行き止まりの店
ボクにとってこれが初めての作品となります。
ショートショートを意識し、短くとも楽しめ、
最後は皆さんが世界を広げられる・・・。
そんな物を造って行きたいと思っています。
朱色のレンガ造りの家が私の横を通り過ぎていく。
早足で歩いていた、私は今逃げている……毎日から。
しばらくして私は足を止めた 。
「ここはどこだろうか?」
気づかないうちに自分の知らないところまで来てしまったらしい 。
この先は道幅が狭くなっており、奥の方も暗い……どうも行き止まりのようだ。
「引き返そうか?」
しかし、引き返しては追いつかれそうな気がした、とにかく『逃げないと』という思いが足を動かす。
やはりその先は行き止まりだった。
しかし、その行き止まりには一つの店があった。 小さな喫茶店のようだがどことなく少し気品のある店に見える。
店の看板に店の名前が書いていない。少し周りを見渡してみると入り口の横に
【あなたが今一番必要としている事が当店の名、そしてメニューでございます。】
と書いてあるブラックボードを見つけた 。
正直私はこの言葉の意味は理解できなかった。しかし、どんどん迫ってくる圧迫感に急かされ、私は追いつかれないうちにさっさと店の中に入る。
「いらっしゃいませ」
中に入ると蝶ネクタイをしたこの店の店主であろう人が丁寧にマグカップを拭いている。
「メニューをどうぞ」
私は空いている席に座ると店主らしき人は真っ白な紙を差し出してきた。
「なんですか?これは」
「当店の唯一のメニューでございます」
こんなものがメニューなわけがないと思いながら、その紙を眺めていると
少しだけ紙の表面が動いたような気がした……いや、
紙の表面に文字が浮かび上がってきた。
「なんだこれは!?」
私は驚いて店主にたずねた。
「それがお客様のメニューでございます。さぁ、注文をお願いします」
「まってくれ……」
私はそのメニューに浮き出した文章を読み、少し考えて店主に言った。
「すみません、私は戻ります。何も注文しなくてすいません」
私は申し訳なさそうに店主に言った。
「いえいえ、それでいいんですよ」
店主は笑っていた。
店の外に出た私は走り出していた
毎日を……また、生きるために。
その客が店を出で走り去った後、その店の看板には
【明日への希望】
と書かれていた。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
いかがでしたでしょうか、
これを読んでくれた人たちの心を
少しでも動かす事ができたなら……
それでは、また次の作品で。
行き止まりの店はいつでもあなたの心の奥に。




