第八話 襲撃
初めての戦闘シーンのためおかしなところがあると思います。
・・・なんだかおかしい
レイが医者の診療を受け終わって元の場所に戻ろうと歩いている。
一向につく気配がない。
道を間違えたというわけではない。
なんてったって間違える要素である、分かれ道がないのだから。
あまりにも長い一本道。
それに、今までとは違ってなんだか薄汚れているし、全体的に古びている。
そして今までは少なからずあった人の気配というものがない。
「う〜ん」
この感じだと迷ったっぽいな。
確か医者の言うことを聞いてここまで来たんだよな。
てっきり、人と人とをすれ違わない配慮かと思ったが、そんなことはないらしい。
嫌な予感がする。
ヤカンのお湯の沸く瞬間を待っているような不快な緊張感。
一旦戻ろう。ここにいたとしても何ら意味はない。
レイは踵を返そうと振り向こうとした。
彼の動きを止めるように嫌な匂いが鼻を通り過ぎる。
煙草のにおいだ。
足音はしないが、明らかに何かいる。
デジャブ感がある。これは・・・・・
後ろにいるものが自分の斧が届くぐらいの距離になるまで歩くのをやめなかった。
レイは振り返ると同時に斧を抜き取り勢いよく体の回転を活かして横に振り切った。
「いっつ・・・・」
レイは振りかざして当たった斧の反動で手が痺れる。
当たったものの方をいざ見ると、フードで顔が隠れていてよく見えない。
しかし、攻撃した部分の布が切れて少しだけ肌が見えた。
一応人間なのか。
その人間証明をする隙間も、布が重なってなくなった。
レイは正体不明の存在から2メートルほど距離を取って観察を始める。
外見はマフラーで幾重にも覆われていてわからない。
身長はおよそ190センチぐらい。俺よりも身長が高いな・・・
何も武器は持っていない。隠している可能性か、もしくはステゴロのほうが得意なのか
だがしかし、こいつは一度あったことがある。
背中の傷跡を思い出す。
それに攻撃された可能性が高い。よって、逃げる!
しかし、逃げる道は反対方向。
というかこいつ、さっきの斧避けることはできなくともせめてかばうくらいはするんじゃないのか?
そのおよそ一瞬にも満たない間の空白に相手はゆっくりとレイのことを真正面で捉え始めた。
レイはいったんこの意味不明から距離を取ることを最善として考え二歩ほど後退りし背中を向けて走り出そうとした。
相手はピンポン玉サイズの球体3つを手に取り、レイの進行方向の一歩先ぐらいに投げる。
レイはそれを見て一瞬止まり、球体が煙幕を置き土産にして床に当たった。
煙幕によって視界が遮られ、レイは咄嗟に振り返る。
それは悪手だった。
首を捕まれ、床に擦られながら叩きつけられる。
「何なんだお前!」
理不尽を吐き出しながら目の前のやつを見る。
相変わらずマフラーで顔が見えん!
動かないように体重をかけて圧迫しているのがわかる。
「・・・・・・」
沈黙のみが鳴り、首がどんどんしまっていくことだけが時の流れを意識させる。
こいつのことを見たことがある気がする。
完全に覆い隠された顔、タバコの匂い。
「お前、スモークってやつか!」
その指摘に一瞬だけ力が緩む。
流石にその隙と自分の記憶力に感謝しながら、体を左に傾け相手の重心を崩し空いた右側へと体を動かす。
窮地から立ち直ることができた。
床に倒れ込んだこの男への牽制として先程調達した曰く付きの銃を向ける。
男が銃口をマフラーの隙間から見つめているのがわかる。
「・・・なぜ、名前を知っている?」
低い声がマフラーの中から聞こえる。
すぐ行動をしないあたり流石に銃弾を危険視しているのか?
いったほうが時間稼ぎになるなこれは
「何、単純な話だろう?お前みたいにこうやって人に危害を加えるようなやつは村にとっては危険分子だろう。それを淘汰しようとするのは合理的なことであり当たり前なことだ。
言うなれば、ブラックリスト入り判明おめでとうってことだ。」
一瞬レイナから見せてもらったブラックリストに丁度こいつが乗っていて良かった。
「どれだ・・・?」
確か罪は「路上喫煙」だったか。
・・・なかなかにしょぼいな。
「さぁな、それを言うほど仲が良かったか?」
「そうか、じゃあ今から仲良くなろう。殴り合いでな。」
勢いよく立ち上がりながら銃身をそらし、ストレートを決めてこようとした。
咄嗟に斧の刃でこちらもそらし、そのまま流れるように斧で首のあたりを刈る。
「いっ、・・・つ」
これまた振動が響く。
この男ことスモークもそれを気遣う素振りもなく、二の腕を掴まれる。
が、別にそれはいい。
斧を空中で手放し、警戒されずにちょうど近くなった首元のマフラーを引き抜く。
それに驚いたらしく、二の腕を掴んでいた手で服を勢いよく引っ張られ半回転させられる。
そのまま蹴り飛ばされた。
その間にレイはマフラーを手放していなかったため、できた距離分マフラーが解ける。
マフラーが解け、その中にしまわれていた煙幕弾が床に落ちる。
レイの意図に反してさっきよりも大きい煙幕ができた。
よし、これで距離を取ろうじゃないか!
