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1.前段~「導きの勇士」~

「化かし合いのダンジョン」に登場した四バカパーティ再登場です。最初は第三者視点で話が進みます。

 「試練のダンジョン」の一件で、思いがけず冒険者たちの(ひん)(しゅく)――と失笑――を買った勇者(笑)パーティ「導きの勇士」。

 彼らがその後どうしていたかというと……



 1.「試練のダンジョン」再攻略:失敗

 前回で懲りて斥候職を募集するも、それに応募する者は一人もいなかった。当然と言えば当然で、前回の攻略における彼らのやらかしっぷりは、既に冒険者全体に広まっている。若いが有望と見なされていたエルメントを、見捨てるどころか(おとり)に使い、しかも戻って来てからいけしゃあしゃあと虚偽の報告をやってのける。そんな四人組に協力しようという冒険者などいるわけが無い。ちなみに、〝冒険者ギルドってのは本来、冒険者たちの互助組織だ。必要な情報を周知させて、冒険者が不利益を(こうむ)る事の無いようにするのも仕事のうちだからな〟というのは、とあるギルドマスターの弁であった。

 当のエルメントが面倒を嫌って事を表沙汰にしないと決めたため、彼の意思を忖度(そんたく)した冒険者たちが面と向かって喧嘩を売っていないだけで、既に冒険者たちおよび冒険者ギルドは、勇者(笑)パーティおよび金利教と敵対する方針を固めていたのだ。

 結果、斥候職無しで「試練のダンジョン」に再挑戦した四人組――と言うか四バカ――は、重厚な罠とダンジョンモンスターの布陣を突破できずに敗退……どころか、一階層で道に迷って這々(ほうほう)(てい)で脱出する羽目になったのである。


 2.ゴブリンの群れ討伐:失敗

 さすがに脳筋の四バカどもも、斥候職抜きでダンジョンを攻略するのは無謀だと気付いたらしく、以後はごくごく簡単な討伐依頼――駆け出しの冒険者が請けるようなもの――を(こな)して、彼ら主観では(・・・・・・)順調に業績を上げていたのだが……つい調子に乗ってゴブリンの群れの討伐依頼を受注した。それまでに少数のゴブリンを退治した事はあったために甘く見ていたのだろうが……実はゴブリンの脅威は、個体数の多さも()(こと)(なが)ら、群れを作ると上位種が現れ易いという点にある。

 冒険者および冒険者ギルドを潜在的な敵に廻しているため、そういった基礎知識すら与えられなかった四人組は、斥候職のいない哀しさで、馬鹿正直に群れを端から削っていくという非効率な戦いを挑み……当然の如く消耗したところを上位種の率いる部隊に奇襲されて、敢え無く敗退したのであった。


 3.街道を荒らす盗賊退治:失敗(少なくとも不成功)

 どうも魔物相手は鬼門らしいと彼らなりに判断した四バカパーティは、今度は盗賊に狙いを定めた。金利教――正式名称はドープ真理教会――出入りの商人を説き伏せ(おどし)(おとり)の馬車を出させ、それに乗り込んで盗賊どもの襲撃を待った。

 襲って来た賊を撃退する事には成功したものの、詰めの甘さから盗賊の本隊には逃げられるという不手際をしでかし……逃げ出した盗賊たちが別の場所を荒らすという結果に終わる。(おとり)とした商人を守る事には成功したとは言え、盗賊退治という点では失敗に終わったというのがギルドの評価であるが、当人たちは任務に成功したと主張している。



 ――という具合に、順調に黒星(しっぱい)を積み上げていたのであった(笑)。



・・・・・・・・



「……これ以上失点を重ねるようでは、(わし)の立場も危うくなってくる」



 苦い顔付きで苦言を呈したのは、ドープ真理教会――通称、金利教――のタルカー司教であった。

 彼から叱責を受けている四バカ――正式名称「導きの勇士」――は、一応は神妙な態度をとってはいるが、その目の奥にはありありと不満の色を浮かべている。



「お父様、私たちが未熟なのは否定いたしませんが、不成功の責めを私たちばかりに負わせるのはお門違いですわ。愚民どもが非協力的なのが悪いのです」



 パーティの意見を代表して反論したのは「聖女」のシヴィア・タルカー、タルカー司教の愛娘である。



「その点は認めるに(やぶさ)かでない……(わし)としてはな。だが、問題は周囲の者がどう見るかという点なのだ。……詳しい事情を知らぬ者どもは、お前たちが依頼に失敗しているという表面的な事実のみを(あげつら)うだろう」



 ――〝詳しい事情〟を知っている者たちは、四バカの失敗を実力相応のものと見ているのだが。


 ちなみに四バカであるが、「試練のダンジョン」でやらかした件については、公式発表の内容以上の事は報告していなかったりする。裏事情? そんなものはありません。



「……先日のブーン男爵の件は、其方(そなた)も聞き及んでおろう」

「えぇ。オーウェンズ侯爵様に献上予定の品を奪われたとか。……その件で侯爵様に見限られたとも伺っておりますわ」

「どうにか()(しゅ)(にん)は討ち取ったようだが、奪われた家宝は見つからぬまま。背後関係についても不明のままではな」



 やれやれという感じに頭を振った司教は、改めて娘に向き直ると本題に入る。



「その件で危機感を抱いたのがマコーレー子爵だ。何やら掘り出し物を手に入れたらしく、急ぎ国許(くにもと)へ向かうつもりであったようだが……その矢先にブーン男爵の一件が起きたわけだ。そこで男爵の二の舞は御免とばかりに、道中の護衛を強化する事になった」



 ここまで言われれば、シヴィアにも話の行き着く先は読める。



「その護衛を私たちに務めよと?」

「ダンジョンの攻略よりは楽な仕事であろう?」

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