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ブナケデス  作者: あるばいと
カンザキ師匠編
13/57

1-11 お嬢様と執事とコーラ

 次の日の朝、多くの高司祭たちは帰宅準備をしている。全員が全員この神聖王国に席を置いているわけではない。

 最高司祭、第一位司祭、第二位司祭までで、他の高司祭たちは他国に派遣されている。


 慌ただしく動いている教会内を、この街から出ることのない三人が廊下を歩いていた。


「で、あの小僧を繋ぎ止めておく算段は付いておるのですかな、ベルモンド最高司祭様」


 恰幅のいい男と言えば聞こえはいいが、見ようによっては肉の塊に足が生えたような感じもする動き。一応 彼は人間である。オークと見間違えればおそらく打ち首にするだろう第一位司祭のビギヌス・サトリアス。


「そうじゃのぉ~。何か良い手はあるのか、ビギヌス第一位司祭殿?」


 最高司祭の言葉に第二位司祭・レイは苦笑する。

 最高司祭の中ではもう策が巡らされているのだろう。ビギヌス司祭の案をそのまま使うのだろう。しかし、その案自体がどのようなモノかわからないのに、よく乗る気になるものだと感心する。ビギヌス司祭に、あまりいい案があるとはレイは思えなかった。


「もちろんありますとも……。金と女ですよ」


 下卑た笑いとともにとんでもないことを言いだす。

 相手はたかだか5歳前後のガキだというのに、金も女も興味があるまい……司祭が出す言葉でもないがそれはとりあえず脇に押しやったとしても……。


「面白い考えじゃな」

「ベルモンド最高司祭様!?」


 こんなツッコミどころの多い策にレイは一瞬驚きの声を上げる。が、すぐに最高司祭から解説が入る。


「ビギヌス第一位司祭殿の所のご令嬢のことじゃよ。要は彼女を婚約者に仕立て上げようということじゃろ。さすがにちと、話が早いじゃろうから、顔見せからかのぅ~。5年、10年先を見据えた計画といえよう」


 たしかに、この歩くのもやっと というほど太った男に娘がいた。正確には子供が10人近くいる。そのうちの一人をカンザキという少年とくっつけて自分の手駒にしようということか。

 しかし5年、10年など気の長いことを この男が待っていられるのだろうかが疑問である。

 さっさと婚約させて今日からでも本の解読をやらせようとしているのではないだろうか?


 ただ、ビギヌス司祭の令嬢はピンからキリまでいる。母親似の美男美女から、父親似の子まで……。どちらがカンザキに向けられるかわからない。

 それと、会ったことはないのだが性格は問題児が多いという話も聞く。

 この縁談が上手くいく可能性は低いのではないだろうか? それとも最高司祭は『上手くいかないこと』を前提に考えているのかもしれない。


 どちらに転んでもいいようにレイも立ち回る算段を始めていた。


 ◇


 おはようございます、カンザキです。

 今まで神崎で話してましたが、どーも こちらの発音になれてきてしまってカンザキになりつつあります。気を付けないと……。


 昨日は教会の大きな個室にお泊りですが、とりあえず寝ないでみてみました。

 自称神様が言った通り眠くならなかったので……それと、寝ると元の世界に戻ってしまうので……。

 日付はどうなるのだろうか。向こうの世界で一日経っていたら会社サボりだなぁ。無断欠席かぁ、社長に怒られるので今晩は寝るようにしよう。


 夜中は本を読んで過ごした。この部屋に本がぎっしりとあったから……。これも司祭たちの策略じゃないかと思うが俺が読んだところで、奴らが脳から情報を引き出す方法はあるまい!

