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繭のほころび  作者: 変汁
9/22

玄関へ向い靴を履きドアノブに手をかけた。


その時、ふと背後から視線を感じた。


そのままの体勢で部屋の方を振り返る。


見えるのは短い廊下と部屋に通ずるドアだけだ。


私を見たいと思う奴なんて幽霊ですらいやしないよ。


自嘲気味に微笑みながら外へ出ようとした。


だがドアノブは下がらなかった。


鍵が閉まっているのか?いやしっかり開錠されていた。


再度、力を入れてドアノブを下げようとしたが、出来なかった。


バックを地面に置き、両手でドアノブを掴む。


全力で下げるが、びくともしなかった。


全体重をかけても、ドアノブが下がる事はなかった。


「マジで?」


美香は一旦、部屋へ引き返した。


こういう場合、先ずは何処へ連絡すればいい?鍵の110番?警察?救急車?いや怪我なんてしていない。


単に部屋から出られないだけだ。


なら鍵の110番が良いのか?スマホを持ち、近くにある鍵の110番を探した。


かけようとした時、昨日、すっぽかされたお客から電話がかかって来た。


美香は声音を少し高めに意識しながら、電話に出た。


「あ、三越様、おはようございます」


「……」


美香が言っても聞こえるのは、微かなノイズだった。


「もしもし?三越様?」


反応はない。


「どうかされましたか?」


美香がそう尋ねた、その時、


「ヴゥウウゥゥゥ…」


としゃがれた唸り声なようなものが聞こえ、美香は思わずスマホを放り出した。


「え…何、今の…」


数秒の間か、数分の間かわからないが、美香は放り出したスマホを眺めていた。


四つん這いになり、恐る恐る近づいていく。手に取りゆっくりつ耳へ近づけた…


「キレキレキレキレキレキレキレキレキレキレキレキレイキレイナ…」


美香は慌てて切るボタンを押した。


だってキレって言ったじゃん…


そのような言葉が無意識に口に出た。


「つか、なんなの?」


スマホを床に置き、上から見下ろした。


「三越の嫌がらせ?んなわけないか…」


美香の独り言が続いた。


「三越が殺されたか何かあって、生き霊が私に助けを求めて…そうなら、キレなんて言うわけないじゃん!何をキレって言うのよ!」


未だ冷静さを取り戻せずにいた美香は落ち着けと言い聞かせた。


水分を補給し脈を測った。動悸も落ち着き始めていた。


落ち着いて来ると、最後に聞いた「キレイ」と言う言葉を思い出した。


「キレ、じゃなくて、キレイって言ってたのかな?」


いや、それはない。間違いなく「キレ」と言い続け、美香が電話を切る前は「キレイ」だった筈だ。


「切れば綺麗になれる?って意味?」


そこまで考えて、美香は怖くなった。


嫌なイメージが脳裏に浮かんだからだ。


人体が切られそこから大量の血が流れ出す。


血で真っ赤に染まった身体で綺麗でしょ?と尋ねて来る女…


何故、イメージの姿が女なのかはわからない。


恐らく血イコール女と言うのはきっと女には生理があるからだと美香は思った。


「意味不明だわ」


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