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ブナケデス  作者: あるばいと
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誤字脱字の王様です。句読点や文章もなども適当です。

会話形式で進んでいくために、誰が喋っているか分かり辛いですが仕様です。更新も遅いのも仕様です。

それでもよろしいという方は、よろしくおねがいしまう。


 地下二十四階……前人未到の階層。


 『魔界の通路』と呼ばれるダンジョン。このダンジョンは地上と魔界を繋いでいると真しやかに伝えられていた。実際に最深部まで到達したものはいない。先程までは二十三階までが人類最高到達点だった。だが、ココに到達した四人に喜びの表情はない。別に『疲れている』からとか『満身創痍』とかでなく、特に当たり前のことだった。一言で言えば『どうでもいい』。


 とりあえず開けた場所を目指すことにする。四人の男女比率は一対三。女子率高し。女子は魔法使い、僧侶、戦士。男は武闘家……と言っていいのだろうか? ジーンズにワイシャツ姿だ。

 少し開けたところが発見できたが、先客がいるようだ。もちろん人間ではない。なにせ、この階層初の人間は今来たばかりなのだから……。


大地の巨槌(ガイアメイス)!」


 魔法使いは、目の前にいたおそらく魔物を魔法の巨大な槌で一掃する。


「人間だったらどーするんだ?」

「まぁ、そんときゃーそんときよ!」

「大雑把すぎますよ。せめて確認くらいはした方がよろしいんじゃないですか?」

「メンド臭ぃ~」


 魔法使いは手をヒラヒラとやって、僧侶の言葉に耳を貸さない。その間にも戦士が開けた場所に休憩スペースを作っていく。どうやら魔法の槌で滅ぼされたのはゾンビやスケルトンといった不死のモンスターのようだったが、戦士はそれを適当に退かして場所を確保し、簡易的ないすなどを配置し、薪を用意する。


火蜥蜴(サラマンダー)


 その中に魔法使いが、火の精霊を呼び起こす。すぐに薪に着火し、赤々と燃え上がる。


「あー、だいぶ潜ってきたわよね……。二十四階でしょ。」

「もうそんなになりますか?」


 魔法使いと僧侶は用意された椅子に「よいこらしょ」っと座る。それを見てババ臭いと思ったが、言わぬが花。飲み物の確認にすり替えた武闘家。


「何飲む?」

「あたしはアレ……名前が思い出せない。赤白青の缶の……」

「ペプシか?」

「それそれ!」

「コカ・コーラーの方が美味いだろ!」

「何アンタ! 私の味覚にケチをつける気!」

「薬臭いじゃん!」

「違うね! 全然違うねぇ! コカ・コーラーなんて麻薬じゃん!コカだよ! コカ!」

「お前、いつの話してるんだよ。そんなの大昔の話だ。大体ペプシは薬臭いんだよ!ダイエットとかカロリーオフ臭がする!」

「最近のカロリーオフとか美味いじゃん!」

「だから、味覚がオカシイって話してんだろ!」


 そう言って、武闘家は白い箱の中からアルミという金属の缶を魔法使いに投げて渡す。戦士もペプシだというと、武闘家はなんとなく納得がいかない。違うのを頼むのは僧侶。


「私は赤い奴を……」

「おっ、やっぱコーラーだよなぁ。話がわ……いや、お前の味覚もおかしかったっけ?ひょっとして、こっちか?」

「ハイ! そのカフェインがコーラーの五倍入っている奴をお願いします。」

「「それマズイじゃん」」

「ハモらないでください!!」


 ペプシ派とコカ・コーラー派から総攻撃を食らう僧侶。

 洞窟の奥からなにやらワラワラと蠢く物体が現れる。おそらくアンデット階なのだろう。僧侶が明り呪文で奥を確認すると普通のサイズの三倍近い大きさのスケルトンが数体歩いてくるのが見えた……が、次の瞬間、僧侶がジョルトコーラー片手に呪文で破壊していた。