 魔法で脳ミソいじくりまわすとかないだろうな……。


 魔導書……というか魔法入門書みたいなのがあったので、これを使って練習してみたのだが、まぁー俺、魔法の才能無さそうだね。全くできない。

 魔法詠唱は重要らしい。魔力の分解・構築を行っているらしい。それと手を動かす印で魔力の属性を動かす。

 無詠唱で魔力の分解・構築を行う方法は書かれていなかった。

 魔法は使いたいのでしばらく練習あるのみだな。だが、魔力を体内に上手く感じることが出来ない。あるのかないのかわからないくらいに感じる程度だ。


 魔力は金属とも相性が悪いので、金属鎧や剣や斧などは使わず、ローブや杖が魔法使いの装備となるのが当たり前らしい。

 魔力量の多さでその状態をカバーできるが、今現在 魔法も使えない俺には関係ない。

 神聖魔法はこの制約を受けない。なんか、神様がどーのこーのということで。


 あと、簡単な算数の本やマナーの本、一般常識の教材など、おそらくこの部屋自体が勉強室みたいなとろこなのだろう。ありがたい。

 お金の単位はギルらしい。パンが一つ50Gくらいらしい。ゴールドだったらどんだけ高いパンなんだ。だが、Gはあくまで単位、ゴールドではない。


 そんな本を朝まで読んでいたが、そろそろみんな起きだしてきたのだろう。廊下が少し騒がしくなってきた。

 着替えを済ませ、おそらく朝食も出してくれるだろうから、それまでは部屋で待っていればいいだろう。


 予想通り部屋がノックされる……が、その後が予想外のことが起こる。

 返事も待たずに『バンッ』と力任せに扉が開かれる。

 メイドかと思ったら、知らない女の子と執事(見た目的に)が入ってきた。礼儀作法的なことから考えればノックの後は返事を待つのでは?


「アナタがカンザキね!?」


 10歳前後の金髪の少女。見た目は可愛いが性格に難がありそうなのは想像に難くない。両腕を組んで仁王立ちだ。きっと傲慢などっかの貴族令嬢なのだろう。

 後ろにカイゼル髭を蓄えたいかにも執事という感じの男。


「えぇーっと……」

「煮え切らない男ね! まだ子供だから仕方ないけどハッキリしなさいよ!」


 お前も子供なんだが、年齢差があるか。


「おっしゃるとおり、私がカンザキですがなんのご用でしょうか?」

「何の用? お父様から聞いてないの?」


 令嬢はキョトンとした顔で俺を見た後で令嬢の後ろにいる執事の顔を見上げる。それに対応する執事。


「あの旦那様です。まだ何も話していないのではないでしょうか?」

「そうね、あのお父様ですもんね。まぁいいわ、行くわよ。ついてらっしゃい、カンザキ!」

「どこへ……って、まだ朝食も食べてないんですが……」

「ホント、ドン臭い男ね! だ・か・ら・その朝食を外に食べに行くのよ! セバスチャン、ホントにコイツがお父様の言っていたカンザキなの? 凄く頭がいいって言ってたと思ったけど?」

「間違いありません、お嬢様。メイドと司祭様に確認をとっております。ただ語学が出来るらしいですが頭脳明晰かは確認が取れておりません」


 やっぱり執事の名前はセバスチャンか……。そういう感じの執事だ。


「とにかく行くわよ! グズグズしていたらアンタ朝食抜きにするわよ!」


 ダンダンッと足音を響かせ部屋を開け放ったまま廊下を歩いていく。パワフルな感じだ。

 執事にいくつか質問しながら後を追うことにする。


「彼女は誰ですか?」

「お嬢様は第一位司祭のビギヌス・サトリアス様の五女、カエナ・サトリアス様です」


 あぁ、あの第一位司祭の……普通に可愛い娘が生まれてくるものだなぁ。ファンタジーだからか?

 そんな思いが顔に出ていたのか、執事が言葉を付け加える。


「カエナ様は奥様似です」

「なるほど、凄い説得力ですね」


 ◇


 朝食は外食らしい。

 初めて歩く街中、道は土、建物は木造かレンガ。教会は白の大理石だったけどな。


 街中はファンタジーぽいが、獣人もエルフもいない。普通の人間かドワーフっぽい人だけだ。いないのだろうか? ドワーフっぽい人もドワーフか聞いてないのでわからない。

 そのことについて聞こうかと思った時には、冒険者ギルドと看板が掲げられた店の前にいた。


「冒険者ギルド?」

「あら、知らないの? ホント、ダメダメね!」

「食事はここで取れるんですか?」

「とれるわよ! ね、セバスチャン?」


 セバスチャン頼みかよ。


「もちろんです、お嬢様。冒険者ギルドは一階が飲食可能の酒場スペースと仕事を受ける受付スペース、気の大きくなった冒険者に仕事を受けさせるに持って来い。二階は宿屋になっております」

「どう、私の言ったとおりでしょ!」


 偉そうにふんぞり返り、したり顔のカエナ。

 適当に拍手してやる。だが、褒められたと思ってさらに『むふー』っと鼻息を荒くしている。うむ、逆効果だった。


「さぁ、存分に冒険者ギルドの中を見るといいわ。何せ私も見たことないから、アナタなどが見ているはずがないでしょうから!」


 あー、カエナも入ったことないのね。10歳前後のお嬢様が冒険者の酒場に来るわけもないか。

 荒くれ者とかいたらどうするつもりなんだろう。わからんけど、きっとセバスチャンが何とかしてくれるのだろう。


 先頭はカエナで『ドン』と扉を開け放ち入っていく。このお嬢様は扉を閉めることを知らないのか?

