Ep. 1.5 元勇者と魔王 最高の相棒
かつて世界を蹂躙した「神」としての残滓も、それを食い止めた「魔王」としての威圧感も、今はただの焚き火の爆ぜる音に溶けていました。
揺れる炎を眺めながら、先に沈黙を破ったのは魔王でした。
「……なあ。いい加減、お前のことを『勇者』って呼ぶのも、俺が『魔王』って呼ばれるのも、柄じゃねえと思わないか」
その言葉に、勇者は少しだけ意外そうに目を丸くし、それから穏やかに微笑みました。
「そうだね。僕がすべてを壊そうとして、君がそれを止めたあの日から、僕たちの役割はもう終わっているはずだ」
勇者の「僕」という響きには、かつて世界を塗りつぶした絶対者としての傲慢さは微塵もありません。
ただ、目の前の男を唯一の理解者として信じ、等身大の自分を受け入れた静かな響きがありました。
「僕が神として君臨していた時も、君だけは僕を一個の存在として扱い続けてくれた。なら、もう役職名で呼び合う必要なんてないのかもしれない」
「ああ。これからは、世界がどう言おうが関係ねえ。俺とお前、ただの男同士として向き合うための印が必要だ」
魔王がそう言って、焚き火に新しい薪を放り込みます。パチリと火花が散り、二人の決意を祝福するように夜の闇を照らしました。
「……なら、僕に君の名前をつけさせてほしい。泥まみれになった僕を、大地のような包容力で受け止めてくれた君には、ガイアスという名がふさわしいと思うんだ」
「……ガイアス、か。フン、勝手にしやがれ。どのみち俺は、お前の『重荷』を引き受けると決めたんだ。呼び方くらい、好きにさせろ」
魔王——いえ、ガイアスは少し照れくさそうに、けれど満足げに鼻を鳴らしました。
そして、彼は神と人の境界で揺れる僕を見つめ、静かにその名を返しました。
「なら、俺はお前をカイルと呼ぶぜ。生と死、神と人の狭間で苦しみながらも、生きることを選んだお前の歩み……その『境界線』を、俺がずっと見ててやるからよ」
かつて神だった男は、自らを「カイル」として受け入れました。境界線に立ち、弱さを抱えながらも生きることを選んだ、一人の人間としての新しい名です。
【現在のパーティ:真・編成完了】
* カイル(元勇者・元神):Lv 1 / 境界を歩む旅人
* ガイアス(魔王):不器用で最強の相棒
* セシリア(聖女):愛と制裁を司る母性
* レオン(勇者):未来を担う光の勇者
* リリィ(魔法使い):泡と爆炎のムードメーカー
* フローラ(獣人の少女):笑顔を運ぶ九尾(幻影)の少女