「この階層はさっきの階層より賑やかね~。」

「先程までは、何グループかパーティーを確認できましたが、この階層にはいないため、魔物が多くはびこっているのかと思います。」

「まぁ、どっちでもいいだろ。スルメイカ食べる?」


 焚火で網を使いイカを炙っていた。火が通るほどに足が丸まっていき上手く引っくり返さなければならない。モンスターを倒すよりよっぽどこっちの方が難しいと言いたげだ。

 先ほどまでの階層にいたパーティーは、ほとんどがボロボロでこのパーティーが出会わなければ壊滅していたかもしれないモノがほとんどだった。一組だけそれほどまでではないモノもいたが、この階層まで辿り着いたかは定かではない。


「やっぱりペプシとスルメイカは美味いわよね~。」

「ポテトチップスじゃん?」

「それは言えてます! ポテトチップスをだしてください! 是非とも!」

「買い置きしてあったっけな~?」


 白い箱をごそごそと探る。白い箱の大きさは挿して大きくない。しいて言うならランドセル位の大きさだ。そこから、ポテトチップスを出す。


「なにこれ?」

「ワサビーフだけど、ナニカ?」

「『ナニカ?』じゃないわよ。これ美味いの? ふつーにコンソメパンチでいいわよ! またはWでも可!」

「まぁまぁ、そんなに怒らなくとも美味しいかもしれないじゃないですか。私はノリ塩が良かったですけど! 良かったですけど!!」

「なんで二回言った!?」

「大事なことなので……。」

「いや、そんなに大事じゃないし!」


ベリベリと戦士がワサビーフの袋を開けていく。その間にも、何体かの魔物がやって来るが、火の球やら電撃やらで、虫でも追い払うように薙ぎ倒していく。


「うわっ! カラっ! なにこれ!!」

「鼻がぁ! 鼻がっぁあ!!」

「ツンっとくるっぅ!!」


そういえば、彼女たちはまだ山葵という存在を知らない。


「毒を盛っだな!!」


鼻を押さえながら、魔法使いが武闘家に杖を突きつける。


「違うっつーの、毒が入ってるのなんて市販されねーよ。山葵という調味料が鼻にツーンとくるんだよ!」

「なんでこんなのを調味料に使うんですか!?」

「美味いから?」

「嘘つけ!!明らかに初見殺しだろ!!」


 杖の先から雷鳴がとどろくが瞬時にかわす。遠くで魔物の悲鳴が聞こえた。


「あっぶねー。死ぬだろ!」

「私が鼻が詰まって死にそうだわ!!」


ペプシをがぶ飲みする。


「ぷはぁあ!!生き返るっぅぅ」


僧侶も戦士も各々の飲み物を飲んで、喉を潤す。すると戦士が再び恐怖のワサビーフに手を伸ばす。


「待て!死ぬぞ!」

「どんなのだったか確認したくなりました」

「どんなチャレンジャーですか!」


 戦士が再び口にして、鼻がツーンとなったらしい。それ見たことかと思ったが、その後飲むペプシが異様に上手そうに飲む。


「これは意外と癖になります」

「麻薬の類か!?」

「違うっつーの!」


 僧侶も手を伸ばしバリバリと食べては鼻を押さえる。結局、魔法使いも食べる。慣れてくると意外と行ける……というか、物足りなくなってくる。


「危険だわ! ワサビーフ! だんだん鼻にツーンとくる感覚がマヒしてきているわ!」

「本当です。これでは物足りなくなります」

「もっと、ツーンとしてもいいくらいですね」


