第二話 初めての契約精霊は幼女(少女)精霊
バトルは次回に持ち越します。
まことに申し訳ありません。
高位精霊がいるであろう場所までは別れ道もなく、ただ真っ直ぐの一本道だった。
怪しい。怪しすぎる。
水牢を越えるまで別れ道があったが、越えてからは、別れ道一つない一本道だ。
それに壁から微かに魔力を感じる。一般の精霊使いなら気付かないレベルの。
まるで誘導されているみたいで、気味が悪い。
事前に持ってきておいたランプを片手に小一時間歩くと、広い大部屋が見えてきた。その部屋のみ発光していて、遠目でも発見することができた。
何故発光しているか。それは高位精霊の力だろう。
その読みは当たっていた。俺の目の前に二体の精霊が現れたのだ。厳密にはこっちが現れたんだけど。
片方の精霊は大人の女性みたいな顔立ちで、綺麗な銀髪の美人さんだ。少し弱っていると、この精霊の魔力が不安定なのでわかる。
もう片方は同じ髪色の……うん、幼女。いや、ギリギリ少女かもしれない。まあ、どうでもいいや。
ちなみに二人とも服を着ていない。精霊は自分から服を着ないのだ。契約して、魔力で服を作らせない限りは。
「……初めまして」
沈黙が続いていたので、なるべく直視しないようにしながら話し掛けた。何でかわからないけど、ぎすぎすしている。空気が痛い。
「貴方はここへ何をしにきたのですか?」
美声で話し掛けられて、ビクッと反応してしまった。平常心、平常心。
「俺はただユウラの水牢を破った高位精霊を見にきただけだよ」
「……貴方は既に高位精霊をお持ちになっていますよね?」
「おいおい、何言ってんだよ。お前は長生きしてるみたいだから知ってると思うけど、ここの所有権を持ってる学園の生徒で、序列最下位だ。高位精霊どころか精霊一体すら持ってないぜ?」
「いえ、貴方は凄い人です。精霊が長生きしているか知るためには魔力を視なければいけない。それはある『眼』が必要ですし、それ相応の魔力も必要です」
いきなり確信をつかれた。この精霊は本当に高位だな。序列一位レベルかもしれない。あの人とは関わりたくないから知らないけど。
「……まあ、一応その眼は持ってるけど、これ自体は俺のじゃないんだ。使い勝手が良いから使ってるけど。……っと話が逸れたな」
「この人なら大丈夫かもしれませんね……。貴方に頼み事をしてもいいですか?」
途中から俺の話を一切聞かずに独り言をしたと思ったら、いきなり頼み事か。
聞いてほしいわけじゃないんだぜ? でもやっぱり話くらいは聞いてくれたって……。
切り替え切り替え、っと。
「内容によるけど? 流石に今のお前と契約することはできないぜ?」
精霊というのは、基本的には人間より早く死ぬのだ。
しかし、それは野生の、契約していない精霊に限る。契約精霊になっていない精霊は寿命が短く、人間の半分程度で死んでしまう。
何故なら、契約精霊になることによって供給される魔力を受け取れないからだ。当然ただの精霊は力もなく、寿命も短い。
この高位精霊は、ずっとかはわからないが人間と契約を交わさなかったみたいだ。彼女と俺が契約できない理由。それは、彼女が魔力切れになるからだ。
契約する瞬間とは、先にこちらが彼女から精霊の生命エネルギーである魔力を受け取り、それを大きくして流し返すもの。
彼女の残りの魔力量を考えると、彼女が魔力を流せば俺が返す前に消滅してしまうだろう。それはただ彼女の寿命を削り取るだけだ。そんなことはしたくない。
それ以前に俺は精霊と契約できないし。
「大丈夫です。契約してほしいのは私ではなく、この子の方です。私は残りの命が短いので、この子のことを任せてもよいですか?」
そう言って、幼女……じゃなくて少女を俺の前に差し出してきた。
ああ、服を着てほしい。
「その前に魔力量がカスだから契約できないんだけど……」
「大丈夫です。私が貴方の魔力経由回路を改善しておいたので」
何でかはよくわからないが、とりあえず契約できるらしい。
ものは試しだ、と契約の為の言葉を言う。
「汝、我と契約を結ぶことに同意し、我が死ぬまで従うことに同意するか」
これ恥ずかしいから言いたくないんだよな。恥ずかしすぎて涙が出そうだ。
「同意」
初めて少女の方が口を開いた。隣にいる大人の精霊と同じで、なかなかの美声の持ち主だ。
その美声に反応するかのように二人の足下から契約魔方陣が出現した。
これは普通に契約するときに承認してくれる魔方陣だ。詳しく知りたいなら国立図書館の最深部にでも行ってみてくれ。厳重に保管された本があるはずだ。
おお、初めて契約魔方陣が出てきた。彼女の言った通り契約できそうだ。
「後は肌を触れ合わせればいいだけ……って、うわっ!」
俺が契約最後の説明をしていると、全裸の少女が突進の勢いで抱き着いてきた。勢いが強くて、俺が少女に押し倒された形になる。ちなみにかなり痛い。後ろにあった少し大きめの石に背中をぶつけたみたいだ。
俺があまりの痛さに悶えていると、唇に柔らかいものが触れた。
新しい精霊は出せましたけど、バトルは……。
次話こそはバトル展開にしたいです。
プロローグ、一話でお気に入り登録してくださった方々、二話で幻滅させてしまったのなら申し訳ない。
しかし、この作品を読んでくださった方々、更にお気に入り登録してくださった方々。
ありがとうございます。
機械 人形より