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繭のほころび  作者: 変汁
4/22

不可解なままメイクを終えるとヨーグルトとゆで卵だけの朝食を取り、パンツスーツに着替えた。


今日は直接、展示会場へ出向けば良いから、少しばかり気が楽だった。


最近はもっぱらオンラインでの仕事が当たり前になっている世の中だけど、美香の会社はその流れに右へ倣えとはいかなかった。


それについて陰で文句をいう社員は無数にいたが、上の人間は一切耳を貸さなかった。


「仕事とは会社へ出社して初めて仕事と言えるんだよ。自分のデスクに座ると気持ちも引き締まるだろう?さぁ、やろう!となるのが社会人だ」


とは美香の上司の言葉だった。


オンラインの意味、履き違えてんなーと初期のパンデミックの時、思ったものだ。けれど、事務職や営業に関わらずこの会社は出社が義務づけられていた。


美香は営業部に所属して6年になる。


成績はいつも下の方で、やり玉にあげられる事も多々あった。


普通の精神であれば、見返すか、病むかのどっちかだろうが、美香は入社当初から仕事なんて幾らでもあるしいつ辞めてめいいし、というスタンスだった。


だから怒られても気にも止めなかった。


反省するフリは見せても内心では、上司がストレスでハゲろとか胃潰瘍になればいいとか、上司の説教話が終わるまで美香はこいつの身に不幸が降りかかるよう妄想した。


展示会場での待ち合わせは先方の希望だった。


着物の展示らしいが、着物の事など美香にはさっぱりだった。


一応、お客だから、少しでもこの展示会に出されてあるだろう着物の勉強をしておくのが、通常なのだろうが、面倒でやらなかった。


場所の下見すらしなかった。正直、上手くいこうがいかまいが構いはしなかった。


スマホで展示会場の最寄りの駅を調べてから家を出た。


約束の時間が午前中の遅い時間帯の為、満員電車が避けられるのはありがたい。


電車に乗ろうとした時、上司からメールが来た。


美香が出社しなかった事に腹を立てているようだ。


「昨日、今日は会社に出社せず、展示会場へ直接向かうとお話ししましたよ」


そのように返すと、すぐさま返信が来た。


「出社してからでも充分間に合う時間の筈だけど?そのような場合は出社してから行くのが常識だよ?」


4日連続、寝汗が酷くて苛々してるのに、何だよこいつ…


美香はメールを無視して、やって来た電車がホームに入って来るのを、数歩下がった場所から眺めていた。

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