 しかし、ワサビーフなど我ら辛いモノ四天王の中では最も小物!そのことを彼女たちはまだ知らない。いや、知る必要もないのだが……。


「暴君ハバネロとかな」

「暴君ハバネロ!?」

「何かわかりませんが、恐ろしい名です」

「きっと自国の中でやりたい放題の暴君に違いありません!」

「どこの国だ?」

「お菓子の名前だけどな」

「お菓子かよ!」

「お菓子なのに暴君とは!?」

「お菓子の中でやりたい放題の暴君に違いありません!」


 言いたい放題だな、コイツラ……。まぁ、付けた方のネーミングセンスもそんな感じなんだろうけど……。

 あらかた飲み物もスルメもワサビーフも食べ終わった時点で、椅子にもたれかかりグッタリしながら、ときたま呪文を唱えつつ休憩している。進む気しねーなぁーと思っている。大体、何階層あるかわからない。噂では百階まであるとかないとか……それだと今四分の一に満たないぞ?

 魔法使いが立ち上がりパンパンと手を叩き、休憩の終わりの合図をする。武闘家は箱から自分用のコカ・コーラーを一本出して他を片付ける。戦士は焚火を消し、椅子をたたむ。僧侶は光の魔法を再度付け直す。


「まぁ、ダラダラ行きますかぁー」


 魔法使いの号令に従うようにみんなダラダラ歩き出す。武闘家はすぐに眠気覚ましに缶を開け一口飲む、シュワシュワする感覚が喉を通っていくと心地よい。


「そういえば、この階層って俺たちが初めてだよな?」

「そうね~。そういう予定ね~。ひょっとしたら噂になってないだけで先駆者がいるかもしれないけど……どっちでもいいでしょ?」

「いや、この階層に『階層ボス』みたいのがいるのかなーっと思って……。」

「いても、いなくても、同じですよ。ただ、潜っていくのが面倒なだけですから……」


魔物が出てもほとんど一刀両断で、サクサク進んでいく。一瞬で帰る魔法があるから便利だが、残念なことにくる魔法はない。いや、正確にはあるのだが、怖くて使いづらい……または設置に費用と時間がかかる。このダンジョンもすでに直通のエレベーターみたいなものが出来ているが、それも十階までで作られていない。なんでも魔物が強くて警備できず、壊されてしまうらしい。十階のエレベーター警備の給料は高い。それより上の階層に連れて当然安くなっていく。

 ダンジョン内を観察しながら、歩く武闘家。とくにやることはない。戦闘は彼女たちがおざなりに倒してくれるので、出番が回ってこない。魔法使いがこの階層の地図を魔法で空中に書き上げていく。


「ふーん……隠し扉がこの階層からあるみたいね」

「どーする?盗賊のスキルを持ってる奴なんていないぞ?」

「ぶっ壊せばいいでしょ」

「「そーですね」」


 罠があったらとか考えないらしい、コイツラは……。行き止まりの壁を魔法で爆発させる。ドゴーンと物凄い音と煙……まて、紫色の煙も出てるぞ?


全ての癒し(キュアオール)!」


 何か状態異常にかかったような気がしたが、すでに治っている。罠を作った人が可哀そうだ。あと隠し扉を作った人も……。ただ単に散歩がてらに遊びに来た感じもいいところだ。

 部屋の中に入ると、巨大なローブを着たスケルトンのようなアンデットに会う。


「くっくっく……初めて人間に会うなぁ……我が名はっぁあああああ!!」


戦士が真っ二つにした。断末魔を上げ、煙となって消えていく。何かアイテムを落した。輝く剣のようだが、まったく無視して奥へと進んでいく。どうやら下に降りる階段があるようだ。