と思っていたのもつかの間、煙の奥で橙色の光が揺らめき、目の前で煙幕の塊が爆発に似た膨張を起こした。
聞く耳を持たないやつですら聞き返すことはなさそうな爆発音である。
レイはその煙に当てられ、目を開けることが難しくなる。
普通の煙幕弾じゃこうはならない。
手作りなんだろうな。
目をシパシパとさせながらも迫りくるやつのことは忘れない。
マフラーがなくなったせいでようやくそのご尊顔が見られるようになった。
センター分けの白と灰色の中盤あたりの色の長い前髪に刃物のようなシルバーの眼光である。
ガタイが大きく、これは力では勝つことなんてできやしない。
そして、もうジリ貧も聞かない。
斧は手放した。
動揺させる手段もない。
スモークは同じようにマフラーの中にしまっていた煙草をつまみ上げ、その中から一本取り出して煙草に火を付け、大きな一口をすい息を吐くと腕をだらんと下げた。
「おい・・・それ返せ」
煙草でレイがいまだに持っているマフラーの片方を指す。
「返したら俺に利益はあるのか?」
マフラーを固く握り、渡さない意志を示す。
「あー確かにな、そうだな。特にねぇや」
煙草を床に捨て足で踏みつける。
その踏みつけた足を床から離さずに動かし、煙草の跡ができた。
そうしているうちに近づいてくる。
レイも死にたくはないため、唯一のこいつにとって有効打になりそうな銃を立ち上がって向ける。
スモークが銃をレイが向けた途端、クツクツと笑い始めた。
「無理だ。銃でも怪我はつかないぞ?あまりここは壊したくないんだ。だから大人しくしてくれないか」
「・・・仲間がいるからか?」
首でスモークの後ろ側を指す。
「御名答、」
スモークの後ろはレイが治療を受けた医者のいるところである。
なるほどな、グルだったのか。
まて、なんのために手を組んでいるんだ?
あの医者はかなりの村の中心部にいる。なら、『神縄村へのなにか』があるんだろうな。
しかし当の俺はここに来てから数日も経っていないはずだ。
いやそれよりも!どうして傷がつかない!
神縄弦の『例えば、足が早かったり第六感が鋭かったり、力が強かったり体が頑丈だったり、これ以上の説明がないから例を出すことしかできないんだよね』
を思い出す。
特異点なのか・・・?これが?
化物じゃないか!
「化物じゃないか・・・・」
「侵害だな。さすがに傷つきそうだ。だが、殺さなきゃいけなくなった。」
「傷の付かない方が何いってんだか、」
殺意が一気に増す。
さっきのがヤカンのお湯が沸く瞬間を待っているんだったら今はお湯が湧いても縛られていて動けず、火から下ろせずに鳴り響くヤカンをそのままにしなければならない感じ。
非常に気分が悪い。
流石にもう気の利いた返しはできなさそうだ。
どうやったら生存できる?
何をすればいい?
