1-9 大地神ガナスの最高司祭
異世界の~みたいな題名にしようと思ってましたけど 途中で面倒になりました 要するに挫折!
おっす! 俺、神崎。プレッシャーでゲロ吐きそう。
久しぶりに胃が痛いよ。会社で社長に営業もやるように言われたって大丈夫な強靭な(?)胃だったのに……。
あんまり人と話すの得意じゃないんだよね~。なにが最高司祭の琴線に触れたのか……いや、まだそうと決まったわけじゃない。
元々、最高司祭の晩餐会が開かれる予定だった。そしてたまたまハーニル司祭を救出した俺も晩餐会に呼ばれた……なるほど、そう考えれば自然だ。
なら、末席に座ることになるだろうし、大した挨拶も必要ないだろう。
そもそも、今の俺は精神年齢については置いておいたとして、見た目的には子供なわけだ。多少のマナー違反は見逃してくれるだろう。お辞儀ぐらいすればいいわけだ。簡単じゃん!
そう言い聞かせないと胃潰瘍になりそうだ。
タキシードを着たり、髪をセットしたり、多少のマナーを教わったりで少ない時間で詰め込み教育。メイドさんが必死に、あれもこれもと教えてくれる。小言が多いがそれでも彼女の言った言葉は……。
「覚えが早くて助かりました」
5歳児にしては物覚えは早いだろう。だが、実年齢だったら何と言われたことか……。それでもこちらの世界のマナーもさほど変わるところが無い。
フォークやナイフで飯を食うし、挨拶も握手は目上の者が求めた場合に行う。お辞儀もあるし、食事中は大声を出さない。
当たり前のことが、こちらでも当たり前で助かった。
それでも、色々 小言を言われたのは確認のために聞いたから……それじゃなくって、あんなに小言を言われたら凹むわー。
晩餐会への迎えのメイドが来る。
そばにはハーニル司祭もいる。一緒に行くようだ。彼女の横にちょこんと付き従う。
先頭にメイド、俺とハーニル司祭が後に続く。
壁は白く、廊下の幅は広い。大人が六人前後並んで歩いても問題ないくらいある。大きな窓がいくつも並んでいる。どうやらこの世界にもガラスはあるらしい。
ランタンには火が灯っている。どうやら魔法ではないらしい。もっとも あの炎が魔法ではないという保証はないが……。
それにしても長い廊下だ。
今のうちにハーニル司祭に謝っておこう。絶対にマナー違反があるだろうから……。
「ハーニル司祭。実は私はこういった大舞台は初めてでして、マナーなど至らないところがあると思うので先に謝っておこうかと……」
「……。」
「ハーニル司祭?」
「え? あっ? だ、大丈夫でりゅ。私も緊張してましゅる。最高司祭様に直接お目にかかったことにゃどながったでしゅかりゃ」
ガタガタと震えている。何を言っているのかわからないが、15~6の小娘だ。エライ人に会うのに緊張しないわけがない。
仕方ない。彼女のケツをバンッ! と叩いてやる。
「ひやぅ!」
「落ち着いて。多少のミスをしたって誰も気にしないですよ。最悪、俺が盛大にミスしてハーニル司祭のミスがバレないようにしますよ」
「は、ははは……」
相変わらずガクガク震えているが、ハーニル司祭は笑って見せる。歯が噛み合ってないぞ~。
本来なら俺がフォローして欲しいところだが、諦めるしかない。とても頼める状況じゃないしな。
長い廊下を抜けて、大きな扉の前に来ると二人の騎士っぽい人が扉を開ける。
さすがに最高司祭がいるだけあって食事するだけでも護衛付か。
中には長いテーブルがある。晩餐会といっていたので大人数かと思ったが、20席前後。すでに数人座っている。なんか、偉そうな人ばかりな気がするが気のせいか?
当たり前のように全員、司祭服を着用している。
部屋の四隅にはメイドと衛兵がそれぞれ立っている。
怖いな~。いきなりマナーが悪いからって切られたりしないよなぁ。などと思っているとハーニル司祭が小声で俺に尋ねてくる。
「大丈夫ですかね? 『マナーが悪い』とかいって、衛兵にいきなり切られたりしませんかね?」
お前は俺か!