「この階は終わりみたいね」

「残念ですが階層ボスはいなかったようです。少し期待したのですが……」

「そーねー……そーですねー」


まぁ、いいか、本人がそう思っているなら……そう思いつつ階段を下りて行った。



 地下二十五階……今日一日で十五階層も潜っている。いい加減、飽きてきた。


「飽きてきたー」


 といったのは魔法使い。


「俺も飽きてきた。ってーかさー、敵も強くないし同じようなところを潜るだけだし、何とかならんかね?」

「具体的には?」

「ダンジョン潜っていてワクワクするような出来事ぉ?」

「お前が言いだしたんだろ、疑問形で問いかけるな。答えを出せ。ちなみに強い敵なら私がお目にかかりたいけどな!」

「ですよねー。そうなると、買い物かぁー」

「雑誌、買ってくればいいんじゃないですか? 雑誌+コーラー、これ最強!」

「でも、ポテトチップス食べてると、雑誌の間に挟む奴いるじゃん?」

「うるさいなー、ボロボロこぼれるんだから仕方ないでしょ!」


 といったのも魔法使い。


「食べ方がきちゃない」

「うっさい!!」

「あと、雑誌のはじが油まみれになりますよね~?あれってどうにかする方法なないんですか?」

「今の科学力では無理だね。そもそも、雑誌は読み捨てだし……」

「単行本の方がお得です!」

「読みたい奴だけ読む分には……しかし、早く読みたいという乙女心も!」

「お前は男だがな!」

「男心も!」

「無駄に言いなおさなくっていいです」


 すでに二十五階も敵に何度か遭遇しているが、ボロボロの敵がまき散らされて、このありさま。なにか角の生えた山羊みたいな二本足で立って黒いカラスのような羽が生えて……あいつ!悪魔じゃん!?まぁいいか。


「そろそろ帰ろうぜ~。」

「そうね。今日はもういいかしら……ただ、帰るとまた来るの面倒なのよねぇ……。」

「もう、ダンジョン潜るのやめようかぁ」

「一つの手ですねぇー」


 みんな辟易している。こんだけ続くとルーチンワーク化してきている。敵が強ければ戦略も考えるのかもしれないが、味方一人の一撃で片付いてしまうと考えることはない。進んで倒してまた進む。たまに休んでまた進む。正直、ダンジョンの奥に何があるかもわからないのに、進むことがかなり苦痛になってきている。確実に魔王の一人でもいてくれればまだしも『なにもありませんでした』となったら、確実にこのパーティーは発狂するだろう。

 武闘家は帰ることを宣言する。


「そろそろ俺、起きる時間だから帰るわ~」

「あんた、たまにはゆっくり寝れないの?」

「会社がねーぇ。朝起きて、会社に出かけて、帰ってきて、飯食って寝て……の繰り返し。月に二回しか休みが無いのってどう思うよ? あれだよ。タイムカード切って働けって言うんだよ、アイツ」

「いや、知りませんけど、頑張ってください」

「有給くれよ、有給。残業して、コカ・コーラーとチョコレートだけっておかしいだろ!」

「うるさい……」

「そうだ! このダンジョンは諦めよう」

「突然だな~。有給は良いのか?」

「有給も欲しいが、それとこれとは関係ないだろ!」

「いや、お前が言いだしたんだがな」

「で、諦めてもやることなんてありませんよ?」

「ところがギチョンチョン! やることがあるのでございま~す♪」

「誰の物まねだ?」

「そんなのはいいから、聞いて聞いて!」

「きいてるがなー」


そんな会話をしている間にも、モンスターの死体の山は増えていく。


「俺らで『王様』を作ろう」

「?……バカか? いや、バカなのは知っている……が、バカか?」

「まずはその辺の孤児を育てて、武勲を上げさせ知名度を上げる。さらに悪政を引いている国の土地を買っていって、途中で反乱を起こしてその孤児を国王にする!どう!?」

「どうって……」

「穴だらけな計画ですが、面白そうじゃありませんか?」

「ココの国もスラム街に行けば捨て子なんて、残念ながら掃いて捨てるほどいる」


 相談していると、武闘家が目を擦り始めた。


「あぁ、もうだめだ……起きなきゃ会社に遅れてしまうっぅ。おはようございます……」

「こっちでは、『おやすみなさい」と言ってもらいたいんだが……」


 そう言った時にはすでに武闘家の姿はなかった。仕方なしに、僧侶が帰還の魔法を唱える。と、地上の都市に出る。


 ここはダンジョンを中心に都市が形成されている。ダンジョンから魔物が出ないように入り口には二十四時間体制で十人前後の衛兵が見張っている。城も立っており悪政が引かれている。何をするにも税金がとられ、その大半が王族、貴族に注ぎ込まれているため、街の発展も治安もかなり悪列な環境といえた。