いや、もうなんでもいいのかもしれないな。
「あはははは〜ぁあ」
すこし笑って息をつく。
「・・・どうした、気でもおかしくなったか?」
スモークはレイのその行動に異念を抱くが、それは足を止める理由にはならない。
「ふぅ・・・」
どうせ死ぬなら当たって砕けて、
「玉砕だ・・・」
この行動を銃の呪いのせいにしてしまおう。
「当たって砕けろ!!!!!」
そのままの勢いに任せて銃の引き金を引いた。
弾丸が弾け飛び、またそれと同じように。
レイの両手が砕け散った。
「は?」
スモークは避ける行動など想定していなかったため首元に銃弾がのめり込む。
「がっ、ぁ!」
後ろ側に衝撃が走り、背中から倒れ痛みに悶絶する。
「うっぐぅ・・・ガハッ」
呼吸を確保しようと首元を抑えて咳き込み始める。
血が出ていないため貫通まではいっていないが、内部に衝撃を与えた。
一方レイは銃弾を撃った側だというのに被害が大きい。
火薬の匂いと血の匂いが混じり合い、痛みもかなりあるがさっきよりかは幾分マシな気分である。
「だぁからあのクソオヤジ・・・」
レイは血溜まりと飛び散った指の肉片の上に両膝をつき、手から離れ床に落ちた、いまだ銃口から煙の出ているこいつを見る。
あまりにも威力がでかすぎて相手にも莫大な被害を被るが。
苦しみ、喘いでいるスモークに目をやる。
持ち主にもそれ相応を与えるのか。
そして何もすくい上げることのできない両手を見る。
何と言う欠陥品、不良品。価値のないガラクタ
俺以外にとっては。
このくらいなら本気を出せば2日で治せるしな。
だがまずは・・・
「おい、」
ふらふらと立ち上がり、スモークを見下ろす。
スモークの顔色は真っ青通り越して紫色だが、いささか人間味が増した。
あれを受けてもこれでいられるっていうことは相当な硬さを持っていたのだから、いちいち避ける意味を考えることもなかったんだな。
たすかった・・・
本題に入るべきだな。
「なんで俺を殺そうとしたんだ。お前」
スモークは声が出せないようだが、口をパクパクと動かし何やら伝えようとしている。
「いったいーー」
上を見上げるとミシミシと天井にヒビが入り始め、砂も落ちてくる。
レイは異常さに気づき下がろうとするが、大量出血によってよろめき床に座り込む。
そうして上から何かが落ちてきた。
ーーーーレイナ視点ーーー
「小夜ちゃんたらひどいんだから・・・」
少しべそをかきながらボテボテと足を進める。
小夜に連れられて詫びの品を首が小夜によってしまっていくのを味わいながら探していたとき、小夜が神縄弦に呼ばれ小夜は凄まじい舌打ちをしてからレイナに先に行くように。
と言われたのでウキウキルンルンでレイが行ったであろう診療所に向かおうとした。
だが
もちろん迷子である。
彼女が正しい道を選んで進めるわけがない。
彼女は今、ヒビが入り全体的に薄汚れところどころ水漏れすらしている、絶対にもう誰にも使われていないであろう通路を通っていた。
「ここどこぉ・・・」
少し涙声になりながら辺りをキョロキョロと見渡す。
眼の前には右へ進む道とそのまま真っすぐ進む道があってどちらにしようか非常に悩んでいる。
「どっちにしよう」
そう悩みあぐねていると振動がポケットからしてきた。
レイナは少しビクッとしながらもポケットから小さな黒い円盤状のものを出し、縁が赤く点滅していた。
この点滅は誰かからの通信だ。基本は小夜ちゃんだけど、誰だ?
その間もうるさく光り続けるため渋々真ん中の平らなところをタップした。
すると、短い電子音がなったあと声が聞こえ始めた。
『あーおーい。聞こえてるかー?』
「あれ、レイ。」
なんとレイからの連絡だった。
確かにこの通信機は他の人に電話をかけることができるはずだが、まだつなげていないはずだ。
レイナは違和感を覚えながらもレイなのかどうかわからない人と会話をし続ける。
『今どこにいるんだお前、ていうか小夜さんとはいないのか?』
小夜のことを知っている。
これだけで判断材料になるかどうかはわからないが、声は同じなんだよな〜
「レイのいる診療所に向かおうとしてるんだけど、迷子」
『・・・だろうな』
呆れ果てた答えが返ってきた。
『なら、道案内してやろ「いや無理でしょ。何いってんの?」
レイではないものの言葉を強く遮る。
流石にここに来たことがないのに道案内ができるわけがない。それに診療所内では通信機は使えなくなる。
それに小夜の約束を破るほどの人じゃないだろう。破ったら破ったなんだけども。
さて、何が返ってくるかな。
『・・・・・・この人・・・レイ、さんと知り合い。だよね』
少年の声だ。
レイの低くも高くもない声とは違って、高く少年らしい声だ。
『騙そうとして。ごめんなさい、悪気ない。お願い今から案内するから』
カタコトで喋り慣れていないような印象を受ける。
「どうして?」
少し声のトーンを軽くする。
『そのえっとおぁ・・・その、レイさんがの両手が・・・』
「何?両手が?」
電子機器を挟んだ先にいる少年が息をつまらせながら言う。
『爆散。した』
次はカタコトの少年の視点になります。