「絶対にそんなことないですから安心してマナー違反してください。俺はそれを見てほくそ笑んでおきますから!」
「そんな意地悪を言わないでください……あー緊張で目眩がしてきました……」
晩餐会はまだ始まっていない。空いている席もちらほらある。時間はまだ少しあるようだ。
ハーニル司祭が末席に案内されていく。当然、俺はその後ろの下座になると思い、ついていこうとしたのだが、メイドに別の席に案内される。
案内してくれるメイドに話しかけていいのかわからないが、疑問に思ったので口に出す。
「あの~、こちらは上座になりますよね?」
上座という概念が無いのかもしれないが……たぶん、偉い人は奥に座るハズ。
「はい、そうです」
上座という概念があった。あったうえで何で俺が上座の方に……あれ、そこはNO.2あたりが座るところじゃね?
という俺の疑問をよそにメイドは椅子を引く。そこに座れってか?
「えーっと?」
「どうぞ、こちらに」
「ここは偉い人が座る席じゃないんですか?」
「さようです。ですが、カンザキ様をこちらに案内するよう仰せつかっております」
「なんで!?」
「そこまでは伺っておりません。さぁ、どうぞ」
座りたくない……あとで偉い人が来て『そこはワシの席じゃぞ! 無礼者!』ってなって叩き切られるかもしれない。
だが、このまま立っていて、メイドを困らせているわけにもいかない。
すると、隣の下座の席の男が助け舟を出す。
「気にすることはない、座りたまえ。もし問題が起きたなら僕が責任を取ろう」
切りそろえられた金髪の髪に青い瞳。優しそうな笑顔で美男子。年のころなら20代半ば。何だこのイケメンは?
とりあえず、その言葉を信じて座る。何か問題があれば本当にコイツに全部 押し付けよう。ココまで爽やかだと腹が立つ。悪い人じゃないんだろうけど、なんか負けた気がする。
只、ちゃんとお礼は言っておこう。何一つ彼に非はないのだから……あるとすれば、イケメンだということくらいだ。
「ありがとうございます。正直、私がココに座っていいとは思えないのですが……まだ、名乗っていませんでしたね。カンザキです。ただの旅人です」
「これはこれはご丁寧に、小さな旅人さん。僕はレイ・マクリルド。大地神ガナスの第二位高司祭だよ。わからないことがあれば、僕に尋ねてくれたまえ」
第二位……だと? 滅茶苦茶偉いじゃん! なんで俺の下座にいるんだよ、この人!
正面にも人(仮)がいる。あの席は俺と対等か一つ下の下座になるはず。要はNO.3の席のハズなのに豚がいる。オークか?
人間にしては太り過ぎの肉がダルンダルンなんですが。さらに眼つきも悪く、悪事を働いていそう。いや人(仮)を見た目で判断するのは悪い。確認の為にレイさんに聞いてみよう。
「あの、前の人(仮)はどなたですか?」
「彼? あぁ彼は大地神ガナスの第一位高司祭ビギヌス・サトリアス様だよ」
「あれ……あの人(仮)が、最高司祭!?」
「いや、違う違う。最高司祭様はまだ来ていないよ。一番上が最高司祭で次が第一位高司祭、次が僕だね」
ボクシングみたいだな。チャンピオン、一位、二位みたいな感じか。良かった、あの人(仮)が最高司祭じゃなくって……。でもNO.2かよ!
人かどうか確認したいが、さすがに失礼過ぎて確認の仕様がない。どうすれば……。
そんなことを考えていると、時間も迫ってきているのかさらに何人かの司祭っぽい人が入ってくる。
そして最後に髭のおじいちゃん司祭が入ってくる。おじいちゃんの割に背が高いし、ガタイもいい。さらに眉毛が長くて目が隠れている。顎鬚、鼻髭も長い全部 白髪だ。
上座に……俗にいうお誕生日席に向かう。全員 席を立ちおじいちゃんが座るのを待つ。俺もそれに従う。彼が最高司祭なのは間違いないだろう。
魔力をよく知らない俺にすら、彼が体の魔力を大量に持っていることを感じられるほどだ。
第二位高司祭・レイが立ったまま、俺に小声で彼の名前を教える。
「彼が大地神ガナスの最高司祭・ベルモンド・ガル・ベルロイ様だ」




