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繭のほころび  作者: 変汁
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目が覚めると全身から汗が噴き出していた。


ねっとりとした汗が両脇や股関節から流れ落ちていく。


手の平で額や頬、首筋に溜まった汗を拭った。


下着もパジャマも汗まみれでまるでお漏らししたみたいだ。


ゆっくりと身体を起こしベッドに腰掛けた。


シーツは勿論、枕カバーも汗のシミが出来ている。


今日で4日連続だ、と花町美香は思った。


無造作に前髪をかき揚げ久しく切っていない伸びた髪の毛を後頭部に束ねた。


直ぐにシャワーを浴びるのだから束ねる意味はないのだけれど、髪の毛にパジャマが押し付けられる感覚が不快だったのだ。


枕カバーとシーツを剥がし、丸めて持ちながら寝室から出ると、真っ直ぐにバスルームへと向かった。


喉がカラカラだが水分を取るより一刻も早く全身の汗を洗い流したかった。


シーツと枕カバーを洗濯機へ投げ込み脱衣所で下着を脱ぎてた。


それも同じく洗濯機へ放り込む。


「ウザっ」


舌打ちした後で美香はそういうと、まず冷水で全身を洗い流した。その後、温めのお湯でシャワーを浴びた。


冷水を浴びるようになったのは4日前からだった。


お湯で洗い流しても、何故かベタつきが取れていない気がして、何度もシャワーを浴びた。


けれどダメだった。だから一度、冷水を浴びてみたのだが、これが上手くいったようで、身体にまとわりつく汗は嘘のように身体から流されていった。


それからの3日間、最初に冷水シャワーを浴び、その後で温めのシャワーを浴び身体を洗った。


シトラス系のボディシャンプーは元彼の影響で使い始めたが、振られて2年半経つが未だにシトラス系の物を使用している。


未練はないつもりだが、これを使用し続けているという事は少なからず元彼の事を未だに引きずっているのだろう。


ボディシャンプーを押し出す度に元彼の顔が脳裏を過ぎる。


それは光速で美香の頭の中を駆け抜ける程の一瞬であるが、驚愕している元彼の表情を美香は見逃す事はなかった。


別れた原因としては私に結婚願望がなかった事が挙げられる。


元彼は20代の内に結婚し子供も3人以上欲しがっていた。


反対に私はそのどれにも興味がなかった。


他人と結婚しその他人の家族や親戚と付き合わなければならなくなる、


それは美香にとっては地獄そのものだった。


子供もそうだ。赤ん坊の頃は夜泣き等でうるさくたまらない。


少し大きくなれば泣かなくはなるが、走り回ったり一々、尋ねられたりして煩わしい。


そんな子供達が親戚の葬儀等で一斉に集まりでもしたら手に負えない。


自身も小さい頃からそのような集まりが大嫌いだった。


「ほとんど泣かない子だったわ」


とは亡くなった母の言葉だ。


つまり私は生まれながらにして将来、自分が嫌いになる事、興味を持てない事を気づいていたようだ。


そんな私でも泣いた事はある。


数える程だけれど、それは確かにあった。


中学時代に1度、そして大学時代に2度だ。


その中に元彼に振られて泣いたというのは1度として含まれていない。

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