 他の都市から比べても宿賃が高いが、魔法使いご一行はこのダンジョンの近くに宿屋を丸々一件借りて暮らしていた。貴族ではないがダンジョンでの稼ぎが凄まじい。冒険者ギルドに所属していて、そこは最高の冒険者ギルドとなっている。元々は最低ランクだったが、彼女たちが来てからは一気に最高の冒険者ギルドに早変わりだった。国や貴族が苦々しく思っていて、規制や税金をやたらとかけてくる……が、まぁ、彼女たちにとっては何でもないと言った感じだ。場合によっては王の呼び出しすら無視するような滅茶苦茶な連中である。一時期、冒険者ギルドに騎士団で攻め込んできたときもあったが、それ以降一切、関わりを持たなくなったのは言うまでもない。


「はてさて、未来の王様でも探しに行きましょうか?」

「今日はもう寝ましょうよぉ」


 最高級のベットの上ですでにぐったりしている僧侶。戦士も自分の武防具をすでに片付けている。それに武闘家もいない。どんな子を王様にしようかと思うと少しワクワクしてくる。出来るだけ才能が無い子の方が面白い……否、育て甲斐がある。一から自分たちの魔法や武術、教養を叩き込んでいく。どんな子に育つのやら……。



「スラム街は汚いなー」

「スラム街だからねー」


 ダンジョンから出てから数日が立っていた。


 未来の王様を探してスラム街にやってきたが、まぁ臭いの臭くないのって凄いことになっている。虫もネズミも這いずり回っている。たまに働く当てのない人間が彷徨っていたり、物乞いが近づいて来たりする。影の暗いところに行くと身ぐるみ剥がされた死体なんかも見つかる。しかも、もとは兵士っぽいぞ?

 孤児もいるがどういう子を選ぶか、具体的には決まっていなかったので適当にフラフラ歩いている。脅してくる輩もいるが、パンチで沈める。魔法使いにやらせると、明らかにやり過ぎてしまうので、武闘家と戦士の出番となってしまう。

 すると、適当な時間を潰したが、これといった当てもないので、この辺で決めようとなる。才能ある子を探しているわけでもないし、血統のある子を探しているわけでもない。誰でもいいのだから……。丁度いた子供に話しかける。気力がないのか、動くこともせずじっと座っている。


「よう、ボーズ。王様にならないか?」

「……。」


 武闘家の顔を見上げる。何を言っているのかわからないと言った顔である。まぁ、普通の人が聞いても何を言ってるかわからない顔をするだろう。


「その子は王にはなれないわ」


 珍しく魔法使いが真剣な顔で言う。


「なんでだ? 素質とか?」

「いや、女の子だから……なるなら女王ね」

「……あー……はいはい、私が悪ーぅございましたぁー」

「なにその言い方! むかつくぅー」

「どうお嬢さん、女王様になる気はない?」


 再度、僧侶がたずねる。


「わ……私、お腹がすいた……」

「ふっふっふ、お腹が空いたなら、我々と一緒に来てもらおう。そうすれば、お腹いっぱい食事にありつけるぞ~」

「単なる誘拐犯ね。お嬢ちゃん、お父さんとお母さんは?」

「いない……私……お腹が……」


そこまで言って倒れる少女。僧侶が少女を観る。


「だいたい予想通りですね。栄養失調です。たぶん、普通のご飯も食べられないでしょう。おかゆでも怪しいですが、仕方ないでしょう」

「運がいいのか、悪いのか、彼女を連れて帰るしかありませんね」


 戦士が担ぐ。普通は男の仕事のような気もするが、楽するに越したことはない。戦士としては少女なので男性に担がせるのはどうかという判断なのだが、知る由もない。


 宿屋に着いた後は、しばらく寝かせ、食事をとらせる。全然、食事をしていなかったせいか体が受け付けずなんども戻す。風呂に入れたり休ませたりは僧侶に任せることになった。……と、いうか武闘家と魔法使いは『邪魔』ということで部屋から追い出された。


