカエナは『WB』に興味を失ったのか、暇を持て余し腕時計に目を落した。


「セバスチャン!」

「どうしました、カエナお嬢様?」

「お昼よ、12時すぎてる! 早く帰ってお昼ご飯にしましょう!」

「そろそろ午後の1時になってしまいますな。ここから2時間15分かかりますから帰ったら……」

「3時近い時間だな」

「えー、それじゃぁおやつの時間と重なっちゃうじゃない!」


 お昼だと言われると人間 お腹が減ってくる。

 

「じゃぁ、ここで弁当でも食うか」

「なるほど。カンザキ様の『何でも出てくるWB』ですな!」

「いや『何でも』は出てこないがな」

「やった! じゃぁ私、牛肉のステーキ! 柔らかいやつがいい!」

「我が家には、そんな高級品はありません。ある弁当は3種類だな、えーっとカレー弁当と から揚げ弁当とハンバーグ弁当だな。飲み物は」

「私、コーラー!」

「私もコーラでお願いします」


 他にも午後ティーやらお~いお茶やら弁当に合うものがあるんだけどなぁ。コーラ一択かよ、コイツラ。


「で、弁当はどうする?」

「うーん。から揚げとハンバーグはわかるんだけどカレーって何、セバスチャン?」

「さー、聞いたことない料理ですなぁ」


 面倒臭いので現物を出すことにした。戻しても数は増減しないのだから出したところで問題はない。


「これがカレー」

「黄色っぽいシチューみたいなものね?」

「具材的にはシチューと一緒だけど辛い」

「お米にシチューをかけるとは変わった料理ですな。あまり、行儀がいいとはいえませんな」

「そーね、ごはんにかけるなんて、行儀悪いわよね~」

「それで、何弁当にする?」

「「カレー!!」」


 お前らさっきまでカレーを「行儀悪い」って言ってたじゃん!


「それにしても、柔らかいけど、しっかりした容器に入ってるのね」

「蓋も透明なのにガラスでもなくしかも柔軟性もあり……カンザキ様、これはいったい何ですかな?」

「詳しくは知らない、名称は……ど忘れした。なんだっけ? ポリエステル? まぁ、そんなこと知らなくてもカレーが食えるから問題はない。スプーンはセロハンで横についているから」

