代理店にて
そして、翌日。
よく寝れねなかったのか、いつもよりはやくおきた。
「これが地図だ。」
父はあるチラシを渡した。30年ほど前のツアーのチラシだ。
「お前はよく働いてくれた。でも、悔いだけはするな。」
「うん。ありがとう。じゃあ、行ってくる!!」
大地は旅立った。そして、1時間後…
加瀬永クルー代理店についた。
「ここかぁ」
そうだ、ここが大地の出発点なのである。
「すみません。誰かいますか」
「あああい。なんじゃあ。」
「白野洋子さんはいますか」
「彼女ならもう退職したよ。」
「はあ。」
大地は、息をためらった。
「じゃあ、住所だけでも教えて下さい。僕、明騎島に行きたいんです。島の人々を助けたいんです!!」
大地の瞳がやる気と期待にあふれていた。
「ほおお、そおか。わしゃあ、そういう人を応援したくなるもんでのお。」
「ほれ、これが洋子さんの住所じゃよ。」
事務所にいたお爺さんは近くにあった紙に何かを書いて、大地に渡した。
「ありがとう。」
「それにしてもお爺さん。何でずっとここにいるの?」
「わしの生きがいなんじゃよ。こうやって、ここから海を眺めていると心が和むんじゃ。」
「へえ」
大地はふと、海を眺めた。その時の海は特別に思えた。
「お爺さん、長生きしてね。」
大地は別れを告げて、新たな一歩を踏み出した。
大地は3駅ほど先の皆木駅からさらに10分程歩き、在る家についた。
(ピンポーーン)
「すいません。洋子さんいますか」
「はあい。」
(ガラガラガラ)
「あらまあ。どなた様で?私に何か用?」
「大地というものです。単刀直入に言います、明騎島への生き方を教えて下さい」
「はあ。明騎島ねえ。でも、なんで今。」
「実は…」
大地は自分の境遇を話した。
「あらあら。ドラマみたい話だねえ。それにあなたのその目、とても輝いてるわね。いいわよ。」
「ありがとうございます。」
「確か、月に2回だけこの近くの港で明騎島に船が出てたわ。確か、ちょうど明日だったかしら。」
「でも、今日は疲れたでしょ。ここで休んで行きなさい。」
「はい、ありがとうございます。」