「俺なんか結構、役に立つと思うけどなぁ」


 仕方ないので魔法使いと二人でダンジョンに潜ることにした。ダンジョンに入るには入場料を取られる。何か知らない冒険者にも話しかけられる。そこそこ有名人ではある。ダンジョンの攻略法とか、モンスターの倒し方とか聞かれるが、ぶっちゃけ良くわからない。適当に散歩がてらに歩いていてモンスター殴って進むだけなので、的確なアドバイスはない。それにやたらにライバル視するパーティーもいる。彼らは現在二十三階を探索中の二番手に付けているパーティーだ。冒険者ギルドも、武闘家たちが入るまでは一番手のギルドだったところだ。やたらと絡んでくるが、どうでもいいので、「お互い頑張りましょう」と爽やかに挨拶して、さっさと入る。


 入った途端、とりあえず


「ペプシ!」


 それだけ言って手を出す魔法使い。コカ・コーラーの上手さをわからん奴め……。


「それにしても、お前ら天才だよなぁ」

「何を今さら……」

「性格は悪いけど……」

「あんた、死ねばいいのにね~」

「日本語とかすぐに理解できるのなー」

「翻訳する魔法のアイテムを作ったからねー。まぁ、私はあれが無くとも何とでもなるけど。そういえば今日はジャンプの発売日じゃなかったっけ?」

「先週、合併号」

「その、ガッペイゴウっていうルールが納得いかないわ。一週休むなってーの」

「まったくなー。俺に休みをくれっていうの」

「アンタは休まなくっていいわよ」

「休ませろよ、今度、ハワイでもいこーかなー。ハワイ……ワイハだよ!」

「なんで逆に言うの?馬鹿なの?どっちにしろ、今の休みじゃ無理なんでしょ?」

「良くご存じで!」

「いつも言ってるからねー」


 武闘家は白い箱からコーラーを出す。


「くはーっ!助かるっぅう! キンキンに冷えてやがるぜ!」

「ぬるかったら、不味いからねー」


 今度は明治のチョコレートを出す。


「アンタのバカなところはチョコと一緒にコーラーを飲むところよ」

「バッカじゃないの!? 超美味いってーの!」

「なにいってんの! チョコとコーラー! どっちも『甘い』『甘い』でしょ! 甘いの食べた後に甘いの飲んだって甘く感じないでしょ!」

「わかってないなぁ~。お子様は……」

「えー!? お子様関係無ぇー!!」


 やれやれと、手を広げ首を振る武闘家にツッコむ。すでに四階層。なんかどっかのパーティーが苦戦をしていたが、その真ん中を堂々と横断して進む。魔物の援軍を呼んだらしいのでソイツらはこちらで片づけさせてもらう。