「うわ! セバスチャン! 魔法みたいに横にスプーンが着いてるわよ!」

「どうなってスプーンが!? しかもこのスプーンも謎の金属で!?」


 金属じゃない。プラスチックだ。

 セロハンテープは無いのか。説明して剥がしてやる。カレーそっちのけでセロハンテープをしきりに見る二人。

 ついで、スプーンの弾力性を確かめたり忙しい。

 これじゃぁ、飯を食う以前の問題だ。


 面倒な話になりそうだけど、俺はカップヌードルを取り出した。


「なにそれー!」

「箱? ですかな?」

「弁当の一種」


 さらにガスコンロとヤカンを出して、お湯を沸かす。

 二人が「炎の魔法だ」とか「どうなっているか」と聞くが、俺自身もどーいう原理で出来ているなんか理解して使っていない。ただ「こーゆうものだ」としか答えられない。


「で、このカップヌードル醤油味にお湯を注ぎ3分待つと出来上がり」

「お湯入れるだけで、お弁当が出来るの!?」

「魔法の類ですかな?」

「いや、魔法じゃないけどどーなってるかは知らん。魔法もどうしてそういう現象が起きるか理論は知らんだろ?」

「ごもっともです」

「で、3分ってどうやって計るの?」


 腕時計を指で叩く。


「腕時計で3分が計れる!?」

「何たる画期的な発想!」

「いや、画期的じゃなくって基本だろう」

「だって、時間を正確に計って料理するなんて誰が思いつくの!?」

「まさしく複合技!」


 そうか……この世界、時計自体があんまり無いし、あっても巨大な時計らしいから、料理しながら見るのは難しいか。


「でも、砂時計で計ればいいんじゃないか?」

「言われてみれば……」

「しかし、砂時計も値が張りますからな~。料理人が使うことは、まず ありません」


 ガラスが高いって言ってたっけ? 砂時計なんて100円ショップでも売ってるのになぁ。


 そろそろカップヌードルが出来上がるので『WB』からストレート午後ティーを取り出す。

 今度はペットボトルで「なんだ、なんだ」の大騒ぎだ。


「そのような簡易水袋があるなど想像もしておりませんでした」

「その茶色っぽい液体は何!?」

「紅茶、ストレートティー。は、あるのか?」

「はっはっは、ストレートティーはあるわよ! 私なんて3時のおやつに飲むもの」

「カエナお嬢様はミルクティーをお飲みだったと記憶しておりますが?」

「しー、黙っててセバスチャン! ストレートティーの方が大人っぽいでしょ」


 丸聴こえですがカエナお嬢様。


「ちょっと飲ませて見なさい! ウチの紅茶と比べてあげるから!」

「いや、比べなくていいけど?」

「ここは味覚王セバスチャンめが味見をしてみましょう」

「しなくっていいんだが……わかった、ひとり一本ずつやるから勝手に飲め、なっ?」


 コーラに午後ティー 飲んでお腹タッポンタッポンになっても知らんぞ、お前ら。


 ようやく、昼にありつける。

 カレーを口に運ぶ二人。俺は箸でカップヌードルをすする。


「んん!? 全然シチューじゃない! 何コレ!?」

「今までに食べたことのない味ですぞ!」

「ちょっとだけ辛いわ! でもその辛さが後を引く味!」

「さらに野菜と肉によるうま味がエキスとなりカレーに溶け込んでおりますな」

「しかも、これ、スパイスが色々入ってるんじゃないの? 贅沢な作りだわ!」


 コイツラ凄いな。安物のカレーでスパイスやら野菜のエキスやらを感じるのかぁ。俺なんかただ「美味い」で感想終わりだけどなぁ。

 食べながら美味しそうにコーラを「ぷはぁ」と飲む二人。未知の味にご満悦らしい。二人はしきりにカレーに対する見解を述べている。しかもコーラとよく合うと何度もカエナとセバスチャンは乾杯している。


「それにしても、その、麺? も気になるわね~」

「カンザキ様、是非とも……」

「カレー喰ってるだろ! これは別の機会にしておけ。それじゃなくともお前ら午後ティーまで飲んでるんだし」

「仕方ないわね。夕食に食べることにしましょうか、セバスチャン?」

「それがよろしいかと、カエナお嬢様」

「よろしくないよ! もう帰るんだから自宅で食えよ。今から帰れば夕方前くらいに家に着くから!」

「じゃぁ、また明日 冒険に行くしかないわねぇ?」

「そーですなぁ」

「いや、お前ら勉強とか仕事とかあるだろ!」

「そんなこといわれてもね~、セバスチャン」

「まったくです。我々はサボりたいのですよ!」

「働け!」


 と、言ったものの俺一人で冒険をするのには不安がある。ゴブリン退治は問題ないことは分かったが、いまいち安心できない。

 かといって、知らない人間に背中を預けるのもなんとなく恐い。

 そうなると、クランというシステムはかなりいいな。どこかのクランに入るか、新しく作るか?


「どうだろう、クランに入るというのは?」

「ずいぶん唐突ね」

「まぁ、作るのでもいいんだけど、信頼できる仲間が多ければ忙しいときに他の奴と冒険が出来る」


 カレーを食ベ終わったセバスチャンが午後ティーを飲みながら話に参加してくる。


「クランに入るなら、信頼できるところを見つけなければなりません。それに大きいクランでは試験を導入しているところもあるそうです。作るとなるとある程度の資金は必要になります。多人数が集まる場所なども必要ですし、仲間の為に装備を用意する場合などもありますから、どちらにしても少し情報を集めた方がよろしいでしょう」

「言われてみれば、街中も全然歩いていないし、情報も何にも持ってなかったなぁ。ゴブリン討伐の依頼を報告した後、街中を少し見回ってみるか」

「あー、私も見回る! いいわよね、セバスチャン!」

「そうですな。屋敷で勉強ばかりでは世間のことを知らないまま育ってしまいますから、たまにはよろしいでしょう」


 カエナは箱入り娘だったのかぁ。こんなに自由奔放なのに……自由奔放だからか? どっちでもいいか。


 物価とかもよくわからないし、武器・防具もそろえたいし、冒険者がどれくらい強いのかも調べたいし、街に帰ったらやるべきことは色々あるな。

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