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ブラッドヒューマンズ  作者: 作間 者図
第一章 トクイナヤツラ
1/6

第一話 奇妙な二人

面白ければ幸いです

視界が赤く、染まっている。

全身が痛い。

足が重い。

 この男は何かから逃げているようだ。暴力好きの飼い主から逃げる駄犬の足取りで、なにもない街をただひたすらに歩いている。なにもないのならば、それは街と言えるのかは知らないが。

 何日間も未来もなく歩き続けて、急に足から崩れ落ちてしまった。足の電池はもうないらしい。

 しかし、諦めることを知らず、腕ではっていき、多くの車によって踏み潰されたであろう道路から脱出しようと試みる。

 それは不可能なことではなかったようで、路地裏に入ることができた。

一息ついて周りになにかこの状況を打破するものがないかを一縷の望みにかけてみる。

 柔らかいものが右手にあたって倒れた。それを探して自分の顔の眼の前に出すと、包帯だった。きれいなもので一度も使われたことがないらしい。

 しかし、彼の今の状態からして包帯などは気休めにもならない。

彼もそれを知っていたためまた、包帯を巻けるほどの体力も残っていなかったため手放した。

ふと、握りしめていた自分の手の中にある斧を見つめる。

 刃は赤色のものがしがみついて離れない。手持ちの方も元の色と赤色が混じって今の彼の状況を表しているような色だ。

 力尽きたあとであっても彼の左手は斧を手放そうとする気配すらない。

彼にとって斧は大切なものなのかもしれない。

 そんなさなかでも痛みが心電図のように波打つ。脳内が痛みによって埋め尽くされて、それ以外のことは考えられない。

さっさと止まってくれるとありがたいが、止まることはきっと死を意味するのだろう。

 この土壇場で彼は唯一役に立つ聴覚を研ぎ澄ませていた。

前の方から足音とそれに合わせて布の擦り合わされる音、あと何か引きずられている音がした。徐々に音源は近づいてきてついに彼の眼の前に現れる。

人の形をしていたが、詳しいことはわからない。

彼を見て立ち止まり近づいてきた。何かを言っているようだが、彼の耳にはただの音としか認識できない。

相手がしゃがみ、目と目があった。



い  しき   が   そ こでと   ぎれ   た

ーーーー

 明るい光が自分のまぶたをつらぬいて眼球に届く。

世界はまだ、彼を見捨てていなかったようだ。

 目を見開くと切れかけの蛍光灯が彼の顔を覗き込む。そんなかすかな光でも彼の目にはとても眩しかった。

 起き上がって周りを確認してみる。

病室のようだ。しかも一人部屋だ。

なぜここにいるのだろうか。ここに自ら来た記憶はない。

確認をするために目を閉じる前の記憶を遡ってみる。

・・・・・該当するものはない。

とにかく、ここからすぐに出て

     逃げなくては。

久しぶりに触る柔らかな羽毛を味わうこともなく、ベットから出ようとする。

左腕がなにかに引っ張られて出ることができなかった。

何故か確認してみると献血の針が刺さっていた。

 しかも、医療用のセロハンテープでくっつけられているのではなく、包帯で何十にも巻かれていた。

ちぎろうともがく。が今の彼には何も壊すことはできないだろう。

 それほどまでに疲弊しているのだ。

動けば動くほど空中にぶら下がっている栄養剤の透明な液体が揺れる。

 皮膚が痛くなるのも構わずに包帯を掻きむしろうとする。

包帯はきつすぎずゆるすぎず巻かれており、手慣れているものがやったのだろう。

 彼を助けようとしているこれが、今の彼にとっては手錠のようにここにとどめておく重しだ。もしここに刃物が有るのならば切り落とせるのに。

 考えるが、無理なものは無理で、ないものはない。

落ち着いてもう一度周りの様子を確かめる。

ベッド以外にはなにもない。

 独房にいるような恐怖を感じ、毛布を強く握りしめる。

ふと自分の様子を見てみると上の服を包帯以外何も身に着けていない。

つまり、今まで着ていた衣服はない。そして、衣服の中にあった武器類もない。

もちろん斧も。

 急な焦りが湧いてきた。

どうすれば、

「本当に・・・・なんなんだ」

そう心の底からこの状況にあった言葉をひねり出す

「あれ、おきてたの」

何処かから声がする。

どうやら一人ではなかったらしい。

高くも低くもなく、何も感情の入っていない声だ。

一周回って安心してしまう。

「こっちだよこっち。」

そう声をかけられるもどこにいるのかがわからない。

それに知りたくもないため探そうとすらしない。

「よっと」

 そう言うと誰かがベッドの下から這い出てきて何事もなかったかのように体のゴミクズを払いながら立ち上がった。

 顎の下らへんで切り揃えられている白髪に赤色のばってんがラインのように引いてある。

特に興味深いのは頭の天辺に生えた角のようなクルンとしたくせ毛だ。触ったらゴムのような弾力がありそうだ。

 座っているため正しい身長はわからないが恐らく170センチは超えているだろう。

服は腕をまくったワイシャツに黒のハーネスを体につけている。そして、ハーネスの左胸のあたりに巻き付ける必要がないワンタッチ式の赤ネクタイがつけてあった。

目にもまた赤色のクロスがある。

 あまりにも特殊な容姿だ。

そんな特殊な容姿を持った女が彼のことを無心の表情で見つめる。

それに彼も沈黙で返す。