「そういえば拾ってきた娘、名前、聞いてないわねぇ~?」

「ってーか、名前があるかも気になるけどな」

「無かったらなんて名前にしましょうかぁ~」

「本人に決めさせれば?」

「自分で決めるのって難しいわよ?」

「念のため聞いておくが、お前だったらなんて付ける?」

「よくぞ聞いてくれました! 私なら『リンデンバーグ・レンスティニア・フローレンスⅡ世』!」

「お前に決めさせるわけにいかないことは、良くわかった!」

「何よ!? 私が考えた名前に文句あるわけ!?」

「『Ⅱ世』ってなんだ! 『Ⅱ世』って! おかしいだろ。『Ⅰ世』がいるから『Ⅱ世』だろ」

「語感的にいいじゃないぃ~♪ 『Ⅱ世』って……」

「どう考えても却下だ。」

「じゃぁアンタなら何て名前にするよ?」

「うーん『蜻蛉切り』?」

「なにその名前! 大体、女の子に『トンボ』っておかしいでしょ!」

「なにいってんだ! 有名な槍の名前だぞ! 止まっただけのトンボが真っ二つになったという逸話があってだな!」

「いや、槍の名前を女の子に付けるなよ!」

「ゴモゴモゴモゴモ♪ ごもっとも!」


 すでに八階!途中にいた魔物を倒し金になりそうなものを奪い取る。ときたま強盗だなーと思いながら作業的に行う。魔物の牙や爪などは薬や、武防具に使われたり、調味料に使われたり、なんか色々使い道があるので売れる。とくにダンジョンの深くになればなるほど希少価値は上がっていく。二十階以降だと、材料としてではなく、それそのモノがステータス的に人気があったりもする。

 金はあるのだが、貴族から巻き上げられればそれに越したことはない。そのためには高価なモノを売り付けるのが手っ取り早い。地下に行けばいくほど良い訳だ!そうすれば、国は弱体化し、こちらは戦力を上げられる。ただ大ぴらにやるとバレるので騙し騙しといった感じになる。

 手を付けなければいけないことが山ほどある。とりあえずは学校が欲しい。しかも国に偏った教育をしない必要がある。こちらに偏らせる手もあるが、そこはやめておいた方がいいだろう。ボロがでそうだ。次に遊び場も欲しい……ストレスをためても困る。冒険者ギルドだけでなく色々なギルドがあるが、その辺との兼ね合いも、何とかしないといけないし、財政に詳しい人間も雇いたい。もっとも魔法使いが出来るが、彼女はダンジョン担当なのでダメだ。


「なんか、色々考えているでしょうけど、大半は却下よ」

「なんでよ?」


 考えが読まれたらしい。どこから読まれたかわからないが……。


「決まってるでしょ。私たちが国を作るんじゃないんだから。私たちは王を作るのであって国を作るんじゃないんだからよ。育てた結果、王がどういう国を作るかが楽しみなんだから……。」

