第三話 初めてのキスも幼女(少女)精霊
バトルは更に次回に持ち越します。
まことに申し訳ありません。土下座中ですので許してください。
「っ!?」
不意をつかれたので、一瞬何が起こったかわからなかった。だんだんと思考が回復してくると、目の前の少女にキスをされたのだと理解することができた。
……って、えぇ!?
「%#*☆○□△」
「キチンと言葉を発してください」
変なことを口走っていたようだ。
でも仕方無いよね? 俺はファーストキスだったんだ!
「ちなみに今のは私のファーストキスです」
知るか。お前が勝手にしてきたんだろうが。
「……契約には肌を触れあわせればいいだけで口をつける必要はない」
「私の気分をあげるためです」
「今は必要ないよな!? 今じゃなかったらいいってわけでもないけど!」
「貴方が早く肌を差し出さなかったから悪いんですよ」
「開き直った!? それにまさかの俺のせい?」
かなり理不尽だ。それなら俺の頬に手で触れればよかったんじゃないか?
「とりあえず退いてくれないか?」
何時まで俺の上に乗っている気なんだろうか。重くはないけど……うん、石が背中にぐりぐりきてる。めちゃくちゃ硬い。
しかし、彼女は俺の上から降りようとせず、目を閉じて唇を少しつきだしてきた。
……えーと。どうしろと?
「早くしてください。今度はそちらからですよ」
期待している(?)彼女の唇に俺は自分の唇を――近付けずに、彼女を俺の上から無理矢理降ろした。
「つぅっ!!」
やっとのことで立ち上がると、右腕に強い痛みを覚えた。見ると右腕に不思議な模様が浮かんでいた。
これは紋章だ。契約すると体の何処かに現れるもの。俺の初契約の紋章は右腕か。
少し大きい気がしないでもないが、まあいいだろう。
「ありがとうございます。……そろそろ時間の……よう……なので」
俺たちの契約を隣で見ていた大人精霊の体が、半透明になっていく。
精霊の消滅が始まっている。もうすぐ彼女は……。
「では、その子を……頼み……ま……」
言い切る前に、彼女の姿は見えなくなっていた。
「さようなら……お母さん」
隣を見れば、涙を我慢している少女の姿をした精霊。
精霊だって人間と同じで母親がいなくなれば悲しくなるよな。
「大丈夫か如月雅!?」
必死の形相でユウラを連れた水和さんがやってきた。多分水牢が破られて、そこに俺が入ったのを感知して捜しに来たのだろう。
そして俺と全裸の少女――精霊とわかっていると思うけど――を見て、俺が精霊と契約できたことを悟ったようだ。
俺の沈んでいる様子を察してくれたのか、はたまた契約していない精霊は服を着ていないことを知っていたのか、なにもつっこんでこなかった。
「とりあえず学園に戻ろうか。先にこの子と戻っててくれ」
俺がそう言うと水和さんは俺の精霊を連れて、来た道を戻っていく。
「約束する。お前の娘は俺に任せろ。だから安良かに眠ってくれよな」
先ほどまで一体の精霊が立っていた場所を見つめ、そう呟いた。
幻想かもしれないが、微笑んでいる精霊が俺には見えた。
「で、だ。変態のお前はこのロリ精霊と契約したのか?」
一足先に学園に戻っていた水和さんと合流して、食堂で夜ご飯を食べていた。洞窟を出てみると、外は意外に暗くなっており、時間は七時を回っていた。
この学園は一つの島になっていて、学園と霊高の森と小さなスーパー程度しかない。なので、ご飯は大抵ここで食べる。
この時間に食堂でご飯を食べている人は少ないので、俺が精霊を連れていても気付いていないようだ。
「変態はやめてくれ。それとこれでもこいつは高位精霊のはずだからロリ精霊と呼ぶな」
ロリ精霊って……俺が変態って言われるのも納得できるからやめてくれ。
今は魔力供給で魔力を渡して服を着せることができるのに着せていなかったら、言われても仕方無いが、キチンと着せている。そんなことを言われる筋合いはない。
「だが、今までどの精霊とも契約しなかった男が、幼いロリ精霊と契約したんだからそう言われても仕方がないんじゃないか?」
「――――」
俺の隣で一本一本ラーメンを食べていた俺の精霊――ちなみに名前は、思い付きでティアラとつけた――がピクリと肩を動かした。
名前に関しては無責任だと思うが、俺は特に気にしない。
一理あるので、俺が言い返せないでいると、
「私のことはともかく、ミヤビのことを悪く言うのであれば血祭りにしますよ」
「貴様、私に闘いを挑むのか?」
「ミヤビのことを悪く言えば、闘いを挑まなくてはなりません」
「喧嘩をするなよ……。なんでそんなに仲が悪いんだ?」
「それは……」
何故かはわからないが、水和さんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
あれ? 俺なんかいけないこといったか?
「ミヤビは私のファーストキスを奪ったんですから私だけを愛してくださいね?」
ティアラは俺の方を向くと、先ほどと同じように目を瞑り、唇をつきだしてきた。
「なっ! 如月雅、どういうことだ!?」
「……いくら待ってもやらないからな?」
俺が水和さんを無視し、呆れながらそう言うと、ティアラは雷でも打たれたかのように立ち上がりよろめきだした。
「裏切りましたね? ここで私とミヤビのラブラブぶりを見せつけなければ調子に乗りますよ?」
裏切ってないし、誰が調子に乗るんだろうか? 今ここにいる人で調子に乗りそうな人はいないと思う。いや、わからないけど。
「無視された……この私が無視された……」
水和さんは病んでいるようだ。そっとしておいてやろう。
「如月はいるか!? 僕と精霊勝負をしろ!」
食堂の入り口から眼鏡を掛けた黒髪のいかにも勉強できそうな男が現れた。
俺を捜しているみたいだな。精霊と契約したことを聞きつけたのかもしれない。
無意味な争いをしたくなかったので、ティアラを連れてこそこそと非常口から寮に戻った。
じ、次話こそはバトルを……。なんかバトルから逃げてる内容ですが……。
題名の『初めてのキス』を『ファーストキス』にするか迷ったんですが、前の題名と合わせることができるので、こちらにしました。
プロローグ、一話、二話でお気に入り登録してくださった方々、三話で幻滅させてしまったのなら申し訳ない。
しかし、この作品を読んでくださった方々、更にお気に入り登録してくださった方々。
ありがとうございます。
機械 人形より