鬱屈とした空間を先に破ったのは彼女の方だった。

「ねぇ、あんた名前は?」

答えあぐねてしまう。

もしいってしまったらと、その後の最悪な状況を考えてしまい口が開かない。

「ふぅん。ちなみに私はレイナ。あんたが本当に何なのかわかんないけど、助けたことには感謝してくれてもいいよ。」

立っているのに飽きたのか少し不満げに腕を組んで彼から離れたベッドの端に座る。

 こいつが、助けてくれたのか。なんのために。

この状況に昔話のような都合のいい不気味さしか感じ得ないが、命の恩人に対して失礼なことはこれ以上したくはない。

「ありがとう。助けて、くれて。あと俺は・・・・」

お礼を言ったのにまた名前で詰まってしまう。これ以上選択を間違えてはいけない。

全てが夢のように消えてしまう。命をかけて、命をつないでくれた彼らの努力も。

 深呼吸をして気持ちを整えた。

「レイだ」

ようやく名前を言ってくれたことに満足したのか腕組を解いてくれた。

「そう、ここらへんでは初めて聞く名前だね。どうしてここに来きたの?」

流石に、この質問には答えてはいけない。その旨をちゃんと伝えよう。それが精いっぱいの礼儀というものだ。

「言えない、んだ。ごめん。」

レイナはレイの方を見やって腕をおおきく伸ばす。

「別にいいけど。でも、話さなきゃいけないことが多いからね。ちゃんと聞いてよ。」

  もう一度言うけど私はレイナ。ここらへんを取り仕切っているグループのこうせいいん?だっけか、そんな感じでレイにあったのはちょうど私がある仕事を上の人から受けてそれをこなし終わった帰りだったんだ。

私の仕事には、住民登録がされてない不法滞在者の管理も有る。

それがあんただった。

「よく分かるな。その・・・不法滞在者だって」

何がどう不法滞在者しているのかはわからないが、適当に言っておく。

「滞在者は」

そう言って赤ネクタイを外してレイに見せつける。

「必ずこのネクタイを着けるの。どこでもいいから見えるところに。」

またつけ直して話を始める。

「こうして見せないと下手したら殺されちゃうし。ほっんと見つけたのが私じゃなかったらやばかったかもよ?」

「そうなのか、初めて知った。」

もしかしたら自分の存在が広まっており、それで不法滞在者だと思われたのかと思ったがちゃんとした理由があって助かった。

「その気持わかるわ〜私も一週間前くらいに来たばっかりだし。左遷されちってさ・・・・」

少し表情がほぐれて声にも暖かい色がついた。それに少し明るくなる。

「なにをしでかしたんだが。」

そう言うと急に立ち上がってレイに向き直る。

「いや〜取引先の相手をその、、守れなくって。わざとじゃないんだよわざとじゃ。だって」

なんだか口調がほぐれていく。わざとあんな雰囲気を出していたような気がした。

「だれも足元に誰が釣ったかもわからないカワハギがおいてあるだなんて思わないじゃん!しかも、それに足滑らして漁港に落ちるとか。ほんとに裏社会の住人かってのあんなことされたら助けられる命も助けられなかったわ。」

 先程までのサスペンス劇場並みのシリアス感は消えてどちらかというとコメディー寄りになってきた。

「でさぁ、こんな辺鄙なところに来る羽目になっちゃったし、もう踏んだり蹴ったり過ぎてうどん作れそうだよ。」

「いや、作るなよ」

「あっと、話がカワハギのせいでずれちゃったね。どこまで話したっけか・・・・」

腕を組んで考える。

 早々思い出した、不法滞在者の話だ。

さっきも言った通り不法滞在者は見つけ次第処罰するか、捕縛して話を聞いて、この村に入るかの2通りの選択肢が取られる。

「私は後者を選んだけど大半は前者を選ぶ人が多いんだよね・・・」

そう呟くように言う。

「どうしてだ?」

 それがね〜許可を与えるときにもともと暮らしていた人の印が必要で、許可を与えられた人は一定期間の施行期間の後に正式に入っていいよってことになるんだけど、その間の監視とかは印を与えた人がやんなきゃいけないんだ。

それがめんどくさくて。

 しかもその施行期間ってのがいつまでかわかんないから。

まあ、こういう法のない場所では細かいルールも大切だと思うんだけど、それで人が死んじゃうのも何かなってさ。

 レイは改めて自分の立場の危うさに黒いため息が出る。

「で、続きなんだけどいやまって、ここがどこかわかってる?」

「び、病院・・・・・」

そこからかーとうろちょろしだした。説明が面倒くさいのだろうか。

三回ほど回ってよし、と心に決めたのか手と手を合わせた。

「もう、ここからはめんどくさいから小夜ちゃんに説明してもらおっと、」

先程の蛍光灯よりも眩しく清々しい笑顔で諦める。

「でも、ここがどこだかは知っといたほうがいいね。」

レイナはレイの前を通り、気が付かなかった薄暗いカーテンを一気に開ける。

 窓の外には灰色の壊れた街の背景にネオンの鬱陶しいピンク色や人を暖めるために有る赤色が点々と散らばっている退廃的な世界に人の活気が渦巻いていた。

「ここは大日本帝國の北側、旧仙台にある神縄弦を村長とした自治地区。神縄村」

そんな世界を背にして少女は青年に向く。


頑張ります。


この世界は現実とかなり異なっている部分がありますが、そこに政治的思想はありません。

ただただ書きたいこの一心のみで書いていますので、読んで嫌な思いをさせてしまったらと思い、書かせていただきました。

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