「まぁ、そうか……」

「教養も武術も全部、私たちだけで教えるのよ。あぁーワクワクしてきた。全然うまく育つ気がしないわぁー。女王なんてなれないんじゃないかしら?」

「ダメじゃん!」

「それでも最低限、冒険者としてやっていけるくらいにしないとね~。」

「強くなるかね?」

「どうでしょ?才能無さそうに見えたからね。よっぽど叩き込まないと駄目だと思うわ。家出したくなるほど……それでも足りないかしら? 次のペプシぃー」


 飲み物を要求する。


「そんなに買いだめてないんだから、あんまり飲むなよ」

「いいじゃない。アルコールより安いんでしょ。男なんだろ! ケチケチするなよ。大体、休みないんだからお金使うところないんでしょ、貢ぎなさいよ。この美人に!」

「何が悲しくて、お前なんぞに貢がにゃーならんのじゃ!」

「そーいえば、今度アルコール買ってきなさいよ! アルコール! 何か美味いの無いの?」

「俺はお酒飲まないの!」

「飲め! クズ!」

「飲まないだけでそんなにいうか! 普通! わかった買ってくる、買ってきますよ。なにがいいんだ……といってもわからないか。あいつらも飲むのか?」


 僧侶や戦士のことを言っている。


「そういえば飲んでるの見たことないわね」

「それをいうなら、お前が飲んでるのも見たことないなー」

「酒場にいかないからねー。ギルドにもあんまり顔、出さないし……」


 現在、十二階層。適当な会話と適当な戦闘でズブズブ進む。地上にいてもやることがないというだけで潜っているので、おざなりもいいところだ。


「それにしても、あの子を育てるとなると時間かかるわよ?」

「ん? 寿命か? 多分、俺はこっちにいると年を取らない。向こうはそれなりだが、向こうでもちょっと色々おかしな事態に陥っているから、大丈夫だ。おまえらは?」

「黄金のリンゴって知ってる?」

「あーなんか聞いたことあるな……なんだっけなー? 寿命が延びる奴だっけ?」

「大体あってる。私たち三人はそれを食べてるから、寿命で死ぬことはないし年は取らないわ」

「なるほど、それで修行して強い訳か……何歳?」

「そうねー……あんたが千回、死ねば教えてあげてもいいわ」

「相当な年だ……っと……」

「ブッ殺っす!!」


 それからも多少、潜ったが途中で十分稼いだだろうと帰ることにする。帰宅時に強盗が襲ってきた。それはさておき貸切宿屋に着く。ちなみに清掃員や宿屋の主人もいる。料理人なんかもいるので屋敷を買った方が良さそうだが、王族、貴族がうるさそうなのでやめていた。全面戦争になるなら構わないだろうけど、とにかく、ゴタゴタが嫌いなメンバーだから、適当に収めている。ただ、育てた子はどうなるか知らないが……。

 とりあえず、さっきの娘の部屋に行くと寝ているらしい。部屋を移して相談に入る。


「で?」

「たぶん、具合は大丈夫です。すぐに回復するでしょう。風邪などの症状もありましたが、オールクリーンの状態にしてあります。」

「女王になることは引き受けそうか?」

「たぶん、引き受けますね。行く当てがないですから……」

「弱みに付け込んで……くっくっく、おぬしも悪ようのう」

「いえいえ、お代官様こそ……」

「そう言うのはいいですから……」


 愉しんでいるのに僧侶にとめられる。


「どうします? 明日から始めますか?」

「明日は説明ですね」

「まぁー、そーなるわねー」

「適当に頼む。俺は半分はいないし……」

「三分の二はいないけどな!」

「休日なら、たっぷり寝れます!」

「会社の社長にでも頼めば?」

「社長っぉおぉ!!」


 もちろん、社長はココにはいない。それに頼んでも無駄だ。仕事からは逃げられない。


「そう言えば名前は?」

「レイビアという名前らしいです。」

「レイピアみたいねぇー。『リンデンバーグ・レンスティニア・フローレンスⅡ世』は採用されず……か」

「なんですか? その素っ頓狂の名前は?」

「素っ頓狂とは失礼な! チョーグレートにイケてる名前ですよ!」

「もう『チョーグレート』がイケてないがな」

「イケてないですね」

「ぬぐぐぐぐ……。」

「使う武器はレイピアを教えた方がいいですかね?」

「魔法の才能なさそうだから、魔法を教えましょう」

「意味がわからんが?」

「それの方が無理矢理叩き込んだ感があって楽しいから?」

「無茶言うな~」

「それに、魔法は才能が無いと覚えられないのは常識だと思いますが?」

「そんな常識、叩き壊せー! つぶせー!」

「どうやって魔力を持てるんだ? 生まれたときに決まるって言ってなかったっけ?」

「言ったよ。あたしが言った。なら人工的に無理矢理、魔力を埋め込む」

「おっかねーな、お前。それ大丈夫なのか?」

「さー、大丈夫じゃない?」

「人体実験かよ!」

「でも、もう一人試してるから問題ないわ」

「その一人はどうなったんですか?」

「そこにいるけど?」


 武闘家をを指す。


「俺かよ~! 俺なのかよ~! いつの間に第一被験者にされてるんだよ~。良く生きてるな俺~ぇ!」

「たぶん、魔力はあるだろうから、あとは修行と魔法を覚えれば使えるはずなんだけど、今まで黙ってたから、魔法が使えないわけよ」

「あぁ、なるほど。だから、初めは魔力が感じなかったのに、最近は彼から感じるようになったわけですね」

「気付いてんのかよ~。教えてくれよ~。」

「だって、勝手に実験したって言ったら怒るじゃん?」

「怒るわなー」

「じゃぁー黙ってるしかないよ」


 あーだこーだと話し合う。



 レイビアの将来は不安だらけだったが、本人は知る由もなかった。

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