3.割れたもの、現れたもの
「あ~あ……ものの見事に瓦礫の山だぜ。……あのクソ勇者ども……」
「どうすんですか? ギルマス」
「……卦体糞悪いが瓦礫をどかして、何とかお宝を回収するしか無ぇだろう。……やらかした当人どもは、さっさとずらかっちまったんだからよ」
「子爵家差し廻しの見届け人がいてくれて助かりましたね。一部始終を報告してくれるでしょうから」
……全体何の話かってぇとな……俺たちが賊どもの塒を突き止めて急襲しようかって丁度その時に……あの四バカどもが乱入して来やがったのよ。……こりゃ、嘘でも法螺でも冗談でもねぇぜ? ……あぁ、おりゃ即座に身を隠したともよ。これ以上余計な面倒を背負い込んで堪るかってんだ。
で、四バカどもだが……どうも賊どもにしてやられたのを、腹に据えかねてたらしくってな。ギルドの奪回計画を聞き出して、出し抜くつもりで割り込んで来たみてぇだ。
……いや……お宝の奪回とかは、ありゃ考えちゃいなかったな。腹立ち紛れと言うか、仕返しと言うか……とにかく、小面憎い盗賊どもを吹っ飛ばしてやらなけりゃ、腹の虫が治まらないって感じでな。
……あぁ、力任せにアジトを吹っ飛ばしてくれたよ。万が一にも逃げられねぇようにって、ご丁寧にも大魔法とやらを使って、賊もお宝も一緒くたにして、綺麗さっぱりな。その挙げ句に……
〝安心したまえ、諸君。悪は滅びた〟
――だぜ? 俺たちゃ開いた口が塞がらなかったね。
こちとら子爵家に依頼されて、お宝を取り返しにやって来てんだ。悪だの何だの知った事かよ。……あぁ、マコーレー子爵の側用人ってのも、バカどもの暴挙に引き攣ってやがったな。
――で、お宝の回収はどうするつもりなのかってギルマスが問い詰めたら……
〝何、正義のための些細な犠牲だ。マコーレー子爵もお喜びだろう〟
……だとよ……
勿論、子爵家の側は喜んだりしちゃいねぇわな。側用人の旦那なんか失神寸前になってたしよ……
ま、さすがに四バカどもも、辺りに満ちる不穏な空気ってやつに気付いたと見えて、さっさとずらかっちまったけどな。後始末? やつらがそんな殊勝なタマかよ。
〝我々は神の代行者として悪を討つのが使命だ。後片付けは民の仕事だろう〟
――とか、捨て台詞をほざいて消えやがった。……おきゃあがれってんだ。
結局は俺たちが後始末する羽目になっちまったんだけどな……
「つってもギルマス、これじゃ塒の位置すらはっきりしませんぜ?」
「聖魔術師」ことジョス・ゾールマンの小僧が、地上部だけでなく地下部まで巻き込んでド派手に吹っ飛ばしてくれたからな。賊が地下室か何かに隠れて生き残る事を懸念したんだろうが……お蔭でアジトの位置すらはっきり判らねぇときたもんだ。
「……しゃあねぇ……おぃエルメント、死霊術でなら屍体の位置を探り出せるだろう」
「まぁ、できねぇ事もありやせんがね……」
……ったく……四バカどもと面付き合わせるのを免れたと思えば、今度はやつらの後始末かと思うと、本当にウンザリさせられたぜ。
ま、結局は俺の死霊術で死にたての屍体を見つけ出して、それを手懸かりにお宝ってやつを探し出したんだがよ……生憎と、お宝ってやつぁ焼き物の壺でな……綺麗さっぱり割れちまってた。
……けどな……そっから後は、大して話せる事ぁ無ぇんだわ。
壺の破片に内側に何か彫られてんのに気付いてギルマスを呼んだんだけどな、なぜだか側用人の旦那が出て来て、一人で回収しちまってよ。その後は、何も言うな、全て忘れろ――って言われてよ。
ま、どういうわけか子爵家からはお咎め無し……どころか、手当を弾んでもらったから、余計な詮索はしない事にしたけどな。
あぁ、もう一つ言っとくと、この件で子爵家は金利教に三行半を叩き付けたってよ。無理もねぇよな。
本話はこれにて終幕となります。