 続いてセバスチャン、そして俺。


 酒場は『冒険者の酒場』という雰囲気だ。木造で丸机が数体にカウンター。20~30人くらい入れるスペースもある。

 カウンターには蝶ネクタイの人間のマスターがいる。その横に冒険者の仕事の受付所だろうか……ちょっと雰囲気が真面目っぽいところがある。

 その横の壁には張り紙がしてあり、冒険者用の依頼が張り出されている。

 冒険者が10人前後、机やカウンターで朝食をとっている。


 興奮気味のカエナは、さっさと4人掛けの丸テーブルに座り、酒場のメニューに目を通し始める。

 それに従うようにセバスチャンと、俺もその机に着席する。

 執事は別に食事をとるのかと思ったら、一緒に取るらしい。お嬢様と一緒に食事をとって良いのだろうか? まぁ俺の知ったことではないのだが……。


「すごいわ! さすが冒険者の酒場、庶民の料理が色々揃っているし、冒険者がいっぱいいるわ!」

「左様でございますね。ここの冒険者の酒場は中級クラスだと聞いております」

「もっと大きい冒険者の酒場もあるの!?」

「もちろんでございます。この王国だけでも10件以上のギルドが存在しております。ですが、どこも雰囲気は似たようなもの。ここで雰囲気は十分わかるかと思われます」


 セバスチャンの説明をカエナは途中で無視して、メニューを見はじめている。自由奔放だなー。しかもメニューの説明を受けている。

 俺もメニューをもらい確認するが、野菜はだいたい同じらしい。キュウリやトマト、ジャガイモなどあるようだ。

 肉類も鶏肉、豚肉、牛肉がある。……ただ、知らない食材も混ざっている。知らない食材は安いものと高いものがある。

 そーいえば、奢ってもらえるのだろうか? 一銭も所持していないんだが……。


「すみません、セバスチャンさん。ここの食事代は出してもらえるんでしょうか? じつはお金を持っていなくって……」

「あはははは、当然じゃない。ね、セバスチャン」

「もちろんでございます。お好きなモノをお頼みください」

「ありがとうございます」

「このカエナ様に感謝しなさい!」


 椅子の上に立って胸を手の平で抑え反り返るカエナ。セバスチャンに感謝の言葉をかけたんだけどなー。


 どーでもいいので、カエナを適当にあしらうと、不満そうな顔をしたが無視して注文をする。


「すみませーん」

「はい、ご注文はお決まりですか?」


 それぞれ注文をする。


「私は鶏ステーキ!」

「では、同じものをもう一つ、それとエール酒を」

「なに!? お酒? 私も飲みたい!!」

「申し訳ありません。お酒は20歳になってからしかお出しできません」


 どうやらこの世界もお酒は20歳かららしい。

 ぶー垂れるカエナ。飲み物はオレンジジュースにした。

 俺は何の肉かわからないが『ボアのから揚げ』にしてみた。おそらく猪の類だろう。

 飲み物は……。


「すみません。飲み物は持参しているんですが店内で飲んでもいいですか?」

「ええ、もちろんかまいません。では、コップだけお持ちしましょう」


 持ち込みO.K.らしい。

 カエナとセバスチャンの二人がこちらを見つめている。どうしたのだろう?


「失礼ですが、手ぶらのように見えるのですが……飲み物持参……というのは?」

「頭おかしいの?」


 失礼なのはカエナだな。


 指を鳴らし『 W B 』(ホワイトボックス)を出す。

 指を鳴らさなくても出るんだけどカッコいいから、鳴らして出す。(キリッ)

 二人はちょっとビックリする。

 そして『WB』からコーラーを出す。


「うわー! なにそれ!? 鉄? ひゃ!? 冷たい!?」


 缶コーラに触れてビックリする。


「これはいったい何ですかな? 水袋にしては鉄で飲み口も見つかりませんし……」

「まぁ、コップが来たら見せて上げますよ」


 缶コーラ一つで驚いているカエナとセバスチャンをよそに、食事が運ばれてくるのを待った。

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